『子どもの守備の寄せが甘くてイライラする!』フットボールペアレンツ109
こんにちは。マコトです。
「自分の子どもの守備の寄せが甘くてイライラする!」
という人向けに、今日の動画はこちらです。
動画の冒頭部分数秒を再生してみてください。ハルキは相手に連続でパスを通されています。
寄せが甘いとパスされる・・・それっぽい指摘になりますが、「甘く」といっても本人、わざと甘くやっているわけではありません。
親である私(ピンク色のシャツ)も同じフィールドでプレーしているからわかりますがあと一歩を寄せるには勇気とスピードとスタミナが必要です。
そして・・・動画13秒あたりまでは寄せているにも関わらずパスを出されているのですが、ちょっとした修正をした後、いきなりハルキの守備力が上がっているように見えます。
その理由は・・・上の写真にも書いてある「恐れず寄せきるように修正」というのがポイントで、その修正内容を以下で説明します。
動画でも確認して欲しいのですが、この写真の場面で白の上着のハルキは、味方に左手で指示を出しているのがわかります。左のパスコースは仲間に消してもらう。右も青い選手が見てくれている、、、となると相手が出せるパスとしては、無理やり自分の背後を早いパスで通すorまた抜きでパスしかない。こうした有利な状況を作れました。その上で寄せると・・・上手くカットできました。
しかし・・・上記のような分析もウソっぽいです。なぜなら、その前のカットできなかった場面でもハルキは左手でちゃんと指示を出しているのです(動画内11秒のシーン)。下の写真はその指示を出した直後の写真です。
このシーンでハルキはたしかに、相手が自分から見て右にパスするしかない状態を意図的に作りました。相手は予想通り右にパスを出しています。しかし、、、パスコースが予想できているとはいえ、ハルキがこの状況でボールを奪えるはずがありません(距離的にも角度的にも)。なのに「寄せが甘いとパスされる」とキャプションに書かれるのはあまりにかわいそうです(※私が便宜上書いたのですが)。
この状態では一番右の選手には青い23番の守備者がつくべきで、ピンクの選手(私)は、左へのパスがないのだから、現在、青い選手が見ている選手をケアするか、あるいは何もしていない中央の白い選手にマークにつくように指示を出すといった連動が必要です。
そういう連動がない状態で、孤軍奮闘的に一人でアタックしてボールを奪うことはとても難しいです。逆に言えばボールを取れた時は、「連動があったからで、自分の力だけではない」とも言えます。
それを踏まえてボールを奪えた19秒のシーンを見てみましょう。
相変わらず右の選手(緑の靴下)が空いていますが、ハルキは右の選手のパスコースを一瞬切るような形で、わずかに蛇行しながら寄せました。そうすることでボール保持者を慌てさせ、ボールを奪うことができた(※動画でで確認してみてください)・・・と書くと、これももっともらしいですが、実際のところパスコースを切るとかは関係なく、保持者がボールコントロールをした直後にハルキがすごいスピードで寄せたから慌てたようにしか思えません。
つまりこのケースでは、守備者の連動とは無関係に単純にハルキがスピードを更に上げて寄せたらボール奪取に成功したということです。ここで言っていた「修正」というは、文字通り「相手との実力差や無駄走りになることを恐れず全力で寄せ切るように修正」ということでした。
親(見ている側)の分析は後付けだったり、恣意的だったりして(今回の動画についていえば、ハルキの守備が成長したというコンセプトを伝えるために動画内の事象を単純化している)その指摘は的外れなことが(非常に)多く「寄せが速ければかなりの確率でボールを奪える」とか「寄せが甘いからパスを出された」とかは言えないのです(特に守備については)。
ただ!
