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ケンヨウの階層

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自分自身に関わる文章を書きとめていきます。仕事のこと、生活のこと、いま夢中なことなど僕自身についてです。
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#エッセイ

[ちょっとしたエッセイ] 世界はなんでもいいであふれてる

[ちょっとしたエッセイ] 世界はなんでもいいであふれてる

「今日なんにする?」と聞くと、「なんでもいい」と言う。
「映画なに見る?」と聞かれると、「なんでもいい」と答える。
 日頃から、自分の周りで飛び交う会話の一部というか、すべてというか、大体のどうでもいい会話に蔓延る「なんでもいい」。昨日入った喫茶店でも、隣にいた若い女性がスマホを見ながら、目の前に座る彼の問いに、目も見ずに「なんでもいい」と答えていた。
 この「なんでもいい」は結構な意思表示なんじ

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[ちょっとしたエッセイ] 知らない場所へ、旅したい

[ちょっとしたエッセイ] 知らない場所へ、旅したい

 朝の駅のホームで満員電車に乗り込むことをわかっていて、並ぶ乗車列はつらい。たかただ20〜30分だからといって、この疲労感、疲弊感は朝に経験するには早すぎる。せめて、これを過ぎたらあとは寝るだけとなればいいのにと祈りながら、実際はこれが1日のスタートの号砲なのである。乗車列に並んでいると、反対側のホームはガラガラで、東京に向かう自分とは違う静かな雰囲気に、あちら側に行きたい衝動に駆られる。目的なん

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[ちょっとしたエッセイとおしらせ]一寸先にある未来

[ちょっとしたエッセイとおしらせ]一寸先にある未来

 昨年末、1カ月ほど、ちょっとしたアルバイトをいた。年の瀬の週末だけの、なんだか特別な時間に働くのはなんだか悪くないといのが、働き終わっての感想だ。
 電車に乗って、各駅停車しか停まらない駅で降りる。仕事場は、住宅街の中にある古い木造の家で、ガラガラと扉を引くと、ミシンの音とシンナーの香りがした。仕事内容は至ってシンプルで、ハサミで革を切り、仮止めのためのテープを貼ったり、たぶん教えられれば誰でも

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[ちょっとしたエッセイ] 深夜に思い出すのはいつも

[ちょっとしたエッセイ] 深夜に思い出すのはいつも

 noteで詩を書く人の作品を読んでいると、7〜8割くらいの作品が「恋」や「愛」について書かれている、もしくはそれらを想起させる言葉が散りばめられている。男女問わず、いかに「恋」や「愛」が人の心をトリコにしているかがわかる。
 それらを読んでいると、時にはくすっとしてしまったり、時にはなんだか心をくすぐられたり、時には、自分とは正反対の方法におどろいたりと、人の恋というものは奇想天外で、自分とは違

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[ちょっとしたエッセイ] 渡り廊下とルサンチマン

[ちょっとしたエッセイ] 渡り廊下とルサンチマン

 記憶に残るものは、どんなことがあっても何かの拍子に思い出すことが必ずある。それがどんなに忘れたいことであっても、生きている限りは仕方ないのかなと思ったりもする。
 長かった、夏とも秋とも言えない季節が終わり、ようやく冬の兆しが見えてきた12月のある平日の夕方、家の近所にある学校の脇を歩いていると、学校の裏門と見受けられる場所で、3人の学生が1人の学生にカバンを振り回して当てている光景に出会した。

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[ちょっとしたエッセイ]光と闇と

[ちょっとしたエッセイ]光と闇と

 今年はいつもよりあたたかな12月で、つい先日まで本当に寒いと思える日はいつも以上に少なかったが、ここ1週間くらいは底冷えで、あ、いつもの冬がやってきたな感が出てきた。そのせいで、いつもより遅くなったが、クローゼットの奥からヒートテックのタイツを引っ張り出して、これでようやく冬の準備が完了したような気がした。そして、気がつけば今年も終わりつつある。
 この季節は寒さと相まって、いろいろと昔のことを

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[ちょっとしたエッセイ]寝ることが、もったいなかったあの頃

[ちょっとしたエッセイ]寝ることが、もったいなかったあの頃

 先日、久しぶりに食事をしながら眠ってしまった。とは言っても、一瞬意識を失った程度のもので、ガクンと目の前が上下する現象に見舞われてことなきを得た。しかし、食事をしながら寝落ちとは、学生時代の2徹明けの吉野家以来だった。
 とにかく、最近眠い。酒を飲もうことなら、すぐに酔い、横になった瞬間に寝られる自信がある。この週末も朝に起きられず昼まで寝て、起きてまたボーッとしていたら、夕方になっていた。天井

