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籠の森 三塊

俺たちは大男に追われ、必死に走り続けていた。

『うわぁぁ!』

前を走る友人の声だ。

「どうした!? 何があった!?」

俺が叫ぶと、友人の声は遠ざかっていき、やがて消えた。
声のもとに近づいた俺は、足を踏み外しそうになった。

「おい…そんなことって…」

足元を照らすと、そこは崖になっていた。
相当高いのか、下は闇に包まれている。

「嘘だろ…」


ブゥゥゥン!

背後から再び、チェンソーの音が聞こえた。

懐中電灯を消した俺は、闇に目を凝らしながら、音を立てずにその場を去った。


しばらく慎重に歩いていると、突然、前から眩しい光が差した。
暗闇に目が慣れていた俺は、咄嗟に木の陰へ身を隠す。

バンッ。扉を閉めるような音。
光は、車のヘッドライトだ。

『これが1つ目か』

車を降りた細身の男が、光の前で重そうに何かを運んでいる。

木の幹? いや違う…俺は声が漏れそうになった。

あれは、最初に姿を消した友人だ。
友人はぐったりと動かない。

俺は細身の男の前へ飛び出そうとした、その時――

ブゥゥゥン!

目の前から耳障りな音が響くと、白いマスクの大男が、崖から落ちたはずの友人を肩に担いで立っていた。

「なっ…」

大男は俺に向かって、チェーンソーを振り下ろした。



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