幸伏 線寿(こうぶし せんじ)

小説書き。 500字小説毎日投稿継続中! 相互大歓迎!

幸伏 線寿(こうぶし せんじ)

小説書き。 500字小説毎日投稿継続中! 相互大歓迎!

記事一覧

固定された記事

そこに写る宝物

『先生の宝物は、この箱の中にあります』 朝、先生はそう言って、綺麗に包装された箱を教室に置いた。 それも今日は、5限の時間に“自分の宝物”を発表するという授業が…

壊れゆく静寂

深夜。 また父が大声を上げている。 毎日毎日、懲りないものだ。 私は薄暗い自室のベッドから天井を見つめていた。 壁越しに聞こえる怒号と物が砕ける音。 母の苦しそう…

電話越しの声

「もしもし、どなた?」 見慣れない番号を横目に、電話を取った。 『久しぶり、ばあちゃん』 ああ、懐かしい。孫の声だ。 「あら、珍しいねぇ。どうしたの?」 『元気…

籠の森 三塊

俺たちは大男に追われ、必死に走り続けていた。 『うわぁぁ!』 前を走る友人の声だ。 「どうした!? 何があった!?」 俺が叫ぶと、友人の声は遠ざかっていき、やが…

500字小説について

とりあえず一週間、毎日書き切ることができました。 ん? なんですか? 『一日たったの500字じゃないか』 って? そうですよ。 “わずか” 500字ですよ。 もともと…

籠の森 一塊

俺は2人の友人と肝試しに来ていた。 “籠の森”と呼ばれるこの場所は、多数の行方不明者が発生している恐ろしい場所だ。 懐中電灯を照らさなければ周囲が見えないほどの暗…

最後の一枚

祖父の古い本棚の奥から、一枚の写真を見つけた。 黒と白のモノクロ画の中で、2人の青年が軍服を着ている。 彼らは肩を組んで笑顔を浮かべていた。 私はその写真を持っ…

朝自棄

『きょう未明、○○州△▽のアパートで大規模な火災が発生し、付近の住民から911通報がありました。火は約4時間ほどで消し止められましたが、焼け跡から6人の遺体が発見さ…

人生

俺は生粋のゲーマーだ。 365日、寝ているとき以外は常にマウスやコントローラーを握るという生活を、もう十何年と続けている。 今までプレイしてきたゲームの数は、何千…

故日、焦がれ 前編

俺には5年前から付き合っている彼女がいる。 出会いは高校の部活動。 バスケ部に所属した俺は、1つ上の先輩でマネージャーをしていた彼女にだんだんと惹かれていったのだ…

夢見の夢

人はなぜ眠る時に夢をみるのか。 諸説あるが、一説には普段の生活に起きた出来事など、脳のあらゆる情報を整理するためとされている。 しかし、医学が発達した現在でもよ…

ここはどこ?

体の節々が痛む。 目を覚ますと、視界は真っ暗で何も見えない。 俺は何をしていたんだっけ。それまでのことを全く思い出せない。 音もなければ臭いもない。頼れるのは触…

暑さと冷房と間取りに関する慨嘆

日本、暑すぎやしませんか。 本書執筆当日(2023年7月11日)、 最高気温35℃、最低気温25℃、湿度61~89%。 はい、異常です。異常による異常。超異常気象です。 まだ7月もはじ…

衰え

ある日、買い物に行きたかった私はふと、店まで走り、走って帰ろうと思いたった。休みの日はつい、ぐうたらしてしまう。普段、運動をしないのに、その日は自分でも分からな…

わくちーん

おい! 副反応で39.6も熱出るって聞いてねぇよ! 1、2回目全然なんともなかったし! 2日安静にしても熱下がりきらねぇんだけど! ずっと頭痛続いてんねん! 「わくちー…

デストロイドエアコン

昨今の暑さは異常だと思う。 こんな時はエアコンなしではやっていけないなぁと、エアコンの下で一筆とっている。 この暑さの中、隣の兄の部屋のエアコンが壊れたという噂…

