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『両足で蹴ればシュート力は2倍になるぜ!!!』フットボールペアレンツ008

藍澤誠/Jの先生です。
メンバーシップ「フットボールペアレンツ」の記事です。

◎動画見て 親はイライラ 子はグダグダ

YouTubeを見ていると「足が速くなる方法」だとか「ロングキックを蹴る方法」「弾丸シュートを打つ方法」などについて、たくさんの記事が上がっています。

その多くは「刺激的なタイトル」です。「走ること」の動画だったら「爆速!」とか「コツは〇〇にあった」とかサムネだけで視聴前から期待値が上がってしまいます。書籍もいろいろ買いがちで「おお! 運命の本に出会えた!」と感じては、つい購入していました。厳選しているつもりでも知らない間に「ここはスポーツ専門の書店ですか?」というレベルに。

しかしそうした情報を得てもほとんど活かせません。ちょっと大げさに書くと私たち親子は、こんな感じの負のループにはまりがちでした。

私「ほらね、スローで見ると着地足のかかとがついている」
ハルキ「ほんとだ!」
私「これ、ダメらしいよ」
ハルキ「なんで?」
私「◯◯だから(答えられるときもあれば・あいまいなときもある)」
ハルキ「ふーん」
私「とにかく、まずはつま先着地のトレーニングをしよう!」
ハルキ「うん!」

……ところが、なかなかコツがつかめません。練習しようにも、子どもは筋力が弱くて、とくにふくらはぎなんてないに等しく、トレーニングをするとすぐに

「つかれたよぅ」

とか言い出します。しかもボールを使わないので

「ねぇ、パパさん、つまらない……」

子どもはグダグダ、親はイライラというパターンこういう練習は、続けていてももう最悪な予感しかしない

私「まぁ、何度かやっているうちにできるよ」
ハルキ「そうだね」
私「ていうか、オレができるようになってから話すよ」
ハルキ「うん! じゃあボール蹴ろう」

ところがついにですよ! この「グダグダ・イライラ」パターンをついに脱し始めています。解決のキーワードはこれでした。

「結果そうなる」

走るを例にとります。「がんばってつま先接地で走ろう」とか「つま先接地に耐えられるような体幹を作ろう」とか「つま先接地の感覚をつかむためのフォームチェックとドリルを地道にこなそう」とかではなく、ここから出発します。

走るって何だっけ?

動画や書籍にある具体的なコツ・部分的な仕組みではなく、これ以上ないくらいの根元を考えるようにするのです。

正解にたどり着くために問答をしているわけではありません。「問答のプロセスで深まる理解」と「今まで見逃してきた気づき」が狙いです。やってみますね。親子の問答ではありません。自分(親)の自問自答です。

走るって何だっけ?

体を前に進めること。前だけじゃないから、今ある場所じゃないところに、できるだけ早く移動すること。

じゃあ、その移動、何が動力になる? 
足? 手? 身体の重さ?

ぜったいに必要なのは、足と地面かな。
でも体の重さも必要かも。
手は・・・あった方がずっと走りやすいね。
でも大事なのは足でしょ。正解は足です!

足って、どっちの足?

両足とも大事。というか、均等じゃないと走れないです。

なぜ?

昔、池でのった手漕ぎボート、片方だけ強く漕ぐとまがったから。

じゃあ、足でどうやって力を発揮する?
そもそも足ってどこから足?
足のパーツでもっとも重要なのはどこ?

つま先?

本当? つま先だけで走れる? つま先が力を作ってるの?

足を振り下ろす力?

その振り下ろす力ってどうやって生んでるの?

左右の足の組み換えのときの股関節?

――このように考えていると、一番大切だと思っていた部位やモーションが、1つに絞られたり、別の部位に変わったりします。そして股関節に行きついたとしても、それを有効に動かすためには、またたくさんの部位が関わっていて答えがでない……

この感覚には覚えがあります。子どものときに考えた、

体で一番大事なのはどこか問題

です。

小学生の私は「脳がないと考えられないから意味がない」と私は思いました。でもその脳は「心臓がないとたぶん動かない」と経験的にわかります。でも心臓があっても血液が流れていないとダメで、血液を流すためには血管がなくちゃダメで……と考えていると、永遠答えが出ないで遠い気持ちになるばかりでした。

ということで

体の部位がぜんぶ大事

ということになるのですが、「走る」を成立させている「地面」との関係を考えると、地面と触れている箇所が、唯一「作用・反作用」が起きている場所なので、「足のつく部位」は、体の部位同士の比較においてではなく「運動を成立させる部位」として間違いなく重要で、その重要性は「何において決まるか」というと、目的は「走る」なのだから、「移動の力をどのくらいもらえているか」が評価対象になり、地面が「はいどうぞ」と力をくれるわけではなくて、文字通り「作用させた分だけしか反作用がもらえない」のだから、「体を総動員させて地面に力を加えよう」という結論になります。

