希見 誠

ノゾミ マコトと申します。小説を書いています。 こちらでは童話を中心に載せていきます…

希見 誠

ノゾミ マコトと申します。小説を書いています。 こちらでは童話を中心に載せていきます。 「エブリスタ」「カクヨム」で全ての小説が読めます。

マガジン

  • 東海道五拾三次OLスキー珍道中

    ハチャメチャにワチャワチャしたエンタメ小説。近未来にバブル風OL二人がスキーで東海道五拾三次を旅するドタバタ劇。

  • 希望の街のおまじない屋

    長い戦争が終わった街。偶然二人は家族になった。おまじないに支えられながら、それぞれに傷ついた人たちは復興を目指していく。

  • あやかし妖喜利物語

    落語の国に転生してしまった与太郎。花魁キセガワと共に大喜利のスキルを磨いて謎の妖怪を倒す旅に出るコメディ。 笑点の小説化?

  • コトバムシ

    コトバムシに言葉を管理された世界。歌い人のトトは、隠された秘密を知る。コトバムシがいなくなっても、僕らはちゃんと言葉を使えるのか・・・。

  • 童話

    童話をひとまとめにしています。素敵なイラストを使わせてもらってありがとうございます。

最近の記事

【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第七話 藤沢

藤沢 戸塚宿を出て、しばらくなだらかな坂を登っていく。  それがJR藤沢駅近くからは、下り坂。  道場坂《どうじょうざか》と呼ばれるところだ。  気持ちよく滑り降りていく。  藤沢の本陣を過ぎると、源義経首洗い井戸。 「何で昔の人って、すぐに首を洗いたがるのよーっ」  と、霊感の強いタマコは早くこの場を離れたい。  スキーのエンジンを吹かして先に行く。  お化け屋敷のときのようなことは、二度とごめんである。  もっとも、ここにはアトラクションは用意されていない。  ただの

    • 希望の街のおまじない屋 第七話

      絵描きのおまじない① ミミルとトモリさんは、この頃散歩に出かけることが多くなりました。お店は朝のうちだけ開けておけば十分でしたし、ミミルはスースの奥さんに作ってもらった新しい靴を履いて外に出たくてウズウズしていたのです。  それでこの日も、まだお昼前に、二人連れ立って出かけていきました。  通りには、穴ぼこがまだいくつも残っていました。器用に穴や割れ目を避けて、二人は歩いて行きました。  むしろ穴ぼこがあるおかげで、車が入って来れなくて安全なぐらいでした。空は綺麗で、お日

      • 【落語小説】あやかし妖喜利物語 第六席 死神

        死神「や、やるな、お主!持ってけドロボー!」  座布団を一枚放り投げると、七度狐は、わーんと泣きながらどこかに去って行った。 【座布団一枚獲得!総座布団数1】 「やったね!初めてにしては上出来だわ」 「あれで良かったのか?」 「面白かったわよ。そのマヌケ面が役に立った」  与太郎は不愉快だったが、女性と会話できるとなれば我慢するしかない。  その後、二人はしばらく東へ旅を続けた。日が暮れる頃になり、一軒の屋敷に辿り着いた。 「今夜はここで厄介になるしかなさそうね」  

        • 【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第六話 戸塚

          戸塚 JR戸塚駅を越した辺りが、戸塚の本陣である。  ここ戸塚の宿には、いにしえの本陣になぞらえた、温泉旅館が建てられていた。  その本陣にチェックイン。  まずは温泉に浸かって、ゆっくりと一日の疲れを癒す。 「あー、極楽、極楽。生き返るわー」 「いろいろあったわねー」  体がきれいになったら、食事である。  横浜といえば、中華街。  旅館の夕食も、中華バイキングが用意されていた。 「うふふ、バイキングを見ると、燃えてくるわ」 「食べ物が手に入りにくかった原始時代の名残り

        【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第七話 藤沢

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        • 東海道五拾三次OLスキー珍道中
          8本
        • 希望の街のおまじない屋
          7本
        • あやかし妖喜利物語
          6本
        • コトバムシ
          5本
        • 童話
          14本

