【創作ショート・ショート03】アヴィ
「うちの猫が危篤だから、あなたと別れようと思うの」
電話口でそう告げると、恋人は絶句した。ややあって、彼はこの上もなく慎重な声で答えた。
「今、なんて言った?」
「だからね、アヴィが死ぬかもしれないから、あなたとは別れる」
「どういう意味?」
私は、たった今雨が上がった中央大通りを急ぎ足で横切る。動物病院に向かっている最中だった。アヴィの容態が急変したとオフィスに電話があって、バタバタと帰り支度をしている間、私の体は絶望に浸かっていた。雨上がりの通りは、まだ10月の頭だという