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amme の人気記事をまとめました。
このマガジンでは難病とADHDをもつあたしと、おじさんみたいだけど可愛いダーリンの日々のお話をまとめました。こんな恋もあるんだな、と楽しんでいただければ。
2024年に起きた能登半島地震に際してスタートしたプロジェクトです。能登半島の一日も早い復興を願いながら、101話を目指してショート・ショートのストーリーを書き続けます。 note を通してサポートいただいた金額は、すべて「令和6年能登半島地震災害義援金」に寄付させていただきます。能登半島に祈りを込めて。
不定期で更新している、成人向け小説『つぼみのままの白百合』をまとめたマガジンです。 ※この小説には性的な表現が含まれます。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします。
約1万文字の創作短編小説。2022年、ある文学賞に応募するために書いたものです。
「そういえば、彼氏はどうしてるの」 友人が何気ない風を装って、そう尋ねた。振り返ったが、彼はあたしの方を見ようともしなかった。 「そうねぇ」 あたしは、少し悩む。…
待ち合わせ場所にやってきた友人は、髪の毛を切ったばかりらしく、何だか他所の人のようだった。 6月の東京は、突然夏がきたようなじっとりと暑い日が続いている。 …
「ご海容願います」という言葉を使う人を初めてみた。 その人とあたしは初めて一緒に仕事をしていたのだが、その日の仕事はいつもより忙しかった。 業務過多にな…
週末、恋人が訪ねてきたので、あたしたちはよそいきの恰好をして横浜のホテルまで紅茶を飲みに行った。 横浜はまだカラリと涼しく、どこか潮の匂いがした。 帰り道…
玄関に緑色のものを飾りたくなって、今年も夏が来た、とあたしは思った。 いつもそうなのだ。夏特有の湿気と、照りつける日差しを感じるようになると、きまってあたし…
5月上旬だというのに、じりじりと照りつけるような太陽だ。あたしは電車を乗り継いで、病院に向かっていた。 最近改修が済んだばかりだというその大学病院には、ぐる…
蘭の花は、ある日突然そこに置かれていた。 朝、出社したわたしは、スチールでできた書類棚の上に大きな白い蘭の鉢植えがあることに気が付いた。 「立派な蘭の花ねぇ」…
あたしは一人きりでこの文章を書いている。都内に越して、約1か月が経った。新しい仕事は、緊張感があって神経を使う反面、刺激的だ。 「そういえば遠距離恋愛になっち…
あたしの恋人は、あたしのことを時々「ねこちゃん」と呼ぶ。 「よしよし、可愛いねこちゃんね」「ねこちゃん、こっちにおいで」 それは、たいていあたしを甘やかすと…
どういうわけか、異性の知り合いの数は多い。あたしが長らく在籍した大学院という場所は、今なお男性ばかりの世界だから、こればかりは仕方がない。 恋人は、研究をき…
↓ 08話はこちらです ↓ 翌日の午後、麻里亜は再び江村家を訪れた。 「ごめんください」 玄関で呼びかけると、今日は中から「あがってください」と返事があった。どこ…
恋人は、きっと気付いていない。あたしたちがしょっちゅう「シンクロ」していることに。 恋人の思考とあたしの思考は、深層心理のクラウドの中でたぶん同期されている…
土曜日の午後は川べりに座って、スケッチブックを開く。14:00ごろには、公園をジョギングしている男の子とすれ違う。たぶん同い年くらい。あまりにも毎週顔を合わせるの…
とはいえ、ここへ来るのにずいぶんと勇気がいった。ようやく息子が通う高校にたどり着いたというのに、私は当の息子を見つけられずにいた。 待ち合わせ時間が迫ってき…
2024年7月8日 21:28
「そういえば、彼氏はどうしてるの」友人が何気ない風を装って、そう尋ねた。振り返ったが、彼はあたしの方を見ようともしなかった。「そうねぇ」あたしは、少し悩む。「忙しくしているみたいね」まるで他人事だ。ほんの少しの罪悪感が胸に広がる。 あたしの恋人は、東京で働くあたしと一緒になるために上京の準備をしているというのに。「転職活動が大変みたいなの」あたしの恋人は来年30歳になる。大がかりな
2024年6月24日 18:53
待ち合わせ場所にやってきた友人は、髪の毛を切ったばかりらしく、何だか他所の人のようだった。 6月の東京は、突然夏がきたようなじっとりと暑い日が続いている。 あたしは駅の出口にもたれかかって、友人を待っていた。「お待たせ」軽やかに現れた友人は、ずいぶん短く髪を切っていて、1ヶ月前と別人のようになっていた。「来てくれてありがとう」何よりも先にお礼の言葉が出てくるのは、彼の美徳だ。
2024年6月19日 19:15
「ご海容願います」という言葉を使う人を初めてみた。 その人とあたしは初めて一緒に仕事をしていたのだが、その日の仕事はいつもより忙しかった。 業務過多になった大阪支社の対応が遅れていて、緊急の電話やメールがフロア内を飛び交っていた。資料の不備を指摘したが、大阪支社からの返答はなく、あたしたちはやきもきしていた。 そんなとき、同報された念押しのメールにその言葉があった。「そちらの指摘
2024年6月6日 00:52
