VTuber の引退は何故ショックなのか・補遺
「VTuberの引退は何故ショックなのか」というテーマで、今まで私はたびたび記事を書いてきました。
過去に記事を書いた時点ではモヤモヤして言語化できなかった部分について「こういう理由もあるのではないか」と最近急にハッキリ像を結んだものが一つ出てきたので、補遺として書き残しておきたいと思います。
今から述べる「何故ショックか」の理由が当てはまるには一つの条件があります。
それは、当のVTuberが人気絶頂の真っ只中で辞めてしまう、という場合です。
一般的に漫画やアニメのキャラクターは、人気がある限り表舞台に出続けます。
『サザエさん』『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』『ドラゴンボール』……。
わが日本が誇る大人気キャラクターたちの数と言ったら枚挙にいとまがありません。
2020年に連載が終わった『鬼滅の刃』はその後もキャラクター商品が出たり、どこかのゲームとのコラボでキャラが登場したりと、今も多くのファンを喜ばせています。
人気がゼロになったら何の展開も生まれなくなるのは当然として、「人気のあるキャラクター」は世の中に需要があるのでその供給は止まらない、というのが今までの常識でした。
しかし、自分を含めた我々VTuberファンに衝撃を与えたVTuberの卒業・引退の多くは、「人気絶頂」という状態で決まったものでした。
ただ、生身の人間のアイドルだって「人気絶頂」のさなか引退することはあります。決して珍しいことではありません。
VTuberはアイドル的な売り出し方をすることがよくあるので「どっちの引退も似たようなもんじゃないか」という意見もあるかもしれませんが、比べたときに「その引退が理不尽に思える」度合いが高いのはVTuberの方だと思います。
何故ならばVTuberには、漫画やアニメの登場人物に限りなく近い「キャラクター」の側面があるからです。
たいていのVTuberには「設定」があります。
二次元の存在みたいに振る舞うその姿は、さながら漫画・アニメのキャラクターのようですが、あくまでも彼ら・彼女たちは「VTuber」であり、漫画・アニメのキャラではありません。
前にも述べたように、漫画・アニメのキャラクターは人気がある限り表舞台に出続けます。
「人気がある限りキャラクターは活躍し続ける」という刷り込みは、漫画・アニメファンにとって強固なものです。
そして、全くイコールとは言わないにしても、「キャラクターを愛でる」という性質から「漫画・アニメ」と「VTuber」の楽しみ方は親和性が高く、どちらのファンも兼任する人は多い筈です。
「人気が続く限り」という条件はありますが、漫画・アニメのキャラクターは、言ってみれば不死身の存在です。
長寿アニメともなると、声優の交代は当たり前です。
「このキャラの声優さんが亡くなってしまったので、来週からこのキャラの登場はもう取り止めですね」なんてことはあり得ません。
来週からは、何食わぬ顔で「2代目」の声優がキャラの声を担当します。
VTuberも上記の声優の方法論が適用されてもよさそうなものですが、不思議とそうはなりません。
一人のキャラクターに対しては一人の「中の人」が固有に結び付けられており、「2代目」が登場する余地はありません。
長寿アニメとは違い、「中の人がもう活動できないので、来週からこのキャラの登場はもう取り止めですね」の世界です。
VTuberという「キャラクター」は、どんなに人気があったとしても、ある日表舞台から忽然と消えてしまいます。
不死身でもなんでもなく、有限で、儚い存在なのです。
もちろん、VTuberでも中の人の「2代目」が登場したケースがなかったわけではありません。
しかし、その後の活躍をあまり聞かないのは、「中の人が変わったらもう元のVTuberではない」というのがファンの総意であり、「初代」なみの人気を獲得するには相当ハードルが高いということなのでしょう。
まとめます。
人気のあるキャラクターは活躍し続けるのがこの世の理なのに、同じく「キャラクター」である筈のVTuberの活動は急に突然プツリと終わってしまう、その点がファンの「キャラクターは消えない」という刷り込み(あるいは教義)に反し、とてつもなく理不尽に思える。
その結果「ショック」という感情がファンを襲う、そのような側面があるのではないかと思いました。
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