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ディスクレビュー

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#CD紹介

境界で踊る〜橋本絵莉子『街よ街よ』【ディスクレビュー】

境界で踊る〜橋本絵莉子『街よ街よ』【ディスクレビュー】

橋本絵莉子の2ndアルバム『街よ街よ』に感動しきっている。前作『日記を燃やして』では柔らかなアレンジはアコースティックギターの音色も印象的だったが、本作はずっしりとしたグルーヴを活かしたロックバンドらしさ溢れる1作。ライブでの経験値が制作にも反映された好例だろう。

40歳を迎えた橋本が自身の年齢を「若くもないけど老いてもいない、この感じがちょうど踊り場っぽいなって。(中略)ただスッと過ぎていくだ

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戻れないけど消せもしない/Base Ball Bear『天使だったじゃないか』【ディスクレビュー】

戻れないけど消せもしない/Base Ball Bear『天使だったじゃないか』【ディスクレビュー】

子どもが生まれてから生活は変わった。粉ミルクを溶かす時間がルーティーンに組み込まれ、泣き叫べばオムツを変え、それでも泣き続けるならば抱っこする。当たり前のことだが、妻とともに育児に向き合う日々は去年までの自分とは全く違う。しかし買い物に行ったり、出勤したりする時にはいつも1人。そんな時、慣れ親しんだ音楽を聴けば自分が我が子の親になったという事実と同時に、今までと変わらない自分もまたここに居続けてい

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2023年ベストアルバム トップ20

2023年ベストアルバム トップ20

今年はびしっと厳選して20枚で1年を総括。ライブカルチャーの復権と揺れる世界、喜びも悲しみも猛スピードで切り替わる時流の中で、この音楽を聴いてる間はきっと大丈夫だ、と思えたアルバムを選びました。

20位 ROTH BART BARON『8』

三船雅也がドイツに拠点を移してからの1作目。ここしばらく毎年凄まじいアルバムをリリースし続てけいるが、本作はまた違う場所へ飛ぼうとする萌芽を感じた。エレキ

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2023年上半期ベストアルバム トップ10

2023年上半期ベストアルバム トップ10

例年よりは遅れてしまったけれども、今年も上半期ベストnoteを書き上げることができた。良い歌モノとの出会いのきっかけになればこれ幸い。どのアルバムも、すごく優しい、というのは共通点かもしれない。心に寄り添うという作品が年々好きになっている。下半期も、音楽に抱えられていきたい。

10位 クラムボン『添春編』

蛙化現象という言葉がZ世代の流行語であり、しかもそれがYouTuberの動画を基に流行し

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For Tracy Hydeの解散を考える/セカイから世界へ

For Tracy Hydeの解散を考える/セカイから世界へ

トレイシー・ハイドという子役が出演した1971年のイギリス映画『小さな恋のメロディ』を初めて観たのはFor Tracy Hydeの大傑作アルバム『New Young City』(2019)を聴いてしばらく経った後だった。当時の年間ベストアルバムにも選んだバンド名に関連してる人物の映画なのだから、さぞこのバンドの根源に繋がる作品だろうと思っていたが、観終わった後にバンド名の由来はWondermint

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2022年 ベストアルバム トップ50

2022年 ベストアルバム トップ50

2022年のよかったアルバムを50枚、ランキング化。5年間50枚を選び続けててこれいつまで続けられるのか、って感じなのだけども、いいアルバムが多いんだから仕方ない。とはいえ、トップ50っていうのは一区切りかもしれないなぁと。もうちょっと絞って愛聴する方向に自分を持っていくのもアリかな、と思ってます。現状はね!ひとまず、今年の分は全力で推しておきます!

50位 えんぷてい『QUIET FRIEND

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2012 to 2022〜10年分の年間ベストアルバムトップ10を振り返る

2012 to 2022〜10年分の年間ベストアルバムトップ10を振り返る

「2012 to 2022」をやろうと思ったのは、自分が意識的に多くのカルチャーに触れようとし始めたのが2012年だったことに由来しているので、"年間ベストアルバム"というのも2012年から勝手に書き留めていました。今回の記事は2012年~2021年までの10年間の年間ベストアルバムトップ10を総まとめ。

2012年ベストアルバム

1位 クリープハイプ 『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』

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Base Ball Bear、3度目の武道館にいたる探究の10年〜2012 to 2022

