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『ボールのレイヤーと身体のレイヤーが違うことで、滑らかなスーパープレーが生まれる』フットボールペアレンツ039

藍澤誠/Jの先生です。

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今日のハルキの動画はこちらです。

タイトルは『ボールにいかないリフティング』と題しています。この練習では、ボールをつく回数なんて全く関係なく、次のような点に注意してトレーニングしています。

(1)蹴り足の軌道を体に対して正面、まっすぐにスイングする(大森アップのスイングと同じ動作=走る動作と同じにする)
(2)ボールにタッチしたあと軸足を残したままにしない
(3)蹴った後スクワット姿勢になり次の動作に備える。
(4)スクワット時の足裏はフラット接地(重心が中心に来る)

体重を足裏の真ん中でとらえたあとは、それを好きな方向へ崩せば、フォーステップドリブルに移行できます。

数か月前までハルキはこの真上にボールを上げるという動作を少し苦手にしていました。しかし今や、安定してボールの高さも、狙った位置にほぼ一定で保つことができています。

その再現性の高さの理由は「意識をボールに向けず、身体を正確にコントロールすること」に集中しているからです。人間の体は同じ動作をすれば毎回、同じような方向に同じ力を発揮できます。ボールとの関係性は、同じ動作をしているところに、ボールが毎回同じように乗ってくる、という関係性です。ハルキは身体操作トレーニングを重ねているので、毎回同じ動きができるようになり、結果的に再現性の高いプレーとなっています。

想像してもらえればわかるのですが、ボールが自分の立ち位置から少しずれたところに行ってしまった場合、ボールを追いかけて必死になると身体がどのような体勢になっているのかを見失ってしまいます。しかし、ボールはちらっと視野に入れるだけくらいで、身体の操作に意識を向け、バランスを崩さないように丁寧に移動し、あらかじめ準備していた動作を実行することを心掛けています。その結果「ボールとはいったん切れた、整った動作」が実現でき、「そこにボールが合流して身体とボールが調和する」のです。ハルキのプレーの多くが滑らかなのはそのためです。

これはハルキが目指しているプレーの原則として、どのプレーにも共通しているコンセプトです。ボールと身体は別々の動きをしていながら、結果としてボールと滑らかに統合されているように見えるボールのレイヤーと身体のレイヤーがそれぞれ別個で影響を受けないように重なり合っています

もちろんボールの強さや挙動によって、身体の方が必死に合わせなくてはいけない場面が出てきます。しかしその場合も、ボールを追いかけるのではなく、スピードを上げた中で適切な身体操作を瞬時に割り出し、正しい形でボールと合流する原則は同じです。適切な身体操作のベースとなるのは、身体が崩れていないこと、自分自身が自らのバランスを感じ取り、どのような体勢になっているかを知っていることが重要です。スノーボードの回転ほど複雑な動きではないので、サッカーはその点では難しさは低いと思います。

適切な身体操作のためにハルキは「大森アップ」と呼ばれるGOTSスクール特有のトレーニングを通して、自分の身体のあらゆるパーツと向き合っているわけですが、サッカーにおけるどの動作においても、身体操作を意識できれば、個別のプレーを数多く練習することなくとも一挙的にあらゆるプレーの質が向上するのだとわかりました。

それがよく見て取れるのが動画の1分くらいからのシーンです。

大森さんが「ターン!」と叫び、唐突に歩いているハルキの頭を超えるようなボールを出しました。ハルキは自分がもっていた足元のボールをリリースし、パスされたボールにアプローチします。

このとき、ついさっきまで練習していた「ボールにいかないリフティング」の要領でボールにタッチすることができました。その結果、滑らかにシュートまでいっています。

不意打ちにボールを出して、選手の「身についている動作や癖」を確認しようとする大森コーチの試みも素晴らしいですし、それに即応して磨いたばかりの動作を適用するハルキもナイスです。

「うぉー、何それ! そんなのある?!」

内田淳二さんが声を上げています。

このような滑らかなスーパープレーは、特殊な訓練からではなく、「身体は身体で動かす」という当たり前のトレーニングで身につけることができるのです。動画の最初の方でやっていた動きは、もう一度書きますがリフティングの練習ではなく身体を操作するトレーニングであって、その身体操作をどのような場面でも自然に適用できるようになれば、トレーニングをまったくしていないような体勢やシチュエーションでのスーパープレーが実現できます

今回の記事が、こうした動きを目指しているのになかなか上達しない子どもたちの参考になりますように。

※補足
ハルキが小学生のころから、こうしたプレーが出来たかというと、もちろんそうではありません。ただ、1つあのトレーニングは今につながっていたかな、と思うものがあります。

小学2,3年生のときにリフティングをしながら並べられたマーカーを拾うという遊びをしょっちゅうやっていました。そのとき今回のようにボールを真上に高く上げ、落ちてくるまでの間にしゃがんでマーカーを拾い、すばやく立ち上がってボールをトラップ、ボールを落とさずにリフティングを続けて次のマーカーを回収しに行くという遊びです。

マーカーは最高で10個。これをうまくやるためには「キックの局面」と「しゃがんで拾う局面」と「立ち上がってボールを受ける局面」を切り離して、かつ正確に連続して実行する必要があります。当時はすごく難しく感じて、難しいからこそいい練習だと思っていました。

ただ、今なら違うアプローチをすると思います。蹴り上げ方、しゃがみ方、立ち上がり方のそれぞれにおける「重心の位置」や「素早く動く方法」を、ボール無しで先に確認して、その上でボールをつけてやると思います。当時はただひたすら、毎日のマーカーの片付けのときにやっていて、なんとかできるようになったものの、上達はとても遅かったです。

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