希見 誠

ノゾミ マコトと申します。小説を書いています。 こちらでは童話を中心に載せていきます…

希見 誠

ノゾミ マコトと申します。小説を書いています。 こちらでは童話を中心に載せていきます。 「エブリスタ」「カクヨム」で全ての小説が読めます。

マガジン

  • 東海道五拾三次OLスキー珍道中

    ハチャメチャにワチャワチャしたエンタメ小説。近未来にバブル風OL二人がスキーで東海道五拾三次を旅するドタバタ劇。

  • 希望の街のおまじない屋

    長い戦争が終わった街。偶然二人は家族になった。おまじないに支えられながら、それぞれに傷ついた人たちは復興を目指していく。

  • あやかし妖喜利物語

    落語の国に転生してしまった与太郎。花魁キセガワと共に大喜利のスキルを磨いて謎の妖怪を倒す旅に出るコメディ。 笑点の小説化?

  • コトバムシ

    コトバムシに言葉を管理された世界。歌い人のトトは、隠された秘密を知る。コトバムシがいなくなっても、僕らはちゃんと言葉を使えるのか・・・。

  • 童話

    童話をひとまとめにしています。素敵なイラストを使わせてもらってありがとうございます。

最近の記事

【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第12話 三島

三島 箱根のリゾートで半日、羽を伸ばしたミケタマの二人は、翌朝早くに出立した。  下りの箱根西坂は、広くて滑りやすいゲレンデが続いている。  箱根峠を越えると、そこはもう静岡県である。 「あれ、もう静岡に入ったの?」 「写真撮りましょうよ!」  県境を越える感動のないまま、いつのまにか静岡に入っていた。  改めて引き返し、「これより静岡」の看板の前で、パシャリ。  記念撮影をする。  東海道は、この静岡が長い。  メインと言っていい。  関東圏から離れ、旅情ムードも高まる

    • 希望の街のおまじない屋 第12話

      とっておきのおまじない ある暖かな日の午後、ミミルが二階の部屋でお昼寝からふと目を覚ますと、下の方から話し声が聞こえました。  誰かお客さんが来て、何やらトモリさんと話をしているようでした。  そんなことは気にせずに、またお昼寝に戻ろうとしましたが、トイレに行きたいのに気付きました。  スリッパを履いて、階段をパタパタと途中まで降りて行きましたが、ちょっと立ち止まって耳を澄ませました。  ミミルがどうのこうのというように聞こえたからです。他に気になる言葉もありました。  

      • 【落語小説】あやかし妖喜利物語 第11席 チブチブ村

        チブチブ村「パオパオ、強いでありま温泉。ここは潔くお支払いして、湯治にでも行くパオン」  謎の象妖怪はズシンズシンと去っていった。 【座布団一枚獲得!総座布団数2】 「やったね。でもあいつにとっては、元々払うお金と大して変わりはないわね」  やれやれ一件落着と、食後のお茶を啜る与太郎とキセガワであった。  と、そのときである。何やら泣き声が聞こえてきた。 「お〜ん、お〜ん」 「な、何だあ?さっきの象の奴、まだいるのか?」 「パオーン、パオーンじゃなくて、今度はお〜ん、

        • 【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第11話 箱根

          箱根 翌朝、小田原城の朝食会場で、モーニングを堪能した二人。  もう一つの小田原名物・梅干しで白いご飯をいただく。  小田原で梅干し作りが盛んになったのは、戦国時代のこと。その薬効と食べ物の防腐効能に目を付けた北条早雲が、奨励してからだ。  その早雲の居城で食べる梅干しの味は、格別である。 「あー、日本人で良かったわ」 「朝は、やっぱり、白いご飯と梅干しよね」  昨夜のお酒が残る胃腸にも嬉しい。 「あれ、今朝は一茶さんたちは、いないのね」 「仕事に行ったんじゃないの?」

        【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第12話 三島

        マガジン

        • 東海道五拾三次OLスキー珍道中
          13本
        • 希望の街のおまじない屋
          12本
        • あやかし妖喜利物語
          11本
        • コトバムシ
          5本
        • 童話
          14本

