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『バックステップでスペースと勢いを作る』フットボールペアレンツ101

こんにちは。マコトです。

今回の動画は「スピードや正確さ」で魅せるようなものではありません。スピード自体はめちゃめちゃゆっくりです。確認しているのは身体操作と事前準備です。

ハルキの動作をこのように動画に収め、ひとつひとつ確認しながら「実戦において有利になるためにはどのようなプレーが効果的であるか」を検討します。まずはこのシーン。

リターンパスを受ける直前の動作

上の写真ではパスを受ける前に、奥の青のコーンに向かっていくルートを選んでいます。ルートを決めたらボールを受ける前にハルキ(水色シャツ)はバックステップをして傾いています。自分の前に加速するスペースと勢いを作るためです。

このバックステップがすごく効果的だとわかってきました。この準備=バックステップをしないでいきなりボールを受けると、立った状態(止まった状態)から走り始めることになってしまいます

準備不足でも、そこからの動きが素早ければ「すごいスピードだ!」となるわけですが、そういう後から足で作ったスピードと、事前準備で作ったスピードはぜんぜん違います。しかしそれらの違いの大きさは、実際に自分で比較・体感してみないとわかりません。外見からはプレーの質の見分けはつかないでしょう(※体感している人は、見分けが当然つきます)。

準備をせずにその場から走り始めてしまうと、加速がないだけでなく、プレーをキャンセルすることが難しいですし(動作の指令を出したばかりなのでキャンセルしづらい)、守備者とスタートのタイミングがそろってしまいます。一方、空間を作るとその空間とボールへアクセスする時点で相手よりも加速できていて文字通り、瞬間的に有利になれますし、相手の動きを見てプレーを変更することも容易になります(守備者とちがうタイムラインで動いているため)

「ボールが予想外のところに来た場合」のリカバリーも動画にあります。ハルキは身体を止めずに足を組み替えることで対応しました。すでに一歩目を踏み出してスピードが作り出せているので、進行方向への慣性は利用しつつ身体のどこかにさえ当てれば、目的の青いコーン方面への移動に支障はありません。これが準備をしていないと、さっきまでいた位置からボールを追うことになり、追った先から改めてスピードと方向を作ることになります。

準備と決め打ちの見た目の差はきわどいですが、「準備=次の動作を決め打ちする」ということではなく、「準備=さまざまな状況に対応できる身体の状態および空間を作ること」であり、その差はものすごく大きいです。

対人戦における具体例を挙げます。

次のシュートの動画(2本シュートを打っている)の1本めでは、ボールコントロールが思うようにいっていない瞬間があるように見えます。しかし身体を止めない・用意した空間へ運ぶという原則が働いていると、何事もなくリカバリーできます。空間とスピードを作る準備ができていると、トラップミスという概念がなくなります。

また、ほとんどの守備者は「どこかで身体を止める局面を作る」ので、自分の側が「身体を止めないと対人戦がものすごく有利」になります。二本目のシュートの直前、ハルキがスピードを止めるようなしぐさ見せたら、相手の白いシャツの選手の動きがわずかに止まりました。ところがハルキの側は止まっていなくて、次の動作にすでに移っていてシュートを打ちました。

自分と相手の時間軸のズレを作るためには、次にしようとしているプレーに対してどれだけ早く準備しているかがポイントとなります。身体を止める動きを減らし、常に加速のタイミングを測る。軸足を作らず、加速できるような傾きを作る。目の前に加速していくスペースを作ったり、そのスペースの有無を見極めることで、プレーの質が飛躍的に改善されます。

以下の動画の中で、私が一番好きなプレイヤーは冒頭のバイエルンの左奥の黄色いシューズの選手です。まったく身体を止めないし(軸足が登場しないし)、準備を整え続けています。自分の目の前のスペース作りとスペースの把握に長けているし、相手よりも常に速い準備ができています。棒立ちの人との差は歴然です。

その場だけの早いダイレクトパスは鮮やかに見えますが、それよりも毎回体勢を整え直し、自分の前のプレイエリアを把握し、相手との位置関係でパスを選択することが、試合で活きるプレーにつながると思いますし、そのようなプロセスを経ないパス練習(身体を止めたまま、足元に来たボールを、その瞬間に見えたパスコースに出すだけの練習)ではなく、常に準備を整える練習を積んでおきたいと思っています。

フットボールを楽しんでいる人の参考になると嬉しいです。

以下、バックナンバーです。

◎01~10

01 『親としてはやめてほしくない』
02 『できない子を笑わない』
03 『サッカー選手になれなかった人がフットサル選手になる』
04 『サッカーに熱心な親だらけ!』
05 『左足で走るのが苦手とかあり得る? 個人的には画期的な大発見』
06 『走る(ドリブル)は誰でもできる』
07 『子どものプレーにイライラしがちなお父さんお母さんへ』
08 『両足で蹴ればシュート力は2倍になるぜ!!!』
09 『セレクションは気にしない!~12打数12安打11ホームランでも、まぁまぁはまぁまぁ』
10 『パパはゲームメーカー! ボールにいかないと世界がまったく変わります!』

◎11~20

11 『思い出しただけでイラつく経験を語っても……』
12 『ボールにいかない派とかじゃなく、目的は何かっていう話なんだけど』
13 『ボールにいかないと1人目のディフェンスはいないも同然。味方はグラウンダーでパスを出さなくてもいいし、利き足じゃなくてもかまわない』
14 『子どもが主役の合宿は、世代を超えて受け継がれていた』
15 『イノシシやゴリラにプレスされても大丈夫! ~今が未来につながっている~』
16 『リフティング(1) ボールを拾って役立てようと 僕は思ったわけでもないが』
17『リフティング(2) 空に向かって蹴るのが楽しい!』
18 『リフティング(3)親と性格が違い過ぎると怒っちゃう問題はこうして解決した』
19 『リフティング(4)私たち親子が回数を目標にしなかった理由
20 『親視点(1)みんなドリブルでいっちゃうツライ日々』

