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エッセイ~日々の戯言、独り言~

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猫の話、酒の話、どうでもいい話。日々思い浮かぶことを綴りました。
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マダムが集う喫茶店

マダムが集う喫茶店

定期検診のため、午後半休をとって成城にやってきた。
東京在住の方ならご存知だろうけれど、お金持ちが住む街である。
クリニックで受付を済ませた後は、午後の診療開始まで駅前の喫茶店で時間を潰すのがルーティンになっている。
この喫茶店がなかなか雰囲気があって良い。
創業は1967年だそうで、一歩中に入ると、そこは昭和のど真ん中。使われなくなった煙草の自販機も、そのまま残されている。

私はいつもダブル玉

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獣のタタキ

獣のタタキ

私は海っ子なので、肉よりも魚が好き。ラーメンにチャーシューはなくてもいいし、最近流行りの低温調理の半生っぽい肉が麺に乗っていたら、亭主に食べてもらう。肉は最小限でいい。魚さえあれば。
でも、悲しいかな東京は魚が高い。
なるべくリーズナブルな魚を探して、週末はあちこちのスーパーを巡り歩いている。
お盆明けだったか、いつものスーパーで鰹のたたきを買った。戻り鰹のシーズンで、刺身のサクからたたきまで、シ

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Rockな葡萄

Rockな葡萄

週末、用賀方面へ散歩がてら買い物に出かけた途中、ブドウ農園でその日限りのブドウ狩りを開催しているのを見つけた。
ブラックビートという初めて聞く種類のブドウだ。
ブドウは好きだし、名前もかっこいいし、毎朝食べているバナナを買う前だったので、こちらでブドウをちょっきんすることにした。
なかなか立派な大粒のブドウ。紫というよりその名の通り黒に近い。
220円/100gを1kgほど購入(^^)

私が子供

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太陽は沈まない

太陽は沈まない

その夏、東京のアパートから実家に戻った私は、運転免許を取るべく教習所に通っていた。
同じように夏休みを利用して、故郷で免許を取ろうと集まった同級生と、毎日楽しく教習を受け、夜は街に繰り出して飲んで、古臭い言い方をすれば、青春の真っ只中を過ごしていた。

それは仮免許試験が行われた日のことだった。
無事に試験をパスして、仮免許証を両親に見せびらかし、夕飯後、父と何気なくテレビを観ていた時、速報が流れ

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明日のグルメ

明日のグルメ

明日は年に一度の胃&大腸内視鏡検査。胃と大腸、一気にやってしまう。
ということで、今日は三食、病院から処方された専用食。
一昨年までは自己管理で、許可されているものなら何でも食べれたけれど、ルール破っちゃう患者さんが多いそうで、一律、同じレトルトの食事となってしまった。

メニューはこんな感じ↓↓

当然、薄味で美味しくないし、量も足りない。
こんなものを食べながら「孤独のグルメ」の再放送なんぞを

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ドトールの困ったちゃんたち

ドトールの困ったちゃんたち

久しぶりのドトールネタ。
期間限定ミラノサンドは牛カルビ。パラペーニョ入りを食べてみたけれど、なかなか美味しい。中身だけ取り出して白飯に乗せてかっこめば、松屋の牛丼より美味しいかもしれない。

さて、本題。

昨日、リモートワークの昼休みに入ったドトールで、隣に座ったアフリカ系の兄ちゃんが、持ち込んだお弁当を食べていた。
一応、アイスティは店で買ったみたいだけれど、もちろんルール違反。
こういう場

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べっこう飴とウナギ釣り

べっこう飴とウナギ釣り

夏といえば祭り。
祭りといえば縁日。
縁日といえば……その先は人それぞれ思い入れのあるお店や食べ物があるだろう。

私が生まれ育った街のお祭りで、ダントツの人気No.1は、べっこう飴の屋台だった。
一般的には溶けた飴を動物や乗り物の型に入れ、固めたものを売っているけれど、私たちが見ていたのは、まさに芸術といっていい職人技だった。
屋台のおじさんが、黄金色に輝く溶かし飴を鉄板に注ぐと、次から次へと子