そこに写る宝物

そこに写る宝物

『先生の宝物は、この箱の中にあります』

朝、先生はそう言って、綺麗に包装された箱を教室に置いた。
それも今日は、5限の時間に“自分の宝物”を発表するという授業があるからだった。

『その時間までは、決して中を覗いてはいけない』

そう忠告されたが、こんな目に見える形で用意されては、嫌でも期待は高まってしまう。

普段、友達とは様々な会話をするものだが、今日限りは一日中、箱の話題で持ち切り

もっとみる
壊れゆく静寂

壊れゆく静寂

深夜。
また父が大声を上げている。

毎日毎日、懲りないものだ。

私は薄暗い自室のベッドから天井を見つめていた。

壁越しに聞こえる怒号と物が砕ける音。
母の苦しそうな泣き声。
そして、急な沈黙。

これが日常だ。

もう何年続いているだろう。
いつしか、数えるのはやめていた。

小さな頃は恐怖で毎晩、震えていた。
だけど、今はもう…何も感じない。

ただ、静かになるのを待つだけだ。

朝になれ

もっとみる
電話越しの声

電話越しの声

「もしもし、どなた?」

見慣れない番号を横目に、電話を取った。

『久しぶり、ばあちゃん』

ああ、懐かしい。孫の声だ。

「あら、珍しいねぇ。どうしたの?」

『元気そうで、良かった…』

孫の言葉に元気がなくなった。

「どうしたの? 何かあった?」

『うん、ちょっと大変で…』

声が震えている。

『車で人を撥ねて、慰謝料で400万が必要なんだ…』

「そんな…大丈夫なの?」

『ごめん

もっとみる
籠の森 三塊

籠の森 三塊

俺たちは大男に追われ、必死に走り続けていた。

『うわぁぁ!』

前を走る友人の声だ。

「どうした!? 何があった!?」

俺が叫ぶと、友人の声は遠ざかっていき、やがて消えた。
声のもとに近づいた俺は、足を踏み外しそうになった。

「おい…そんなことって…」

足元を照らすと、そこは崖になっていた。
相当高いのか、下は闇に包まれている。

「嘘だろ…」

ブゥゥゥン!

背後から再び、チェンソー

もっとみる
500字小説について

500字小説について

とりあえず一週間、毎日書き切ることができました。

ん? なんですか?

『一日たったの500字じゃないか』 って?

そうですよ。 “わずか” 500字ですよ。

もともと、500字小説を始めたのは小説の練習とネタの供養のためです。

はい、わかりにくいですよね。

私は普段、別のWeb小説サイトにて、ライトノべルを連載している者です。
つい3か月前に連載を始めましたが、まだまだ界隈では赤ちゃん

もっとみる
籠の森 一塊

籠の森 一塊

俺は2人の友人と肝試しに来ていた。
“籠の森”と呼ばれるこの場所は、多数の行方不明者が発生している恐ろしい場所だ。

懐中電灯を照らさなければ周囲が見えないほどの暗闇に、怖気づきながらも、俺らは肩を寄せ合って森へと入った。

『あれ?』

すぐ隣を歩いていた友人が声を漏らした。

「どうした?」

『あいつはどこ行った? もしかして、はぐれた?』

確かに、俺らとは少し離れて歩いていた友人1人の姿

もっとみる
最後の一枚

最後の一枚

祖父の古い本棚の奥から、一枚の写真を見つけた。

黒と白のモノクロ画の中で、2人の青年が軍服を着ている。
彼らは肩を組んで笑顔を浮かべていた。

私はその写真を持って祖父のもとへ行った。

「おじいちゃん、この人達は誰?」

祖父は、しばらく写真を見つめていたが、やがて重い口を開いた。

『これは、若い頃の私とその時の親友だ。私たちは、陸軍部隊での戦友だった…』

祖父は思い出すように、ゆっくりと

もっとみる
朝自棄

朝自棄

『きょう未明、○○州△▽のアパートで大規模な火災が発生し、付近の住民から911通報がありました。火は約4時間ほどで消し止められましたが、焼け跡から6人の遺体が発見されました。警察と消防は――』

