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#エッセイ

産後の抜け毛に、夫がひとこと。

産後の抜け毛に、夫がひとこと。

髪の毛というものは、恋人の頭についている時は、こんなにも愛しいのに、床に落ちた途端、おぞましいものに変わるのは、なぜだろう。

大学生の頃、辞書を片手に読んだフランス人作家の小説に、こんな一文があったことを覚えている。

詩的でなめらかな文であったのに、その生活感あふれる描写がとても気に入り、当時愛用していたルーズリーフバインダーの裏表紙に、原文を書き写して持ち歩いた。

私はこの作家の感性に、こ

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読書、美しい言葉をただ絵のように感じている

読書、美しい言葉をただ絵のように感じている

なんで自分はこんなに本が好きなのかな?って考えたときに、これまでは「知らない知識に出会える」とか「やったことない経験を本を通して味わえる」という一般的によく言われる理由なのかなーってぼんやり思ってたけど、よく考えるとそれが一番の理由じゃなかったです。やっとわかりました。

頭で理解するのではなく、美しい言葉をただ絵のように感じている
わたしが本を好きな理由は、芸術的といえるくらいの美しい言葉のかけ

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ほんとうのものに触れたくて。

最近、エッセイが好きだ。

昔は、大人がエッセイを読むのを見て、小説より面白いものなのか疑念を持っていたけれど、今noteではエッセイばかり読んでいる。
面白いというか、浄化される気がするんだなぁ。私の代わりに私のどろどろを浄化してくれる。

なんというか、いろいろと包装されていない、ほんとうのものが、そこにあるように思う。
悩みや、真剣に考えたこと、心動かされたこと、日常から紡ぎ出される特別、そ

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"大いなる疑問"を追っているか

"大いなる疑問"を追っているか

「禅には3つの柱がある。1つは"大いなる信仰心"、1つは"大いなる精進"、そして最後は"大いなる疑問"だ」

臨済宗寺院の副住職にインタビューした時、そんな話を聞かせてくれた。ここで言う「信仰心」とは「基準を設定する」ことに近いという。何事もまず始める時は、それの基準となる教えが必要。それを忠実に守ることに努力を重ね、ある所まで来たらそれを疑え、ということのようだ。

ライティングでも似たことが言

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世界を変えるかもしれない”問いかけ”の話

世界を変えるかもしれない”問いかけ”の話

「スタニスラフスキーという人が書いた『俳優修業』という本があってね」
と、教えてくれたのはシナリオの教室に通っていた頃、特別講師として来てくれたベテラン脚本家の方でした。

『俳優修業』はタイトルの通り、俳優を志す人や俳優としての成長を目指す人のため本なんですが、脚本を書く人間にとっても重要なことがたくさん書かれているというお話だったので、張り切って読み始めたわけです。

ところが正直、読むのがと

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ブックレビュー ロバート・マッキー著『ストーリー』(7)前半 第3部 ストーリー設計の原則 ストーリーの本質 

ブックレビュー ロバート・マッキー著『ストーリー』(7)前半 第3部 ストーリー設計の原則 ストーリーの本質 

更新の間が空いてしまい、申し訳ありません。
『ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』のレビュー第七回を投稿します。
(各回をまとめたマガジンはこちらです。)

※これまで1章分ごとにレビューをしてきましたが、第7章にあたる『第3部 ストーリー設計の原則 7 ストーリーの本質』はボリュームが大きいため、投稿を前、後半に分けます。
この投稿は「前半分」です。

※ こちらのレビューは

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怒りと嫉妬と執着はすぐに書いてはいけない

怒りと嫉妬と執着はすぐに書いてはいけない

ほとんどの情報は食材と一緒で鮮度が大事だ。つまり、なるべく早く調理・加工したほうが美味しくいただけますってことだ。でも、一部の情報や感情に関しては鮮度があると全然美味しくないものもある。その代表的なものが「怒り」と「嫉妬」と「執着」だ。

たとえば、ちらっと見かけたものについイラっとした時に、脊髄反射でその反論を書いてしまう。原文をろくに見もせずに。

たとえば、別れた恋人のことが忘れられずに数ヶ

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子どもの1歳の誕生日に、どうしようもないツラさを抱えていた君へ

子どもの1歳の誕生日に、どうしようもないツラさを抱えていた君へ

スクロールした画面に遠方の友人があらわれる。いや、友人自身は写っていない。そこにいるのは配偶者や子どもの姿。

30歳を迎えた彼女のタイムラインでは、結婚、出産、子育ての話題がピークを迎えている。とりわけ、子どものお食い初めや誕生日のイベントの投稿が多い。

子どもの誕生日というのは、とても幸せな出来事だ。

けれども彼女は、心の底にたまったオリのようなみじめさを感じずにはいられなかった。

膝の

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死ぬ事以外はかすり傷だがそれでも痛い

死ぬ事以外はかすり傷だがそれでも痛い

少し前の一時期に「死ぬ事以外かすり傷」って言葉が流行っていた。言葉の出元や詳細を知っている訳では無いが、どうやら死んでしまう以外の悪い物事は所詮かすり傷なので気にするな、的な意味合いらしい。

言いたい事は分かるしそれぐらい前向きにいきたいものだ、とは思うが、それでも傷は痛いのだ。痛いのを好きな人は(あまり)いないと思う。

大きい傷よりかすり傷の方が妙に痛かったり、ずっとチクチクして気になり続け

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運命のピアス

運命のピアス

多くのアクセサリーを捨てられたのは、運命のピアスに出合ったからだ。

1月のある日、ハワイのホノルルで、ダウンタウンをうろうろしながら写真を撮っていたとき。そのお店を見つけた。

「GINGER13」

店内には、天然石を使ったアクセサリー。ピアスもネックレスも、オーナーでジュエリーアーティストの、シンディ・ヨコヤマさんがつくったものだと本人が教えてくれた。グラマーで黒目黒髪のシンディさん。パキっ

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子供ができれば自由がなくなると思い込んでいた日々のこと| 『FAMILY TAIWAN TRIP #子連れ台湾』 出版によせて

子供ができれば自由がなくなると思い込んでいた日々のこと| 『FAMILY TAIWAN TRIP #子連れ台湾』 出版によせて

ようやくこの日が来た!
初めての自著となる『FAMILY TAIWAN TRIP #子連れ台湾 』の出版。一年以上かけて魂込めて作り上げてきた本が全国の書店に並ぶなんて、想像しただけで背筋がピッとなる。

本の内容や見どころはプレスリリースやAmazonの内容紹介などでまとめてきたけれど、noteに残しておきたいのはもっと内側のこと。その企画を立ち上げたときの裏話や初めての校了を終えた震える喜びにつ

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思ってもないほめ言葉は身を滅ぼす

思ってもないほめ言葉は身を滅ぼす

SNSの時代になって、自分の言葉は遠くまで届くようになった。極端な話、部屋のなかで小声で言ったひとことが、Wi-fiとやらに乗って、ブラジルのサンパウロ市まで秒で届くみたいな感じだ。こんな時代になると、人々は互いの言葉を待ち受けるようになる。建物の陰に隠れ、酔っ払いながら言った不用意な言葉をひとつ聞くと、「言った!」という感じで建物の陰から出てきて、その言葉の狩りを始める。

こうした世界では、言

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