木屑問屋

業務中こっそり読むのに適した散文

木屑問屋

業務中こっそり読むのに適した散文

マガジン

記事一覧

「今のことしか書かないで」と彼女は告げた【大槻ケンヂ新刊書評】

■「絶筆宣言」  そのエッセイは、こんな書き出しで始まる。  これを書いたのは大槻ケンヂ。愛称「オーケン」。  ロックバンド「筋肉少女帯」「特撮」のボーカリスト…

木屑問屋
5日前
24

先日投稿した記事が、note公式「今日の注目記事」に初めて選ばれました。
是非この機会にご笑覧いただければ幸いです。

君は3,850円のパフェを食べたことがあるか?【銀座千疋屋 銀座本店】
https://note.com/kikuzudonya/n/ndab46e877d26

木屑問屋
12日前
12

東京都現代美術館「高橋龍太郎コレクション」を見る

 何年ぶりだろう、久々に東京都現代美術館に来た。  お目当ては「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」。  チラシには「ひとりの精神科医が集めた日本の戦後」…

木屑問屋
13日前
21

君は3,850円のパフェを食べたことがあるか?【銀座千疋屋 銀座本店】

 なんとも下品なタイトルを付けてしまった。  煽情的なタイトルで少しでも多く耳目を集めたいという浅ましい発想が丸わかりである。  私も立派なnote中毒患者ということ…

木屑問屋
2週間前
121

「内村プロデュース」復活に中島らもの言葉が交錯する夜

  「お前たちはダメだー!!」 国立競技場に響き渡るサングラス男の咆哮。  「ああ、また帰ってきてくれたんだな…」と思った。  9月28日放送の「内村プロデュース復…

木屑問屋
2週間前
12

ホロライブGTAにおける戌神ころねの物語展開力

■ はじめに  なんだか論文みたいなものものしいタイトルですが、本稿はそんなに堅苦しいものではなく「こないだのホロライブGTA面白かったね~」という気持を共有したい…

木屑問屋
2週間前
26

VTuber の引退は何故ショックなのか・補遺

   「VTuberの引退は何故ショックなのか」というテーマで、今まで私はたびたび記事を書いてきました。  過去に記事を書いた時点ではモヤモヤして言語化できなかった部…

木屑問屋
3週間前
7

「色即是空」で読み解く映画『きみの色』

   昨日、映画『きみの色』の感想を投稿しました。  この映画についてはまだまだ書きたいことがあります。  昨日の記事では割としっかりめ(?)な内容を書いたので、…

木屑問屋
3週間前
13

くるくる回ってきらきらと――映画『きみの色』感想

   映画館を出る頃、頭の中でずっと音楽が鳴っていた。 「♪ 水金地火木土天アーメン」  太陽のまわりをくるくる回る惑星のように、その“聖歌”はずっと私を取り囲…

木屑問屋
3週間前
11

箱根小旅行 2024(彫刻の森美術館、ユネッサン他)

 三ヶ月に一度は近場でも旅行したいと思っている。  9月はもともと熱海に行く予定であったが、過去記事でも取り上げた舟越桂氏の展示が彫刻の森美術館で見れることを知…

木屑問屋
1か月前
7

稲川淳二 怪談ナイトの思い出

 昔、深夜のテレ玉(テレビ埼玉)をボーッと眺めていたら 「今年もあいつがやってくる…」 というおどろおどろしいナレーションが流れてきて、何ごとですかいと思ったらそ…

木屑問屋
1か月前
3

「くろなん」おもしれ~って話

 これから「くろなん」おもしれ~って話をします。  「くろなん」とは何かを順を追って説明しますと……  にじさんじが誇る男性VTuberの二大巨頭、葛葉と叶。  二人は…

木屑問屋
1か月前
15

日記 ぼくのなつやすみ 2024

 某月某日。  歯医者に行く。  親知らずのところにちっちゃい虫歯ができているとのことでへこむ。毎日歯みがきを頑張っているつもりだが、まだまだ精進が足りないらしい…

木屑問屋
1か月前
8

mocopi から学ぶ戌神ころねの身体的没入感

■mocopiって何?  皆さんはmocopi(モコピ)をご存知でしょうか?  ……という書き出しをした以上は、mocopiについて熟知した感じのことを書かなくちゃいけないので…

木屑問屋
1か月前
12

川上弘美「物語が、始まる」は何故グッとくるのか? 最終夜

 全7回に渡って川上弘美「物語が、始まる」の魅力を紹介します。  本日最終回。  ↓ 前回 最終夜 「生きながらえる」ということ  「物語が、始まる」を考えるシリ…

