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高井宏章 雑文帳

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徒然なるままに。案外、ええ事書いてます
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#小説

言葉を惜しむからこそ、語れること

言葉を惜しむからこそ、語れること

アゴタ・クリストフの『悪童日記』を再読している。この30年、何度読み返したか分からない私のオールタイムベストのひとつだ。

この作品がなぜこれほど自分に響くのか、理由のひとつははっきりしている。
文体の「縛り」だ。

「縛り」が生む力

主人公である双子の日記という形式をとるこの小説は、独特の文体で綴られる。それは双子の少年たちの「作文のルール」でもある。

描写のみの乾いた単文の積み重ねと掌編を

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「すべての男」が読むべき傑作 『ザリガニの鳴くところ』

「すべての男」が読むべき傑作 『ザリガニの鳴くところ』

「2019年アメリカで一番売れた本」
「全米500万部突破」

そんなパワーワードが踊る帯には強力な布陣で、

「とにかく、黙って、読め」

と言わんばかりの推薦の言葉が並ぶ。

『ザリガニの鳴くところ』早川書房
ディーリア・オーエンズ/著 友廣純/翻訳

この上に私が贅言を重ねても意味がなさそうなので、個人的な体験を少々ご紹介する。

私が本書を購入したのは、文学YouTuberのベルさんのこの

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『おカネの教室』無料公開は、売名行為です

『おカネの教室』無料公開は、売名行為です

3月末までの期間限定で『おカネの教室』を無料公開しました。
以下のリンクから飛べば、サクサクと全ページ読めます。

公開に至った経緯を記録しておきます。

わずか半日の早業!きっかけになったのは、版元インプレスのこのツイートでした。

うんうん。みんな巣ごもりで退屈だもんねぇ……。
エエことするじゃないの。
でもね。

なんで『おカネの教室』は、仲間外れなのよ!

翌11日にインプレスの偉い人に早

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2020年に『おカネの教室』続編をnoteで連載します!

2020年に『おカネの教室』続編をnoteで連載します!

あけましておめでとうございます。

私にとって2019年はnoteの年でした。
ちなみに2018年は「『おカネの教室』を出した年」でした。
2020年はどんな年になるのだろう。
わたし、「年初の目標」なんてものを守れた試しがない人間なのですが、そのようなものを3つほど。

その1『おカネの教室』続編 noteで連載(たぶんね)noteで『おカネの教室』第1章、第2章を全文公開したのは、読者が広がる

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ベストセラー「おカネの教室」ができるまで 兼業作家のデビュー奮闘記

ベストセラー「おカネの教室」ができるまで 兼業作家のデビュー奮闘記

このほどシリーズを一本化した完全版を公開しました。リンクはこちら。

発売3か月で6刷、3万部弱のベストセラーとなっている異色の経済青春小説「おカネの教室」。サラリーマン記者が娘相手に家庭内連載していた「変な本」がいかにヒット作に化けたのか。執筆からKindleの個人出版を経て書籍化されるまで、兼業作家のメジャーデビュー体験記を公開します。

目次はじめに 「置く棚がない変な本」ができるまで
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韓国のブックレビューがフェアネスにあふれていたので、日本のAmazonレビューにモヤモヤしてしまったという愚痴

韓国のブックレビューがフェアネスにあふれていたので、日本のAmazonレビューにモヤモヤしてしまったという愚痴

今の嫌韓ムードの中でこんなこと書くと、一部から反感買いそうな気もしますが、記憶と印象が新しいうちに書き留めておきます。

拙著「おカネの教室」の韓国版が出てちょうど1カ月たちました。

私、ハングルはさっぱりなんですけど、Google翻訳に頼ってなんとか韓国ネット書店最大手の「YES24」にたどり着きまして。
どうやらこちら、ライブのチケットも扱っているようで、K-POPファン御用達みたいな存在っ

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SFに息吹を吹き込む新たな古典の誕生 『三体』

SFに息吹を吹き込む新たな古典の誕生 『三体』

本稿は光文社のサイト「本がすき。」に8月8日に寄稿したレビューです。編集部のご厚意でnoteにも転載しています。

話題の中国発の大作は、評判に違わぬ一気読みのエンターテインメント性をそなえた第一級のSFだ。多くの識者が指摘しているように、スケールの大きさとグイグイと引き込むストーリー展開は巨匠アーサー・C・クラークの古典「幼年期の終わり」を想起させる。

