ひさだひさ

フリーランスの書籍および雑誌の編集者&物書き、物好き。 ※お仕事は違う名前でやっており…

ひさだひさ

フリーランスの書籍および雑誌の編集者&物書き、物好き。 ※お仕事は違う名前でやっております、念のため。

記事一覧

洋食屋さんのフライ考

この時期、「ビヤホールランチョン」の名物といえば、 間違いなくカキフライであろう。 カキチャウダーに生牡蠣、そしてカキフライという「カキ三大メニュー」を目当てに足…

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書籍2冊、生み出しました。

やあ、やあ、みなさん。 おひさしぶり。 怒涛の数カ月を乗り越え、2冊刊行しました。 1冊は発売1週間で重版しました。もう1冊はこれからに期待(笑)。 ひと息つく間も…

2

酒場の情景。

18時になったらカネスに行こう。 まずは瓶ビール。 陽気がいいから、湯豆腐じゃなくて、冷奴にしてさ。 いや、疲れているから、柳川もらおうかな。 煮込み? ん、今日は…

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残像

いま、あるテーマに基づいて、職人さんを取材している。 今日は、電気工事士さんにお話を伺った。 彼は父のお友だちであり、後輩だ。 彼のオフィスで、 「この椅子も僕が…

4

いつもの店であの人を待つの。 寒くたって平気。 瓶ビールと厨房からの湯気があれば、 いくらだって待てちゃうもの。

3

嘘百珍

カルボナーラを食べると思い出す。*写真はナポリタンです、念のため。 何日目だかわからない……徹夜での校了作業を終えたあと、 「最高に旨いカルボナーラ、つくってや…

7

現実と妄想のあいだに。

目をつむっているのに、 まぶたの向こう側が透けてみえる、そんな一日。

7

ふわり、ヒラリ。

地方のホームセンターに。 二階にはお札や位牌、お塔婆が大量に売られていた。 私は一式抱えてレジに並ぶ。 「お寺さんでもなく仏具屋さんでもなく、こんな場所(安売の…

3

万年筆への偏愛

4

わたしをカタチヅクルモノ。

名刺が届いた。 気づけば……もう8年のお付き合い。 用紙は半分空気を含んだような、ふわっとした手ざわりのハーフエア。 用紙の色はスミ文字がやさしく映えるコットン…

6

オムレツのおはなし

洋食屋にとって欠かせない料理のひとつが卵料理だ。近頃は「懐かしい!」とオムライスを注文する人が多いそうだが、この店はオムレツも自慢だ。 それにオムレツは、料理人…

8

マッシュポテトの……

ほんのちょっとだけ暖まりたかった。 だから、マッシュポテトのホットサンドイッチを頼んだ。 待つことしばし。 出てきたそれは、こんがり焼かれてはいるものの、耳は付…

5

カレー考

辛いものは苦手だが、カレーは好きだ。 実家のカレーに安心し、エチオピアのカレーには裏切られたくないから、なるべく食べない。 ならば……共栄堂となるが、仔細あって…

6

開いてはならぬもの。

見覚えのないフォルダがあった。その名はThat's。 知らない誰かが囁く、「クリックしてごらんよ」と。 ためらわず開けてしまう。 そこには、まったく知らないフォーマッ…

3

ふたり……そしてもうひとり

さきほどまで、あるレストランにいた。 そこに、一組の男女があらわれた。 本の町ならではの、いつもの光景通り、そのふたりも本がたくさん入った紙袋を抱えていた。わた…

4

群衆……本屋さんで思ふこと。

原稿書きに疲れて、本屋さんに行った。 本屋さんは、酒場と同じくらい大好きな場所だけれども、 棚を見れば見るほど、毎度落ち込む。 まずは 「世の中、本ありすぎ。私がつ…

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洋食屋さんのフライ考

洋食屋さんのフライ考

この時期、「ビヤホールランチョン」の名物といえば、
間違いなくカキフライであろう。
カキチャウダーに生牡蠣、そしてカキフライという「カキ三大メニュー」を目当てに足を運ぶ人は多いはず。
けれども、今日はあえて「メンチカツ」を選んだ。
メンチカツはオールシーズンいただけるお料理で、
もう何度も、それこそ数え切れないほどオーダーしているのに、
どうしても&無性に食べたかったのだ!

そのワケは……ちょっ

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書籍2冊、生み出しました。

書籍2冊、生み出しました。

やあ、やあ、みなさん。
おひさしぶり。

怒涛の数カ月を乗り越え、2冊刊行しました。
1冊は発売1週間で重版しました。もう1冊はこれからに期待(笑)。

ひと息つく間もなく、次から次へと……追い込まれています。
そんな毎日だからこそ、
“こっち”のわたしも大切にしなくちゃ、と思った次第。
#編集者 #フリーランス #書籍 #重版

酒場の情景。

酒場の情景。

18時になったらカネスに行こう。

まずは瓶ビール。
陽気がいいから、湯豆腐じゃなくて、冷奴にしてさ。
いや、疲れているから、柳川もらおうかな。

煮込み?
ん、今日はいいよ、我慢する(笑)
あ、焼酎ハイボールくださーい。
そ、ここは氷が入ってないのがいいんだよね。

毎日来ている種屋のおじさんとポツリポツリと会話して。
「ねえさん、最近見なかったねぇ。忙しかったのかい?
 それにどうしたの? 今

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残像

残像

いま、あるテーマに基づいて、職人さんを取材している。
今日は、電気工事士さんにお話を伺った。
彼は父のお友だちであり、後輩だ。

彼のオフィスで、
「この椅子も僕が作ったの。ここに、アナタのお父さんが座って打ち合わせしていたんだよ。ここからなら、外の景色が見えて気持ちがいい、とよく言ってたなぁ」という、彼の言葉にあらためて、“やっぱりもう、父は過去の人間なんだなぁ”と。