それでもなお、上記の写真のように「あきらめずに最後まで追う」だとか、「相手がプレーしにくいところまで根性出して寄せきる」ことで、周りが助かる場面が多々ある(フットボールの大前提)ということは確実に言えます。
体格差がある相手に対し「枝D」を決めるだとか、フィジカルをジムで鍛えて対抗するだとか、相手のバランスを崩すための身体操作だとかを、ハルキは普段から研究しています。その成果は確実に出ているのでこの動画の全体的な方向性というか伝えていることは間違っていません。
親をはじめとした外野がよく指摘する「もっと相手がビビるくらい追いかけまわせよ!」という言葉は正しいといえば正しい気がします。
今回の動画ではたまたまハルキは味方の守備者の連動を期待しないで、とにかくマンツーマンの目の前の相手にはやられない。すべて自分の責任において守備をする、というコンセプトで「守備のアタック」をしていました。この日の練習前にそれを明確なコンセプトとして立てていたから、ハルキは自分の目標に忠実にトレーニングしました。この日とはまったく違い、グループで連動する守備だけを考えることもあります。
まとめると
このような実情を踏まえてみると
「取れるとか取れないとかはいっさい気にしないで、とにかく寄せるスピードを上げる。相手にどこまでも食らいつく」のを大前提として、「グループによる守備の構造や、走りが無駄にならないより効果的なボールの奪い方を仲間と研究すべき」という、超絶当たり前のことを再確認することになってしまいます。
つまり親としては「根性出してボールを奪え!」は明確に間違っていて(孤軍奮闘では奪えないので)、一方で「相手に負けずに走れ!」は合っているけどたいていの場合、自分より相手(もしくは相手チーム)がいろいろな面で上手いわけだから守備を迫られ、相手を追いかけまわす羽目になっている(相手は余裕で自分はつらい状況になっている)わけです。
つまり子どもが苦戦するような相手の場合(親が子どもの守備が気になるような場合)子どもたちはボールをぜんぜん奪えないまま、ずっと追いかけまわす状況が続くのです(子どものチームが圧倒的に強いときは不利な守備の局面はほぼない)。
この場合、親が子どもにかけられる声としたら
になると思います。
イライラではなく、純粋な応援しかありません。
とも言いたくなります。個の頑張りを無駄にしないためにみんなで連動する必要があるのですから。
いずれにせよ親は――「自分に負けるな」と胸を張って言える資格が自分にあるかを問われることになります。相手が有利なときに、取れる確率の低いボールを追い回し、自分よりも強い相手に怯まず、守備の構造的なミスを個人のせいにされたりしながらも追い続ける必要がある。
そんな状況にいる子どもに言えることは
もしこのセリフを堂々と言えるのならば、それは皮肉ではなく素晴らしいことだと思いますし、子どもの「自分に負けない姿」を目の前で見て、親もエネルギーをもらえるなら、これは親子にとってとても素晴らしいことだと思います。
私は動画を編集しながら、めちゃ辛いけど頑張ろうって思えます。
子どもの一歩一歩、一つ一つの動作、苦しそうな表情、うまくできたときの嬉しそうな顔、無念で泣き出しそうな顔を細かいところまで見て、それらがそうなった理由や積み重ねに目を向けて自分や練習を省みる。
親の顔が見たいではないけれど、自分の弱点が子どものプレーに反映されているという場合がすごく多い気がします。イライラするどころか反省しかありませんし、子どものプレーに励まされたり申し訳なく思うことの方が多いです。
親も自分に負けない。
不利な状況を嘆かず、そこに活路を見出すまで粘り強く工夫を続ける。
その上で仲間と協調する。できる限りオープンになって自分の殻を破って喰らいつく。助けを求めたり、励まし合ったり、いっしょに工夫をする。自分の的外れな分析や仮説を、みんなの意見を聞きながら少しでも適切なものにする。たった今必要で実効性のある対策を練り、それを実現可能な練習に落とし込んで実行する。