『三体』早川書房
劉慈欣/著 立透耶/監

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子どもを読書家にする「待ち伏せ型」本棚のつくり方

子どもを読書家にする「待ち伏せ型」本棚のつくり方

冒頭からタイトルを真っ向から否定するようで恐縮ですが、「子どもを読書家にする確実な方法」なんて、ありません。ハナから無理だと思った方が良い。

スルーがデフォルト私は、本を人に薦めるのがうまい。書評を書いたり、飲み会などで本をオススメしたりすると、かなり食いつきが良い。
そして私は相当の本好きでもある。
先日、引っ越した際、某アート引越センターのベテランさんに、「数千件の経験のなかで本の量だけなら

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"お金は汚い"と洗脳された子の末路

"お金は汚い"と洗脳された子の末路

誰かが肥えるための「養分」になる
本稿は2018年10月にPRESIDENT Onlineに寄稿した文章です。転載をご快諾いただいた編集部に感謝いたします。一部だけ加筆・修正しています。
これがバズって、その日のうちに拙著「おカネの教室」がAmazon総合トップに駆け上がったヒット作でございます。未読でしたら、ぜひ。

クレジットカードのリボ払い、高リスクの投資信託……。詐欺のような犯罪だけではな

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乱読家のための読書リスト

乱読家のための読書リスト

私にはめったやたらと人に本を薦めるという悪癖がある。
これなんかはその悪癖の発露なのだが、おかげさまで未だにコンスタントに読まれる大ヒットとなった。ビュー、1万2000超えてます。

今日からツイッターで、こんなネタアンケートをやっている。

ここでも、隙あらば本を薦めたいという魂胆が見えみえだ。
明日5月18日いっぱいが期限なので、気が向いたら清き1票を。ついでにフォローもお願いします!

ここ

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「深い」小説って何ですか? 「おカネの教室」ができるまで番外編

「深い」小説って何ですか? 「おカネの教室」ができるまで番外編

新シリーズ開始の前に、ちょっと小説論(のようなもの)を書いてみたくなった。
こちらのシリーズ1総集編をご覧になってからの方が話が見えやすいです。

なぜか多い「映画化希望!」書籍版、Kindle版を通じて、読者からたくさんの感想をいただいた。
リアルでお会いした方やAmazonレビュー、ブログのコメント等をあわせると、200人ぐらいの「声」に接したと思う。
大半を占めるのは以下の3パターンだ。

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「お金は怖くて、面白い」と娘に伝えたかった  高井浩章インタビュー

「お金は怖くて、面白い」と娘に伝えたかった  高井浩章インタビュー

ミシマ社とインプレスによるレーベル「しごとのわ」の新刊「おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密」の作者、高井浩章さんは3人の娘を持つ現役の新聞記者だ。「おカネの教室」は、中学校の「そろばん勘定クラブ」という奇妙な経済・金融講座を舞台とした青春小説というユニークな作品になっています。異色作はどうして生まれたのか。7年も続けた家庭内連載で娘に伝えたかったメッセージは何か。父親として、本が生まれ

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「口コミ」ロングセラーの作り方

「口コミ」ロングセラーの作り方

なぜ『おカネの教室』は売れ続けているのか

2018年3月の発売から9刷を重ねるロングセラーとなっている『おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密(しごとのわ)』(インプレス)。大手メディアへの露出がほとんどないまま、じわじわと部数を伸ばしている原動力はネット中心の「口コミ」の力だ。情報発信力の高い応援団の存在感や、読者のSNSへの「全レス」など口コミ拡散の舞台裏や狙いを著者の高井浩章氏に聞

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サイン本の魔力

サイン本の魔力

基本、「本なんて、読めりゃいいだろ!」という人なのですが、実はこの信条に反する弱点があります。
サイン本に弱いのです。何とも言えないお得感・お宝感があるな、と。
きょうは、ささやかな私のコレクションをご紹介(自慢です、はい)するとともに、物書きの端くれとして「ご要望あれば、ナンボでもやりまっせ!」というお話でございます。

大物サイン本コレクションまずはこちら。ピューリッツァー賞に輝くダニエル・ヤ

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