希見 誠

ノゾミ マコトと申します。小説を書いています。 こちらでは童話を中心に載せていきます…

希見 誠

ノゾミ マコトと申します。小説を書いています。 こちらでは童話を中心に載せていきます。 「エブリスタ」「カクヨム」で全ての小説が読めます。

マガジン

  • 東海道五拾三次OLスキー珍道中

    ハチャメチャにワチャワチャしたエンタメ小説。近未来にバブル風OL二人がスキーで東海道五拾三次を旅するドタバタ劇。

  • 希望の街のおまじない屋

    長い戦争が終わった街。偶然二人は家族になった。おまじないに支えられながら、それぞれに傷ついた人たちは復興を目指していく。

  • あやかし妖喜利物語

    落語の国に転生してしまった与太郎。花魁キセガワと共に大喜利のスキルを磨いて謎の妖怪を倒す旅に出るコメディ。 笑点の小説化?

  • コトバムシ

    コトバムシに言葉を管理された世界。歌い人のトトは、隠された秘密を知る。コトバムシがいなくなっても、僕らはちゃんと言葉を使えるのか・・・。

  • 童話

    童話をひとまとめにしています。素敵なイラストを使わせてもらってありがとうございます。

記事一覧

【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第八話 平塚

平塚 JR茅ヶ崎駅を越えて、相模川を渡れば、そこは平塚の本陣だ。 「そろそろお菊塚が見えてくるわよ!」と、ノー天気なミケコ。 「どうして東海道って、こんなにオカルト…

希見 誠
11時間前
2

希望の街のおまじない屋 第八話

絵描きのおまじない② その日の夜遅くのこと。ミミルがトイレに行こうと、パタパタとスリッパの音を鳴らして一階に降りて来ると、まだ明かりがついていました。  パン種…

希見 誠
2日前
3

【落語小説】あやかし妖喜利物語 第7席 粗忽長屋

粗忽長屋「くっ、不覚。お主の勝ちじゃ」 【座布団一枚獲得!総座布団数2】 「だあ〜、漏れる〜!」  情け無い与太郎は、死神に連れられてはばかりに行った。 「やった…

希見 誠
3日前
1

【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第七話 藤沢

藤沢 戸塚宿を出て、しばらくなだらかな坂を登っていく。  それがJR藤沢駅近くからは、下り坂。  道場坂《どうじょうざか》と呼ばれるところだ。  気持ちよく滑り降り…

希見 誠
4日前

希望の街のおまじない屋 第七話

絵描きのおまじない① ミミルとトモリさんは、この頃散歩に出かけることが多くなりました。お店は朝のうちだけ開けておけば十分でしたし、ミミルはスースの奥さんに作って…

希見 誠
5日前
3

【落語小説】あやかし妖喜利物語 第六席 死神

死神「や、やるな、お主!持ってけドロボー!」  座布団を一枚放り投げると、七度狐は、わーんと泣きながらどこかに去って行った。 【座布団一枚獲得!総座布団数1】 「…

希見 誠
6日前
1

【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第六話 戸塚

戸塚 JR戸塚駅を越した辺りが、戸塚の本陣である。  ここ戸塚の宿には、いにしえの本陣になぞらえた、温泉旅館が建てられていた。  その本陣にチェックイン。  まずは…

希見 誠
7日前
3

希望の街のおまじない屋 第六話

靴屋のおまじない「いただきます」 「いただきます」 「いただきます」  三人で食事の前のおまじないをして、お茶とクッキーをいただくことにしました。 「もっといろい…

希見 誠
8日前
2

【落語小説】あやかし妖喜利物語 第5席 七度狐

七度狐「な〜んか、狐に化かされたみたいだなぁ」  エンチョ師匠の家を出て、一路エードを目指す与太郎である。この辺は田舎らしく、田園風景が広がっていた。 「爺さん…

