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高校生のための人権入門(全27回)

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人権についてわたしが考えたことを、高校生だった自分にもわかるように書いてみました。興味のあるテーマについて書いてある回から読んでいただいても、大丈夫です。
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#パワハラ

高校生のための人権入門(3) パワーハラスメント

高校生のための人権入門(3) パワーハラスメント

パワーハラスメントについてパワーハラスメントという言葉を聞いたことがある人も多いと思います。2019年に「労働施策総合推進法」等が改定され、企業等はパワーハラスメントの防止に努めなければならないことになりました。実際の施行は2020年6月から大企業等で始まり、今年2022年の4月からは中小企業でも始まります。

パワーハラスメントという言葉の意味は、「力を使った嫌がらせ」ということです。ふつうパワ

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高校生のための人権入門(4) 人権侵害の基本的構図

高校生のための人権入門(4) 人権侵害の基本的構図

前回、述べたようなパワーハラスメントが起きる構造は、ほとんどの人権侵害に当てはめることができます。つまり、「強い立場の人」と「弱い立場の人」がいて、その間に「気持ちや思いのズレや断絶」があります。この状態において、「強い立場の人」が、自分(たち)の「正しさ」に基づいて、「弱い立場の人」に、自分(たち)の持つ力を振るった時、人権侵害が起きるのです。

重要なことは、人権侵害をしている側は、自分たちの

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高校生のための人権入門(5) 怒りはなぜ起きるか

高校生のための人権入門(5) 怒りはなぜ起きるか

人権侵害は怒りとともに行われることが多いものです。例えば、パワーハラスメントで相手を怒鳴りつけるとか、児童虐待で親が子どもをたたいたり、高齢者虐待で介護者が高齢者をカッとして殴ったりしてしまうことなどがその典型的な例です。

怒りは2次感情怒りは心理学においては、2次感情と呼ばれます。正義感からくる継続的な怒りを除けば、多くの場合、怒りは突発的なもので、このような日常的に起きる怒りは必ず怒りの前に

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高校生のための人権入門(6) 憎しみと人権侵害

高校生のための人権入門(6) 憎しみと人権侵害

人権侵害や差別をする人の心の中に強く巣くっている感情に、憎しみがあります。在留外国人に対するヘイト・スピーチ(ヘイトは「憎しみ・憎悪」という意味です)はその典型的な例です。

満たされない思いが憎しみを生む人間関係における憎しみや恨みの感情は、自分自身が抱えている「満たされない思い」から生まれます。逆に言えば、満たされている人は、人をうらやんだり、ねたんだり、憎んだりしません。つまり、このような憎

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高校生のための人権入門(7)  同和問題(部落差別)について

高校生のための人権入門(7)  同和問題(部落差別)について

はじめにこれから何回かにわたって、今の日本で起きているさまざまな差別や人権侵害について書いていきたいと思います。最初にお断りしておきたいのは、「人権の問題についてはまだ正解はない」とわたしは考えているということです。「こういう考え方、とらえ方だけが正しくて、それ以外は間違いだと言えるような正しい考え方はまだない」ということです。ですから、これから書くことも、あくまで現時点のわたしはこう考えるという

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高校生のための人権入門(17) 人権の中身「安心、自信、自由」

高校生のための人権入門(17) 人権の中身「安心、自信、自由」

人権尊重は無条件もう一度ここで、パワーハラスメントの話に戻ります。パワーハラスメントの加害者も、ふつうパワーハラスメント自体を良いことだと思ってはいません。また、相手の人権を侵害して良いと思っている人もふつういません。だから、パワーハラスメントの加害者に、パワーハラスメントがいけないこと、許されないということ、人権は尊重しなければならないということを、何回繰り返して言っても実は効果はありません。「

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高校生のための人権入門(18) なぜ、人権は尊重されなければならないか

高校生のための人権入門(18) なぜ、人権は尊重されなければならないか

はじめに前回、人権の中身とは「安心、自信、自由」だというお話をしました。「安心」とは、「わたしはここにいていい」という思いであり、「自信」とは、「今のわたしはこれでいい」という思いであり、「自由」とは、「わたしのことはわたしが決めている。つまり、わたしがわたしの人生の主人公だ。」という思いだとお話ししました。これを踏まえて、前回の最初に取り上げた疑問、「相手がどんな『ひどい人』で、自分や周りの人に

