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ち あ き
2024年4月7日 17:42
小説って、編み物みたいと思います。かぎ針を毛糸の、ちいさな輪っかへ通しひとつひとつ手を動かして糸を列へ、列を面へと仕立てていくように選りすぐった言葉を、重ねて結んで一行ずつ丁寧に文章を紡ぎ、物語へと仕立ててゆく。どちらも本当に時間のかかる作業です。でもそうやって、手間を惜しまず細やかに編み込まれた細工がひとの心を魅了し、そのやわらかい布地が肌をあたたかく包み込
2024年2月4日 18:19
深い瑠璃色の空に一、二粒の星が音もなく点る如月の早朝。私は、パジャマにあたたかい上着を羽織ってひとり、キッチンに立ちます。それから携帯電話を片隅に置き、液晶の上の再生ボタンを押して昨晩の続きをリクエストします。ナレーターの方の声がシンとしていた空気の中に、しっとり響きゆくのを聞きながら私は、朝食の支度にとりかかります。流れるのは川端康成作「伊豆の踊子」。ナレー
2023年10月15日 20:30
机の上にはノートと万年筆、カップに淹れた茜色の紅茶。それから、読みさしの本が1冊。そうして、栞を頼りに本を開いたら、私の、好きな時間のはじまりです。万年筆にインクを十分に充填して姿勢をととのえて書かれている文章に目を落として。本の中の、美しい響きの言葉や新鮮に感じる表現、思わず共感する部分だったり、心に触れた台詞を真っ白なノートの上にひとつひとつ、拾い集めてゆ
2023年9月10日 21:14
書店で偶然手にした本を何の気なしにぱらぱらとめくり、ふと目を落としたその先にそんなことが、書かれていました。色鉛筆で描かれたさらりとシンプルな装丁。目を引く黄色い帯には『求めるのは「しあわせ」よりも「安心」』と書かれています。それは、松浦弥太郎さん著書『松浦弥太郎の「いつも」安心をつくる55の習慣』という本でした。書かれている言葉を目で追うごとに、なにか、腑に落ち
2022年12月23日 09:20
こちらは、白くて大粒の雪が降っています。そちらはどうですか。私はこのところ、気にかかることが重なってなんとなく心が落ち着きません。どうしようと思いつつ家を出て自然と足が向くのは、書店や図書館。本がある場所です。静かな空間に行儀よく並べられた本の中から気になったものを手に取っているうちに少し心が回復する。あなたにも、そんな経験はありますか。今日は私のとってお
2022年11月26日 17:24
書籍「美しいものを」には、雑誌「暮しの手帖」の初代編集長である花森安治さんの遺した“暮し”を見つめる言葉がおさめられています。モダンな挿絵とともに綴られる花森さんの言葉は、目の前の人にやさしく語りかけているようなあるいは、ひとつひとつのバランスを慎重に考えて編み上げたような特有の語り口が他にない魅了を放っています。なんとなく気忙しく、物事への向き合い方がすこし粗
2022年9月1日 21:34
窓を網戸にすると足先へ、僅かにひんやりした空気が流れてきました。つい先日までのハッキリした夏が少しずつ姿を消して秋の気配が滲みはじめた過ごしやすい夜です。リィン、リィンと遠くの暗がりから聞こえる、鈴虫の声。さざ波のような、透明な音が耳当たりよく吹き抜けていきます。思うようにいかないことばかりで心が埋もれそうになる毎日。足元に扇風機のよわい風をあて、ソファの背もたれ
2022年3月12日 18:29
寝ているのか、それとも起きているのか自分でも分からないような曖昧な眠りは一晩中続き、時刻はとうとう午前4:30。仕方なく観念して、今日は起きてしまうことに。ぽっかり空いた朝時間を何に使おうか、ちょっと迷っていいことを思いつきました。「こんな日は、お粥さんびより。」コトコトじっくり時間をかけて体にやさしい朝ごはんをつくろう。そう決めると、とたんにこの早すぎる朝が、楽
2021年11月3日 20:36
ときめくような本に出逢った時、私には必ず行うことがある。本に記された美しい表現や胸を打つ場面を採集してゆく作業だ。使われている動詞、副詞、名詞、形容詞、オノマトペ、それら言葉どうしの兼ね合いや関係。まずはひとつずつ丁寧に観察する。描かれる場面、情景、登場人物のセリフ、考え方、行動。些細な部分も目で追ってみる。それから真っ白な紙を用意し自分は何を「素敵」と思ったの
2021年10月10日 20:26
最近、大好きな本。「すてきなあなたに」というエッセイ集。シリーズが1から6まであって単行本は一冊300ページほど。季節に沿ったショートエッセイがたっぷりと、収録されている。今までエッセイ集ってあまり読まなかったのだけど、この本は、著者・大橋鎭子さんの上品な言葉選やちょっと古風な言い回し、描かれる場面の温かさが好きで今ではベッドに入ってから眠りに落ちるまでのまどろみ
2021年9月15日 13:57
夜ごはんを食べ終わったあとの心地よい満腹感。「ふぁ〜っ、今日も食べた食べた。」ふわふわと満たされたお腹を抱えつつがさごそと、「ティータイムセット」なる箱の中からその日の気分のお茶を選ぶ。紅茶のティーパックや緑茶、ほうじ茶の茶葉。カフェラテ、ココア、コーヒーに抹茶ミルクの粉末も揃っている。今日はオシャンに紅茶でいこう。最近は職場の人から頂いたアールグレイがお気に入り。カップに多
2021年5月5日 21:30
私はこの連休、おいしい文学をたっぷりと読んだ。おいしい文学とは物語の中に食べ物が中心に据えられて描かれている小説のこと(私の中ではそういう意味)で私はそういった小説が、こよなく好きだ。文章で表現されると、その食べ物をより深くゆっくり味わっているようなそんな感覚になるからかもしれない。ここのところ私が出逢った作品がとても素敵なものばかりで、いろんな人にぜひ読んでいただ
2021年2月22日 22:34
初めて入った雑貨屋さんで小花柄のレターセットを買った。友人に手紙を返すためだった。お会計をしてもらっている時、店員さんが声をかけてくれた。「お手紙、お好きですか?」私はもちろん、好きだと答えた。 すると、店員さんがお手紙交換リレーについて教えてくれた。『知らない誰かさんとのお手紙交換』①特定の相手を決めずに手紙を書く。②とある郵便局宛に送る。③そこで自由にシャッ