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#刹那

白い月の光 《詩》

白い月の光 《詩》

「白い月の光」

夜明け前の白い月に 

僕達ふたりの

それぞれが抱える
事柄の差異が映し出される

その白い月は夜空の端っこで

暗示的な光を微かに放つ

僕は迷いの中で朝を迎える

其れは圧倒的な混乱とは違う 

確信のある答えが
欲しかっただけなんだ

彼女は時計を見つめている

その針は宿命的な時を示す

僕は彼女の背中をそっと
指先で撫で

君は静かにうなずいた

所有し所有される事の

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君に贈る詩 《詩》

君に贈る詩 《詩》

「君に贈る詩」

君は詩なんか読まない

僕の書いた文字は透き通っていて

君の瞳には映らない

窓からは低くたれこめた
暗い雲が見えた

そうかもしれない 

僕は口に出してそう言った

僕がペンを持った瞬間に
言葉は消えて無くなってしまう

詩を読む様に独り言を呟く

君は詩なんか読まない

静かに雨が降りはじめた

Photo : Seiji Arita

水平線 《詩》

水平線 《詩》

「水平線」

果てしない偶然性が積み重なり
今が形成される

理論や整合的な説明は出来ない

全ては其の偶然性に支配されている

其れを必然と呼ぶのかもしれない

其処には
言葉に出来る何かは存在しない

言葉に出来ないものの中に
潜む自己規定

幾つかの街が通り過ぎ 

鏡の中にお前を見る

深い夜と静けさが永遠に続き

時を刻み命と死が交差する

誰にも
解き明かせない唯一が此処にある

俺と

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邪悪な光 《詩》

邪悪な光 《詩》

「邪悪な光」

悲観的な色あいを帯びた幻想と

攻撃的な響きを持つ光が仄かに漂う

表に現れているのは 

ただの見せかけに過ぎない 

徹底された秘密主義 

歪んだ鏡が映し出す

恐ろしく執拗な性質を持つ陽の光

何かの始まりを意味するもの

もう全ての時が動き始めている

その光に恐怖し逃げ出した人々

次第に力を増す
その邪悪な光に眼を背けた

そして誰ひとりとして居なくなった

僕ひとり

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愛の言葉 《詩》

愛の言葉 《詩》

「愛の言葉」

何処まで行っても現実は付いてくる

自分の影と同じ様に

風が闇を斬る音

其の風は

僕の知らない所からやって来て

僕の知らない所に向かい
吹き過ぎてゆく

忘れかけた愛の言葉 

海の様に広いベッド

其処には用途を失った

言葉が雑然と散らばる

魂のドア 《詩》

魂のドア 《詩》

「魂のドア」

神は要らない 

其処に欲望はあるか

其処にプライドはあるか

悔しさで握りしめた拳

僕は泣き腫らした眼で
信頼できる本当の友を探した

魂のドアを開けろ

夢はいつか見た 

夏の夜の流星ではない

半月の夜 《詩》

半月の夜 《詩》

「半月の夜」

風か吹き始めたのは そう 

孤児の様に置き去りにされた

野良猫と出逢った時からだった

その夜 
君に眼隠しをしてSEXをした 

君の望み通りに

半月の夜は何故か無口になる

空は雲に覆われて雨が降り始めた

鮮明に見た夢が
不鮮明な現実に呑み込まれてゆく

いつか見た半月 

雨はまだ降り続いている

窓を打つ雨音 

青い海風が

忘れられた
深い森の木々を洗い淘汰する

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トロイの木馬 《詩》

トロイの木馬 《詩》

「トロイの木馬」

特定の目的を持ち

意図的に作り上げられた

偽装された世界の中で

沈黙を維持し続ける

真夜中の音は鳴り止まず

僕はその音に耳を澄ませている

記憶と意識の形を変えて
其処に留めた

巻き戻せない時を超え 

朱く霞む夕陽の残像が風に逆らう

汚された光に僅かに残る純粋な粒子

永遠に続く掟が
終わりなき夢に堕ちてゆく

トロイの木馬 

血は流されなくてはならない

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忘却 《詩》

忘却 《詩》

「忘却」

無意識の領域から

浮かび上がる記憶と欲求

割れた雲間から見えた幾つかの星

遠く忘却の中に消えた彼奴の言葉は
まだ僕の中に残っている

彼の意志の力は其処に留まり 

星を輝かせる 

光と影の複合体が創り出す本当の姿

其れは美しさの奥に隠された資質

表面上に見えるものが

美しくある必要も無い

例え醜いものであったとしても

僕は彼を正確に理解し
その輪郭を描く事が出来た

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水晶の夜 《詩》

水晶の夜 《詩》

「水晶の夜」

水晶の夜 飛び散った硝子の破片

忘却の沼に深く沈みゆく二本の足

其処には賞賛も無く批判も無い

屈曲した光があるだけだった

若き暗殺者と思考の殺人者

俺は彼に
呼び掛ける手段を持ってはいない

霧の中で遊ぶ小人の群れが 

青い太陽を指差す

裸体を捨て去り

幻想の肩書きに嘔吐する

千里の荒野にはためく白旗

変換不能な替え玉の命

悪いが俺は
お前を許したつもりは無い

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VELVET SKY 《詩》

VELVET SKY 《詩》

「VELVET SKY」

裏付けの無い仮説が

黒き衣を纏い通り過ぎる

苦悶に歪み天を裂く

何処までも無音な川の流れが

ヴェルヴェットの空から降りて来る

未完成のままで
完成した夜明けが訪れた時

街には無個性な色が反射し始める

きっと僕も其処に含まれている

もうひとつの顔で僕に微笑んでくれ

そしてこのまま 

目を開けたまま眠れ

VELVET SKY

海色に沈む 《詩》

海色に沈む 《詩》

「海色に沈む」

目には見えない雲の切れ端 

小さな浮雲

ゆっくりと型を変えて空を彷徨う

其れは僕の過去 

失われた記憶を求めて漂っている 

部屋の窓から 
遠くに少しだけ見える海

巨大な海の切り取られた断片

其処には波音も
潮の匂いも無い海色の小さな塊

僕は記憶の枠の内側に居るのか
外側に居るのか

何も見えない思い出せない 

僕の知らない所で物事は進展し

行き場を失くしたの

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青に浮かぶ音 《詩》

青に浮かぶ音 《詩》

「青に浮かぶ音」

不格好で歪な音が空間を揺らす

其れは
個性的で魅力のある歌の様だった

何もかもが
平坦で均等に備え付けられた空

色斑さえない青に浮かび

その音は揺れていた

宿命的な欠点を幾つもあらわにした

君の奏でる歌に心を奪われていた

君の突出した部分が
僕の感情に食い込んで来る

僕は君の歌を聴くのが好きだった

暴力に似たセクシャルな感情が
僕の中で蠢いてる

小さな恐怖と

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風見鶏 《詩》

風見鶏 《詩》

「風見鶏」

忘れたいものは絶対に忘れられない

風向きひとつで
くるくると回る風見鶏

どんな色をした風でも構はしない 

其処には独自の世界も意志も言葉も

持たない哀れな姿があった

僕は笑って黙殺した

忘れなよ そんな事は

誰かが僕にそう言った

あの時殺したのは他でも無い

自分自身だったからだ

僕はひとりボトルを開けた時の

ウィスキーの香りを思い出していた

ハイボールを飲む君

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