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140文字小説

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Twitterで日々投稿している140文字小説をまとめたものです。
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2021年6月の記事一覧

交際の鉄則 (140文字小説)

交際の鉄則 (140文字小説)

 俺は一人の女では満足できない。

 女は常に二股だ。

 だが、ルールはある。

 同じ名前の女と付き合うのだ。

 寝言で別の女の名前など、修羅場をまねく。

 だが、本気で好きな女ができた。

 俺は二人と別れ、その女に告白した。

「ごめんね!彼氏と名前が違う人とは付き合わないようにしてるんだ」

恐怖のラブレター体験 (140文字小説)

恐怖のラブレター体験 (140文字小説)

 ええ、本当に恐ろしい体験でした。

 ラブレターをいただいたんですよ。

 それだけなら、嬉しいんです。

 でも、どこにあったと思います?

 下駄箱?いえいえ。

 私がアパートの部屋で用を足し、トイレットペーパーを引くと、達筆でお経のような恋文がしたためられていたんです。

 大家さんからの。

彼の星 (140文字小説)

彼の星 (140文字小説)

 満天の星空になると、私は彼を探す。

 原っぱに体を預け、星に目を走らせる。

「婚約指輪の代わりに、あの星を君に贈るよ」

 歯の浮くセリフに、思わずケラケラ笑ってしまった。

「僕が死んだら、あの星から君を見守るから」

 言葉って現実化するんだよ。

 だから、きっと見守ってくれてるよね。

買い物しようと街まで (140文字小説)

買い物しようと街まで (140文字小説)

 次のニュースです。

 世田谷で買い物に出掛け、財布を忘れた女が逮捕されました。

 女は「笑うな」と、スーパー内で騒いだ威力業務妨害の容疑です。

 取調べに対し「みんなが笑ってた。お日様が笑ってた」と、支離滅裂な言動を繰り返し、警察は精神鑑定も視野に取調べを進めています。

 次です。

BIGボーナス付き自販機 (140文字小説)

BIGボーナス付き自販機 (140文字小説)

 のどが砂漠のようだ。

 目の前に、当たり付き自販機があった。

 『数字が揃えば一本』とある。

 俺は投入口に、硬貨を滑らせた。

 止まった数字は776。

 残念、ハズレだ。

 だがジュースも出ない。

 詰まったか?

 『一本』の文字の横に、小さな注意書きがある。

 『揃わないと出ません』

 金返せ!!

黒い連鎖 (140文字小説)

黒い連鎖 (140文字小説)

 クラスの地味な子でストレスを発散している。

 毎日上履きや鞄を隠すのが日課だ。

 終わると、私は帰途につく。

 家では親の拳が飛んでくる。

 幼い頃から、私は親のストレス発散の道具。

 私のストレスは明日発散する。

 次の日登校すると、地味なあの子に突然刺された。

「ああ、すっきりした」

理容師の勘 (140文字小説)

理容師の勘 (140文字小説)

 DJが突然叫びました。

 なんとおっしゃったのでしょう。

 聞き返すのも失礼ですね。

 ここは長年の勘を信じましょう。

 強面の方ですので、威厳あるお仕事と推察しました。

 鋏と剃刀と紐が必要ですね。

 侍ヘアーの完成です。

 いかがでしょう、お客様。

 え?イカした髪型?

 イカれた、ではなく?

糸の心 (140文字小説)

糸の心 (140文字小説)

 空を舞う風船の糸を、つかむようだった。

 私の心は、パッとつかまえられた。

 きっかけは領収書の指摘のため、彼のデスクに赴いたこと。

 相好を崩し、わざわざありがとう、と言ってくれた。

 数ヶ月後、私は想いを告げ、彼のものになった。

 バッグの中で、スマホが揺れた。

 たぶん夫だろう。

因果の罰 (140文字小説)

因果の罰 (140文字小説)

 イラついたときは「ボール」を蹴る。

 くそ課長め!

 帰るなり俺はボールを蹴飛ばした。

 ボールは呻き声をあげた。

 すっきりして眠り、目が覚めるとやけに目線が低い。

 手が猫?

 突如身体に悶絶するような衝撃が走った。

「痛いだろ」

 俺が、俺に話しかけてる。

「今度から、お前がボールだ」

おとめの悩みごと (140文字小説)

おとめの悩みごと (140文字小説)

 初めて彼の部屋の湯船に沈んでいる。

 夕立に感謝だ。

 このあとは…だよね。

 長過ぎたら気合い入れてるみたい。

 でも汗のにおいは嫌だし。

 あれ?ボーッとする…

 瞼を開くと、見慣れない天井。

 服も来てる…

「み、見た?」

 彼は頬を染め、

「大人でもあるらしいよ」

 お尻の蒙古斑バレた~!

お魚くわえたドラ猫を追っかけてはいけない (140文字小説)

お魚くわえたドラ猫を追っかけてはいけない (140文字小説)

 魚をくわえた猫を追っている。

 右手には包丁、左手にはまな板だ。

 猫は突き当たりを右に折れた。

 曲がった先で、まな板を勢いよく放った。

 猫をかすめたが外れた。

 次は狙いを定め、包丁を投げる。

 これも外れた。

 猫は見えなくなった。

 苛立ちながら踵を返すと、拳銃を構えた警官隊がいた。

君のためなら (140文字小説)

君のためなら (140文字小説)

「あ~ん、重くて開けられな~い」

 非常口のドアか。

「さあ、開けたよ」

 かわいいやつだ。

 君のためなら、なんでもやるさ。

「で、社長を殺した動機は?」

「彼女のためだ!」

「社長夫人は強盗に拉致されたと証言している。凶器や逃走経路にもお前の指紋しかない」

 え?あれはそのため?

犯されたロボット三原則 (140文字小説)

犯されたロボット三原則 (140文字小説)

 密室で資産家が殺された。

 凶器から犯人のDNAは出なかった。

 室内にいたメイドロボの記録装置は故意に消去されていた。

 防犯システムも同様だ。

 迷宮入りか。

 だが事態は急展開した。

 資産家の家で、破壊された執事ロボが発見された。

 主人に恋人を殺されたメイドロボは淡々と自供を始めた。

彼女の遺志(140文字小説)

彼女の遺志(140文字小説)

 今日、僕も死んだ。

 心臓が活動を止めたわけじゃない。

 脳が機能を停止したわけじゃない。

 僕のすべてだった彼女が、天に旅立った。

 彼女がいない世に、僕がいる必要もない。

 僕もすぐに行く。

 病室を片付けていると、一通の封筒を見つけた。

 中には、一枚の手紙。

 『死んだら許さないから』