となると、

「がんばってつま先接地で走ろう」とか「つま先接地に耐えられるような体幹を作ろう」とか「つま先接地の感覚をつかむためのフォームチェックとドリルを地道にこなそう」

という方向ではなく、「力を地面に与えるためには体全体はどうなっているといいかな?」と考え、真上から真下に押しても進まないから、後方に足をつきたいって話になり、そうなると結果的につま先着地になる。でもその後方に足をつく動作を連続させることって物理的に可能なのかって話になります。

これまた小学生の時の話ですが、クラスメートのS君が

「オレ、すごいこと考えたんだ。まこちゃんだけに教えてやるよ」

って言ったんです。ほぼしゃべったことのないS君に話しかけられたのでとてもよく覚えています。たったふたりでお昼休みに校庭の端っこへ行きました。

「さっき思いついたんだ」

S君は嬉しそうに話を切り出しました。
さっきとは体育でサッカーをやった時間を指します。

「すげー秘密。まこちゃんにだけ教えてやるよ」
「なんで俺?」
「まこちゃん、サッカーはじめたんだろ」
「うん」

私はみんなのサッカーブームから、1年くらい乗り遅れる形で、サッカーをはじめたばかりでした。S君はサッカーチームに入っていない、どちらかというと体育が苦手な子です。私も体育がとても苦手で、足が速くない子、球技で目立てない子、という点においては私とSくんは同類でした。

同類のよしみで教えてくれたのか、運動神経が良い子は聞く耳を持たないと判断したのかわかりません。S君はいきなり結論を言ってきました。

「あのさ、両足で蹴ればシュート力2倍になると思わない?」
「え?」
「みんな、片足でシュートするだろ。バカじゃないかと思って。両足で蹴れば2倍だろ」
「それって……」

私の頭にはプロレスという文字が浮かびました。

「ドロップキックみたいに蹴るってこと?」
「ちがう、地面にあるボールをさ、こうやって蹴るんだ」

S君は、障害物競走で大きな袋に入ってぴょんぴょん飛ぶみたいな、なんていうんだろう、二本脚をそろえて、同時に両足でボールを蹴ろうとしたんです。

スイングすらままならないので、シュート力は2倍どころか、200分の1倍くらいになっていました

しかし……信じがたいのが当時の私のリアクションです。

すごい! 練習すればいけるかも!!」
「だろ! 今はできないけどさ、できるようになればすごいぜ」
「ありがとう!」
「いっしょに練習しようぜ」

そして二人で両足をそろえてぴょんぴょんはねながらシュート練習。
私の人生上、あれ以上弱いシュートを打ったことはありません(笑)。

でも――そのときは本当に、2倍の力が出ると心底思ったんです。

両足を振り足にしちゃうと、その両足をどうやって振り上げるのって話です。でもですよ、これはあまりにひどすぎるけれど、「練習すればいける」とか「物理的に検証せずに、できるようになればすごそうなことをやる」のって、今の自分もそんなに変わらないって気づいたのです。

となると、上達できない負のループを抜けるための初手は「物理」を理解するになります。

物理と言っても勉強の物理ではなく、パワーとか関係なく、誰がやってもそうなるだろう、という運動の仕組みをまず理解します。

足を連続で後方につけないのはなぜだろう。
スタートは後方につくとしても、数歩先の、加速したときも後方に足をつけるのかな? スローで見れば瞬間的に足が真下にある場合があるけど、それは初速ゼロのスタート時に後方につくこととどう違う? 足が動き出したらその動き出した足を止めたり方向を変えたりするのに、どのような力と体の使い方が必要?

「体を速く移動させる」というたった1つのテーマに、直接役立っているかだけを考える。あるいは、そのテーマに対し、邪魔になっている動作って何だろうって考える。そうしていろいろな方向から、思い込みではなく、物理に反してないか、物理にそぐう形になっているかを多面的に試しているうちに

あれ?
できている!

になるのです。なると言い切れるのは物理だからです。ならないとしたら、物理に反している何かがあるはずなので、結果的にそうなるまで試行錯誤するだけです。

試行錯誤の過程で、いろいろな人が書籍や動画という形で上げてくれた「部分的なコツ」がヒントになることが多く、「そっかそっか!」と理解の助けになることが多いです。だれだれの論が間違っているとか、あっているとかではなく、ぜんぶに素直に感謝できています。

最終的には自分の体で自分の理想とする運動をするだけですから、誰にも遠慮することなく、誰と敵対するでもなく、自分なりに最高なスポーツライフを送るだけ、という結論になり、その結果、私たち親子はかなり爆裂に成長することができました。

S君は何をしているかはわかりませんが、私は当時より、シュートは2倍速くなったと思いますし、親子で、そして仲間と力を合わせて、このシュートを世界の舞台で突き刺したいって思っています。

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