でも、帰りしなに、その“

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夜

いつもの店であの人を待つの。
寒くたって平気。
瓶ビールと厨房からの湯気があれば、
いくらだって待てちゃうもの。

嘘百珍

嘘百珍

カルボナーラを食べると思い出す。*写真はナポリタンです、念のため。

何日目だかわからない……徹夜での校了作業を終えたあと、
「最高に旨いカルボナーラ、つくってやるよ」と、
コワモテの上司が編集部のキッチンに立った。

食欲なんてとてもとても。
それよりも睡眠欲……
とにかく横になりたい、弛緩したい……
それがなによりのご褒美であり、ご馳走のはずだった。

それなのに、プロセスのポイントを解説しな

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現実と妄想のあいだに。

現実と妄想のあいだに。

目をつむっているのに、

まぶたの向こう側が透けてみえる、そんな一日。

ふわり、ヒラリ。

ふわり、ヒラリ。

地方のホームセンターに。

二階にはお札や位牌、お塔婆が大量に売られていた。

私は一式抱えてレジに並ぶ。

「お寺さんでもなく仏具屋さんでもなく、こんな場所(安売のホームセンター)で用意されるのは嫌だなぁ」

「うちには立派なお仏壇があってよかったなぁ」と父に言うと、

「なに言ってんだ。お前の入るところはないよ」とケラケラ笑われた。

「だいだい、自分で自分の塔婆買ってどこに行くんだい?」と訊

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わたしをカタチヅクルモノ。

わたしをカタチヅクルモノ。

名刺が届いた。

気づけば……もう8年のお付き合い。

用紙は半分空気を含んだような、ふわっとした手ざわりのハーフエア。

用紙の色はスミ文字がやさしく映えるコットン。

活字特有のタイプフェイスがまた美しい。

毎々うっとりさせてくれて。そしてまた、もっと本づくりに精進せねば、と思わせてくれる。

この名刺があるから、わたしは、誰にでも取材ができる、お話をうかがうことができる。今までも、これから

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オムレツのおはなし

オムレツのおはなし

洋食屋にとって欠かせない料理のひとつが卵料理だ。近頃は「懐かしい!」とオムライスを注文する人が多いそうだが、この店はオムレツも自慢だ。

それにオムレツは、料理人の腕が問われるメニュー。もちろん、ほかの料理もそうではあるが。

さて。

外側はシワひとつなく、スーッとなめらか。だが、ひとたびスプーンを入れると……とろ〜り溶け出すのだ。

ちなみに、この店はベシャメルソースでいただくスタイル。だから

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マッシュポテトの……

マッシュポテトの……

ほんのちょっとだけ暖まりたかった。

だから、マッシュポテトのホットサンドイッチを頼んだ。

待つことしばし。

出てきたそれは、こんがり焼かれてはいるものの、耳は付いたままだった。

「ま、仕方ないか……」と頬張ると、

それはあまりにも冷たかった。

冷蔵庫から出てきたばかりのマッシュポテトには、うっすらと霜が。

おまけに珈琲はたいそう煮詰まり、

付け合わせのチップスにはひとすじの髪の毛。

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カレー考

カレー考

辛いものは苦手だが、カレーは好きだ。

実家のカレーに安心し、エチオピアのカレーには裏切られたくないから、なるべく食べない。
ならば……共栄堂となるが、仔細あって行きにくい。
で……ランチョンで“ハレーライス”を所望すると店主に煙たがられる。

ジャズオリンパスもいいが、カレーより“音”にそそられ、パンチマハルは、オペレーションが気になる。

で、久々にデリーに。
あれ……ミスったぞよ。

ああ

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開いてはならぬもの。

開いてはならぬもの。

見覚えのないフォルダがあった。その名はThat's。

知らない誰かが囁く、「クリックしてごらんよ」と。

ためらわず開けてしまう。

そこには、まったく知らないフォーマットだけれども動画データがあった。

「ほら、クリックしてみなって」とまたうながされた。

「見たことを後悔する」という気持ちと「見ずにはいられない」という好奇心が交錯したが、結局、見てしまった。

ああ……そうか、そういうことか

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ふたり……そしてもうひとり

ふたり……そしてもうひとり

さきほどまで、あるレストランにいた。

そこに、一組の男女があらわれた。

本の町ならではの、いつもの光景通り、そのふたりも本がたくさん入った紙袋を抱えていた。わたしはわたしで、いつものようにビールのグラスを傾け、気に入ったノートに万年筆を走らせている。

ふと、あちらの席を見ると、女性の美しい横顔が目に入った。

「きれい……」と感じた途端、「あ、女優の●さんだ」と認識した。華美な装いではなく、

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群衆……本屋さんで思ふこと。

群衆……本屋さんで思ふこと。

原稿書きに疲れて、本屋さんに行った。
本屋さんは、酒場と同じくらい大好きな場所だけれども、
棚を見れば見るほど、毎度落ち込む。
まずは
「世の中、本ありすぎ。私がつくった本、埋もれる」となり、
「ま、これだけ出てりゃ、売れなくても仕方ない」と慰め、
「だから、私でも本つくることできる」と納得させている。
なんてイイワケ&自己肯定したのちは、
「安っぽい紙だなぁ」とか
「また同じ企画か」とか
「束も

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