子どもと走る、仲間と走るスタンスに移行したとき、私にはイライラの余地などまったくなくなりました。
そしてそして。
こうやってややこしいことを言葉で整理した後、シンプルに「楽しむのが何より大事」「ボールを蹴れて幸せ」というだけなんだけどね、ということも再確認するのです。
フットボールを楽しんでいる人の参考になると嬉しいです。
以下、バックナンバーです。
◎01~10
01 『親としてはやめてほしくない』
02 『できない子を笑わない』
03 『サッカー選手になれなかった人がフットサル選手になる』
04 『サッカーに熱心な親だらけ!』
05 『左足で走るのが苦手とかあり得る? 個人的には画期的な大発見』
06 『走る(ドリブル)は誰でもできる』
07 『子どものプレーにイライラしがちなお父さんお母さんへ』
08 『両足で蹴ればシュート力は2倍になるぜ!!!』
09 『セレクションは気にしない!~12打数12安打11ホームランでも、まぁまぁはまぁまぁ』
10 『パパはゲームメーカー! ボールにいかないと世界がまったく変わります!』
◎11~20
11 『思い出しただけでイラつく経験を語っても……』
12 『ボールにいかない派とかじゃなく、目的は何かっていう話なんだけど』
13 『ボールにいかないと1人目のディフェンスはいないも同然。味方はグラウンダーでパスを出さなくてもいいし、利き足じゃなくてもかまわない』
14 『子どもが主役の合宿は、世代を超えて受け継がれていた』
15 『イノシシやゴリラにプレスされても大丈夫! ~今が未来につながっている~』
16 『リフティング(1) ボールを拾って役立てようと 僕は思ったわけでもないが』
17『リフティング(2) 空に向かって蹴るのが楽しい!』
18 『リフティング(3)親と性格が違い過ぎると怒っちゃう問題はこうして解決した』
19 『リフティング(4)私たち親子が回数を目標にしなかった理由
20 『親視点(1)みんなドリブルでいっちゃうツライ日々』
◎21~30
21 『牛若丸ターン! ターン後の着地の姿勢で勝負がついていた』
22 『ドリブルの練習をやめたら劇的にうまくなりました』
23 『質問です。未来を意識していた人は誰でしょう? ゴールの角上とつながる』
24 『原文ママさん 手持ちの動画について意見を交わし合う場を作りました』
25 『世代なので死ぬまでにマラドーナのドリブルを身につけたい――運動神経がダメダメな私でも走れば抜けます』
26 『ゴールへの意識があればレアルマドリードにもたどり着ける』
27 『4ステップはつまずきそうで怖いという質問への回答』
28 『ギュンです! ボールに触れた瞬間に超絶加速する――写真の次のコマの形を当てられたらあなたは名選手に違いないです』
29 『続ギュンです! たいして傾いていなくてももちろん抜けます』
30 『ハルキの自主練なんて一回もみたことないです』
◎31~40
31 『内田史上最強の動き――研究手を基本動作にするプロセス』
32 『7番と9番へ! ディフェンス目線で整理する走る(ドリブル)2022年8月バージョン』
33 『トップ選手との対決で学んだこと――真夏の微妙な大実験』
34 『ボールにいっちゃっている状態とは何かよくわかります』
35 『手を動かしてイラストにしてみるとフォームを覚えられます――中西を描いてみる』
36 『フリーキックの練習を初めてしました』
37 『4ステップがない世界はもう考えられない』
38 『パパさんでも5人ダイレクト成功』
39 『ボールのレイヤーと身体のレイヤーが違うことで、滑らかなスーパープレーが生まれる』
40 『身体はオートマチック、判断はコース取り』
◎41~50
41『プロは目指すものじゃない――どうしても怒っちゃう自分を克服したきっかけ』
42 『ボールなしの練習は最重要!! しゃべるが先で飴玉は後』
43 『走りながらボールに合流する方法』
44 『すべてのプレーはゴールへ続く』
45『景色のプレーと脳内のプレー』
46『試合を動かす選手になる』
47 『ルールは拘束的なものではなく、創造的なもの』