        記事

          希望の街のおまじない屋 第六話

          靴屋のおまじない「いただきます」 「いただきます」 「いただきます」  三人で食事の前のおまじないをして、お茶とクッキーをいただくことにしました。 「もっといろいろあるんですよ、おまじないが」  とトモリさんはスースの奥さんに言いました。 「このクッキーも、おまじないをして焼いたのだわ」  とミミルは得意げでした。 「おいしい、おいしい、ですか。うふふ」と言って、スースの奥さんはクッキーを口に入れました。「久しぶりですねえ、トモリさんのクッキーをいただくのも」 「ところ

          希望の街のおまじない屋 第六話

          【落語小説】あやかし妖喜利物語 第5席 七度狐

          七度狐「な〜んか、狐に化かされたみたいだなぁ」  エンチョ師匠の家を出て、一路エードを目指す与太郎である。この辺は田舎らしく、田園風景が広がっていた。 「爺さんは妖怪がウヨウヨしてるって言ったけど、のどかなもんだねえ」  50過ぎのおっさんから若者に変わって、体が軽い。エンチョに少し路銀を貰っているので、途中の茶店で串団子を10本買った。それを頬張りながら、軽快な足取りで歩いて行く。 「注意してよね。もういつでも妖喜利バトルを仕掛けられてもおかしくない状況なんだから」

          【落語小説】あやかし妖喜利物語 第5席 七度狐

          【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第五話 保土ヶ谷

          保土ヶ谷 しばらくは緩やかな下り坂が続く。  エンジンを吹かさなくても、ビューン、と風を切って滑り降りていく二人。  その姿は、まるで天から降臨した、二人の天女だ。  保土ヶ谷駅の先で、再び線路の南へ。  坂を下り切ったところで、お休み処に立ち寄った。 「甘いもの、食べない?」 「いいわね」 「東海道まんじゅうだって。どんな味がするのかしら?」 「きっと普通のおまんじゅうと同じ味」  土産物とは、そういうものであるが、それを言っちゃあおしまいである。 「雰囲気、雰囲気。ほ

          【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第五話 保土ヶ谷

          希望の街のおまじない屋 第五話

          レインボウ・ベーカリー再開 トイデル大通りの一角から、いい香りがしてきます。パンを焼く、香ばしい香りです。足を止めて見ると、補修された看板に『レインボウ・ベーカリー』という文字が読めます。それと、小さな札に、こんな風に書いてありました。『ミミルのおまじない屋』  扉を開けてみると、優しそうなおじさんと、おしゃまそうな女の子が。  ミミルのなりは、こざっぱりとしたものに変わっていました。エリーゼちゃんのお下がりで適当なものがあったのです。エリーゼちゃんよりも少しミミルは発育が

          希望の街のおまじない屋 第五話

          【落語小説】あやかし妖喜利物語 第四席 東の旅

          東の旅「どういうことだ、俺になんかやらせようってのか?」 「話が途中になっちゃったけど、今ラクゴ国では大変なことが起きているの。Dという謎の妖怪をボスとする一味が、妖喜利バトルで座布団を集めまくっているのよ」 「Dって何だ?」 「誰もその正体を見たものはいない、謎の妖怪じゃよ」  と、この質問にはエンチョが答えた。キセガワが説明を続ける。 「Dの目的は座布団を集めて、永世名誉大妖怪になること。そうすれば、妖喜利バトルをやらなくても、相手の座布団を自由に取ったりあげたりでき

          【落語小説】あやかし妖喜利物語 第四席 東の旅

          【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第4話 神奈川

          神奈川 ミケタマの二人は、海風を切って、スキーを飛ばしていく。  新子安駅の南側を通って、目指すは神奈川宿だ。  この辺は江戸末期に、海防のための台場が作られたところ。  ミケタマの二人が近づいていくと、ドーン、ドーン。  ホログラムの砲台が海に向かって火を噴いた。  旅人を歓迎するあかしである。  空中には、大きなウミガメがプカプカと泳いでいる。  これもホログラムだ。  コースには、タイやヒラメも舞い踊っている。  それを大回転のポールに見立てて、右へ左へと、ターンし

