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140文字小説

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Twitterで日々投稿している140文字小説をまとめたものです。
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2020年12月の記事一覧

青春の便箋 (Twitter140文字小説)

青春の便箋 (Twitter140文字小説)

 本棚の整理中、ふわりと一通の手紙が床に落下する。

 青春を封印した小さい便箋。

 宛名は中学生の私の心を奪った人。

 渡せなかった甘い恋心。

 物懐かしさに開くと、拙い文字と文の羅列に熱い情熱。

 自嘲のような笑みが溢れ、仏壇へ供える。

「あなたに五十年前渡せなかったものです」

悪戯心 (Twitter140文字小説)

悪戯心 (Twitter140文字小説)

 電気ストーブの前で彼は寝息を立てていた。

 極楽を感じる表情に、私も自然と口元が緩む。

 ふいに芽生える悪戯心。

 頬をツン。

 ピクリ。

 体をジャーキングのように震わせ、片目をうっすら開く。

 まどろむも私の帰宅に気づき、撫でてよとお腹を晒す。

 もお、今日も愛猫に仕事疲れが消える。

遅い恋心 (Twitter140文字小説)

遅い恋心 (Twitter140文字小説)

 おはよう、の声と共に毎朝勢いよく僕の肩を叩く子がいる。

 脱臼の際の治療費請求の為、毎日記録を取る。

 ある日、理由を尋ねてみた。

「いざというとき君を助けるためだよ!」

 三日後、いざが来て彼女は僕を救った。

 朝の恒例の出来事が消え、僕は涙と共に、遅い彼女への恋心を自覚した。

街頭インタビュー (Twitter140文字小説)

街頭インタビュー (Twitter140文字小説)

 三回目のデート。

 今日は勝負の日だ。

 服も化粧も前回より闘魂注入。

 あとは想いを告げるのみ。

 綿密な計画に抜かりはない。

「街頭インタビューなんですけど、お二人は恋人ですか~?」

「ええ」と頷く彼に、

「ふびゃあ」と奇声を漏らす私。

 翌日、それは全国へ白日のもとに曝された。

秘密の合図 (Twitter140文字小説)

秘密の合図 (Twitter140文字小説)

「お疲れさま」

 労いの言葉と共に、湯気が沸く頭にふわっとタオルが降ってくる。

 その色に彼は口許が綻ぶ。

 赤はデート。青は直帰だ。

「タイム伸びてるじゃない」

 何気ない会話を心掛けるが、二人の心は真っ赤っかだ。

「あいつら今日はデートみたいだぞ」

 周囲には露見しているようだ。

迫られる決断~バス停での恋模様~ (Twitter140文字小説)

迫られる決断~バス停での恋模様~ (Twitter140文字小説)

 俺はいま重大な決断を迫られている。

 ベンチを後にするかしないか。

 夕刻の薄暗さに気づかず腰を下ろせば、隣はまさかの想い人。

 決断は迅速に。

 だが、ふわっと香る彼女の香水が俺の決意を挫く。

 次のバスまでと俺は自分に褒美を与える。

 ふいに彼女と肩が触れる。

 これは極上のご褒美だ。

不測の事態~バス停での恋模様~ (Twitter140文字小説)

不測の事態~バス停での恋模様~ (Twitter140文字小説)

 どうしてこうなってるの。

 私は憂悶とする。

 夕映えが眩しいバス停。

 狭いベンチの隣には一方通行の恋の相手。

 こんなの予定にないよ。

 頬を刺すつめたい風にブルッと肩を竦める。

 かすかに触れる肩と肩。

 ビクッと距離を取る様は完全に挙動不審者。

 チラリ横目で窺うと、あれ?彼も赤い。

好き未満の女子 (Twitter140文字小説)

好き未満の女子 (Twitter140文字小説)

 クラスの気になる以上好き未満の女子が公園のベンチに腰かけていた。

 俯く様に声を掛けてみたが、すぐに浅慮さを後悔した。

 涙を堪えているのが、ありありと伝わった。

 ハンカチを渡し踵を返すと、袖をギュッと掴まれた。

「ごめん……いてくれない?」

 とくんと僕の心の未満が姿を変えた。

優雅な時間 (Twitter140文字小説)

優雅な時間 (Twitter140文字小説)

 密雲の隙間に蒼の空がある。

 大量の白雲は余計に空色を映えさせる。

 心の汚れは空が吸収してくれそうだ。

 ぼんやりとその偉大さに感嘆とする。

 ガンッと頭頂部に霹靂のような衝撃が落ちる。

「日直さぼって、なにごろごろしてるのよ」

 幼馴染みとかくれんぼ。

 優雅な時間は終わりを告げた。

朝食のイケメン (Twitter140文字小説)

朝食のイケメン (Twitter140文字小説)

 パチッと熱い音を立て受け入れの準備が整う。

 少量の油を均し、コンコンと音を叩く。

 ジュッと食べられないパンが美味なる音を奏でる。

 眉より高い位置から、塩雪が舞う。

 荘厳な黄金を取り囲む純白の絨毯。

 今日も彼女はご機嫌になるだろう。

 寝惚け眼の嫁が目をこすりながらやってきたぞ。

始まりの予感 (Twitter140文字小説)

始まりの予感 (Twitter140文字小説)

 薄明を迎えると僕は使い古しのランニングシューズの紐を結ぶ。

 うっすらと空が白む時間は、心がゆっくりと浄化されるようで好きだ。

 駆け出す僕の前からポニーの尻尾をなびかせた人が来る。

「おはようございます」

 にこりと笑むその人に、鼓動が急速になる。

 これ走ったからじゃないよね?

涙の波紋 (Twitter140文字小説)

涙の波紋 (Twitter140文字小説)

 水たまりに、ポツポツと描かれる芸術性が高い円形。

 輪と輪が互いの領域を侵す様は、とても幻想的に映る。

 ふと、ポツリと一際重厚な円ができる。

 二粒、三粒と段々と折り重なっていく。

 涙でも波紋ってできるんだ。

 下ばかり向いてても、いいことないぞ。

 上を向け!

 がんばれ!あたし!

いまこそ決断を下すとき (Twitter140文字小説)

いまこそ決断を下すとき (Twitter140文字小説)

「送信」をタップする指が、緊張し激しく痙攣している。

 熟考と懊悩を繰り返し、ようやく納得いくものが完成したが、最後の勇気が挫かれる。

 プルプル刻む私に、「うざい」と横の妹が無神経な行動。

「ああ」と叫ぶが、もう遅い。

 ポンッと「おけ」と軽快な音が弾かれる。

 でかした妹よ。

どっち? (Twitter140文字小説)

どっち? (Twitter140文字小説)

「野球とサッカーなら、どっちが好き?」

 小学生の頃、幼馴染み達が尋ねた。

 一対一の真っ向勝負にロマンを感じる僕は''野球''と答えていた。

 中学で幼馴染み達は真っ向勝負を挑んできた。

「私達のどっちが好きなの!?」

 優柔不断な僕は返答に窮する。

 誰か僕のパスを受け取ってくれない?