見間違いかと思った。いや、そう思いたかった。
朝のニュースで流れてきたこの映像、……俺の家だ。

妻は……娘は……
嫌な胸騒ぎがして、慌ただしく携帯を手に取った。

『お掛けになった番号は――』

繋がら

もっとみる
人生

人生

俺は生粋のゲーマーだ。

365日、寝ているとき以外は常にマウスやコントローラーを握るという生活を、もう十何年と続けている。

今までプレイしてきたゲームの数は、何千?何万?だろうか。
そんなのもう、数えていない。
世間的に有名な作品はもちろん、ほとんど知られていないようなマイナーな作品まですべてやりきった。

他人は俺を奇異な目で見るが、そんなことはもう気にならない。
ゲームへの情熱は、俺の生き

もっとみる
故日、焦がれ 前編

故日、焦がれ 前編

俺には5年前から付き合っている彼女がいる。

出会いは高校の部活動。
バスケ部に所属した俺は、1つ上の先輩でマネージャーをしていた彼女にだんだんと惹かれていったのだ。

当時、何気なしにバスケ部に所属した俺は、部活動への意欲などなかった。
練習も適当にやっていたし、さぼるような日もあった。

そんな俺が変わったのは、ある練習試合でのこと。

日々の練習を疎かにしていた俺は、試合中足を捻挫してしまっ

もっとみる
夢見の夢

夢見の夢

人はなぜ眠る時に夢をみるのか。

諸説あるが、一説には普段の生活に起きた出来事など、脳のあらゆる情報を整理するためとされている。

しかし、医学が発達した現在でもよく分かっていないというのが実状である。

睡眠は眠りが浅い「レム睡眠」と、眠りが深い「ノンレム睡眠」という周期に分かれている。
人が夢を記憶しているのは「レム睡眠」のときだけで、「ノンレム睡眠」のときの夢は記憶に残らないらしい。

人以

もっとみる
ここはどこ?

ここはどこ?

体の節々が痛む。
目を覚ますと、視界は真っ暗で何も見えない。

俺は何をしていたんだっけ。それまでのことを全く思い出せない。

音もなければ臭いもない。頼れるのは触覚だけだ。
手を伸ばして辺りを探るも、手の届く範囲には何もないことがわかった。

床は冷たく硬い。
コンクリートでできているのだろう。

地面を這いながら少しずつ周囲の感覚を確かめてゆく。
すると、手が床ではない何かに触れた。

(やわ

もっとみる
暑さと冷房と間取りに関する慨嘆

暑さと冷房と間取りに関する慨嘆

日本、暑すぎやしませんか。
本書執筆当日(2023年7月11日)、
最高気温35℃、最低気温25℃、湿度61~89%。
はい、異常です。異常による異常。超異常気象です。
まだ7月もはじまって2週目真ん中辺りというところ。まだ8月の本気が控えてるって…。
誰か嘘だと言ってください。
冷たい水をください。できたら愛してください。
…………

今は「梅雨」と呼ばれる時期です。読み方は「つゆ」でも「ばいう

もっとみる
衰え

衰え

ある日、買い物に行きたかった私はふと、店まで走り、走って帰ろうと思いたった。休みの日はつい、ぐうたらしてしまう。普段、運動をしないのに、その日は自分でも分からないくらいにやる気があった。その時既に、暑さにやられていたのだろう。私は急いで準備を進めた。まさに今から走る人です。というような走りやすい格好をして、外に出た。わかっていたが、暑い。家を出る前に確認した気温は35度。やめとけばよかったなと思わ

もっとみる
わくちーん

わくちーん

おい!
副反応で39.6も熱出るって聞いてねぇよ!
1、2回目全然なんともなかったし!
2日安静にしても熱下がりきらねぇんだけど!
ずっと頭痛続いてんねん!

「わくちーん」なんて可愛い書き方したけど
お前のこと許してねぇからな!

デストロイドエアコン

デストロイドエアコン

昨今の暑さは異常だと思う。
こんな時はエアコンなしではやっていけないなぁと、エアコンの下で一筆とっている。

この暑さの中、隣の兄の部屋のエアコンが壊れたという噂を聞いた。
エアコン使えないなんて(・ー・) オワッタナ
( ^ω^ )ドンマイ( ¯∀¯ )/
自分の部屋ではいくらでも使えるという優越感に浸った。

しかし、私は兄の行動力を見くびっていた。
私のバイト先はスーパーの他に電化製品など

もっとみる