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自分で感じ考えること。自身に取り込んで、じたばたしながら消化すること。

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記事一覧

語られないこと

息がしにくいのは何故だろう、 たぶんマスクのせいだけじゃない。 たとえ口に出し語られなくとも、 ことばになる以前のその何かは、 たしかに私のなかにある。 他人から…

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3年前
1

身体性と実感と

触れることや、 身体を動かすこと。 その経験こそが、物事を把握する基盤のはずが、気づけば世界は視覚情報の洪水。 画面上のやりとりは、 あくまで代替手段の一つに過ぎ…

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3年前
1

ささやかな日常に奇跡は隠れている

変な時間に目が覚めてしまった。 頭上の目覚まし時計に手を伸ばす。 2:30 薄明かりの天井を見つめていても、昼あった些細な気がかりに思いを巡らせるのがオチだ。 しばらく…

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3年前
7

肺に秋をみたす

久しぶりに空を見上げたら、 いつしか秋になっていた。 袖口を乾いた風が通り過ぎる。 深く透き通る空に、 雑踏の音が吸い込まれてゆく。 見上げたまま目を閉じて、 空を…

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3年前
2

さよならをするたびに

Every time we say goodbye, I die a little, ジャズのスタンダード、 「Every time we say goodbye」(Cole Porter)の冒頭、 高校の頃、その歌詞を、 「さよならをす…

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3年前
1

Tristeza

ゆっくり寝ててもよかったものを、 何故か早朝に目が覚めてしまった。 しょうがないから、 キッチンでお湯を沸かす。 音楽でも聴こうと、 イヤホンを耳に入れて、 スマホの…

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3年前
2

期待と評価

今日も雨。 今年の梅雨は例年より長い見通しらしい。 いい仕事をすることは それがたとえ文句なしに 良質で密度の濃いものであったにせよ よい評価を得ることとイコールに…

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3年前
10

猫とケア 熱帯魚と相互障害状況

我が家に来て、もうすぐ3年。猫のこと。 最近甘えた声で主張する。 「餌くれ」「遊んでくれ」 「朝だぞ、起きろ」 「ドア開けろ」 「バスルームに入れろ」 時に「特に用は…

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3年前
2

ヒヤリハット

カッとなった頭にのせる冷えた帽子ではない。 危ないことが起こったが、幸い災害には至らなかった事例のことらしい。 Herbert William Heinrichが1929年に出した論文が元…

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4年前
5

「信じらんない」が苦手

まだ6月上旬にもかかわらず、 一日中マスクをしているせいか、 朝から汗だく。 ストレスもあるかもしれない。 いろんな意味で息苦しい。 夏になったらどうなってしまうの…

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4年前
13

黄砂で霞む夕日を浴びながら

職場は家からみて東の方にある。 だから毎日、私は朝日に向かって車を走らせ、 仕事が終わると夕陽に向かって帰る。 冬場は職場を出るのが日没後の事がほとんどだったが、…

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4年前

冬眠

たぶん小学生くらいからだと思う。 私は今だに冬眠に憧れる。 冬が近くなれば、 森の熊やリスたちは、 せっせと巣穴に餌を溜め込む。 そして温かく心地よい寝床を準備し、…

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4年前
2

真夜中のちいさな冒険

うちの猫は家から出さないけど、 世の外猫たちは、夜な夜な「猫の集会」なるものを開いているらしい。 そういえば、私も 昔一度だけ見たことがある。 あれは確か、大学2…

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4年前
5

答えをポケットに隠して話す人

感情に蓋をしてやり過ごそうとしたこともあった。でも上手くいかなかった。 見ないようにしても感情は消えてくれない。 昔から、答をポケットに忍ばせて話す人が苦手だ。 …

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4年前
1

気づかれない程ささやかな物語

5月が好きだ。 自分が生まれた季節というのもあるかもしれない。 春に動き始めた樹々や草花の息吹が、夏へ向かって加速してゆく。 私はこの季節が好きだ。 肌をかすめる風…

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4年前
2

相棒

2007年製、ハンガリーの作家の手によるもの。 2008年からのお付き合い。もう十年以上一緒。 それまではチェコの古い楽器を弾いていた。 人に聴かせるというよりは、専ら自…