希見 誠
9日前
1

【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第五話 保土ヶ谷

保土ヶ谷 しばらくは緩やかな下り坂が続く。  エンジンを吹かさなくても、ビューン、と風を切って滑り降りていく二人。  その姿は、まるで天から降臨した、二人の天女だ…

希見 誠
10日前

希望の街のおまじない屋 第五話

レインボウ・ベーカリー再開 トイデル大通りの一角から、いい香りがしてきます。パンを焼く、香ばしい香りです。足を止めて見ると、補修された看板に『レインボウ・ベーカ…

希見 誠
11日前
1

【落語小説】あやかし妖喜利物語 第四席 東の旅

東の旅「どういうことだ、俺になんかやらせようってのか?」 「話が途中になっちゃったけど、今ラクゴ国では大変なことが起きているの。Dという謎の妖怪をボスとする一味が…

希見 誠
12日前
3

【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第4話 神奈川

神奈川 ミケタマの二人は、海風を切って、スキーを飛ばしていく。  新子安駅の南側を通って、目指すは神奈川宿だ。  この辺は江戸末期に、海防のための台場が作られたと…

希見 誠
13日前
1

希望の街のおまじない屋 第四話

ミミル、おまじない屋になる 次の日の朝、それはミミルにとってそれまで想像したことのないくらい、素敵な朝になりました。  まだまどろんだ夢の中にいる頃から、焼き立…

希見 誠
2週間前
2

【落語小説】あやかし妖喜利物語 第三席 落語の国

落語の国 バカな与太郎にも分かりやすいようにキセガワが説明してくれた。 「いきなりこんなところに連れて来られて戸惑っているのも分かるわ。でもね、人が突然異世界に…

希見 誠
2週間前
1

【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第3話 川崎

川崎 品川から川崎へは、多摩川を渡る。  かつて六郷《ろくごう》の渡しと呼ばれたところに掛かる橋を越えて、二人は川崎に入った。 「そろそろ、お昼にしたいわね」 「…

希見 誠
2週間前
3
【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第八話 平塚

【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第八話 平塚

平塚 JR茅ヶ崎駅を越えて、相模川を渡れば、そこは平塚の本陣だ。
「そろそろお菊塚が見えてくるわよ!」と、ノー天気なミケコ。
「どうして東海道って、こんなにオカルトスポットが多いのよ〜」と、霊感の強いタマコは、旅に出たことを少し後悔した。
 が、先に立たずである。
 旅を途中で切り上げるのも嫌なので、このまま京都まで行くしかない。

 お菊塚とは、ご存知怪談『番長皿屋敷』の主人公、お菊さんの墓と伝

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希望の街のおまじない屋 第八話

希望の街のおまじない屋 第八話

絵描きのおまじない② その日の夜遅くのこと。ミミルがトイレに行こうと、パタパタとスリッパの音を鳴らして一階に降りて来ると、まだ明かりがついていました。
 パン種をこねる調理台の前で、トモリさんがうーんと腕組みをしています。

「トモリさん、まだ起きてらっしゃるの?」
「ああ、うん。もう寝るよ」
 とトモリさんは腕組みをしたまま、上の空で返事をしました。
 ですが、ミミルがトイレから出てきた後も、ト

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【落語小説】あやかし妖喜利物語 第7席 粗忽長屋

【落語小説】あやかし妖喜利物語 第7席 粗忽長屋

粗忽長屋「くっ、不覚。お主の勝ちじゃ」
【座布団一枚獲得!総座布団数2】

「だあ〜、漏れる〜!」
 情け無い与太郎は、死神に連れられてはばかりに行った。

「やったね。いいセンスしてたわよ」
「あ〜、死ぬかと思った」

 一件落着したところで、ぐっすり眠った。翌朝、目が覚めてみると枕元に死神が座っていたのにはギョッとしたが。

 与太郎とキセガワの二人は再び旅を続け、昼前にはちょっとした町に到着

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【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第七話 藤沢

