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【富士】六所浅間神社風鈴祭り&吉原商店街フォトウォーク

【富士】六所浅間神社風鈴祭り&吉原商店街フォトウォーク

 こんにちは、Shizuoka ShutterBugsメンバーのYukaです。拙文ではございますが最後までお付き合いいただけますと幸甚です。

 今回は、7月21日(日)に開催した「六所浅間神社風鈴祭り&吉原商店街フォトウォーク」について書かせていただきます。

 参加メンバーはm-takaさん、wataameさん、faさん、misaさん、Keitaさん、nicoさん、tamaさん、私に、途中合

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ラストオーダードーナッツ

ラストオーダードーナッツ

午後九時十七分、帰宅途中でローカル線上の最寄り駅に降り立った私は、ひどく空腹であった。三月も末という時分、小さな会社の経理担当として非常に忙しい日を送っており、終業後も何時間も残業をしていた。そんなことだから、昼食も夕食も、かろうじてという感じでとるしかなく、味なんかほとんど分からなかった。やっと業務が終わって退社し、何か腹に入れようと思ったが、我が会社の周りでこの時間帯で営業している飲食店は満席

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ジェイク・リーの半時間

ジェイク・リーの半時間

何語なのか知らない歌を聴いている
真っ白な昼下がり
恐らく、悲しい歌だ
細かい意味なんてさっぱり分からない
分からないのにずっと聴いている
雨が降ってきそうだ
さっき君の車が、出ていくのを見たような気がする

*   *   *

 生まれてこのかた、出会う人間、向き合う人間の一人一人が私を採点しているように思えていた。まるでロボットのごとく完璧な採点者。その絶対的で完全無欠な彼らが、私の一挙

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植木鉢

植木鉢

 極々一般的な、築三十年ほどの、小さなアパートの三階。くすんだコンクリートの外壁を覆うのは、葉がほとんど落ち、息も絶え絶えといった様子の蔦。

 そこの一室の、慎ましやかなヴェランダで、私はいくつかの花を育てている。大したものではないけれど。スーパーマーケットやホームセンターで安く仕入れてきた、日日草、フィエスタ、ゼラニウムなどの鉢を、ぽつぽつと置いて、おざなりに世話をしているのだ。それでも、こ

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冬の寒さに思うこと

冬の寒さに思うこと

一、「腹が立つ」

 冬の朝と夕方、ひどいときには日中にも吹き付けてくる風に、苛々させられることがある。それも、冬季に関東地方または太平洋側の地域で吹く「からっ風」ではなく、やや弱めにちょろちょろとしている冷風のほうが私の神経を逆撫でする。

 何だかこう、プラスチックの下敷きや薄い紙束のようなもので顔の表面をぴしぴしと叩かれているかのように感じるからだ。しかも、それがまるで刺すように冷たく、つい

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電子書籍『ルーウィン』あとがき

電子書籍『ルーウィン』あとがき

8月13日に、Amazon Kindleストアで短編小説『ルーウィン』を出版しました。

舞台や構想、モデルについて『ルーウィン』は元々、現在執筆中の、英国コーンウォール州ファルマスを舞台にした旅行記風小説『僕のファルマス滞在記』のスピンオフとして書き始めたものでした。実は、『僕のファルマス滞在記』に取り掛かる際に長編執筆のブランクが8年もあったため、何かリハビリが必要だったのです。ちょうどその時

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🌟電子書籍を出版しました!

🌟電子書籍を出版しました!

8月13日(木)、自身初の電子書籍となる『ルーウィン』をKindleにて出版いたしました!イギリスの片田舎でほんのひと時出会う、男性と猫をめぐる短編小説です。Kindle端末をお持ちでなくてもスマートフォン用アプリなどで読めますので、お気に留めていただけるととても嬉しいです。読み放題プランからもご覧いただけます。
商品ページにはこちらからアクセスいただけます。
https://amzn.to/30

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ジェイク・リーの一日

ジェイク・リーの一日

毎朝地下鉄駅を出てくるところから、ジェイク・リーの一日は始まる
人の群れに続いて地上に上がる
入り口を出るとすぐに、四角い澄んだ青空が顔を出す
十一月の早朝は肌寒い
彼は身をすくめる
そして、すでに上げられたジャケットのファスナーを今一度上げる

ジェイク・リーはまっすぐ早足で歩いていく
向かう先は小さなレンガ造りのアパートだ
その部屋は、小説を書くためだけに借りている
まるで彼が救世主か何かのよ

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『南天の枝』について独り言

『南天の枝』について独り言

短編小説『南天の枝』をお読みいただいた皆様、ありがとうございます。また、これからお読みになるという方にもお礼を申し上げると同時に、折角ですので同作品が生まれた経緯についてちょっと語ってみようと思います。

『南天の枝』は、私自身が撮影した写真に言葉をつけていく、という『Story from a Picture』の第2弾として生まれたものです。この「写真に文章を加える」という試み、なかなか難しいもの

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『また飛べるように』シリーズとChroma Key楽曲

『また飛べるように』シリーズとChroma Key楽曲

写真を編集中に音楽を聞くことがよくあるのですが、最近は元Dream Theaterキーボーディスト、Kevin Mooreさんのソロプロジェクト、Chroma Keyの楽曲に力になってもらっています。

今回の『また飛べるように』三部作には『Strong』という曲を使いました。この曲の実際の意味や歌詞とは乖離しているかもしれないので、「インスピレーションを受けた」などとはあんまり言えないのですが・

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犬


 夕方の散歩中に犬を見た。よく見知っている犬だ。顔が黒と白の八割れで、人の顔を見れば必ず吠えてくる、憎たらしいあいつだった。

 けれども、今日は様子が違っていた。いつものように、檻の中に気だるげに寝そべっているのではなく、飼い主のおじいさんが運転するシニアカートに乗っていた。普段浮かべている、世の中をどこか諦めたような表情はどこへやら、カートの前部に陣取り、あたかも自分がおじいさんを率いる将

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【超・短編小説】カメオ

【超・短編小説】カメオ

小さな石橋の上に、傘を差した少女が立っていた。

少女は真っ白なワンピースを着ていた。差している傘も真っ白だった。少女にそれらを与えたのは彼女の恋人であった。そうして、少女はその小雨の降る中、その澄んだ美しい瞳をじっと見据えて、その恋人を待っていたのである。

少女の恋人は、二三年前、少女の国と隣の国との間に戦争が起こった、兵士として駆り出されていった。そのとき、少女は恋人が町を出て行くのを、遠く

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花火は見ないけれど

花火は見ないけれど


 もう三十年も生きているはずなのだが、花火の良さというものがいまいちよく分かっていない。ぱっと光って消えていく大輪の火の花、その後巨大ウニのように夜空に広がる煙、そして火薬の匂い(実は花火の中でこれを一番気に入っているかもしれない)。その迫力や、体の髄まで響いてくるような爆音はなかなか好きなのだけれど、毎夏のように出かけて行って鑑賞すべきものなのかと思うと、自分としてはちょっと違うなあという考

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【小説】僕のファルマス滞在記:第三章

【小説】僕のファルマス滞在記:第三章

第三章:はじめてのおつかい

一、セメトリーに入ると、「彼ら」の姿は僕の目により鮮明に映ってきた。塀の外からは青白い影が無数にうごめいているようにしか見えなかったため、恐ろしいと感じるよりほかなかった。しかし、近くでまじまじと観察してみると、輪郭が透けているという点を除けば、各人が人間と違いない容貌をしていることが分かった。目の周りが黒いとか髪がやたらに長いとか、流血しているとかいった、ホラー映画

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