        記事

          希望の街のおまじない屋 第11話

          音楽屋のおまじない ミミルとトモリさんは、今日も街を散歩していました。道の穴ぼこを器用に避けて、歩いて行きます。毎日こうして歩いていると、穴ぼこがあるのが当たり前のような気がしてしまいます。  自治会では、ぼちぼち穴ぼこを埋める工事の話し合いが始まっていました。でも、穴ぼこのあるおかげで、今トイデル大通りには車が入っていけない場所がありました。  むしろそれはいいことなのではないかという意見も出ていました。穴ぼこを全部埋めてしまっても、車の立ち入り禁止区域を作ったらどうだ

          希望の街のおまじない屋 第11話

          【落語小説】あやかし妖喜利物語 第10席 そば清

          そば清「くっ、強い!」 「あらあらん、その程度じゃ私には勝てないドロン」 【座布団三枚没収!総座布団数1】 「それではこの辺でドロンします」  親父ギャグを放って、コユーレイは去って行った…。 「悔し〜い!でも流石は妖喜利六将軍ね」  その後、急いでオーツキ村に入った二人。粗末な旅籠屋に泊まって旅の労をねぎらった。  翌日、村の中を散策することに。姿をくらましたコユーレイの行方も知りたいところだ。  いろいろと情報を仕入れて回って、昼時に一軒の蕎麦屋に入った。 「お

          【落語小説】あやかし妖喜利物語 第10席 そば清

          【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第10話 小田原

          小田原 お猿のかごやのおかげで、無事に小田原宿まで着くことができた。  しかも予定よりも余裕がある。 「ありがとう」 「助かったわ」  ミケタマがお礼を言うと、お猿のかごやは、ぺこりと頭を下げて、いずこへともなく去っていった。 「紳士的なかごやで良かったわ」 「惚れちゃうわね」  籠の中で飲んだ熱燗のおかげで、心も体もポカポカ、上機嫌だ。  時間のある二人は、しばし小田原観光を楽しむ。  小田原は、かまぼこで有名。  観光客で賑わう通りを、食べ歩きしながら練り歩いていく。

          【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第10話 小田原

          希望の街のおまじない屋 第10話

          ご機嫌な朝のおまじない 最近トモリさんは、ウキウキしていました。今朝も適当な鼻歌を歌いながら、焼き立てのパンをお店に並べていました。  ふんふんふん  おいしいおいしい、細長パン  トイデル大通りの新名物さ  大きな口で、かぶりつく  例の細長いパンの売れ行きは好調でした。でも一つトモリさんには不満がありました。このパンには、まだ名前がついていなかったのです。 「細長いパンっていうだけじゃなあ。何かいい名前がないかなあ」  そんなトモリさんの一方で、ミミルは朝食のワッフ

          希望の街のおまじない屋 第10話

          【落語小説】あやかし妖喜利物語 第9席 幽霊の辻

          幽霊の辻「うむ、拙者の負けでごんす」  ズシーン、ズシーンと巨人はどこかに去っていった。 【座布団一枚獲得!総座布団数4】 「ひい〜、けったいな奴がいるもんだな〜」  途中で気づいたのか、妖精キセガワが決まり悪そうにパタパタやっていた。  その後、適当な宿を見つけた二人は、翌日に備えて早めに就寝した。明朝早く、次の目的地に向かって町を出た。 「さあ、オーツキ村という所まで行くわ。日が暮れるまでには着けると思うわ」  だが、道は山道。不慣れな与太郎の足ではなかなか思う

          【落語小説】あやかし妖喜利物語 第9席 幽霊の辻

          【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第九話 大磯

          大磯 JR大磯駅を越えると、あとは小田原までほぼ直線である。  相模湾を左手に見ながら、海岸線沿いを快調に飛ばしていく。 「海風が気持ちいいわ」 「ちょっと寒いけどね」  今は冬であるが、火照った体にはちょうどいい。  天気も良好。  このまま何事もなく、小田原まで到着できると思う二人であった。  だが。 「ねえ、タマ。なんか雲行きが妖しくない?」 「本当ね。雪が降る予定なんて、あったかしら?」  東海道の天候は、コンピュータで完全に管理されている。  ゲレンデの人工雪が

