近代体操(批評のための運動体)

批評のための明るく陽気な運動体。2021年4月17日始動。

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「聖なるもの」をめぐって——読書会のお知らせ【近代体操】

前置き2022年の11月、私たちは批評誌『近代体操』を創刊しました。創刊号のテーマは「空間/場所」。資本によって意味を奪われ平板になった空間に対してどのように抵抗して…

【第6回】聖性論読書会レポート:ジャン=リュック・マリオン『存在なき神』、大竹弘二『公開性の根源』

このレポートは、2023年7月に行われた近代体操「聖なるもの」読書会第6回に関するレポートである。本読書会については、以下のnote記事に詳細や参加方法が記されているので…

【第5回】聖性論読書会レポート:安丸良夫『神々の明治維新』、ジェンキンズ『コンヴァージェンス・カルチャー』

 近代体操では、「聖なるもの」という概念をめぐって、読書会を開催しています。哲学・文学・宗教・信仰・言語・現代の消費文化など、さまざまな視点から、このテーマにつ…

【第4回】聖性論読書会レポート:吉本隆明『初期歌謡論』、折口信夫「⼤嘗祭の本義」ほか

 本記事は、近代体操による「聖なるもの」をめぐる読書会の模様を伝えるレポートである。本読書会の概要および過去のレポートは以下のリンクからどうぞ。(途中参加もお待…

『近代体操』創刊号 内容紹介まとめ&告知(文学フリマ東京36)

私たち批評のための運動体「近代体操」は、一冊の雑誌をつくるにあたって大ざっぱなテーマを決め、そのテーマに関する定期読書会や不定期のイベントを一年間行ってから特集…

【第3回】聖性論読書会レポート:モリス・バーマン『デカルトからベイトソンへ』、ジャック・デリダ『信と知』

 昨年11月に『近代体操』創刊号「いま、なぜ空間は退屈か」を刊行し、今年2月から新たに第2号に向けて「聖なるもの」をテーマとしたセッションⅡに取りかかり、「聖なるも…

【第2回】聖性論読書会レポート:デュルケーム『宗教生活の原初形態』、アサド『世俗の形成』

 『近代体操』第2号では、天皇をめぐる宗教性および信仰の問題、推しをめぐる現代消費文化の問題、言語におけるポエジーの問題、これらを横断的に「聖なるもの」という概…

【第1回】聖性論読書会レポート:大塚英志『少女たちの「かわいい」天皇』、宇佐見りん『推し、燃ゆ』

2月18日から『近代体操』第2号に向けた読書会がスタートした。テーマは「聖なるもの」。読書会に関する詳しいことは下の記事を見ていただきたい。本記事は、第1回読書会の…

イベントレポート:「『近代体操』創刊号「いま、なぜ空間は退屈か」刊行記念トークイベント:「批評/空間のほぐしかた(黒嵜想…

2023年1月17日、京都の出町座で『近代体操』の創刊記念イベント「批評/空間のほぐしかた」が行われた。本イベントはCAVABOOKSの協力のもと、批評家の黒嵜想・福尾匠両氏を…

『近代体操』創刊号 内容紹介まとめ&告知

私たち批評のための運動体「近代体操」は、一冊の雑誌をつくるにあたって大ざっぱなテーマを決め、そのテーマに関する定期読書会や不定期のイベントを一年間行ってから特集…

【第7回】空間/場所読書会 報告記事

「近代体操」では「空間/場所」をテーマに読書会を行なっています。成果として雑誌を制作することが予定されていますが、その過程自体で読者を巻き込み、私たちのインプッ…

【第6回】空間/場所読書会 報告記事

 「近代体操」では「空間/場所」をテーマに読書会を行なっています。成果として雑誌を制作することが予定されていますが、その過程自体で読者を巻き込み、私たちのインプ…

【第5回】空間/場所読書会 報告記事

課題書の紹介10月23日(土)の読書会では、「空間/場所」のテーマをテクノロジーの問題系へと接続させた。言うまでもなく、現代において空間を考える際、メディアや技術の…

