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modern poetry

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#死

Gravity.

Gravity.

生きることと、死ぬこと。
それは、地球と月が引力で引っ張られているみたいに今にもはち切れそうな糸で、繋がっている。

それはまるで、1度落ちたら落ち続けるしかないような、底のない真っ黒闇の上で綱渡りをしているみたい。

こわいのか、こわくないのか。
わたしにはよくわからないけれどそれは、
デパートに出かけて、下階を見下ろしてるような感覚とおんなじ。そこに待っているのはHappyな恐怖と、Brigh

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無口な彼女。

無口な彼女。

自分と合わないものを排除する。安心を築く。それをできるだけ壊さないように排除し傷つけあう。そして壊れる、排除されたものたちは、違う誰かを排除して安心を築いて壊さないように生きていく。

こんなふうに人生なんて、大小の異なった同じことの繰り返しで、わたしがこの世界で安定を願う度に、違う誰かはこの世界の崩壊を願っている。自分の考えていることの、何もかもが机上の空論に見えて、わたしに愛する人を守る力なん

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抱きしめて

抱きしめて

きみは私が触れた途端ポロポロと崩れてしまいそうなくらいに、そうきっと、脆いんじゃないかな。

ぎゅっと抱きしめてみたいけれど、きみはきっと私の体温で、火傷しちゃいそうじゃない?

きみのもつ脆さ。それはきっと、この世界で生きて、死んでいくことへの怖さ。

きみのもつ灰褐色の目は、この世界の理を見通して、霞みがかっているように見える。

ほら、その証拠にわたしを抱きしめるきみの身体は、こんなにも震え

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Anna.

Anna.

私が見ている此の夜の海は、孤独色した真っ黒な夜空を溶かしたみたいに、冷たくて壮大だ。

誰かの悲鳴と沈痛が目一杯に詰めこまれた
『黒 くろ Black』と書かれた絵の具のチューブを、

他の色が混ざらないように、優しく、ゆっくりと絞り出してゆく。それは空明に吸い込まれては、哀しく生滅する。

ねぇ、アンナ。

私たちは死んだら、このまま消滅して、記憶を失くしたまま新しい誰かになっていくのかしら。

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断りきれない。ああ、貉。

断りきれない。ああ、貉。

「影は、私を掬ってくれる?」

自分の身体が恐ろしいほど強烈な浮遊感に襲われているような感覚に、身震いした。

腕にも力が入らない。頭は、頭痛とは違った"違和感"に悩まされ、わたしは奇妙さを覚える。

痛くはない。

ただ頭にある"核"みたいなものが、自分の身体の外へ放り出され、ひとりでに動いているような、そんな感覚だ。

わたしは次第に生きている心地さえしなくなり、街を有象無象に駆けゆく人々は、

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Intangible Sense.

Intangible Sense.

「ねえ。触れられないものに、触れたくなるときってない?」

と、微かに滲んだ目をした君が、虚ろにこちらを向いて、そう呟く。

「わからなくもないな。」
「でしょ。」

はっきりいって、ぼくには彼女の言ったことは何も分かっていない。でも、なんとか自分の頭にある言葉の糸を、一つひとつ、絡みとってみた。

「うん。例えば、ぼくは女の子の気持ちがよく分かるし、そのままそっくりに演じることだってできる。でも

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