Base Ball Bear、3度目の武道館にいたる探究の10年〜2012 to 2022

2022年11月10日、Base Ball Bearの結成20周年イヤー最終日にバンド史上3回目となる日本武道館ライブが開催される。メジャーデビューから4年足らずでの1度目の武道館(2010.13)、結成10周年記念の2度目の武道館(2012.1.3)から約11年ぶり。ニコ生のライブ映像実況などで、メンバーはたびたび「また武道館やりたい」と口にしており、ファンとしても待望の公演であった。

ちょう

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2022年上半期ベストアルバム 10

2022年上半期ベストアルバム 10

毎年恒例の上半期ベスト。名古屋に住み始めて通勤が車になったのでわんさか新譜も聴けるようになった上半期。トップ10は迷うことなく決められた。例外もあるけど全体的に質量のずっしりした作品が揃った印象。でたらめに長けりゃあいいって話では決してないのだけど、たっぷり聴けてしっかり心に残るアルバムというのが今の気分には合っていたのかな、と思ってる。

10位 羊文学『our hope』

メジャー2ndアル

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SENSAにNelko『How Do You Feel?』のレビューを寄稿しました

SENSAにNelko『How Do You Feel?』のレビューを寄稿しました

SENSAに3回目のレビューを寄稿しました。東京のメロウヒップホップバンドNelkoの1stアルバム。最初の作品なのでバンドの成り立ちや紹介もまじえつつ、ひたすらこの良いムードを届けるべく言葉を選りました。

すっごいざっくり言うと、環ROYがなつやすみバンドとコラボレートしてる、みたいな音楽、なのだけどもちろんそんな形容では収まりきらないユニークな音楽です。ドライブミュージックとしてはもちろん、

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dieありき、だからドLIVEする〜Base Ball Bear『DIARY KEY』

dieありき、だからドLIVEする〜Base Ball Bear『DIARY KEY』

誰かの死を感動の引き金とする物語は数多くある。僕もそんな作りを持った作品で好きなモノは多いと思う。死をどう受け止めるか。その描き方次第で作品の持つ意味は深まり、胸に残る忘れがたい作品になるものなのだ。

ただ世界がコロナ禍に突入してからというものの粗雑な作りの"死ありき"な物語を受け取る度に徐々に嫌気が差してきた。毎日のように死者数が報じられ感覚も麻痺しかけるのだが、数値化されたその1つ1つの死に

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ポッドキャスト『ポップカルチャーは裏切らない』#49.Base Ball Bear「DIARY KEY」を紐解く

ポッドキャスト『ポップカルチャーは裏切らない』#49.Base Ball Bear「DIARY KEY」を紐解く

音声配信49回目。Base Ball Bearが10/27にリリースした9thアルバム『DIARY KEY』について喋り倒した。Music+Talkで録ったのでおしゃべりパートと曲の音量差に気をつけてください。

とにかく思うこととかグッとくるポイントが多すぎるので全部詰め込んだらこの尺になってしまった。noteでもこの内容を踏まえつつ1本書き上げたいなぁと。とんでもない長さになりそうだ。
#コ

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SENSAにSACOYANS『Gasoline Rainbow』のレビューを寄稿しました

SENSAにSACOYANS『Gasoline Rainbow』のレビューを寄稿しました

SENSAに2回目のレビューを寄稿しました。福岡オルタナの至宝・SACOYANSの2ndアルバムについて。久々にかなり自由に書きました。想像力をじんわりと広げていくようなアルバムだったので、好き勝手に妄想してみました。

以下、ボツにした部分を勿体ないのでこちらで公開します。色んな切り口で書ける作品は、最終的にどこを残すかすごく悩みますね。今回は、作品を妄想まじりに自由に語るレビューに舵を切ったの

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音楽文 2021年9月・月間賞 入賞のお知らせ+これまでBase Ball Bearで書いてきた記事まとめ

音楽文 2021年9月・月間賞 入賞のお知らせ+これまでBase Ball Bearで書いてきた記事まとめ

rockin'on.comが運営する「音楽文」、2021年9月の月間賞で入賞させて頂きました。受賞作は9/2アップの『Base Ball Bearは「プールサイダー」で変わったのか?-楽しみながら考え続けるサマーチューンについて』です。音楽文は8/31で投稿が終了になっているので最後の月間賞だったのですが、この折に結果を残せて嬉しい限り。何度も書くけど2017年4月の最優秀賞獲得が今なお書き続けて

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