古木獠「法のトポスを旅する」——エッセイ「私と空間/場所」⑤

 暗いひとりの部屋  学部3年のころ、今から5年も前の2016年。後期に入って最初の憲法のゼミでの報告。割り当てられた判例をまとめるもので、戦後まもなくの不敬罪を担当…

左藤青「タンデムの方法論」——エッセイ「私と空間/場所」④

記号と実在当たり前のことだが、看板は単なる木や鉄でできた板ではない。車や電車は鉄のかたまりではないし、ハンマーは木と鉄からなる十字型あるいはT字型の物体ではない…

草乃羊「ゼロ・グラヴィティ」——エッセイ「私と空間/場所」③

* ゼロ・グラヴィティ  地球には重力があるから、私たちは地に足をつけ、仰げば翼を持たない人間には到底飛べないような空が広がっている。肌で触れる大地との近さを、…

「聖なるもの」をめぐって——読書会のお知らせ【近代体操】

「聖なるもの」をめぐって——読書会のお知らせ【近代体操】

前置き2022年の11月、私たちは批評誌『近代体操』を創刊しました。創刊号のテーマは「空間/場所」。資本によって意味を奪われ平板になった空間に対してどのように抵抗してゆくべきか。私たちは1年間の読書会を経た上で創刊号を世に問い、新しい批評の地平を拓くことに挑戦しました。

第2号のテーマは、「聖なるもの」。

「聖なるもの」は、宗教学(宗教社会学/宗教哲学)でも、神学でも、人類学でも、文学でも扱わ

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【第6回】聖性論読書会レポート:ジャン=リュック・マリオン『存在なき神』、大竹弘二『公開性の根源』

【第6回】聖性論読書会レポート:ジャン=リュック・マリオン『存在なき神』、大竹弘二『公開性の根源』

このレポートは、2023年7月に行われた近代体操「聖なるもの」読書会第6回に関するレポートである。本読書会については、以下のnote記事に詳細や参加方法が記されているので、よろしければ参照して欲しい。

今回は、以下のニ冊をテキストとして議論を行った。いつも通り、日付が変わろうかという時間まで白熱したディスカッションが続けられた。ここに掲載するのは、そうした議論の一部である。

◯ジャン=リュック

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【第5回】聖性論読書会レポート:安丸良夫『神々の明治維新』、ジェンキンズ『コンヴァージェンス・カルチャー』

【第5回】聖性論読書会レポート:安丸良夫『神々の明治維新』、ジェンキンズ『コンヴァージェンス・カルチャー』

 近代体操では、「聖なるもの」という概念をめぐって、読書会を開催しています。哲学・文学・宗教・信仰・言語・現代の消費文化など、さまざまな視点から、このテーマについて考えていきます。読書会での議論を通じて、論点を見つけだしていき、最終的に、『近代体操』第二号にまとめていきます。読書会はまだ続きますので、ご興味のある方は以下のリンクからご参加ください。

(※ 読書会概要はこちらのリンクでお読みいただ

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【第4回】聖性論読書会レポート:吉本隆明『初期歌謡論』、折口信夫「⼤嘗祭の本義」ほか

【第4回】聖性論読書会レポート:吉本隆明『初期歌謡論』、折口信夫「⼤嘗祭の本義」ほか

 本記事は、近代体操による「聖なるもの」をめぐる読書会の模様を伝えるレポートである。本読書会の概要および過去のレポートは以下のリンクからどうぞ。(途中参加もお待ちしております。)

 第4回読書会(23.5.13)では、吉本隆明の『初期歌謡論』および折口信夫の論考「⼤嘗祭の本義」「⽔の⼥」「神道に現れた⺠族論理」を扱った。

○吉本隆明『初期歌謡論』(レジュメ担当:武久真士) 本書は、「戦後最大の

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『近代体操』創刊号 内容紹介まとめ&告知(文学フリマ東京36)