          【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第4話 神奈川

          希望の街のおまじない屋 第四話

          ミミル、おまじない屋になる 次の日の朝、それはミミルにとってそれまで想像したことのないくらい、素敵な朝になりました。  まだまどろんだ夢の中にいる頃から、焼き立てパンの何とも言えない香ばしい香りがしてきたのです。  すぐに目を覚ましたミミルは、起き抜けにすーっと鼻で息を吸い込んでみました。 (ほんと、素敵。何かいいことありそう。まるでおまじないみたい)  そのとき、ミミルに素敵な考えがやってきて、自然とにんまりしてしまったのです。  階段を下りていくと、焼き立てパンの香り

          希望の街のおまじない屋 第四話

          【落語小説】あやかし妖喜利物語 第三席 落語の国

          落語の国 バカな与太郎にも分かりやすいようにキセガワが説明してくれた。 「いきなりこんなところに連れて来られて戸惑っているのも分かるわ。でもね、人が突然異世界に連れて来られるのは、昔から日本じゃよくあることなのよ。子供の頃にそういうアニメ見たことない?」 (おいおい、そりゃあ誘拐とか拉致とか言うんじゃないのか)  と与太郎は思ったが、キセガワは構わず後を続けた。 「お察しだと思うけど、ここはあなたが元いた世界じゃない。現実世界と並行して存在する異世界よ。誰が言ったか知ら

          【落語小説】あやかし妖喜利物語 第三席 落語の国

          【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第3話 川崎

          川崎 品川から川崎へは、多摩川を渡る。  かつて六郷《ろくごう》の渡しと呼ばれたところに掛かる橋を越えて、二人は川崎に入った。 「そろそろ、お昼にしたいわね」 「美味しいものでも、食べたいわ」  さっきのお化け屋敷のショックが残っている二人。  川崎名物でも食べて、回復したい。  多摩川を渡ったところ、今のJR川崎駅の南側の辺りが、川崎宿の中心。  かつてはここに万年屋《まんねんや》という店があり、旅人に奈良茶飯《ならちゃめし》を提供していたという。  奈良茶飯とは、も

          【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第3話 川崎

          希望の街のおまじない屋 第三話

          女神様のおまじない「ほら、君の好きなものができたよ」 「嬉しいわ」  焼き立てパンの香りをすーっと胸いっぱいに吸い込むと、ミミルは気持ちが晴れたようになりました。もうこんなに晴々としたのは、いつ振りかわからないくらいでした。 「私、パンが大好物なのよ」  温かいパンにかぶりつきました。 「やっひゃり、しょお通りになっひゃわ。めやみしゃあの、おほしめし」 「口を空にしてから喋ろうね」  トモリさんはミミルにミルクを勧めました。 「おまじないしたのよ」  ミミルは遠くの方を

          希望の街のおまじない屋 第三話

          【落語小説】あやかし妖喜利物語 第二席 林家彦六伝

          林家彦六伝 気付くと与太郎は、古めかしい家の玄関の前に立っていた。最近ではとんと見かけることのなくなった三軒長屋である。 「あっ、さっきのチンドン屋!」  隣にいたのは、例のチンドン屋の娘であった。今は剽軽な格好ではなく、煌びやかな花魁姿である。 「ウフフ、与太郎さん。そんなところに突っ立ってないで、早く中に行きましょう」  娘は与太郎の手を取って、家の中に引っ張っていく。 「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺は今持ち合わせが…」  持ち合わせはないがこんな幸運を断るつも

          【落語小説】あやかし妖喜利物語 第二席 林家彦六伝

          【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第2話 品川 

          品川 ミケタマの二人は、JR品川駅の南側へ。 「ここは、元の品川宿の本陣があった辺りよ」と、歴史マニアのミケコ。  周りをキョロキョロ、スキーを流す。  本陣とは、かつて宿場の中で、参勤交代の大名や公家、幕府の役人などが泊まるための宿泊施設があったところ。 「都内なんて、いつでも見れるじゃないの」と、タマコはあまり関心がないのだが。 「見て、問答河岸《もんどうかし》跡の碑よ」と、ミケコは史跡を見つけてはいちいち立ち止まる。  問答河岸跡の碑とは、徳川家光がこの付近にある東

          【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第2話 品川