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【エンタメ小説】東海道五拾三次OLスキー珍道中 第六話 戸塚
戸塚
JR戸塚駅を越した辺りが、戸塚の本陣である。
ここ戸塚の宿には、いにしえの本陣になぞらえた、温泉旅館が建てられていた。
その本陣にチェックイン。
まずは温泉に浸かって、ゆっくりと一日の疲れを癒す。
「あー、極楽、極楽。生き返るわー」
「いろいろあったわねー」
体がきれいになったら、食事である。
横浜といえば、中華街。
旅館の夕食も、中華バイキングが用意されていた。
「うふふ、バイキングを見ると、燃えてくるわ」
「食べ物が手に入りにくかった原始時代の名残りかしらね?」
「そうじゃなくて、きっとOLの習性よ」
「違いない」
ずらりと並んだ中華を、片っ端から皿に乗せて回る。
「小籠包に餃子、焼売」
「青椒肉絲に、回鍋肉」
「フカヒレ、干し鮑、ツバメの巣」
「ビールにビールに、ビール!」
横浜のソウルフード、サンマーメンもいただく。
サンマーメンとは、豚肉、にんじん、白菜、キクラゲ、ニラ、もやしなどを炒めた具をあんかけにして上に乗せた、神奈川のご当地ラーメンだ。
シャキシャキの野菜と、あんかけのとろみの組み合わせがたまらない。
「くう〜、中華を食べると、元気が出るわ〜!」
「くう〜、ビールは中華に合う〜!」
食事の後は、部屋に戻って、女子同士のトークに花を咲かせていたが、旅の疲れもあって、いつもより早めに就寝した。
と、その深夜のことである。
タマコは、ふと怪しげな気配を感じて、目を覚ました。
「おかしいわね。何か感じるわ」
寝る前にビールを飲みすぎたのだろう。
トイレに行くことに。
隣では、ミケコがスヤスヤ眠っている。
起こさないように、そーっと部屋を出た。
幸い、戻ってくるまで、何もなかったのだが、妙な感じは消えない。
「不思議ね。お化けとは違うんだけど、何かに見られているような気がする」
翌朝、ミケコにそのことを話すと、ミケコは、
「まあ、男の視線を浴びるのは、いつものことだけどね」
と言って、取り合わなかった。
だが、やはりタマコの感は正しかったのだ。
二人が出発すると、黒い影のようなものが、音もなく後をついていったのである……!
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