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散文詩

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#世界

2024 第8病棟 《詩》

2024 第8病棟 《詩》

「2024 第8病棟」

2024度目の世界に立ち尽くす僕は

瓦礫に巣を喰う黒鼠の夢を見る

神様どうか御加護を下さい 
救いを下さいと囁きながら

其処に神が居るのなら祈るさ

迷える子羊を助けて下さいと

大地を引き裂いた断末魔 

欲に駆られた灰色の背徳

燻んだ瞳で何を見る

誰一人として聞こうとはしない

隣の人の泣き叫ぶ声

知らぬが仏 
馬鹿が原色を着飾り尻を振る

国際的な都市に

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言葉 《詩》

言葉 《詩》

「言葉」

非調和性を帯びた不協和音と

トランス状態に似た
微かではあるが確実な狂気

意識と無意識の境目が手招きをする

僕は半円形の世界を見ていた 

其れはただ

見る必要性に迫られたからで

本当に見たいから

見ていた訳じゃ無い

いつしか僕は
現実では無い世界の中に

自分の見たいものを

自分自身で見つけ出した

其処には僕と個人的に

結びついているとしか思えない

そんな言葉が

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破滅の淵 《詩》

破滅の淵 《詩》

「破滅の淵」

僕等は先を急いではいない 

時間がかかるなら 

それでも構わない

空をゆっくりと流れる雲は

広い空の中に
自分の居場所を定めている

何処か遠くで

誰かが誰かを呼んでいる

僕等は世界でただひとつの

完結した場所に辿り着く

何処までも孤立し誰も入れない空間

其処には差し出すものも
求めるものも無い

沈黙のうちに過ぎる時 

だけど孤独に染まる事は無い

彼女は僕の

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静脈 《詩》

静脈 《詩》

「静脈」

時間が不規則に揺らぐ

僕が心の中の牢獄に

閉じ込められている事を

誰も知らない 

其の牢獄を出る事は 簡単だ

自分自身の意志で出てゆけば良い

鍵をかけたのも
鍵を開けるのも全ては自分自身

周りの声達は

もう僕に話しかける事を辞めていた

僕は誰にも

見る事の出来ない風景を睨みつける

其処には枯渇した水脈がある

僕が解き明かすべき暗号を
君は持って居る

現実と仮説

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小世界 《詩》

小世界 《詩》

「小世界」

この世界には 

絶対的な善も無ければ

絶対的な悪も無い 

善は悪に転換し 

悪は善に転換する 

あるのは其の均衡だけだ

すなわち均衡そのものが善である

其の本にはそう書かれていた

死は解放でも復讐でも無く
空白を生むだけだ

僕はそう書き残した

世界が同義を失い崩れてゆくのは

僕達の苦悩や煩悶のせいでは無い

雷鳴とどろく夜に全ての意味を知る

いつだってどんな時

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月明かり 《詩》

月明かり 《詩》

「月明かり」

満月がくまなく街を照らす夜

僕は自分自身が
失われるべき場所のドアを開けた

その場所に君が

閉じ込められている事を

知っていたから

君は残された短い命を慈しむ様に

詩を書いていた

その事だけは僕には 
はっきりとわかっていた

その場所には僕達ふたりしか居ない

そのドアは一方向にしか開かない

僕等は

正しく人を愛する事が出来なかった

そしてまた

自分自身を正

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思考犯罪 《詩》

思考犯罪 《詩》

「思考犯罪」

世界はこの僕に伝えるべき言葉を

何ひとつ持ってはいない

仕組んだ謀略の行方 

謎に満ちた怪文書

霞の様な無気力な世界は

僕とは無縁な場所で
時を刻み続けている

パンドラの箱は既に開けられいる

僕は世界に不足している

パズルピースを

ひとつひとつ探し集めて手に入れた

終わる事の無いゲームは続いている

赤いランダムスターに祈りを捧げた

君の髪がキリストより長くな

