ジェイク・リーの半時間
何語なのか知らない歌を聴いている
真っ白な昼下がり
恐らく、悲しい歌だ
細かい意味なんてさっぱり分からない
分からないのにずっと聴いている
雨が降ってきそうだ
さっき君の車が、出ていくのを見たような気がする
* * *
生まれてこのかた、出会う人間、向き合う人間の一人一人が私を採点しているように思えていた。まるでロボットのごとく完璧な採点者。その絶対的で完全無欠な彼らが、私の一挙一動を観察し、細かく点数をつけている ―― 容姿は言うまでもなく、知識、持っている金、頭の回転、芸術的センス、身に着けているもの、表情、胡散臭い人間でないかどうか、尊敬に値する人間かどうか、話しているときに汗ばんだりどもったりしないかなど ―― 他にも、数えきれないほどの項目が存在し、採点者によって異なる場合さえある。それら一つ一つがチャート化され、常時更新されているのだ。採点結果を私にも一度くらい見せてほしいと思うが、それは叶わない。
ただ、減点方式だとは知っている。最初のうちは加算方式なのだが。私自身、なるべく高い点数を取ろうと健闘するからだ。しかし、ある時点で成長が止まる。必ず止まる。そして、そこから先は得点を失っていくばかりだ。あの手この手を尽くし、まさに獅子奮迅の体でどんなに奔走したとしても、こうなってしまうと無意味で、成績を再び上げることもはや望めない ―― その採点者が、私が心を深く許した相手であればあるほど。
やがて採点者は去っていく。車に乗っていなくなるのだ。そうなると、私は次の採点者を探さなくてはならない。しかし、齢を重ねるにつれそれは難しくなる。採点者にも生活がある。彼らは忙しいのだ。そのため、次が見つかるまでに何年も要することだってある。だから、焦らずにじっと待ち続けなければならない。けれど、待ち続けるための気力も体力も、もうそんなに残ってはいない……。私はこれをあと何度繰り返すのだろうか、そしてあと何度耐えなければならないのか。
* * *
白かった空は灰色になった
ラジオのスイッチを切り、窓際に置かれたスミレの造花に目を遣る
かつて、採点者が私に渡していったものだ
いつかは片付けようと思う、いつかは……
今はまだ、花弁の上の埃を拭うことすらできない
小雨が降り出してきている
もうじき本降りになるだろう
きっかけが、きっかけさえあればよい
湿気をたっぷりとはらみ、その重みに耐えられなくなった雲が、
何かをきっかけにして決壊すれば……
泣いたってどうにもならないのに。
※筆者より:過去作品の『ジェイク・リーの一日』の二十年ほど前という設定で作成しました。
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