          【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第九話 大磯

          希望の街のおまじない屋 第九話

          心配事 ミミルがレインボウ・ベーカリーに転がり込んできてから、もう何度もお日様が昇り、何度も沈みました。  この間、いつも毎朝焼き立てのパンの香りで、幸せに目を覚ましました。トモリさんの作るおいしいパンをお腹いっぱい食べられて、温かいミルクが飲めました。  ママが戦争で亡くなって、家を焼け出されて、ボロボロの格好でトイデル大通りをふらふら彷徨っていたあのときとは、信じられないくらいに大違いでした。  だいじょうぶ、だいじょうぶ。  口の中でおまじないの言葉を呟きながら、

          希望の街のおまじない屋 第九話

          【落語小説】あやかし妖喜利物語 第8席 あたま山

          あたま山「お、面白れーじゃねえか。お前みたいな面白い奴に会えて、嬉しいぜ。コテッ」  最後にそう言い残すと、謎の行き倒れは力尽き、それ切り動かなくなった。 【座布団一枚獲得!総座布団数3】 「何だ、本当に死んじまったのか?俺じゃなくて良かった」 「何が俺じゃなくて良かったよ。自分が生きているか死んでいるかの区別もつかないの?」 「あっちの世界じゃ、長年生きた心地がしなかったからなあ」  無理もない。幸せを感じたことがなければ、生の充実感は得られないのだ。  それはそう

          【落語小説】あやかし妖喜利物語 第8席 あたま山

          【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第八話 平塚

          平塚 JR茅ヶ崎駅を越えて、相模川を渡れば、そこは平塚の本陣だ。 「そろそろお菊塚が見えてくるわよ!」と、ノー天気なミケコ。 「どうして東海道って、こんなにオカルトスポットが多いのよ〜」と、霊感の強いタマコは、旅に出たことを少し後悔した。  が、先に立たずである。  旅を途中で切り上げるのも嫌なので、このまま京都まで行くしかない。  お菊塚とは、ご存知怪談『番長皿屋敷』の主人公、お菊さんの墓と伝えられるものである。  ご存知でない方のために、簡単に説明しておく。  お菊は

          【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第八話 平塚

          希望の街のおまじない屋 第八話

          絵描きのおまじない② その日の夜遅くのこと。ミミルがトイレに行こうと、パタパタとスリッパの音を鳴らして一階に降りて来ると、まだ明かりがついていました。  パン種をこねる調理台の前で、トモリさんがうーんと腕組みをしています。 「トモリさん、まだ起きてらっしゃるの?」 「ああ、うん。もう寝るよ」  とトモリさんは腕組みをしたまま、上の空で返事をしました。  ですが、ミミルがトイレから出てきた後も、トモリさんはまだ同じ格好のままでした。 「寝なさるんじゃなかった?」 「ああ、う

          希望の街のおまじない屋 第八話

          【落語小説】あやかし妖喜利物語 第7席 粗忽長屋

          粗忽長屋「くっ、不覚。お主の勝ちじゃ」 【座布団一枚獲得!総座布団数2】 「だあ〜、漏れる〜!」  情け無い与太郎は、死神に連れられてはばかりに行った。 「やったね。いいセンスしてたわよ」 「あ〜、死ぬかと思った」  一件落着したところで、ぐっすり眠った。翌朝、目が覚めてみると枕元に死神が座っていたのにはギョッとしたが。  与太郎とキセガワの二人は再び旅を続け、昼前にはちょっとした町に到着した。 「か〜、やっぱり街中はいいね〜」  都会にいたってコンビニぐらいしか用

          【落語小説】あやかし妖喜利物語 第7席 粗忽長屋

          【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第七話 藤沢

          藤沢 戸塚宿を出て、しばらくなだらかな坂を登っていく。  それがJR藤沢駅近くからは、下り坂。  道場坂《どうじょうざか》と呼ばれるところだ。  気持ちよく滑り降りていく。  藤沢の本陣を過ぎると、源義経首洗い井戸。 「何で昔の人って、すぐに首を洗いたがるのよーっ」  と、霊感の強いタマコは早くこの場を離れたい。  スキーのエンジンを吹かして先に行く。  お化け屋敷のときのようなことは、二度とごめんである。  もっとも、ここにはアトラクションは用意されていない。  ただの

          【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第七話 藤沢