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【落語小説】あやかし妖喜利物語 第9席 幽霊の辻

幽霊の辻

「うむ、拙者の負けでごんす」
 ズシーン、ズシーンと巨人はどこかに去っていった。

【座布団一枚獲得!総座布団数4】

「ひい〜、けったいな奴がいるもんだな〜」
 途中で気づいたのか、妖精キセガワが決まり悪そうにパタパタやっていた。

 その後、適当な宿を見つけた二人は、翌日に備えて早めに就寝した。明朝早く、次の目的地に向かって町を出た。

「さあ、オーツキ村という所まで行くわ。日が暮れるまでには着けると思うわ」

 だが、道は山道。不慣れな与太郎の足ではなかなか思うように進まない。すぐにバテて休憩を挟む。

「も〜、しっかりしなさい」
「俺は都会育ちなんだよぉ」
 全然都会人に見えないくせに、変なところに江戸っ子のプライドがある与太郎である。まだ山を下りぬまま、早夕方に差し掛かった。

「うう〜、ここで野宿は避けたいわ。あ、あそこの茶店で聞いてみましょう」
 峠の茶屋で道を尋ねるとお婆さんが出てきた。

「オーツキ村ならこの道を真っ直ぐですだ」
「良かった〜」
「幽霊の辻という所を越えたらすぐそこですだよ」

 不吉な名前にドキンとする与太郎。
「え、ゆ、幽霊の辻!?幽霊でも出るのか?」

 ところがお婆さんはさっさと奥に入り、店じまいしてしまった。

「ほら、とっとと歩く!暗くなったら本当に幽霊が出るわよ」
「ひぃ〜、待ってくれよぉ〜」
 先に行くキセガワの後を追う。幽霊は怖いが、こんなところに取り残されるのは勘弁願いたい。

 だが山を下りる頃には日もとっぷりと暮れ、そのうちに不気味な感じのする四ツ辻に出た。

「ここか?さっきばーさんが言ってた、幽霊の辻ってのは」
「う〜ん、雰囲気がいかにもって感じよね」

 キセガワも流石に怖さを感じているようだった。
 そのときである。一陣のつむじ風が舞って、妖しい人影が二人の前に立ちはだかった!

「ウラメシヤ〜、ドロドロロン」
「ギャー!で、出た、出たあっ!」
「落ち着いて!こいつ幽霊ではないわ。相手の姿をよく見て!」
 勇気を振り絞り、言われた通りにする与太郎。

「な、な〜んだ、脅かすない。白装束に、三角頭巾。ちゃんと足もなくて、って、幽霊そのものじゃねえか!!」
 顔はフランス人の二枚目俳優に似てなくもないが。

「いいえ、こいつは、Dの手下よ!」
「何だって!?」
「こいつは、妖喜利六将軍の一人、コユーレイ!」
「妖喜利六将軍?そういやそんなの聞いたな」
「妖喜利六将軍とは、Dの手下の6人の妖喜利マスターのことよ」

「あらあらん、花魁のお嬢さん。この私をご存知のようだね、ドロドロロン」
 コユーレイが喋った。

「大人しく座布団を置いていくドロン。さもなくば容赦はしないドロン」
「くっ、こんな強敵が現れるなんて!」
 妖喜利バトルが始まった。

【妖喜利バトル】
 キセガワよ。いきなり強敵が現れたわね。準備はいい?生半可な答えでは座布団を取られるわよ。読者のみんなも良かったらコメント欄を使って楽しんでみてね。

(お題)
 皆さん幽霊になって「ウラメシヤ〜」と誰かの元に出てください。私が「出たー!」と言いますから、さらに一言続けてもらえるかしら?

(与太郎の回答)
「ウラメシヤ〜」
「出たー!」
「家をリフォームしてくれるってここですか?二階建てにしたいんです。階段(怪談)のある家に住みたいもので」

 …勝てるかしらね。

※幽霊の辻…桂枝雀師匠の演目。ユウレンと読む。
※オーツキ村…小遊三師匠の故郷は山梨県大月市。

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