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血 《詩》

血 《詩》

「血」

調和を重んじて生きる風と

自我の宿命が交差する

世界の環は  

既に閉じられ回避と逃避の中

説明さえつかない弁明を続ける

其処に流されたリアルな血が

ただ虚空を睨み付けていた 

ほとばしる血には勝利も敗北も無い

無縁な世界の光が
剣の様に僕の心を刺し貫く

背景に描かれた街には  

消費が美徳と言う

価値基準を持つ人達で溢れていた

大義名分を掲げ容赦なく断罪を下す

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月の南 星の下 《詩》

月の南 星の下 《詩》

「月の南 星の下」

辛い時には幸せなふりをするの 

君の口癖

僕は瞳を閉じ耳を済ませ 

其処にあるはずのものを思い描いた 

ほんの少しの間だけ
手を握り合っていた

僕は世界に近づこうとしていた

近づきたかった 

その普通と呼ばれる世界に

僕は自分が自分自身であり

君は君自身である 

他の誰でも無い事に

不思議な安心感を覚えていた

彼等の創り出したものは いつも

僕や君を

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西風 《詩》

西風 《詩》

「西風」

僕等は空白を埋める為に話し続けた 

ただ話し続けていた 

お互いの仕事の事や身の上話し

過去にあった色々な事柄

僕はどれだけ孤独で 

どれほどのものを失って来たか  

全てを君に知って欲しかった

其れは逆に 

誰かを傷つけて 大切な何かを

僕自身が奪って来た
経過でもある事を僕はわかっていた

それでも 全てを知って欲しかった

彼女もまた同じだった 

僕は彼女の話

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ロマンス 《詩》

ロマンス 《詩》

「ロマンス」

僕は鏡を見つめていた 

其処には

何も映し出されてはいない

空白があるだけだった

感覚が麻痺している訳でもない

混乱や戸惑いもなく 

今を成立させる

基準や理論を探してた

自分自身が捉えた感覚を
適切に言葉に置き換える

その事だけに注力していた

それが僕の証を残す事が出来る

唯一の方法だったからだ

不均一で不可解な
空白と短い語彙で綴られた言葉

形作られた

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小さな世界 《詩》

小さな世界 《詩》

僕等は小さな世界の中に居る 

痛みと苦しみが
歪み堕ち螺旋を描く

自分自身の中に

上手く位置付ける事が出来ないまま

相手を傷付けない様に 

そしてまた
自分も傷付かない為に

明日を変えるには
今日を変えなくちゃ

今日を変えるには
今を変えなくちゃ 

そう誰かが言った

わかってる  

わかってるよ だけど

何処へも行けない僕は 

何ひとつ変える事なんて
出来ないままで

ベッ

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ミッシェル 《詩》

ミッシェル 《詩》

「ミッシェル」

世界が燃え尽きるのを見ていた

もしかしたら

水没していく様子だろうか

僕等には 
どっちでも良かった

ただ全てが
終わりに近づいている事を

ふたりは はっきりと感じていた

市営住宅の
屋上の手すりから身を乗し出して

大通りを流れる車や人を眺めていた 

慌てふためく群衆が
映画の様に見えた

僕は彼女に逃げないの? 
そう聞いた

彼女は うん逃げないよ 

別に死

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鏡の国 《詩》

鏡の国 《詩》

「鏡の国」

すすきの穂を揺らした十月の風

金木犀の香り 

銀杏の色彩

微かな
冷たさを含んだ風を感じていた

細長い雲が線を引く青

空は高く 
高過ぎる空を見上げていた

その情景が映し出す過去の特異点

喪失の中に絡まる愛憎は

やがて再生に似た世界の終わりを
導く柔なか弧を描く

細い塀の上を辛うじて
バランスをとりながら歩く

静かに暗唱を繰り返す

鏡の国に君は居た 

そして今

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