◎21~30

21 『牛若丸ターン! ターン後の着地の姿勢で勝負がついていた』
22 『ドリブルの練習をやめたら劇的にうまくなりました』
23 『質問です。未来を意識していた人は誰でしょう? ゴールの角上とつながる』
24 『原文ママさん 手持ちの動画について意見を交わし合う場を作りました』
25 『世代なので死ぬまでにマラドーナのドリブルを身につけたい――運動神経がダメダメな私でも走れば抜けます
26 『ゴールへの意識があればレアルマドリードにもたどり着ける
27 『4ステップはつまずきそうで怖いという質問への回答』
28 『ギュンです! ボールに触れた瞬間に超絶加速する――写真の次のコマの形を当てられたらあなたは名選手に違いないです』
29 『続ギュンです! たいして傾いていなくてももちろん抜けます』
30 『ハルキの自主練なんて一回もみたことないです』

◎31~40

31 『内田史上最強の動き――研究手を基本動作にするプロセス』
32 『7番と9番へ! ディフェンス目線で整理する走る(ドリブル)2022年8月バージョン』
33 『トップ選手との対決で学んだこと――真夏の微妙な大実験』
34 『ボールにいっちゃっている状態とは何かよくわかります』
35 『手を動かしてイラストにしてみるとフォームを覚えられます――中西を描いてみる』
36 『フリーキックの練習を初めてしました』
37 『4ステップがない世界はもう考えられない』
38 『パパさんでも5人ダイレクト成功』
39 『ボールのレイヤーと身体のレイヤーが違うことで、滑らかなスーパープレーが生まれる』
40 『身体はオートマチック、判断はコース取り』

◎41~50

41『プロは目指すものじゃない――どうしても怒っちゃう自分を克服したきっかけ』
42 『ボールなしの練習は最重要!! しゃべるが先で飴玉は後』
43 『走りながらボールに合流する方法』
44 『すべてのプレーはゴールへ続く』
45『景色のプレーと脳内のプレー』
46『試合を動かす選手になる』
47 ルールは拘束的なものではなく、創造的なもの』
48『ドリブル超得意だけど、、、ドリブルのドの字もみせないぜ!
49 『親視点(2)止める蹴るを正確に!! なんてまったく考えていません』
50 『そもそもシュート練習をする前に・・・

◎51~60

51 『なぜ父親が練習しているのか』
52 『 身体を止めずにシュートを打つ』
53 『常識よりも前提。短い距離でもインステップ 』
54 『三手一組の準備ができていれば得点王も夢ではない 』
55『あわや大ケガ……準備も確認も怠らないこと』
56『日本人ってメチャ楽しそうにプレーするね!』
57『忍者?! 一瞬の速さだったら体格差は関係ない』
58『メッシはボールコントロールではなく、身体のコントロールが正確なのでは』
59『ワンステップシュートで文字通り✨超一流✨』
60『このドリブルの最大のコツは、ディフェンスの矢印に意識を払うことだけど』

◎61~70

61『動画編集=宝さがし』
62『ディフェンス時における身体操作(第1歩目)』
63『攻撃の手を緩めない 足を止めたりしない』
64『上手く止めることを目的にしない』
65『次の展開を予想しないでプレーする方がずっと難しくないですか?』
66『親の自分もビビッてしまうけど・・・何ができないかを知りにいく! 』
67『守備の意識が劇変しました』
68『ジンガやフリースタイルのように見えるかもしれないけど』
69『引き込みドリブルのbefore after
70『自然に思えたプレーがエラーだと気づく』

◎71~80

71『自分も味方も等価で全員を一緒に動かしているイメージ』
72『すべては自分次第。ボールウォッチャーになる? それとも得点者になる?
73『オレは基本的にダイレクトでプレーするぜ!
74『決め打ちを見破れれば超一流』
75『スピードが遅い人は 矢印をたよりに!』
76『ハルキの即接地トラップ、イニエスタ選手のトラップ、日本代表のトラップ』
77『毎日プレー動画を編集。研究を続ける』
78 『シュートはすべてギリギリのコース。狙うは角上!』
79『練習後のお楽しみ』
80『練習すると下手になることもある』

◎81~90

81『AIが判定するベストプレイヤーになる』
82『ステップ2回はマジで慌てるんですけど』
83『好プレーのショート動画を編集する』
84『ハードスルーは超便利!』
85『トラップとターンとシュートが一つの挙動になる
86『大前提を忘れない』
87『引き込みターン~ボールと身体の分離』
88『100%のキャンセルが出来たのは史上初かも』
89『親子リフティングで意識したいくつかのこと』
90『毎日もうやめたい、下手くそすぎると思ってプレーしているけど、たぶん明日もやめない』

◎91~100

91『走りながら蹴る』
92『ジャゴナウのような新しい動きを学ぶときも、決め打ちでトレーニングしてはダメ』
93『100パーセントキャンセルと半歩ズラしシュート』
94『反発ステップで大事なのは1歩1歩の加速。7番9番で大事なのは勇気』
95『ブロックカットインと2段階加速ドリブル』
96『カットインキャンセルとコンビネーション』
97『いろいろ動画を上げてるけど、トッププロ相手に勝てるのか問題への解答』
98『キック&ダッシュではなく、ダッシュ&キック』
99『いつか、この空の美しさを思い出す日がきっと来る』
100『連載を100回続けて見えた景色』


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