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故日、焦がれ 前編

俺には5年前から付き合っている彼女がいる。

出会いは高校の部活動。
バスケ部に所属した俺は、1つ上の先輩でマネージャーをしていた彼女にだんだんと惹かれていったのだ。

当時、何気なしにバスケ部に所属した俺は、部活動への意欲などなかった。
練習も適当にやっていたし、さぼるような日もあった。


そんな俺が変わったのは、ある練習試合でのこと。

日々の練習を疎かにしていた俺は、試合中足を捻挫してしまった。
動けない俺を必死に看病してくれた彼女だが、一切の弁解を許さず俺を𠮟りつけた。

選手でもない彼女が本気で向き合っているというに……

人生を怠惰に過ごしてきた俺は、彼女の言葉に深く反省し自分を顧みることができた。


それからの俺は日々を、部活を、そして彼女を大切に思いながら生きた。

部活は個人で朝練から行い、放課後は誰よりも遅くまで残るという生活が続いた。

彼女はたまに、遅くまで残っている俺を見届けてくれるようになった。

とある日、片付けを手伝ってくれている彼女が唐突に言った。

『最近頑張ってるね』

こちらに向けてくる屈託のない満面の笑顔。
つい俺は目を逸らしてしまった。

2人きりの体育館での一言で、俺は明確に彼女への恋に気づいた。

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