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4年前
3
語られないこと

語られないこと

息がしにくいのは何故だろう、
たぶんマスクのせいだけじゃない。

たとえ口に出し語られなくとも、
ことばになる以前のその何かは、
たしかに私のなかにある。

他人からは見えないし、
あたりまえだが、
見ようともされないそれらのこと。

そもそもないものに、
されてしまわぬか、
曇天の空を見上げる。

語ることを拒まれた、
無数のことばたち。
心の奥深くにある群青の湖底へ、
静かに降り積もる。

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身体性と実感と

身体性と実感と

触れることや、
身体を動かすこと。
その経験こそが、物事を把握する基盤のはずが、気づけば世界は視覚情報の洪水。

画面上のやりとりは、
あくまで代替手段の一つに過ぎない。

そもそもデジタル化された画像や音声を、
実体験の代わりとするには、
受け手が一定の認識的枠組みをインストールしている必要がある。文化的枠組み以前の話。
そのために、乳幼児期からの多様な感覚統合的活動や、身体を使った事物へのアプ

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ささやかな日常に奇跡は隠れている

ささやかな日常に奇跡は隠れている

変な時間に目が覚めてしまった。
頭上の目覚まし時計に手を伸ばす。
2:30
薄明かりの天井を見つめていても、昼あった些細な気がかりに思いを巡らせるのがオチだ。
しばらく寝返りを繰り返したが、諦めて寝床を離れることにした。
キッチンでコップに麦茶を注いでいると、猫がふくらはぎにそっと脇腹を擦り付けに来た。
冷たい麦茶を喉に流し込み、しゃがんで頭を撫でてやる。もしゃもしゃと顎の下を指先で掻いてやると目

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肺に秋をみたす

肺に秋をみたす

久しぶりに空を見上げたら、
いつしか秋になっていた。

袖口を乾いた風が通り過ぎる。
深く透き通る空に、
雑踏の音が吸い込まれてゆく。

見上げたまま目を閉じて、
空を肺に吸い込んでみた。

自分の中が、
秋の空気に満たされる。

高い空。
吹き抜けてゆく、
爽やかな風。

地面から上、
私の立っているこの空間は、
あの青い空と繋がっているのだ。

それを感じられたから、
少しだけ救われたような気

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さよならをするたびに

さよならをするたびに

Every time we say goodbye,
I die a little,

ジャズのスタンダード、
「Every time we say goodbye」(Cole Porter)の冒頭、

高校の頃、その歌詞を、
「さよならをするたび私は少しだけ死ぬのだ」
と思っていた。
別れとは、私の一部が死ぬことなのだと。

実は今でも、
たとえ正確にはそんな意味ではなかったにせよ、こっちの解

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Tristeza

Tristeza

ゆっくり寝ててもよかったものを、
何故か早朝に目が覚めてしまった。
しょうがないから、
キッチンでお湯を沸かす。
音楽でも聴こうと、
イヤホンを耳に入れて、
スマホのアプリをいじる。

目覚めたばかりの耳で聴く音楽は、
心の奥まですうっと浸み込むもの。
いい時間を過ごすために、
いい音楽に浸りたい。

Tristeza(Haroldo Lobo/Niltinho)
言わずと知れたサンバの名曲

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期待と評価

期待と評価

今日も雨。
今年の梅雨は例年より長い見通しらしい。

いい仕事をすることは
それがたとえ文句なしに
良質で密度の濃いものであったにせよ
よい評価を得ることとイコールになりえない。

評価と期待はコインの裏表。
評価はもともと期待に対し計られるものかもしれない。

だから、もし良い評価を得たければ
まわりの期待通りのことをやればよい。
でも、それだけでは何か足りないと思う。

コーヒーに氷を三つ。

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猫とケア 熱帯魚と相互障害状況

猫とケア 熱帯魚と相互障害状況

我が家に来て、もうすぐ3年。猫のこと。
最近甘えた声で主張する。
「餌くれ」「遊んでくれ」
「朝だぞ、起きろ」
「ドア開けろ」
「バスルームに入れろ」
時に「特に用はないが、なんとなく」
という場合もある。

