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【落語小説】あやかし妖喜利物語 第四席 東の旅

東の旅

「どういうことだ、俺になんかやらせようってのか?」
「話が途中になっちゃったけど、今ラクゴ国では大変なことが起きているの。Dという謎の妖怪をボスとする一味が、妖喜利バトルで座布団を集めまくっているのよ」

「Dって何だ?」
「誰もその正体を見たものはいない、謎の妖怪じゃよ」
 と、この質問にはエンチョが答えた。キセガワが説明を続ける。

「Dの目的は座布団を集めて、永世名誉大妖怪になること。そうすれば、妖喜利バトルをやらなくても、相手の座布団を自由に取ったりあげたりできるようになるのよ」
「まるでどこかの司会者みたいだな」

「だから必ず阻止しなくてはいけない。Dの住処はここから東に行ったところにある、エードという場所よ。そこまで行ってDを倒す、つまりDと妖喜利バトルをやって勝たなきゃいけない。でもその前に妖喜利六将軍というDの手下とも戦わなくてはいけないでしょうね。危険な仕事だけど、誰かがそれをやらなきゃいけないのよ」

「ふうん、じゃあ爺さんがやればいいじゃないか。師匠なんだろ」
「そうしたいところじゃが、私もいささか歳を取りすぎた。そこで代わりにお主に行ってほしいのじゃ。頼む、Dを倒してくれ」

「そうは言っても、爺さん、俺は落語家でもなんでもないぜ」
「私に弟子入りを許す。お主は今日から妖喜利バトラーじゃ。これからは三竜亭与太郎と名乗るがよい」

「さ、三流だって?大丈夫か?」
「三竜亭よ。喜びなさい。妖喜利バトラーの中でも最高峰の亭号よ」

「Dと戦うためには座布団100枚必要じゃ。エードを目指して旅をしながら座布団を集めなさい。妖喜利バトルに勝てば通常一枚の座布団が手に入る。いい勝ち方をすれば、二枚、三枚と手に入ることもある。少しずつ集めて100枚貯まったら、Dに挑戦するのじゃ」

 その後、与太郎はエンチョに一通り妖喜利のいろはを仕込まれた。

【妖喜利バトル】
 キセガワよ。ここで与太郎の修行風景をちょっと覗いてみるわ。良かったらみんなもコメント欄で参加してみてね。妖喜利バトルっていうのは、いわゆる大喜利のこと。手始めに一問行ってみる?

(お題)
 こんな異世界は嫌だ!五文字で答えてみてね。

(与太郎の回答)
 女神母親似
 …最初としては、まあまあってとこね。

「さ、行くわよ。ぐずぐずしていられないわ」
 花魁キセガワが与太郎の手を引いて家を出ていく。
「師匠、行って参りま〜す」
「達者でな」
 こうして山田与太郎改め、三竜亭与太郎の座布団集めの旅が始まったのである。

 ※東の旅…お伊勢参りの珍道中を描いた上方落語の演目。
 ※D…???

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