木屑問屋
1か月前
6

川上弘美「物語が、始まる」は何故グッとくるのか? 第六夜

   全7回に渡って川上弘美「物語が、始まる」の魅力を紹介します。  ↓ 前回 第六夜 「物語が、始まる」  前にも少し触れましたが、本作「物語が、始まる」は、川…

木屑問屋
1か月前
2
「今のことしか書かないで」と彼女は告げた【大槻ケンヂ新刊書評】

「今のことしか書かないで」と彼女は告げた【大槻ケンヂ新刊書評】


■「絶筆宣言」

 そのエッセイは、こんな書き出しで始まる。

 これを書いたのは大槻ケンヂ。愛称「オーケン」。
 ロックバンド「筋肉少女帯」「特撮」のボーカリストとしての活動のみならず、前述の通り小説家としても活躍している。

 大槻さんが本を書きまくっていた時期は私の学生時代とすっぽり重なり、無限とも思えるヒマを持て余す身分にとって、大槻さんのエッセイ・小説は最高のごちそうだった。面白くて面

もっとみる

先日投稿した記事が、note公式「今日の注目記事」に初めて選ばれました。
是非この機会にご笑覧いただければ幸いです。

君は3,850円のパフェを食べたことがあるか?【銀座千疋屋 銀座本店】
https://note.com/kikuzudonya/n/ndab46e877d26

東京都現代美術館「高橋龍太郎コレクション」を見る

東京都現代美術館「高橋龍太郎コレクション」を見る

 何年ぶりだろう、久々に東京都現代美術館に来た。

 お目当ては「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」。
 チラシには「ひとりの精神科医が集めた日本の戦後」というサブタイトルがあった。

 鑑賞前に館内のコインロッカーに荷物を預ける。
 ロッカーを閉めるには100円玉が必要だが、荷物取り出しのときに硬貨が返却されるタイプ。うれしい。

 入場すると、初手から草間彌生作品がお出まし。
 作品か

もっとみる
君は3,850円のパフェを食べたことがあるか?【銀座千疋屋 銀座本店】

君は3,850円のパフェを食べたことがあるか?【銀座千疋屋 銀座本店】

 なんとも下品なタイトルを付けてしまった。
 煽情的なタイトルで少しでも多く耳目を集めたいという浅ましい発想が丸わかりである。
 私も立派なnote中毒患者ということだ。

 先に結論を言う。
 一年に一回、私は3,850円のパフェを食べている。

 最近は急に涼しくなって世間的には「秋が来た」と見做されているようだが、私の元には未だ秋は訪れていなかった。
 何故ならば、銀座千疋屋フルーツパーラー

もっとみる
「内村プロデュース」復活に中島らもの言葉が交錯する夜

「内村プロデュース」復活に中島らもの言葉が交錯する夜

 

「お前たちはダメだー!!」 国立競技場に響き渡るサングラス男の咆哮。
 「ああ、また帰ってきてくれたんだな…」と思った。

 9月28日放送の「内村プロデュース復活SP」(テレビ朝日)を見た。
 今年の夏に「内Pが特番で復活するらしい」の第一報を聞いたときは「嬉しいけどなんで!?」と寝耳に水だったが、“内村光良還暦記念”と知って「その理由だったら確かに復活できるかも…」と納得した。

 「内

もっとみる
ホロライブGTAにおける戌神ころねの物語展開力

ホロライブGTAにおける戌神ころねの物語展開力

■ はじめに

 なんだか論文みたいなものものしいタイトルですが、本稿はそんなに堅苦しいものではなく「こないだのホロライブGTA面白かったね~」という気持を共有したいがためのざっくばらんな内容となっております。

 ちなみにホロライブGTAとは……

 さまざまな人間ドラマが繰り広げられたので正直どこから手を付ければいいのやらという感じですが、やはり特筆すべきは「パン屋ファミリー」でしょうか。
 

もっとみる
VTuber の引退は何故ショックなのか・補遺

VTuber の引退は何故ショックなのか・補遺

 
 「VTuberの引退は何故ショックなのか」というテーマで、今まで私はたびたび記事を書いてきました。

 過去に記事を書いた時点ではモヤモヤして言語化できなかった部分について「こういう理由もあるのではないか」と最近急にハッキリ像を結んだものが一つ出てきたので、補遺として書き残しておきたいと思います。

 今から述べる「何故ショックか」の理由が当てはまるには一つの条件があります。
 それは、当の

もっとみる
「色即是空」で読み解く映画『きみの色』

「色即是空」で読み解く映画『きみの色』

 
 昨日、映画『きみの色』の感想を投稿しました。

 この映画についてはまだまだ書きたいことがあります。
 昨日の記事では割としっかりめ(?)な内容を書いたので、本稿はわりかしフリーダムな感じでまいりたいと思います。

■「宗教」と「色」といえば?

