Kindle Unlimitedならタダで読める!これだけは抑えておきたいロシア文学
プーシキンの時代から現代に至るまで、ロシア文学は数々の名作を生み出してきました。
ドストエフスキーはもちろん、クラムスコイの絵画で有名なアンナ・カレーニナ(トルストイ)。彼らに最も影響を及ぼしたゴーゴリ。
オーウェルやハクスリーとならぶディストピア小説のザミャーチン。ノーベル賞のソルジェニーツィン。
あなたはどれくらいロシア作家を知っていますか?
ロシア文学……と聞くと、ロシア共産党の文化政策に依拠したヤバそうな文学だという先入観がありませんか?
いいえ、そんなことはありません!
実は、ロシア文学にはそうした酷い政府と命を賭して奮闘してきた、という正義の歴史があります。
そして、最も日本の近代文学に影響を与えた海外文学といっても、差し支えないでしょう。
二葉亭四迷、夏目漱石、武者小路実篤、芥川龍之介、志賀直哉……
誰もが知っている日本の大家たちも、ロシア文学の虜だったのです。
今回は、Kindle Unlimitedで無料で読むことができるロシア文学の名作を9つ厳選してご紹介します。
それぞれの作品が持つ魅力と、ロシア文学ならではの豊かな物語世界を一緒に味わいましょう。
・アレクサンドル・プーシキン『スペードのクイーン』 (光文社古典新訳文庫)
ロシア近代文章語の礎を築き、ロシア文学の開祖となったプーシキンの代表作『スペードのクイーン』は、欲望に取り憑かれた人間の姿を鮮やかに描き出した短編小説。
主人公ゲルマンは、賭け事に熱中し、三枚のカードで大金を手に入れるという秘密を知る老婦人に接近する。しかし、運命は彼の計画を狂わせ、最終的に悲劇的な結末を迎えてしまう。
この作品では、欲望がどのようにして人間の心を支配し、破滅へと導くかが精緻に描かれており、短編ながらもシニカルなユーモアとペーソスが光る。
19世紀ロシアの社会背景を映し出しつつ、運命や偶然、そして人間の限界に対する深い洞察が散りばめられた傑作といえよう。
・ニコライ・ゴーゴリ『外套』(光文社古典新訳文庫)
プーシキンがロシア文学の開祖なら、一方、ゴーゴリはロシア文学の父だろう。『外套』は、後に続くロシア文学に多大な影響を与えた短編小説。
物語は、貧しい官僚アカーキイ・アカーキエヴィッチが新しいコートを手に入れ、一時的に人生が好転するかに見えるものの、最終的にはコートを失い幽霊になり、悲惨な結末を迎えるというもの。
社会の冷淡さや、貧困に喘ぐ下級官吏の姿を鋭く描写し、人間の尊厳や自己存在の危うさを浮き彫りにする。
「私たちはみなゴーゴリの『外套』から生まれた」というように、ドストエフスキーやトルストイをはじめ、多くのロシア作家に影響を与えたこの作品は、官僚制度や社会的階層への風刺とともに、個人の孤独と悲しみをも見事に表現している。
また、この短篇におさめられている「鼻」であるが、芥川龍之介の同名小説「鼻」もまた、鼻を無くした主人公がロシアへ旅立つという奇矯なラストで締めくくられる。
・イワン・ツルゲーネフ『初恋』 (光文社古典新訳文庫)
政府の反感を買いながらも創作活動を続けたツルゲーネフの『初恋』は、青春と恋愛をテーマにした詩情豊かな珠玉の短編。
物語は16歳の少年ウラジーミルが隣家に住む年上の女性ジナイーダに心を奪われ、彼の初恋が展開されていく様子を描きだす。
しかし、ジナイーダには他の恋愛の秘密があり、ウラジーミルの純粋な思いは次第に現実の苦みと交錯していく。
