『ボールにいかないと1人目のディフェンスはいないも同然。味方はグラウンダーでパスを出さなくてもいいし、利き足じゃなくてもかまわない』フットボールペアレンツ013
藍澤誠/Jの先生です。
今回は「ボールにいかない」練習を重ねるとどうなるかを文章と連続写真、そして動画で見てみます。うまく伝わることを祈って私もチャレンジします!
上のような位置関係で、キーパーの選手からハルキがパスをもらい、ハルキにとって左に持ち出す場面です。ハルキにとってのゴールは写真の右方向です。赤いビブスを着ていないのが相手です。マコトも相手です。つまり三人が自分を見ている状態です。
ボールにいかないハルキはどこを狙っているでしょうか。下の図でいうところの青? それとも黄色? 一番遠くの赤? 少なくともここで足元に止めるなんてことはあり得ません。
ではコマ送りで見ていきます。
いきなりゴールキーパーから処理しにくい高さの浮いたパスが来ました!
DFの一人が距離を詰めています(もう一人のDFは画面外へ守備しに行きました)。
こういう場合、一般的にパス出した方が責められます。ちゃんと浮かさないでグラウンダーでビシッと出せよとか、利き足にパス出しなさいとか。
でも「ボールにいかないの思想」だとそうした要素は関係ありません。
ボールが足元に来る前に、超加速の状態に入ります。
このボール関係なしに加速を作ることが「ボールにいかない」です。
ボールが自分の元に来る前に、全速力できる体勢を身体操作で作り、ロケットダッシュを開始します。
なぜなら味方が出すボールを足元にコントロールしようとするのはとても難しく、そのボール処理のためにスピードを落としてしまうと(ボールにいっている状態)今度は相手を抜けなくなってしまうのです。
だから走ることに集中します。そしてスピードが作れたらあとはボールに触れるタイミングの問題です。1枚目の相手ディフェンダーを抜く段階は終わっています。
どうして抜けなくなるか。最初に足元でボールを受けたら、あるいは足元でなくてもスピードを落として軸足を作って丁寧にボールを止めたら、スピードがない状態でディフェンス2人と闘うスキルが必要になります。ハルキはドリブルデザイナーの岡部さんのおかげもあって、スキルもかなり鍛えてはいますが(14歳まではスキルベースだった)スピードが作れない状態で、スキルだけでトッププレイヤーを、それも2人抜くなんて至難の業です。
だからボールが来る前にスピードを作る身体操作に全集中します。今回の相手は小学生や素人の大人(私)ですが、レベルが低いから通じる、トッププレイヤーだから通じないではなく、物理的法則と身体操作を研究し相手が誰でも抜けるやり方で抜きます。スピードが作れたら「あとは走るだけ」です。
最初のボールタッチの瞬間です。角度的に見えにくいですが、足の形はインサイドでボールを運ぶ形ではなく、正面にスプリントする形(全力で走っている形)になっています。
自分が走る軌道上にボールが来るので、走る体勢のまま、体のどこかにボールが触れてしまうイメージです。走っている車にボールがぶつかったような感じともいえます。
これだとボールが大きくはじかれてしまいそうに思うのですが、脱力しながら(うまくいけばわずかな減速局面で)ボールにアプローチしている、そして体全体の前方向へのスピードが出ている、さらにはボールに触れた足がすぐに加速足になるため、ボールにおいていかれることはありません(これは動画を見るとわかりやすいです)。
おお! 上手く抜けた!
Fリーグのフウガドールすみだでトッププレイヤーのフィジカルトレーニングを担当しているトレーナーの大森さんが「うわー、そこ!」と声を上げています。
しかし、抜けたと思ったとき2人目のDF(親である私:マコト オレンジのユニフォーム)にギリギリつかまってしまいました。この一連の動きを警戒していなかったら間違いなく抜けられていたと思います。
2つ上の写真で私が、「ボール関係なく、ハルキが触れそうなタイミングで、先にコースに入ろうとしている」のがわかります。
つまりディフェンスをしていた私自身もボールにいかなかったのです。ハルキのスプリントのコースに入り、身体をぶつけることだけを考えていました。間一髪です。
結果的にギリギリボールを奪うことができましたが、2枚目のディフェンスが、まだボールから遠いからといって気を抜いていたら、あっという間に通過されてしまいます。私のディフェンススキルが高かったから奪えたのではなく、ハルキの動きをさんざんビデオで解析していたから対応できたのです。
動画はこちらです。
「ボールにいかない」はオフェンス、そしてディフェンスにとっても最重要概念だと思います。次回はオフェンスであるハルキは、手を先に出して2枚目の寄せをブロックするとか、2タッチ目で方向を変えるとかいろいろ工夫してくると思います。その際もボールへのスキルではなく、スピードと身体操作が大切になることは言うまでもないでしょう。
また1枚目のディフェンスは完全に無効化されていますが、次はどのように動けばよかったのか研究する必要があり、その研究はボールをどのように奪うかではなく(ボールにいかない)、相手がスピードを上げるタイミングをいかに奪うか、相手が走りたいコースをどう消すかといった方向で検討されると思います。
ということで、3回にわたる「ボールにいかないシリーズ」はいかがだったでしょうか。「ボールにいかない」というのはGOTSスクールを主宰する内田淳二さんの発案したコンセプトですが、私は知ってから数年かかってようやここまで言語化&体現できるようになりました。
これは誰でも数年かかるという意味ではありません。のみ込みの早い人はすぐにマスター&さらに応用できると思います。ハルキは取り組みだしてからだいたい3か月でモノにしてきました。
特に現在サッカーをやっている子どもたちは、こんな炎天下の中、めちゃ努力し、いろいろな練習しているのですが、ボールにいっている限り、一手一手止まってしまうし、スピードを落とした難しいスキル対決になっちゃいます。努力がなかなか報われない。ボールにいっているから・・・。
そんな夏を何年も重ねてきた私たち親子だからそれが痛いほどわかります。
スキル対決に行き詰った選手は、ボールにいかない世界、スピード感のある自由な世界へ踏み出すといいんじゃないかな、と藍澤誠/Jの先生は思って今回の記事と動画を作りました。届くべき子どもに届きますように!
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