【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第七話 藤沢

藤沢 戸塚宿を出て、しばらくなだらかな坂を登っていく。
 それがJR藤沢駅近くからは、下り坂。
 道場坂《どうじょうざか》と呼ばれるところだ。
 気持ちよく滑り降りていく。

 藤沢の本陣を過ぎると、源義経首洗い井戸。
「何で昔の人って、すぐに首を洗いたがるのよーっ」
 と、霊感の強いタマコは早くこの場を離れたい。
 スキーのエンジンを吹かして先に行く。

 お化け屋敷のときのようなことは、二度と

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希望の街のおまじない屋 第七話

希望の街のおまじない屋 第七話

絵描きのおまじない① ミミルとトモリさんは、この頃散歩に出かけることが多くなりました。お店は朝のうちだけ開けておけば十分でしたし、ミミルはスースの奥さんに作ってもらった新しい靴を履いて外に出たくてウズウズしていたのです。

 それでこの日も、まだお昼前に、二人連れ立って出かけていきました。
 通りには、穴ぼこがまだいくつも残っていました。器用に穴や割れ目を避けて、二人は歩いて行きました。

 むし

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【落語小説】あやかし妖喜利物語 第六席 死神

【落語小説】あやかし妖喜利物語 第六席 死神

死神「や、やるな、お主!持ってけドロボー!」
 座布団を一枚放り投げると、七度狐は、わーんと泣きながらどこかに去って行った。
【座布団一枚獲得!総座布団数1】

「やったね!初めてにしては上出来だわ」
「あれで良かったのか?」
「面白かったわよ。そのマヌケ面が役に立った」

 与太郎は不愉快だったが、女性と会話できるとなれば我慢するしかない。

 その後、二人はしばらく東へ旅を続けた。日が暮れる頃

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【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第六話 戸塚

【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第六話 戸塚

戸塚 JR戸塚駅を越した辺りが、戸塚の本陣である。
 ここ戸塚の宿には、いにしえの本陣になぞらえた、温泉旅館が建てられていた。
 その本陣にチェックイン。
 まずは温泉に浸かって、ゆっくりと一日の疲れを癒す。

「あー、極楽、極楽。生き返るわー」
「いろいろあったわねー」
 体がきれいになったら、食事である。
 横浜といえば、中華街。
 旅館の夕食も、中華バイキングが用意されていた。

「うふふ、

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希望の街のおまじない屋 第六話

希望の街のおまじない屋 第六話

靴屋のおまじない「いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
 三人で食事の前のおまじないをして、お茶とクッキーをいただくことにしました。

「もっといろいろあるんですよ、おまじないが」
 とトモリさんはスースの奥さんに言いました。
「このクッキーも、おまじないをして焼いたのだわ」
 とミミルは得意げでした。

「おいしい、おいしい、ですか。うふふ」と言って、スースの奥さんはクッキーを口に

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【落語小説】あやかし妖喜利物語 第5席 七度狐

【落語小説】あやかし妖喜利物語 第5席 七度狐

七度狐「な〜んか、狐に化かされたみたいだなぁ」
 エンチョ師匠の家を出て、一路エードを目指す与太郎である。この辺は田舎らしく、田園風景が広がっていた。

「爺さんは妖怪がウヨウヨしてるって言ったけど、のどかなもんだねえ」

 50過ぎのおっさんから若者に変わって、体が軽い。エンチョに少し路銀を貰っているので、途中の茶店で串団子を10本買った。それを頬張りながら、軽快な足取りで歩いて行く。

「注意

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【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第五話 保土ヶ谷

【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第五話 保土ヶ谷

保土ヶ谷 しばらくは緩やかな下り坂が続く。
 エンジンを吹かさなくても、ビューン、と風を切って滑り降りていく二人。
 その姿は、まるで天から降臨した、二人の天女だ。
 保土ヶ谷駅の先で、再び線路の南へ。