この作品は、甘酸っぱい恋の記憶と、それが大人になる過程でどのように失われていくかを詩的に表現しており、感情の揺れ動きが繊細にスケッチされている。
ツルゲーネフの独特の優美な表現と、初恋に伴う感傷が見事に融合した、読む者の心に深い余韻を残す名作である。
日本では言文一致体で近代小説を切り拓いた二葉亭四迷はツルゲーネフに心酔し、『狩猟日記』の一部や『かた恋』を手懸けている。また『初恋』は、田山花袋にも愛読された。
・フョードル・ドストエフスキー『地下牢の手記』(光文社古典新訳文庫)
ドストエフスキーの『地下牢の手記』は、近代小説の先駆けとして広く評価される、存在主義的な作品。
主人公である「地下の人」は、社会や他者との関わりを拒絶し、自らの内的世界に閉じこもりながら、独白形式でその孤独と苦悩を語りつづける。
彼はいっさいの理性や合理性を疑い、人間の本質に迫ろうと試みる。が、その結果として自己矛盾や無力感に陥ってしまう。
この小説は、ドストエフスキーらしい深い心理分析と人間の複雑な感情の描写が際立つ名作とされ、人間の自由意志や生きる意味についての哲学的な問いを読者に突きつける。
『地下牢の手記』は、後の文学や思想に大きな影響を与えた、ロシア文学の金字塔といえよう。彼の独特の視点から人間の苦悩を描くこの作品は、後の文学や思想に多大な影響を与え、特に存在主義や心理小説の発展に寄与した。
読者も作家もみなこの作品を通じて、人間の自由意志や倫理的選択について再考させられ、同時に自己の存在を見つめ直す機会を得ることができる。
・レフ・トルストイ『戦争と平和』(光文社古典新訳文庫)
トルストイの代表作の一つである『戦争と平和』は、19世紀初頭のロシアを舞台に、ナポレオン戦争という激動の時代を生きる人々を描いた壮大な歴史小説。貴族や市民の生活、戦争の悲惨さ、そして平和の尊さが克明に描かれる。
主要な登場人物としてピエール・ベズーホフ、アンドレイ・ボルコンスキー、ナターシャ・ロストフが登場し、それぞれの人生と運命が戦争によって大きく変化していく。登場人物たちの愛と葛藤、生と死、そして戦争の悲惨さと人間の強さを、圧倒的な筆力で描き出しています。
物語には、個々のキャラクターの内面の葛藤や成長を描くと同時に、トルストイの哲学的な視点を通して、人生の意味や人間の本質に対する洞察が色濃く反映されている。
圧倒的なスケールと、緻密に構築された人物描写によって、読者はロシアの歴史と文化を追体験することができるだろう。
この圧倒的な超大作は、ロシア国内にとどまらず、日本の作家にも愛読された。芥川龍之介はロシア文学に深く傾倒し、ゴーゴリの「鼻」以外でも多くの作品でその影響が見て取れる。芥川の未完の長編『路上』は、トルストイの『戦争と平和』を下敷きにし、主人公の安田俊助をピエールに、ヒロインの都築明子をナターシャになぞらえている。
ウラジミール・プーチンもこの作品の愛読者であるが、いったいどこをどう誤読してしまったのだろう……。
・アントン・チェーホフ『可愛い女』(kindle版)
この中に収録されたチェーホフの短編小説『可愛い女』は、愛する人の影響を強く受けて、その価値観や考え方に染まってしまう女性、オーレンカの姿を描いた作品。彼女は、まるでカメレオンのように、愛する男性に合わせて自分の色を変えていく。
具体的には、夫や恋人など、常に自分を取り巻く男性に自らを委ね、その人物の趣味や価値観に染まりながら生きていくのである。
彼女の変わり身の早さは滑稽でありながらも、読者に深い共感や哀愁を与える。
チェーホフはこの作品を通じて、自己と他者、愛と依存、そして自己の喪失というテーマを探求しつつも、独特のユーモアを交えて描いている。