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[ちょっとしたエッセイ]メコンで泳ぐ、いつまでも

[ちょっとしたエッセイ]メコンで泳ぐ、いつまでも

 「今年は例年になく猛暑だった」と、方々のメディアで取り上げられ、確かに気温も数字として高くて、いつも以上に暑かったのだと思わせられる2023年の夏だった。ジリつく暑さは、暑いといった感情よりも、息苦しいとかそういった類の苦しさに近いもので、サウナの中にいるような(そんなにスッキリするようなものでもないが)、我慢を糧に生きるような日々だったように感じる。世界の人口は80億人を超え、僕が記憶している

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[ちょっとしたエッセイ]借りてでも浴びたい酒

[ちょっとしたエッセイ]借りてでも浴びたい酒

 先日、会社の同僚や後輩と仕事の後に飲みに行った。日頃からこういった会があるわけではなく、僕が勤めている会社は本当に小規模の会社で、新卒が毎年のように入ってくるわけでもないので、日常における関係性が近すぎるためか、会社の人と「飲みに行くほどでもない」関係になりつつある。酒の席で、あいつがああ言ったとか、そんな噂もすぐに風の便りで自分にも返ってきてしまうので、単に面倒だなと思うのも理由のひとつだ。

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[ちょっとしたエッセイ]忘れてもいい日に

[ちょっとしたエッセイ]忘れてもいい日に

 僕らは毎日さまざまな人の記憶をスルーして生きている。こう書くと聞こえが非常に悪いが、今日が、隣のあの人の記憶に残る日であっても、それを共有していない僕が、それに気がつくことはほぼ無理である。そう考えると、お互いに知らないことを前提に生きている。
 
 先日、友人とふたりで新宿三丁目で仕事終わりに一杯やっていた。40代のおじさん二人で、なんだか人生後半戦についてシメっぽい話をしていると、隣ではスー

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[ちょっとしたエッセイ]うれしさは伝染しやすい

[ちょっとしたエッセイ]うれしさは伝染しやすい

 毎朝、満員電車に乗りながら本を読むのを日課としている。ただ、扉の脇を陣取った時は、車窓の外を見ながらボーッとするのも悪くない。西東京の彼方に住んでいると、今日みたいなよく晴れた日には、富士山が見える。末広がりに延びる山肌には、白い雪化粧。同じ景色を見てる人がいるかもしれないと、辺りを見渡してもほぼほぼみんな目線は下にあり、スマートフォンに夢中になっている。そして漏れなくイヤホンもしている。キレイ

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[ちょっとしたエッセイ]六本木という街に騙される日々

[ちょっとしたエッセイ]六本木という街に騙される日々

 先日、久々に六本木を訪れた際、休憩にと駅前の喫茶店に入った。ここは駅前の割に、結構広くゆったりしているので、ちょっとした打ち合わせなどで長居するにはもってこいの場所だった。ただ、古い佇まいと、土地柄か、スーツの人とラフな私服の人のペアが多く、なんだか胡散臭いさは拭えない。でも、ひとりでゆったりするには良い場所だった。
 運ばれたコーヒーを飲みながら、あたりを見回していると、背筋をピンとしながら項

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[ちょっとしたエッセイ]反比例する夜に

[ちょっとしたエッセイ]反比例する夜に

 普段なら、寝る前にスマホを眺めていると急な眠気が襲ってくるのだが、この日は違った。見れば見るほどに、目が冴えてゆく。「あ、きたな」が僕の感想で、数カ月に一度やってくる眠れない夜が到来。こうなると、もうダメで、ひたすらに目を瞑って静かにするか、諦めて、眠くなるまで時が過ぎるのを待つしかない。
 幾分か時が過ぎたと思い、時計に目をやると午前3時。布団に入ってからすでに2時間が経過した。眠くない。眠れ

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[ちょっとしたエッセイ]祈り、持久戦

[ちょっとしたエッセイ]祈り、持久戦

 祈らずにいられない時というものがあるだろうか。別に信心深いわけではないし、敬虔な何かの信者でもない。にも関わらず、何かにすがる気持ち、何かに祈らずにいられない時は、恐怖にさらされている時ではないかと思う。
 
 ほら、左右に捻るような揺れ。手に持つ文庫本をグッと握り潰す。ジンワリと手汗がにじみ出るのを感じながら、執拗に辺りの様子を見て回る。完全に落ち着きのない人になっている。首を傾けて通路の先を

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