48『ドリブル超得意だけど、、、ドリブルのドの字もみせないぜ!』
49 『親視点(2)止める蹴るを正確に!! なんてまったく考えていません』
50 『そもそもシュート練習をする前に・・・』
◎51~60
51 『なぜ父親が練習しているのか』
52 『 身体を止めずにシュートを打つ』
53 『常識よりも前提。短い距離でもインステップ 』
54 『三手一組の準備ができていれば得点王も夢ではない 』
55『あわや大ケガ……準備も確認も怠らないこと』
56『日本人ってメチャ楽しそうにプレーするね!』
57『忍者?! 一瞬の速さだったら体格差は関係ない』
58『メッシはボールコントロールではなく、身体のコントロールが正確なのでは』
59『ワンステップシュートで文字通り✨超一流✨』
60『このドリブルの最大のコツは、ディフェンスの矢印に意識を払うことだけど』
◎61~70
61『動画編集=宝さがし』
62『ディフェンス時における身体操作(第1歩目)』
63『攻撃の手を緩めない 足を止めたりしない』
64『上手く止めることを目的にしない』
65『次の展開を予想しないでプレーする方がずっと難しくないですか?』
66『親の自分もビビッてしまうけど・・・何ができないかを知りにいく! 』
67『守備の意識が劇変しました』
68『ジンガやフリースタイルのように見えるかもしれないけど』
69『引き込みドリブルのbefore after』
70『自然に思えたプレーがエラーだと気づく』
◎71~80
71『自分も味方も等価で全員を一緒に動かしているイメージ』
72『すべては自分次第。ボールウォッチャーになる? それとも得点者になる?』
73『オレは基本的にダイレクトでプレーするぜ!』
74『決め打ちを見破れれば超一流』
75『スピードが遅い人は 矢印をたよりに!』
76『ハルキの即接地トラップ、イニエスタ選手のトラップ、日本代表のトラップ』
77『毎日プレー動画を編集。研究を続ける』
78 『シュートはすべてギリギリのコース。狙うは角上!』
79『練習後のお楽しみ』
80『練習すると下手になることもある』
◎81~90
81『AIが判定するベストプレイヤーになる』
82『ステップ2回はマジで慌てるんですけど』
83『好プレーのショート動画を編集する』
84『ハードスルーは超便利!』
85『トラップとターンとシュートが一つの挙動になる』
86『大前提を忘れない』
87『引き込みターン~ボールと身体の分離』
88『100%のキャンセルが出来たのは史上初かも』
89『親子リフティングで意識したいくつかのこと』
90『毎日もうやめたい、下手くそすぎると思ってプレーしているけど、たぶん明日もやめない』
◎91~100
91『走りながら蹴る』
92『ジャゴナウのような新しい動きを学ぶときも、決め打ちでトレーニングしてはダメ』
93『100パーセントキャンセルと半歩ズラしシュート』
94『反発ステップで大事なのは1歩1歩の加速。7番9番で大事なのは勇気』
95『ブロックカットインと2段階加速ドリブル』
96『カットインキャンセルとコンビネーション』
97『いろいろ動画を上げてるけど、トッププロ相手に勝てるのか問題への解答』
98『キック&ダッシュではなく、ダッシュ&キック』
99『いつか、この空の美しさを思い出す日がきっと来る』
100『連載を100回続けて見えた景色』
◎101~110
101『バックステップでスペースと勢いを作る』
102『アウトサイドキックの利点とその活用方法』
103『パスの受け渡しの位置とタイミングを再考する』
104『味方をブロックに使う工夫』
105『こんな動きが存在するなんて思ってなかった』
106『身体を操作しているところにボールが合流する』
107『パスは芸術的に~身体を後方に飛ばすトラップと自ら2人を縛りにいってフリーを作る動き~』
108『走るために出した足にボールがついてきた』
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