週末、恋人が訪ねてきたので、あたしたちはよそいきの恰好をして横浜のホテルまで紅茶を飲みに行った。 横浜はまだカラリと涼しく、どこか潮の匂いがした。 帰り道に思いついて、あたしたちはショッピングモールに寄った。あたしは恋人に帽子を買おうと提案した。あたしからの贈りものよ、と。 恋人はあたしの提案を喜んだ。「お洋服のことはあなたに任せるのが一番なのよ」と言いながら何軒か洋服屋をまわってた
2024年5月26日 21:18
玄関に緑色のものを飾りたくなって、今年も夏が来た、とあたしは思った。 いつもそうなのだ。夏特有の湿気と、照りつける日差しを感じるようになると、きまってあたしは緑色のものが恋しくなる。 玄関には、緑をふんだんに使ったアーティフィシャルフラワーを飾った。我が家の玄関には日光が届かないので、しかたがない。 玄関のそばに立てかけてある日傘は、白地にオリーブの葉の刺繍が入ったお気に入りのものだ。
2024年5月15日 20:43
5月上旬だというのに、じりじりと照りつけるような太陽だ。あたしは電車を乗り継いで、病院に向かっていた。 最近改修が済んだばかりだというその大学病院には、ぐるぐる自動で回る回転扉があって、何だかおかしかった。 まだ朝の9時半を少し過ぎたところだったので、病院の中は混み合っていないようだ。あたしは受付に紹介状を渡して、言われるがまま28番の窓口の前のソファに腰かけた。 まるでホテルのフロアの
2024年5月15日 15:35
文学フリマ東京へ行きます
2024年5月7日 01:26
蘭の花は、ある日突然そこに置かれていた。 朝、出社したわたしは、スチールでできた書類棚の上に大きな白い蘭の鉢植えがあることに気が付いた。「立派な蘭の花ねぇ」わたしのすぐあとにやってきた、先輩の上野さんが感心したように呟いた。たしかにその蘭の花は、しなやかな細い茎の先に厚みのある花をいくつも咲かせていた。近寄れば、甘ったるい香りがかすかに鼻をかすめた。「誰が持ってきてくれたのかしら」上田
2024年5月3日 23:24
あたしは一人きりでこの文章を書いている。都内に越して、約1か月が経った。新しい仕事は、緊張感があって神経を使う反面、刺激的だ。「そういえば遠距離恋愛になっちゃったらしいけど、大丈夫?」あたしに仕事を教えてくれているのは、5歳ほど年上の頭のいい女性で、まだ出会って数日の彼女のことを、あたしはいたく尊敬している。「意外と平気です。何も変わらない感じ」あたしたちは仕事の合間に、人影がまばらに
2024年3月17日 20:27
あたしの恋人は、あたしのことを時々「ねこちゃん」と呼ぶ。 「よしよし、可愛いねこちゃんね」「ねこちゃん、こっちにおいで」 それは、たいていあたしを甘やかすときだ。あたしは、迷わず「にゃあ」と答えて彼の腕の中にすっぽりと収まる。「あたしをたとえるとしたら何だろう?」あたしはその時、今春会社に提出する自己紹介用のテキストを書いていて、恋人にそう尋ねてみた。「猫かなぁ」恋人は即答した。
2024年3月10日 23:19
どういうわけか、異性の知り合いの数は多い。あたしが長らく在籍した大学院という場所は、今なお男性ばかりの世界だから、こればかりは仕方がない。 恋人は、研究をきっかけにして知り合ったが、研究者ではない。このことにあたしは、毎回心底安堵する。研究者たちはみんな一癖も二癖もある人ばかりで、とにかく油断ならない。恋人は頭がいいけれど、実利的な考え方を好む。研究者にはならないタイプの人間だから、信頼でき
2024年2月29日 23:17
↓ 08話はこちらです ↓ 翌日の午後、麻里亜は再び江村家を訪れた。「ごめんください」玄関で呼びかけると、今日は中から「あがってください」と返事があった。どこから声が返ってきたのかと訝しんでいると、音を立てて二階の窓があいた。今ではもはや見かけない繊細な模様が入った重厚なガラス窓だ。「いらっしゃい」軽やかな声がして、静が顔をのぞかせている。梢が影を落としているせいか、心持ち顔色が冴えな
2024年2月18日 23:24
恋人は、きっと気付いていない。あたしたちがしょっちゅう「シンクロ」していることに。 恋人の思考とあたしの思考は、深層心理のクラウドの中でたぶん同期されている。「そういえば、昨日はどうだったの?」と恋人から連絡がきたのは、今日の夜だった。昨日、あたしは仕事仲間たちが集まるパーティーに参加していて、よくあたしたちの話題に登場する女の子とのツーショットを恋人に送った。 しかし、そのころ(おそら
2024年2月10日 22:24
土曜日の午後は川べりに座って、スケッチブックを開く。14:00ごろには、公園をジョギングしている男の子とすれ違う。たぶん同い年くらい。あまりにも毎週顔を合わせるので、何となくお互い会釈する。 そして15:00を少しすぎたところで、「小さな世界」のメロディーとともにアイスクリーム屋さんがやってくる。アイスを食べるときもあるが、たいてい私は川べりに座ったまま絵を描くことに熱中している。 都内か
2024年2月9日 09:00
読みたいメモ:川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』
2024年2月2日 13:36
とはいえ、ここへ来るのにずいぶんと勇気がいった。ようやく息子が通う高校にたどり着いたというのに、私は当の息子を見つけられずにいた。 待ち合わせ時間が迫ってきて、私はいっこうに落ち着かず弱気に笑ってみせたり校舎の方をうかがったりしていたが、上手いとは言いがたい管楽器の音色が流れてくるばかりで、息子らしい少年は現れない。 無理もなかった。私はこの十五年間、一度も息子に会ったことはない。蓉子と臨