『近代体操』創刊号 内容紹介まとめ&告知(文学フリマ東京36)

私たち批評のための運動体「近代体操」は、一冊の雑誌をつくるにあたって大ざっぱなテーマを決め、そのテーマに関する定期読書会や不定期のイベントを一年間行ってから特集テーマを明確化し、雑誌制作に取りかかる、という手順をとっています。
この取り組み全体を「セッション」と呼び、「セッション」を通じて、書き手の間で問題の所在についてのコンセンサスが得られ、そのうえで各自の問題意識からのアプローチが可能となりま

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【第3回】聖性論読書会レポート:モリス・バーマン『デカルトからベイトソンへ』、ジャック・デリダ『信と知』

【第3回】聖性論読書会レポート:モリス・バーマン『デカルトからベイトソンへ』、ジャック・デリダ『信と知』

 昨年11月に『近代体操』創刊号「いま、なぜ空間は退屈か」を刊行し、今年2月から新たに第2号に向けて「聖なるもの」をテーマとしたセッションⅡに取りかかり、「聖なるもの」をめぐっての読書会も開始しました。

 本読書会の概要については下の記事を参照ください。

 また、創刊号についてはこちらを参照ください。5月21日(日)の文学フリマ東京に出店するので、ぜひ足を運んでみてください。出店ブースは、東京

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【第2回】聖性論読書会レポート:デュルケーム『宗教生活の原初形態』、アサド『世俗の形成』

【第2回】聖性論読書会レポート:デュルケーム『宗教生活の原初形態』、アサド『世俗の形成』

 『近代体操』第2号では、天皇をめぐる宗教性および信仰の問題、推しをめぐる現代消費文化の問題、言語におけるポエジーの問題、これらを横断的に「聖なるもの」という概念で取り扱う。
 
 この「聖なるもの」というテーマの下で、2月18日から『近代体操』第2号に向けた読書会がスタートした。読書会の概要については、下記を参照。

本記事は、松田樹による、第2回読書会(23.3.18)の模様を伝えるレポー

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【第1回】聖性論読書会レポート:大塚英志『少女たちの「かわいい」天皇』、宇佐見りん『推し、燃ゆ』

【第1回】聖性論読書会レポート:大塚英志『少女たちの「かわいい」天皇』、宇佐見りん『推し、燃ゆ』

2月18日から『近代体操』第2号に向けた読書会がスタートした。テーマは「聖なるもの」。読書会に関する詳しいことは下の記事を見ていただきたい。本記事は、第1回読書会の模様を伝えるレポートである。

第1回読書会では「天皇」および「推し」の問題に関わる、次の2冊が課題図書となった。

◯大塚英志『少女たちの「かわいい」天皇』
(レジュメ担当:武久真士)サブカルチャー批評や物語論、大学論など多岐にわたる

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イベントレポート:「『近代体操』創刊号「いま、なぜ空間は退屈か」刊行記念トークイベント:「批評/空間のほぐしかた(黒嵜想×福尾匠×左藤青×松田樹)」

イベントレポート:「『近代体操』創刊号「いま、なぜ空間は退屈か」刊行記念トークイベント:「批評/空間のほぐしかた(黒嵜想×福尾匠×左藤青×松田樹)」

2023年1月17日、京都の出町座で『近代体操』の創刊記念イベント「批評/空間のほぐしかた」が行われた。本イベントはCAVABOOKSの協力のもと、批評家の黒嵜想・福尾匠両氏を招き、『近代体操』メンバーである左藤青・松田樹を含めた4人で「空間」あるいは「批評」について議論するというものである。

告知文から、イベントの趣旨を引用しよう。

イベント当日。開始の1時間前に集まった登壇者4人が待機して

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『近代体操』創刊号 内容紹介まとめ&告知

『近代体操』創刊号 内容紹介まとめ&告知

私たち批評のための運動体「近代体操」は、一冊の雑誌をつくるにあたって大ざっぱなテーマを決め、そのテーマに関する定期読書会や不定期のイベントを一年間行ってから特集テーマを明確化し、雑誌制作に取りかかる、という手順をとっています。
この取り組み全体を「セッション」と呼び、「セッション」を通じて、書き手の間で問題の所在についてのコンセンサスが得られ、そのうえで各自の問題意識からのアプローチが可能となりま

