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せーかつ

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まいにちのららら。*・゚
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#本

この春に、綺麗な栞をひとつ

この春に、綺麗な栞をひとつ

小説って、編み物みたい

と思います。

かぎ針を
毛糸の、ちいさな輪っかへ通し
ひとつひとつ手を動かして
糸を列へ、列を面へと仕立てていくように

選りすぐった言葉を、重ねて結んで
一行ずつ丁寧に
文章を紡ぎ、物語へと仕立ててゆく。

どちらも本当に時間のかかる作業です。

でもそうやって、手間を惜しまず
細やかに編み込まれた細工が
ひとの心を魅了し、
そのやわらかい布地が
肌をあたたかく包み込

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本を「聞く」ことが好き

本を「聞く」ことが好き

深い瑠璃色の空に
一、二粒の星が
音もなく点る如月の早朝。

私は、パジャマに
あたたかい上着を羽織って
ひとり、キッチンに立ちます。
それから
携帯電話を片隅に置き、
液晶の上の再生ボタンを押して
昨晩の続きをリクエストします。

ナレーターの方の声が
シンとしていた空気の中に、
しっとり響きゆくのを聞きながら
私は、朝食の支度にとりかかります。

流れるのは
川端康成作「伊豆の踊子」。
ナレー

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真っ白なノートの上に

真っ白なノートの上に

机の上には
ノートと万年筆、
カップに淹れた茜色の紅茶。
それから、読みさしの本が1冊。

そうして、栞を頼りに
本を開いたら、
私の、好きな時間のはじまりです。

万年筆にインクを十分に充填して
姿勢をととのえて
書かれている文章に目を落として。

本の中の、
美しい響きの言葉や
新鮮に感じる表現、
思わず共感する部分だったり、
心に触れた台詞を
真っ白なノートの上に
ひとつひとつ、拾い集めてゆ

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27歳10ヶ月、考えごとをしたい夜

27歳10ヶ月、考えごとをしたい夜

書店で偶然手にした本を
何の気なしにぱらぱらとめくり、
ふと目を落としたその先に
そんなことが、書かれていました。

色鉛筆で描かれた
さらりとシンプルな装丁。
目を引く黄色い帯には
『求めるのは「しあわせ」よりも「安心」』
と書かれています。

それは、松浦弥太郎さん著書
『松浦弥太郎の「いつも」
安心をつくる55の習慣』という本でした。

書かれている言葉を
目で追うごとに、
なにか、腑に落ち

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〒 2022 - 愛読書ゆうびん

〒 2022 - 愛読書ゆうびん

こちらは、白くて大粒の雪が
降っています。
そちらはどうですか。

私はこのところ、
気にかかることが重なって
なんとなく心が落ち着きません。
どうしようと思いつつ家を出て
自然と足が向くのは、
書店や図書館。
本がある場所です。

静かな空間に
行儀よく並べられた本の中から
気になったものを手に取っているうちに
少し心が回復する。

あなたにも、
そんな経験はありますか。

今日は
私のとってお

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言葉を仕事にするひと

言葉を仕事にするひと

書籍「美しいものを」には、
雑誌「暮しの手帖」の
初代編集長である花森安治さんの遺した
“暮し”を見つめる言葉が
おさめられています。

モダンな挿絵とともに綴られる
花森さんの言葉は、

目の前の人にやさしく語りかけているような
あるいは、
ひとつひとつのバランスを慎重に考えて
編み上げたような
特有の語り口が
他にない魅了を放っています。

なんとなく気忙しく、
物事への向き合い方が
すこし粗

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自分の感受性くらい

自分の感受性くらい

窓を網戸にすると
足先へ、僅かにひんやりした空気が
流れてきました。
つい先日までのハッキリした夏が
少しずつ姿を消して
秋の気配が滲みはじめた
過ごしやすい夜です。

リィン、リィンと
遠くの暗がりから聞こえる、鈴虫の声。
さざ波のような、透明な音が
耳当たりよく吹き抜けていきます。

思うようにいかないことばかりで
心が埋もれそうになる毎日。

足元に扇風機のよわい風をあて、
ソファの背もたれ

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花 見 月 の お 粥 さ ん 。

花 見 月 の お 粥 さ ん 。

寝ているのか、それとも起きているのか
自分でも分からないような
曖昧な眠りは一晩中続き、
時刻はとうとう午前4:30。

仕方なく観念して、今日は起きてしまうことに。

ぽっかり空いた朝時間を何に使おうか、
ちょっと迷って
いいことを思いつきました。

「こんな日は、お粥さんびより。」

コトコトじっくり時間をかけて
体にやさしい朝ごはんをつくろう。

そう決めると、とたんに
この早すぎる朝が、楽

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美しい感性を養う読書

美しい感性を養う読書

ときめくような
本に出逢った時、私には
必ず行うことがある。

本に記された
美しい表現や胸を打つ場面を
採集してゆく作業だ。

使われている動詞、副詞、名詞、形容詞、オノマトペ、それら言葉どうしの兼ね合いや関係。
まずはひとつずつ丁寧に観察する。

描かれる場面、情景、
登場人物のセリフ、考え方、行動。
些細な部分も目で追ってみる。

それから
真っ白な紙を用意し

自分は何を「素敵」と思ったの

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一編のエッセイと、やさしいミルククラウンの夜

一編のエッセイと、やさしいミルククラウンの夜

最近、大好きな本。
「すてきなあなたに」
というエッセイ集。

シリーズが1から6まであって
単行本は一冊300ページほど。
季節に沿ったショートエッセイが
たっぷりと、収録されている。

今までエッセイ集って
あまり読まなかったのだけど、

この本は、著者・大橋鎭子さんの
上品な言葉選やちょっと古風な言い回し、
描かれる場面の温かさが好きで

今ではベッドに入ってから眠りに落ちるまでの
まどろみ

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食後のまったりタイムに『デザート図書』を。

食後のまったりタイムに『デザート図書』を。

夜ごはんを食べ終わったあとの
心地よい満腹感。
「ふぁ〜っ、今日も食べた食べた。」
ふわふわと満たされたお腹を抱えつつ
がさごそと、「ティータイムセット」なる箱の中からその日の気分のお茶を選ぶ。
紅茶のティーパックや緑茶、ほうじ茶の茶葉。カフェラテ、ココア、コーヒーに抹茶ミルクの粉末も揃っている。

今日はオシャンに紅茶でいこう。

最近は職場の人から頂いた
アールグレイがお気に入り。
カップに多

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私が好きな、おいしい文学。

私はこの連休、
おいしい文学をたっぷりと読んだ。

おいしい文学とは
物語の中に
食べ物が中心に据えられて
描かれている小説のこと
(私の中ではそういう意味)で
私はそういった小説が、こよなく好きだ。

文章で表現されると、その食べ物を
より深くゆっくり味わっているような
そんな感覚になるからかもしれない。

ここのところ私が出逢った作品が
とても素敵なものばかりで、
いろんな人にぜひ読んでいただ

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お 手 紙 の お は な し 。

お 手 紙 の お は な し 。

初めて入った雑貨屋さんで
小花柄のレターセットを買った。
友人に手紙を返すためだった。

お会計をしてもらっている時、
店員さんが声をかけてくれた。

「お手紙、お好きですか?」

私はもちろん、好きだと答えた。

すると、店員さんが
お手紙交換リレーについて教えてくれた。

『知らない誰かさんとのお手紙交換』

①特定の相手を決めずに手紙を書く。
②とある郵便局宛に送る。
③そこで自由にシャッ

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