まっすぐこちらを見つめ、
甘えた声で「にゃおん」と鳴く。

来たばかりのころは、
物静かな印象だった。
家から一歩も出ず、
特にかわりばえのない毎日を過ごしているように見えて、
実は本人なり

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ヒヤリハット

ヒヤリハット

カッとなった頭にのせる冷えた帽子ではない。

危ないことが起こったが、幸い災害には至らなかった事例のことらしい。
Herbert William Heinrichが1929年に出した論文が元ネタらしく、世にハインリヒの法則と呼ばれているもの。
労働災害の統計上、1 件の重大事故のウラに、300 件のヒヤリハットがあると言われている。
といっても1929年のデータだから、ちょっと根拠が弱い気がするけ

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「信じらんない」が苦手

「信じらんない」が苦手

まだ6月上旬にもかかわらず、
一日中マスクをしているせいか、
朝から汗だく。
ストレスもあるかもしれない。
いろんな意味で息苦しい。
夏になったらどうなってしまうのか。

「信じらんない」という言葉。
あの言葉に私はいつも傷つく。
他人が言われているのを聞くのも辛い。

「○○はこうであるはず」
という、その人にとっての常識
それに取り込まれない事をすれば、
「信じらんない」となる。
感情のはけ口

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黄砂で霞む夕日を浴びながら

黄砂で霞む夕日を浴びながら

職場は家からみて東の方にある。
だから毎日、私は朝日に向かって車を走らせ、
仕事が終わると夕陽に向かって帰る。
冬場は職場を出るのが日没後の事がほとんどだったが、最近は以前に比べ居心地がよくないし、わくわくする事もないから、また気が向くまで、あまり余分なエネルギーを使わず、必要最小限で取り組む努力をしている。
みなと同じでいるよう求める圧力は、
一様に我慢せねばならないような状況で特に強くなる。抑

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冬眠

冬眠

たぶん小学生くらいからだと思う。
私は今だに冬眠に憧れる。

冬が近くなれば、
森の熊やリスたちは、
せっせと巣穴に餌を溜め込む。
そして温かく心地よい寝床を準備し、
じきやってくる冬に備える。
鉛色の空からふわふわと雪が降りだし、樹々の枝に積もり、いつしか森は白くなる。
そして動物たちはふかふかの穴の中、
温もりに包まれ、夏の幸福な思い出を食べながら、まだ来ぬ春の夢を見るのだ。

昔どこかで読ん

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真夜中のちいさな冒険

真夜中のちいさな冒険

うちの猫は家から出さないけど、
世の外猫たちは、夜な夜な「猫の集会」なるものを開いているらしい。

そういえば、私も
昔一度だけ見たことがある。

あれは確か、大学2年の夏のこと。
あまりの暑さで深夜まで眠れず、
テレビも、いつしか通販番組ばかりになってしまった。
画面上部に表示された時計は、午前4時になろうとしていた。

じきまた、もわっとした朝がやってくる。
うんざりするような蝉の声と、あの熱

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答えをポケットに隠して話す人

答えをポケットに隠して話す人

感情に蓋をしてやり過ごそうとしたこともあった。でも上手くいかなかった。
見ないようにしても感情は消えてくれない。

昔から、答をポケットに忍ばせて話す人が苦手だ。
ポケットに模範解答を用意して、少しでも外れた事を言おうものなら、信じられないといった表情で、あの独特な非難の眼差しを向ける。

相手の気分を害さないためには、地雷を避けるようにして相手の意図を読み取りつつ、日本語の曖昧さを駆使しながら話

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気づかれない程ささやかな物語

気づかれない程ささやかな物語

5月が好きだ。
自分が生まれた季節というのもあるかもしれない。
春に動き始めた樹々や草花の息吹が、夏へ向かって加速してゆく。
私はこの季節が好きだ。

肌をかすめる風は適度に乾いていて、
高く澄んだ空へと緩やかに吸い込まれてゆく。

さっき洗い物ついでに淹れた珈琲。
温かいカップを手に庭へ出た。
すっとする空気が心地よい。

いつの間にかカラスノエンドウがいっぱい。
ひょろっとした茎の先、山盛

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相棒

相棒

2007年製、ハンガリーの作家の手によるもの。
2008年からのお付き合い。もう十年以上一緒。
それまではチェコの古い楽器を弾いていた。
人に聴かせるというよりは、専ら自分のために弾く。スケール弾いて終了とか、エチュード弾いて終わりとか。たまに曲を弾いてもバッハの無伴奏から一曲くらい。しかもゆっくり。
心でイメージして、身体で音を出す。
それに対して楽器が響いて返してくれる。
その日その日で、反応

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