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エッセイ

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ノンフィクション、実録エピソードです。生きづらさ、自己肯定感、悩みが中心。
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#子どもに教えられたこと

大丈夫じゃなくても大丈夫なふりをしてしまう

大丈夫じゃなくても大丈夫なふりをしてしまう

先日アフタースクールの面談で、小学1年生の長男がどう過ごしているか教えてもらった。「基本的には問題ないんですが、大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをしてしまう時があるんですよね」と先生から言われた。

長男にはよく一緒に遊ぶ、Aくんという男の子がいる。Aくんは長男と二人きりで遊びたいタイプの子だ。だから他の子たちが「仲間に入れて!」とやってきた時、Aくんは長男に「なんか、人いっぱい来ちゃったな……あっ

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ぎっくり腰で、車に轢かれそうになる #育休から育業へ

ぎっくり腰で、車に轢かれそうになる #育休から育業へ

第二子の育児休業は、ぎっくり腰とともに幕を開けた。

長女が生まれたのは、長男が2歳の頃だった。0歳と2歳の子供たちは、二人とも赤ちゃんみたいなものだ。どこかへ移動する時は2歳長男をベビーカーで、0歳長女を抱っこ紐に入れていた。

栄養不足、運動不足、寝不足。母親にとって産後は、足りないものをあげたらきりがない。育児給付金もしばらく経たないと振り込まれないから、お金も満足にあるわけじゃない。
当時

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1日100円でできる、3児ワーママの育児ストレス解消法

1日100円でできる、3児ワーママの育児ストレス解消法

 フルタイムで会社員をしながら、ワンオペで3児を育てている。正直に言おう。めっちゃ辛い。「子供をかわいいと思えない」「優しくできない」とか、そういう次元の問題ではない。そんな贅沢な悩みはTwitterを開き、140字を書き終わる前にスッキリするはずだ。悩む前に「保冷剤持ってきて(2歳)」「牛乳飲みたい(4歳)」「宿題やりたくねえ!(7歳)」と繰り出されるコンボに対応していかなくてはならない。体力と

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トシオ6号

トシオ6号

 20年ぶりに母校の小学校へ足を踏み入れた時、校庭で大きな違和感を覚えた。運動場の隅に、直径1mほどの木箱が5つほど設置されているのだ。根がボンクラにできており、小学生なんて久しく接してこなかった私は「ここに生徒を入れていじめるのかな」と暗い妄想にふけってしまった。足を進めると、3人ほどの小学生が木箱を囲んでいた。彼らに近づき、私はぎょっとしてしまった。箱には大きく「トシオ」という人名が書かれてい

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不愉快だった料理を、楽しくさせてくれたもの

不愉快だった料理を、楽しくさせてくれたもの

「苦手なことは?」と聞かれたら、真っ先に「料理です」と答えていた。

 就活時代、この返しは大半の面接官に、冷ややかな笑みを浮かべさせた。
「こいつと結婚する男は苦労するだろうな」という憐れみと、
「俺がそうでなくて良かった」という安心感が、歪んだ口元から伝わって来た。

 数年後、そんな女と結婚した男、つまり現在の夫は、その事実を知る由も無かった。
 私の料理スキルが上がったのではない。夫は激務

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血と涙と餃子

血と涙と餃子

 好きな店を聞かれて、いつも愕然とする。三十三年の人生で、今まで散々食べ歩いてきたくせに、どこも思い浮かばない。

 現在、住んでいる東京は『世界中の食を堪能できる街』と言われる。確かにイタリアン、フレンチ、中華、変わり種ではベトナム料理やブルガリア料理まで、何でもそろう。そんな東京での生活が十二年目を迎え、他に世界二十五か国も旅してきた。しかし、記憶に残る店がないのだ。

 これではnoteはお

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NO MORE嫌がらせ,子連れママの護身術

NO MORE嫌がらせ,子連れママの護身術

「金髪ショートにして下さい」と美容院で告げた時。珍しい虫を見るような目をした美容師さんが、鏡に映っていた。

「本当に良いの?」
 美容師さんは、私の髪を手ですいて言った。やっとのことで到達した、念願の茶髪ボブだと知っての発言だった。
「良いんです。強くなりたいから」
 言ってみて、自分でもバカみたいだと思った。美容師という人種は、深入りしない方が良い話題を知っている。美容師さんは頷き、薬剤つくっ

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【エッセイ】エクストリーム・コロナ~医者の家族編~

【エッセイ】エクストリーム・コロナ~医者の家族編~

秋晴れが気持ち良い、ある日曜日の朝。久々に仕事がなくて珍しく家にいる夫と、子どこたちがはしゃぐ声が聴こえる。「朝ご飯を食べがてら、君たちの好きな、大きい公園に行こうか」と提案する夫に、4歳の長男と2歳の長女の歓声が上がった。普段あまり家にいない夫も、家族らしいことができて嬉しいのだろう。
コロナで外出自粛要請は出ているものの、公園なら密ではないし、自分とは無縁の世界だろう。そう思い、出かける準備を

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【エッセイ】1000人に1人の難病

【エッセイ】1000人に1人の難病

あれは長男が五歳になった、夏の終わり。彼の闘病生活が三年目を迎えた頃だった。小児科外来の待合室で、長男の名前が呼ばれた。スマホで動物の動画を観続ける長男を引きずるようにして、私は診察室へ入っていった。白い壁、白いベッド、白衣を着た初老の先生。毎度おなじみの光景だ。前触れなく急変する長男の体調とは正反対で、心休まる場所だった。そのはずだった。

私たちが腰掛けると、先生はにこやかに長男へ尋ねた。

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