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『情報哲学入門』のための練習問題 no. 3
(3月30日午後3時より、大阪は梅田のジュンク堂で、『情報哲学入門』の刊行イベントがあります。メディアアーティストの藤幡正樹さん、情報哲学者の原島大輔さんとの鼎談です。オンラインでも視聴可能です。
詳しくは
https://online.maruzenjunkudo.co.jp/products/j70065-240330 をご覧ください。)
ロイターのニュースサイトで「シンガポールが「東南
シンガポール−ボストン 雑記帳(2)
ハーバード・フィルム・アーカイブ(HFA)を訪ねてみた。
土地土地にある映画館に訪ねるのは映画研究者だからこその愉しみであることはすでに記したとおりだ。なかには、やれ名の知れたあの映画祭に出かけたのだの、この貴重な上映イベントに参加できたのだの、とことさらに語る人たちもいるが、そういう場に招かれたこともないので羨ましいとは思いつつも、そういう報告はあまり好きではないので、ここでのものはそううい
『情報哲学入門』のための練習問題 no.2
また映画の話で恐縮だが、同時代の諸状況を多かれ少なかれ受けとめ思うところをぶつけているのが、表現文化の面白いところだ。じっさい、前回の練習問題もそうだったが、昨今のSF映画は、こんにちのデジタル技術や人工知能の行方がどうなるかについて教えられるところが少なくない。
アメリカまでの飛行機のなかで、見逃していた『ザ・クリエーター/創造者』を見ることができた。
SF映画は個人的にもけっこう好
『情報哲学入門』のための練習問題 no.1
今年(2023年)の初夏(といっても、シンガポールはいつも夏みたいなのではあるが)、少しでも現地のいろんな人と触れあう機会を増やそうと考え、ChatGPTに相談してみた。「meetup」の一つに参加してみるのはどうかと応えてきたので、オンラインで調べてとりあえず日本語グループに参加することにした。
さっそく地図アプリでガイドしてもらって、土曜日に開催されているというショッピングモールのフードコ
〈映画研究ユーザーズガイド〉 第11回 ストーリーテリング(3)
第11回 ストーリーテリングの映画的技法
では、ガレット・スチュアートによる、映画のストーリーテリングについてスケッチしておこう。
以下、多少なりともぬるい書きっぷりになっているのは、ひとえに筆者の腰が引けているからにほかならない。けっこう強者なのだ。
まず、スチュアートの仕事はかなり広範囲に及ぶ。
もともとは年季の入った文学研究者である。その文学論は、以下でみていくことになる映画
〈シンガポール雑記帳〉その5
前置きが長くなってしまった。
自宅近くのシネコンで、では何を見たのかというと、『Home for Rent』(ちょっとタイ語が解せないので、英語表記にしておくことをご容赦ねがいたい。ちなみに、筆者が観た際も英語表記で劇場にはかけられていた)である。
監督は、2011年に『Laddar Land』でもって、タイの商業映画の興行成績を塗り変えたという鳴り物入りのSophon Sakdaphisi
〈映画研究ユーザーズガイド〉 第10回 ストーリーテリング(2)
第8回 ストーリーテリングとエピステーメ
次に、バックランドと近い論方向であるものの、微妙に異なる立論を組み立てていたトーマス・エルセッサーの仕事をみておこう。
長いキャリアにおいてコンスタントに次々と研究者共同体を驚かせる仕事を発表してきた(2019年に亡くなられた)エルセッサーは、先に触れたバックランドが編んだ2009年の論集『Puzzle Film』に巻頭論文「The Mind
〈映画研究ユーザーズガイド〉 第9回 ストーリーテリング(1)
第9回 ストーリー・テリングとデジタル・テクノロジー
ストーリーテリングについてとりあげよう。
その研究は欧米でただいまフルスロットルで爆進中だ。
ここまで繰り返し述べてきたように、映画研究においては、技術経験論や情動研究の流行が長らく(25年強のあいだ)続いてきたのだがが、行き詰まりを感じはじめた研究者は少なくなく、映画のクリエティブな面、アートな面に光をあてなおす作業が改めて注目