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最後の一枚

祖父の古い本棚の奥から、一枚の写真を見つけた。

黒と白のモノクロ画の中で、2人の青年が軍服を着ている。
彼らは肩を組んで笑顔を浮かべていた。

私はその写真を持って祖父のもとへ行った。

「おじいちゃん、この人達は誰?」

祖父は、しばらく写真を見つめていたが、やがて重い口を開いた。

『これは、若い頃の私とその時の親友だ。私たちは、陸軍部隊での戦友だった…』

祖父は思い出すように、ゆっくりと語り始めた。

『あいつは、いつも明るくて仲間想いの奴だった。厳しい戦場でも、彼に励まされた仲間は多かった。私も、彼と一緒だと勇気が湧いたものだ』

そう言って小さく微笑んだが、その笑顔はすぐに消えた。

『でも、ある日、あいつは戦死してしまった。私の知らないところで…。今でも、あの日が忘れられない』

その眼から、一筋の涙が零れた。

『これが、あいつとの最後の写真になってしまった。もし、あの時助けることができていれば…』

私は、祖父の手を握りしめた。

「きっと彼も、おじいちゃんと親友であることを誇りに思っていたはずだよ。だって、ほら」

私は写真を指さした。

2人の笑顔は、より輝いて見えた。

2人の友情は今でも色褪せていない。
そう感じるのだった。


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