 主人公・トツ子が通う高校はミッションスクール。
 劇中に聖書の言葉が登場したりと、どこかしら「宗教」的要素が入ってきます。
 そして本作のタイト

もっとみる
くるくる回ってきらきらと――映画『きみの色』感想

くるくる回ってきらきらと――映画『きみの色』感想

 
 映画館を出る頃、頭の中でずっと音楽が鳴っていた。

「♪ 水金地火木土天アーメン」

 太陽のまわりをくるくる回る惑星のように、その“聖歌”はずっと私を取り囲んで離さない。
 人混みの中ではあったものの、もうガマンできず、周りにギリギリ聞こえない声量で「♪ 水金地火木土天アーメン」と唱えた。
 とても中毒的な歌だ。

■ あらすじ

 先日、山田尚子監督の新作アニメーション映画『きみの色』

もっとみる
箱根小旅行 2024(彫刻の森美術館、ユネッサン他)

箱根小旅行 2024(彫刻の森美術館、ユネッサン他)

 三ヶ月に一度は近場でも旅行したいと思っている。
 9月はもともと熱海に行く予定であったが、過去記事でも取り上げた舟越桂氏の展示が彫刻の森美術館で見れることを知り、箱根に行くことにした。

【1日目】■ロマンスカーで箱根へ

 朝8時。
 新宿から小田急のロマンスカーに乗る。
 箱根湯本まで1時間40分程度。
 乗車券・特急券あわせて約2,400円なので、ロマンスカーってけっこうお得かも…。

 

もっとみる
稲川淳二 怪談ナイトの思い出

稲川淳二 怪談ナイトの思い出

 昔、深夜のテレ玉(テレビ埼玉)をボーッと眺めていたら
「今年もあいつがやってくる…」
というおどろおどろしいナレーションが流れてきて、何ごとですかいと思ったらそれは「稲川淳二の怪談ナイト」のCMだった。
 「あいつ」というのは本来幽霊や怪物などの向こう側の世界の住人を指し示す言い方だと思うのだが、怪談を語る側の方である筈の稲川淳二氏が「あいつ」呼ばわりされていてなんか笑ってしまった。
 その頃の

もっとみる
「くろなん」おもしれ~って話

「くろなん」おもしれ~って話

 これから「くろなん」おもしれ~って話をします。
 「くろなん」とは何かを順を追って説明しますと……

 にじさんじが誇る男性VTuberの二大巨頭、葛葉と叶。
 二人は「ChroNoiR(くろのわーる・略称『くろのわ』)」というユニットを組んでいて、YouTubeで同名のユニットチャンネルを持っています。
 そこでやっているにじさんじの公式番組「くろのわーるがなんかやる」の略称、それが「くろなん

もっとみる
日記 ぼくのなつやすみ 2024

日記 ぼくのなつやすみ 2024

 某月某日。
 歯医者に行く。
 親知らずのところにちっちゃい虫歯ができているとのことでへこむ。毎日歯みがきを頑張っているつもりだが、まだまだ精進が足りないらしい。歯みがきムズすぎる。ちっちゃい虫歯の治療は次回から開始。

 某月某日。
 ブックオフに行き、2冊購入。
 コメダ珈琲店に寄り、買った本を読む。
 午後いっぱいを使ってがんばってnoteを書き上げる。あまり無いことだが、精魂尽き果てた。

もっとみる
mocopi から学ぶ戌神ころねの身体的没入感

mocopi から学ぶ戌神ころねの身体的没入感



■mocopiって何?

 皆さんはmocopi(モコピ)をご存知でしょうか?
 ……という書き出しをした以上は、mocopiについて熟知した感じのことを書かなくちゃいけないのでちょこっと調べてみたのですが、なんだかどうも説明が難しい。
 画一的な説明でいうと、mocopiとは「SONYが販売する小型・軽量のモバイルモーションキャプチャー」のことです。
 「ユーザーは、6つの小型センサーを全身

もっとみる
川上弘美「物語が、始まる」は何故グッとくるのか? 最終夜

川上弘美「物語が、始まる」は何故グッとくるのか? 最終夜

 全7回に渡って川上弘美「物語が、始まる」の魅力を紹介します。
 本日最終回。

 ↓ 前回

最終夜 「生きながらえる」ということ

 「物語が、始まる」を考えるシリーズの最後の夜となりました。

 本作のラストを読むたびにわたしは心が揺さぶられるのですが、最後にその部分を鑑賞していきましょう。

 本作を読み返すたびに“私”の「これが、生きながらえるということなのかもしれない」という想いは一体

もっとみる
川上弘美「物語が、始まる」は何故グッとくるのか? 第六夜

川上弘美「物語が、始まる」は何故グッとくるのか? 第六夜

 
 全7回に渡って川上弘美「物語が、始まる」の魅力を紹介します。

 ↓ 前回

第六夜 「物語が、始まる」

 前にも少し触れましたが、本作「物語が、始まる」は、川上弘美の第一作品集『物語が、始まる』(1996)の表題作です。
 この作品集には、表題作以外には「トカゲ」「婆」「墓を探す」という三つの短篇が収録されています。
 「トカゲ」には“座敷トカゲ”という不気味で巨大なトカゲが出てきます。

もっとみる