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【第7回】空間/場所読書会 報告記事

【第7回】空間/場所読書会 報告記事

「近代体操」では「空間/場所」をテーマに読書会を行なっています。成果として雑誌を制作することが予定されていますが、その過程自体で読者を巻き込み、私たちのインプットの過程自体を外に開こうと考えています。
 本記事は、その読書会第7回(12月18日)のレポートとしての、松田樹と草乃羊による報告のまとめです。今回は〈「移動」「観光」による空間の変容〉をテーマとした。
 ここでは課題本の読解における骨子を

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【第6回】空間/場所読書会 報告記事

【第6回】空間/場所読書会 報告記事

 「近代体操」では「空間/場所」をテーマに読書会を行なっています。成果として雑誌を制作することが予定されていますが、その過程自体で読者を巻き込み、私たちのインプットの過程自体を外に開こうと考えています。

 本記事は、その読書会第6回(11月27日)のレポートとしての、古木獠と安永光希による報告のまとめです。

 ここでは課題本の読解における骨子をまとめるにとどめますが、報告の際には多くの論点が展

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【第5回】空間/場所読書会 報告記事

【第5回】空間/場所読書会 報告記事

課題書の紹介10月23日(土)の読書会では、「空間/場所」のテーマをテクノロジーの問題系へと接続させた。言うまでもなく、現代において空間を考える際、メディアや技術の問題を避けて通ることはできない。近年では、ネット上の仮想空間「メタバース」が次世代のプラットフォームとして注目を浴びはじめ、その存在感は増してきている。極めて現代的な空間とテクノロジーの繋がりを捉えるべく、私たちはインターネット黎明期の

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古木獠「法のトポスを旅する」——エッセイ「私と空間/場所」⑤

古木獠「法のトポスを旅する」——エッセイ「私と空間/場所」⑤

 暗いひとりの部屋

 学部3年のころ、今から5年も前の2016年。後期に入って最初の憲法のゼミでの報告。割り当てられた判例をまとめるもので、戦後まもなくの不敬罪を担当した。教室は、1994年に建てられた棟のよくある会議室のような場所で、特有の無機質なにおいがした。

 暑さの残っている夏休み明け、リオ・オリンピックはすでに遠く感じていた。祭りは終わってしまうとあっけない。オリンピックの開幕3日後

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左藤青「タンデムの方法論」——エッセイ「私と空間/場所」④

左藤青「タンデムの方法論」——エッセイ「私と空間/場所」④

記号と実在当たり前のことだが、看板は単なる木や鉄でできた板ではない。車や電車は鉄のかたまりではないし、ハンマーは木と鉄からなる十字型あるいはT字型の物体ではない。 

看板は木の板ではなく言葉であり、指示である。車は鉄塊ではなく移動手段である。ハンマーは打つものだ。ペットボトルは飲むものだ。かくして、日常の空間はさしあたりたいていは、私たちにとって記号的に現れている。言い換えれば、私たちは日常、そ

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草乃羊「ゼロ・グラヴィティ」——エッセイ「私と空間/場所」③

草乃羊「ゼロ・グラヴィティ」——エッセイ「私と空間/場所」③



ゼロ・グラヴィティ

 地球には重力があるから、私たちは地に足をつけ、仰げば翼を持たない人間には到底飛べないような空が広がっている。肌で触れる大地との近さを、皮膚と土の摩擦の感触によって幸いにも立証することができるが、二メートルもない人間の身長に対して最も地表に近い層雲でさえ数百メートルから千メートル以上の高さにあるのだから、いくら手を伸ばしても、いくら足掻いても、「空」は手の届く範囲をはる

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