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『親としてはやめてほしくない』フットボールペアレンツ001

藍澤誠/Jの先生です。

いちばん最初の投稿のタイトルが『親としてはやめてほしくない』というのは自分でもびっくりですが、私は「何かをやめること」が苦手です。

その理由は「継続力がある」という類の立派な理由ではなく、「サンクコスト」を気にしてしまうからです。

※サンクコストとは「何かにつぎ込んでもう回収できなくなってしまったコスト(コスト=お金・労力・時間)」と定義しています。

わかりやすい例でいえば「UFOキャッチャー」で、狙ったアイテムを取りたい一心で、たくさんお金を使って引くに引けなくなったり、「株式投資」で、見込みのない株を損切りできなかったりという事態です。

損したまま終われない、悪い意味での負けず嫌いな性格が自分でもつかめているから、私はUFOキャッチャーにも株にも手を出さないのですが、先日、健康上の問題もあって

「初期投資に数万円かけたスポーツジムを、たった1か月通っただけで退会するか、それとも継続するか」

という決断に迫られました。

実質4回しか通えていないので、今やめると1回あたり1万円以上という驚愕&高額なトレーニングだった計算になります。近所のジムは1回400円ですからその25倍。2022年7月にトレーニングする権利も有していますので、今から半月くらいジムに通って、その1回あたりの損した感を薄めることもできます。前言を撤回して退会を取り消すことも可能かもしれません。退会の手前の「休会」という選択肢もあります。

そんな流れで、息子ハルキ(高1)に「オレ、サンクコスト的なものが絡む決断が苦手なんだよね~」と相談すると、ハルキは即答しました。

ジムに通う以上の価値がこれからやろうとすることにあるなら、すぐにやめられるんじゃない?

サンクコスト感を低減させる、つまり「損した感」を薄めるために時間とエネルギーを使うのではなく、これからやることにそれ以上の価値を見出していく方がずっといい。考えてみれば当たり前ですね。 

というわけでジムをすっきりと退会でき、そのエネルギーと時間をこの「メンバーシップ設立」に使っているわけですが、「入ったばかりのジムを辞める」程度のライトな決断、あるいは自分自身しか影響がない決断なら簡単です。

もし子供が、何年もずっと続けてきた習い事、たとえば「サッカーをやめたい」「フットサルをやめたい」「スポーツをやめたい」「英会話をやめたい」「受験をやめたい」「ピアノをやめたい」「学校をやめたい」「仕事をやめたい」あるいは「人間をやめたい」と言い出したとき、みなさんは、子どものヘビーな決断に対して、どのように対応しますか?

「あんなに時間とエネルギーを割いてきたのになんで?」「これまでの苦労はなんだったの?」「ひとりで勝手に決断するなよ」「冷静に考えた?」「ひとまず区切りのところまで頑張ってみたらどう?」「は? 最初の約束と違うじゃないか!」「せっかくここまでやってきたのにもったいない!」

これまでに払ったコストが大きければ多いほど、決断を支持するのがつらいのは想像に難くありません。この手の経験談を直接的に、あるいは間接的にたくさん見聞きしてきました。そして私はつい先日まで、私にとっての「ベストな対応」を持ち合わせていませんでした。

ここでジムの決断のときのように、ハルキが教えてくれた「これからやろうとすることの価値」を持ち出したらどうでしょう。

「そうだね。じゃあ新しく見つけたものを楽しむのみだね!」

そう言って次の選択を応援できるでしょうか。
私は正直、応援できなくて困惑すると思います。

子どもの決断を支持するためには、「未来志向」と同時に、「切り替えを早くする」とか「過去にとらわれない」とか「時間が解決してくれるのに任せる」といった、「サンクコストを気にするのと同じくらい私が不得意なスタンス」が必要な気がします。

ならどうすればいいでしょう。

私が現在思いつく解決策は・・・「自分が現在やっていることの価値をふだんから検討する」です。

つまり現在やっているものごとで「価値が感じられないのに続けている」ということを、大小さまざま、可能な限り減らしていく方向性にシフトチェンジしておくというものです。

無駄も大切なんだよねというのは、自分自身で「無駄=大切」と思っているから減らす対象ではありません。そうではなく、「よく考えるとそこまで意味がないもの」「本質から外れているもの」を整理する。まずは自分が決断ができる範囲で、価値があることを主体的に選び取っていくスタンスなら、私にもできそうです。

これはハルキの言う「これからやろうとすることに価値を置く」とベクトルは同じかもしれませんが、子どもに関与する親のトレーニングとして、「これから」の手前の「現在」を検討する「今やっていることに価値を感じているか」という現状を問い続けることで、「ある日突然、大きな決断に迫られて困惑する」ということがなくなるのではないでしょうか

あれ? 私、なんで頑張っているんだっけ?
なんで子どもと一緒に走ってきたんだっけ?

「仕事が忙しいから」「今は働くしかない」「とりあえず難しいことはあとで」「自分だけじゃ決められない」「まだそのときじゃない」「私には考えるのは無理」……やっていることの価値を問わない生き方を重ねてしまうと、もう何に価値を感じているのかわからなくなってしまう。そして、サンクコストにまみれた自分の尊厳を損なわない意見や集団を探してきて、自分の過去や現在を慰めてしまう。これが今の自分です

子どもが感じているスポーツの価値。
自分が感じている人生の価値。

このメンバーシップでは、私が一つの価値観を提示するのではなく、まだ見ぬメンバーとともに、それぞれが大切にしている価値を持ち寄る場にしたいです。自分で無理なら人のアイデアを参考にする。仲間の相談する姿を見てヒントを得る。自分一人で自分の価値観を問い続けるのはつらいから、お互い応援し合う。その結果、参加者が自信をなくしたり、価値観を見失ったり不安に怯えたりすることなく、毎日の幸せをくっきり、まったりと感じられるようになったらいいなと願っています

「親としてはやめてほしくない」なんてセリフとは無縁でいたい。サンクコストのかけらもない、親も子も、お互いの価値観を理解し、充実した今を重ねられたら、「今日も楽しかった!」を共有できたら素晴らしいです。


◎01~10

01 『親としてはやめてほしくない』
02 『できない子を笑わない』


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