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のこのこと、たけのこ採りに付いていく

法事で長野の田舎へ行った。
色々理由はあるけれど、自ら進んで行きたい場所ではない。
特にこの季節。
山や森や竹藪に近づきたくはない。なぜなら、ゴッキーは素手で潰せても、私はニョロッとしたものが、大の苦手だからだ。

「明日の朝、帰る前に竹の子を採っていったら?」

法事の後、そんなお誘いを受けた。
ありがたい申し出だけれど、躊躇してしまう。

あれは、中学生だった頃のこと。
同級生数人で、とある寺の竹林に、無断で竹の子を頂戴しにいった(窃盗とも言う)。
そこで、大きな青大将が出現したのを見て、すぐに逃げ帰った。
そのトラウマがあって、以来、竹藪を避けている。

そのことを話すと、ニョロなんて、絶対出ない、毎日行ってるけれど、竹藪で見たことはない、とのこと。

朝採りの竹の子と、遭遇確率の低いニョロ。
食欲が勝って、翌朝、私は長靴を履き、案内されつつ竹藪に向かった。

斜面がきつい。45度くらいあるんじゃないの?

竹に捕まりながら、踏ん張って登る。
途中、偶然、出会った近所のおばさんが言う。

「この前、このへんに、ヘ●が出たわよ」

それみたことか。
やっぱり、居るのだ、ヤツは。

初めて手にした鎌を急いでふるい、何本か採って山を下る。

ヘ●情報を教えてくれたおばさんが大きな竹の子を分けてくれた。

竹の子は自宅に戻ってすぐにあく抜きをして、竹の子ご飯や筑前煮にした。

新鮮な山の幸、沁々と美味しい。
でも、やっぱりニョロさんは嫌だ。

でも。

「ヘ●よりも、ゴッキーを素手で潰せるあんたの方が怖い」

友人たちは、口を揃えてそう言う。

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