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ユルスナール「青の物語」レビュー
ユルスナールの初期短編集。
ユルスナールの代表作は一通り読んだので、今度はあまり有名でない初期作品をということで読み始めたら表題作「青の物語」のユルスナールらしからぬテイストにびっくりして一度断念。
まあしばらく置いておけばまた気に入る時が来るだろうと放置した後再読したら楽しく読めた。
内容は「青の物語」「初めての夜」「呪い」の三編を収録。
これらはユルスナールの死後刊行されたもので、いずれも2
キャンディス・オーウェンズ「BLACK OUT」レビュー
どこかで話題になっていた「ブラックアウト」という本を読んでみました。
キャンディス・オーウェンズ - Wikipedia
内容は、いかに民主党が黒人の味方のふりをして黒人コミュニティを破壊してきたかという事実を保守系黒人のキャンディス・オーウェンズ氏が詳細なデータと共につきつけるというなかなかセンセーショナルなものです。
一例を挙げると、白人警官に殺された黒人は黒人に殺された黒人よりもはるかに
ユルスナール「三島あるいは空虚のビジョン」レビュー
マルグリット・ユルスナールによる三島文学の論評。
訳は渋澤龍彦。
ユルスナールということで構えていたが、かなりフランクに書かれてあり読みやすかった。
評論の多くは「春の雪」からの4部作に割かれてあるが、「金閣寺」「潮騒」「禁色」「仮面の告白」「鏡子の家」など代表作にも言及されている。
また、三島の割腹自殺についても論ぜられている。
まず驚いたのは、あのユルスナールが引用する三島作品の設定を間違
「映画を早送りで観る人たち」稲田豊史著 感想
岡田斗司夫氏が紹介していたので面白そうだと思ってポチりました。
結構ヴォリュームがあって、しっかりリサーチされているので読み応えがあります。
内容はタイトル通りですが、焦点は主にZ世代。
彼らの間で、映画のみならずコンテンツの消費の仕方に一大変革が起こっていることを丁寧に調査し、原因を紐解いていく内容です。
2022年4月初版発行なので、コロナの影響も反映されています。
これからのZ世代への理解
ユルスナール「ハドリアヌス帝の回想」レビュー
noteでも何冊もレビューしているユルスナールの代表作「ハドリアヌス帝の回想」。
2回読んで2回とも挫折したのでしばらくは読まないことにしました。
今回は挫折ポイントをレビューしてみます。
ユルスナールは大好きで「東方綺譚」「とどめの一撃」「黒の過程」「三島あるいは空虚のヴィジョン」などを読んできました。
いずれも楽しめたし、難解な「黒の過程」も読了できました。
レビューはこちらを参照。
な
ラディゲ「ドルジェル伯の舞踏会」レビュー
ラディゲの「肉体の悪魔」を何度目かの再読し、流れで「ドルジェル伯の舞踏会」も再読しようと思い、Amazonで検索してみると新訳が出ていました。
本作は20歳で夭折した天才の遺作であり、あの三島由紀夫が憧れ、真似をしたことでも有名。
ただ、どうやらこれまで発表されてきた「ドルジェル伯の舞踏会」は、ラディゲ亡き後コクトーら雄志が手を入れたものらしく、それ以前のラディゲが書き上げた幻の原稿が20部のみ
ユルスナール「黒の過程」レビュー
マルグリット・ユルスナールが描く、中世ヨーロッパを生きる錬金術師ゼノン(実在はしない)の生涯を追った歴史ファンタジー。
本作はユルスナールにしては珍しく三人称視点の文体で書かれてある。
ユルスナールといえば主人公の心の奥の奥、無意識の領域まで入り込んだ一人称体が有名だが、三人称だとどうだろう?とやや不安を抱きながら読書開始。
すぐに予感は的中した。
読みにくい!
人物を名前だけ出して何の描写
サガン「悲しみよこんにちは」レビュー
最近またフランス文学をもう少し読んでみようと思い、あれこれ調べてみるとサガンの「悲しみよこんにちは」を見つけたのでポチ。
タイトルはなんとなく知っていたけど、未読だった。
正直そこまで惹かれはしなかったが、短そうなのと、いくつかのレビューに「フランス文学入門」みたいに書いていたので読んでおくかと。
ちなみに僕は10代の頃に渋澤龍彦氏の著書からフランス文学に入ったので、サドやジャン・ジュネといった
バルザック「ゴリオ爺さん」レビュー
フランス文学の名作、バルザックの「ゴリオ爺さん」を久々に読みました。
概要作者:オノレ・ド・バルザック(1799~1850)
刊行:1835年(天保六年)
ゴリオ爺さん - Wikipedia
田舎から出てきた野心家の青年ラスティニャックが個性豊かな面々が集うヴォケー館に住み込み、上流階級の女性たちに取り入ろうとする物語。
実はお近づきになった貴族婦人の父親が同じヴォケー館の住人ゴリオ爺さんだ