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高校生のための人権入門(19) 「多様性の尊重」の落とし穴

高校生のための人権入門(19) 「多様性の尊重」の落とし穴

はじめに最近、日本で人権について語られる時、とてもよく使われるようになった言葉に、「多様性の尊重」という言葉があります。確かにこの言葉は、「人権侵害とは、自分とは『違う』あり方、考え方、生き方をしている人への非難、攻撃である」というポイント(第18回参照)をよく押さえています。しかし、「人権を尊重する」ということと「多様性を尊重する」ことを、同じことだと考えてしまうと、そこには大きな「落とし穴」が

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高校生のための人権入門(20) パワーハラスメントを生む「集団」とは

高校生のための人権入門(20) パワーハラスメントを生む「集団」とは

はじめに前回、「現実の『人と人との関係』は、基本的に力と力の関係であり、どちらかがどちらかを支配している(相手を従わせている、自分に合わせさせている)関係なのです。」と書きました。このことについて、次回、くわしくお話したいと思っていますが、今回は、それを考える前に、まず、パワーハラスメントを生む集団は、どんな性質を持っている集団かを考えてみたいと思います。

人と人がつくる二種類の集団人と人がつく

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高校生のための人権入門(21) 力の関係としての人間関係

高校生のための人権入門(21) 力の関係としての人間関係

はじめに前々回、「現実の『人と人との関係』は、基本的に力と力の関係であり、どちらかがどちらかを支配している(相手を従わせている、自分に合わせさせている)関係なのです」と書きました。このようなとらえ方には、違和感や反感を覚える方も多いのではないかと思います。そのため、前回、人間がつくる集団には二種類あるのではないかということを書きました。人間のつくる集団の二面性と考えていただいてもかまいません。今回

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高校生のための人権入門(22) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その1)

高校生のための人権入門(22) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その1)

はじめにさまざまな人権問題があることをこれまで見てきました。もちろん、今まで取り上げてきた人権問題以外にも、たくさんの人権問題が今の日本にはあります。(それらについては、別の機会でふれることができたらと思います。)今回から3回ほどにわたって、どうしたら今まで取り上げたような人権問題が、少しでも解決に向かうことができるのかを考えてみたいと思います。

何が起きているのか、なぜ起きているのか差別や人権

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高校生のための人権入門(23) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その2)

高校生のための人権入門(23) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その2)

はじめに前回、パワーハラスメントがどのようなことが「きっかけ」となって、どのように進んでいくかということを見ました。今回は、パワーハラスメントが起きている時に、加害者と被害者の「心の溝(気持ちや思いのズレや断絶)」が、どのような働きをしているかを見てみたいと思います。

なぜ、「心の溝」は深まるか第3回「パワーハラスメント」でも述べたように、パワーハラスメントは、(A)「強い立場」と「弱い立場」が

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高校生のための人権入門(24) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その3)

高校生のための人権入門(24) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その3)

はじめに前回は、パワーハラスメントが起きている時に、加害者と被害者の「心の溝(気持ちや思いのズレや断絶)」が、どのようにして深まっていくか、それが生む「誤解」がどのような働きをしているのかを見ました。今回は、今までの2回の話を踏まえて、「心の溝」を生まないためにはどうしたらよいか、「心の溝」と「誤解」の悪循環を進行させないためには、どうしたらよいのかを考えてみたいと思います。

「心の溝」を生んで

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高校生のための人権入門(25) 人権と生きることの意味

高校生のための人権入門(25) 人権と生きることの意味

はじめに第17回「人権の中身『安心、自信、自由』」の中で、自分の中の「安心、自信、自由」を失わないことが、生き生きと生きていくためにはどうしても必要であり、「安心、自信、自由」がなければ、人は生きていてうれしくないのだということをお話ししました。逆に言えば、「安心、自信、自由」が持てていれば、人は生き生きと生きられる、生きていてうれしいのだということです。生きていてうれしいとは、「生きている意味」

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