 坂を下り切ったところで、お休み処に立ち寄った。
「甘いもの、食べない?」
「いいわね」
「東海道まんじゅうだって。どんな味がするのかしら?」
「きっと普通のおまんじゅうと同じ味」
 土産物とは

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希望の街のおまじない屋 第五話

希望の街のおまじない屋 第五話

レインボウ・ベーカリー再開 トイデル大通りの一角から、いい香りがしてきます。パンを焼く、香ばしい香りです。足を止めて見ると、補修された看板に『レインボウ・ベーカリー』という文字が読めます。それと、小さな札に、こんな風に書いてありました。『ミミルのおまじない屋』

 扉を開けてみると、優しそうなおじさんと、おしゃまそうな女の子が。
 ミミルのなりは、こざっぱりとしたものに変わっていました。エリーゼち

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【落語小説】あやかし妖喜利物語 第四席 東の旅

【落語小説】あやかし妖喜利物語 第四席 東の旅

東の旅「どういうことだ、俺になんかやらせようってのか?」
「話が途中になっちゃったけど、今ラクゴ国では大変なことが起きているの。Dという謎の妖怪をボスとする一味が、妖喜利バトルで座布団を集めまくっているのよ」

「Dって何だ?」
「誰もその正体を見たものはいない、謎の妖怪じゃよ」
 と、この質問にはエンチョが答えた。キセガワが説明を続ける。

「Dの目的は座布団を集めて、永世名誉大妖怪になること。

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【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第4話 神奈川

【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第4話 神奈川

神奈川 ミケタマの二人は、海風を切って、スキーを飛ばしていく。
 新子安駅の南側を通って、目指すは神奈川宿だ。
 この辺は江戸末期に、海防のための台場が作られたところ。

 ミケタマの二人が近づいていくと、ドーン、ドーン。
 ホログラムの砲台が海に向かって火を噴いた。
 旅人を歓迎するあかしである。

 空中には、大きなウミガメがプカプカと泳いでいる。
 これもホログラムだ。
 コースには、タイや

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希望の街のおまじない屋 第四話

希望の街のおまじない屋 第四話

ミミル、おまじない屋になる 次の日の朝、それはミミルにとってそれまで想像したことのないくらい、素敵な朝になりました。
 まだまどろんだ夢の中にいる頃から、焼き立てパンの何とも言えない香ばしい香りがしてきたのです。

 すぐに目を覚ましたミミルは、起き抜けにすーっと鼻で息を吸い込んでみました。
(ほんと、素敵。何かいいことありそう。まるでおまじないみたい)
 そのとき、ミミルに素敵な考えがやってきて

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【落語小説】あやかし妖喜利物語 第三席 落語の国

【落語小説】あやかし妖喜利物語 第三席 落語の国

落語の国 バカな与太郎にも分かりやすいようにキセガワが説明してくれた。

「いきなりこんなところに連れて来られて戸惑っているのも分かるわ。でもね、人が突然異世界に連れて来られるのは、昔から日本じゃよくあることなのよ。子供の頃にそういうアニメ見たことない?」

(おいおい、そりゃあ誘拐とか拉致とか言うんじゃないのか)
 と与太郎は思ったが、キセガワは構わず後を続けた。

「お察しだと思うけど、ここは

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【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第3話 川崎

【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第3話 川崎

川崎 品川から川崎へは、多摩川を渡る。
 かつて六郷《ろくごう》の渡しと呼ばれたところに掛かる橋を越えて、二人は川崎に入った。
「そろそろ、お昼にしたいわね」
「美味しいものでも、食べたいわ」

 さっきのお化け屋敷のショックが残っている二人。
 川崎名物でも食べて、回復したい。

 多摩川を渡ったところ、今のJR川崎駅の南側の辺りが、川崎宿の中心。
 かつてはここに万年屋《まんねんや》という店が

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