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シモキタ・ブルース

シモキタ・ブルース

下高井戸の駅前市場が3月末をもって閉鎖した。今や跡形もない。これから新しいビルが建ち街の様子も変わっていくのだろう。
これと同じ光景を、十年ほど前にも見た。
駅前開発で撤退を余儀なくされた、下北沢の駅前食品市場である。
闇市の名残を残す稀少な商店街だった。

ごちゃごちゃとひしめいた掘っ立て小屋のような商店は、あれよあれよという間に取り壊され、あっという間に、新しい街へと変貌を遂げた下北沢。

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幸せの黄色いカプセル

幸せの黄色いカプセル

2000年問題が世間をざわつかせていた頃のこと。
当時はブログやインスタグラムなんてものなく、個人の情報発信はホームページ(正確にはウェブサイト。ホームページはそのトップページのこと)で行われていた。
ホームページビルダーなんてソフトもあり、テンプレートも何種類か用意されていたけれど、より個性的なサイトにするためにHTMLを覚え、ちまちまとタグで書いていた人も多かった。
私もそれに倣い、1ページの

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のこのこと、たけのこ採りに付いていく

のこのこと、たけのこ採りに付いていく

法事で長野の田舎へ行った。
色々理由はあるけれど、自ら進んで行きたい場所ではない。
特にこの季節。
山や森や竹藪に近づきたくはない。なぜなら、ゴッキーは素手で潰せても、私はニョロッとしたものが、大の苦手だからだ。

「明日の朝、帰る前に竹の子を採っていったら?」

法事の後、そんなお誘いを受けた。
ありがたい申し出だけれど、躊躇してしまう。

あれは、中学生だった頃のこと。
同級生数人で、とある寺

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大きな琵琶の木の下で

大きな琵琶の木の下で

梅雨入りしそうでしない、アンニュイな気候が続くこの季節。スーパーのフルーツコーナーで毎度驚くことがある。

「ビワって、こんなに高かったっけ?」

去年の夏、小学校時代の友人たちと、鴨川シー・ワールドへ行った。千葉はビワが名産だそうで、お土産屋さんを周りながら、やはり、この話題になった。
子供の頃は、おやつに2つ、3つ、普通に食べていた。
でも現在、スーパーで見るとだいたい1個100円前後する。

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いつか、4杯目の乾杯を

いつか、4杯目の乾杯を

「お酒は3杯までって、決めているの」
なっちゃんは、決してそれ以上は飲まなかった。
飲み足りない私はいつだって、もう一杯くらいいいじゃないのと誘うのだけれど、なっちゃんが4杯目のお酒を注文することはなかった。

なっちゃんは、大学時代、よくつるんでいた友人の一人。
名前に「夏」の文字が入る。
梅雨が明け、前期試験が終わってほっとする頃になると、彼女はいつもこう言っていた。

「いよいよ夏が来るよ。

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ランチタイム・メモリー

ランチタイム・メモリー

昔、派遣社員として日本橋の証券会社に通っていたことがある。
世はバブルの真っ只中。周りはエリート証券マン。
当然のように、ランチタイムは毎日、外食だった。オフィス内でお弁当を食べる、という習慣がなかったのだ。
昼時になれば外に出て、1000円前後のランチを食べ、ついでにお茶してオフィスに戻るのが常だった。
もう30年も前のことだから、今はどうかわからないけれど、日本橋はランチ処が選び放題だった。

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母のいない母の日に想うこと

母のいない母の日に想うこと

母の日ですね。
カーネーションの花束を買って、仏前に供えました。
普段より3割くらい高いかなー、足元見てるなー、と悪態はつかないでおこう。

遥か昔のこと。
あれは母の日ではなく、誕生日だったかな。
お小遣いを握りしめて、私は近所のお花屋さんに走り、店頭に並んでいた花束の中から、ひとつを選んだ。持っていたお金で買えるものが、それしかなかったのだ。

差し出した花束を見て、母は驚いた。
「これ、仏様

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