短編ながらも濃密な感情と心理描写が詰まった、チェーホフの代表的な作品といえよう。
『可愛い女』は、自己と他者、愛と依存、自己の喪失といった、人間存在の根源的な問題を扱う。この作品が投げかけたアイデンティティの問題は、日本の作家たちにも共感を呼び起こし、彼らの作品にも影響を与えた。三島由紀夫の『仮面の告白』や、安部公房の『砂の女』など、アイデンティティの喪失や、他者との関係における葛藤を描いた作品の先駆的テクストとして『可愛い女』は位置づけられる。
※冒頭に紹介した神西清(じんさい・きよし)訳は、多く読めるが文章が大時代なため、気に入った方は作家、岩田宏の名訳による新潮文庫を推奨します
・エフゲニー・ザミャーチン『われら』 (光文社古典新訳文庫)
ザミャーチンの『われら』は、全体主義的な未来社会を舞台にしたディストピア小説。
物語の舞台は、26世紀の「単一国家」と呼ばれる世界で、すべての市民が「番号」で管理され、ガラス張りの建物の中で生活している。自由意志や個人の感情は否定され、すべては「恩人」と呼ばれる指導者の統制下にある。
この環境は、プライバシーの欠如と全体的な監視体制を象徴しており、個人の自由意志や感情が完全に抑圧される。市民は「恩人」と呼ばれる指導者によって徹底的に管理され、彼の意向に沿った行動を強いられていた。
主人公「D-503」は、この管理社会に疑問を抱くことなく生きてきたエリート技師。しかし、謎の女性「I-330」との邂逅をきっかけに、抑圧された感情や自由への渇望に目覚めていく。彼は次第に、社会の枠組みから外れた新たな視点を持つようになり、個人の存在意義や愛の力について考えるようになる、といった筋書きだ。
本作は、個人と国家の関係、自由と抑圧というテーマを扱い、後のディストピア文学にも多大な影響を与えた。
同じディストピア文学のオーウェル『1984年』やハクスリー『すばらしい新世界』と並び、未来社会における人間の存在意義を鋭く問いかける、現代にも通じる警鐘的な作品に数えられるだろう。
・マクシム・ゴーリキー『二十六人の男と一人の女』(光文社古典新訳文庫)
ゴーリキーの『二十六人の男と一人の女』は、貧しい労働者たちの厳しい生活と、美しい女性ヴァリャとの出会いを描いた短編。
26人の男たちは、劣悪な環境で肉体労働に従事し、その中でヴァリャの存在が彼らに一時的な慰めを与える。
しかし、ヴァリャの存在は同時に彼らの孤独や無力感を際立たせ、最終的には悲劇的な結末を迎えてしまう。
ゴーリキーのリアリズムと人間理解が光るこの作品は、貧困と抑圧の中で生きる人々の心情を深く掘り下げ、社会の不正義に対する鋭い批判を含んでいる。
ゴーリキーの社会主義リアリズムは、日本では宮本百合子に読み継がれ、1920年代の日本共産党の文化政策に依拠したプロレタリア文学に深い影響を与えた。プロレタリア文学とは、政治と文学が一体化して運動体に昇華され、社会の不正を告発した文学群である。彼らはゴーリキーの『どん底』や、フランス作家ゾラ『居酒屋』のリアリズムを、プロレタリア文学に落とし込んだのだ。
・アレクサンドル・ソルジェニーツィン『イワン・デニソビッチの一日 』(岩田宏訳Kindle版)
ソルジェニーツィンの代表作『イワン・デニーソヴィチの一日』は、スターリン時代の強制収容所「グラーグ」での過酷な一日を、主人公イワン・デニーソヴィチの視点から淡々と描いた小説。そのリアルな描写は、ソ連の抑圧体制を世界に知らしめ、大きな衝撃を与えた。
極限の生活環境の中で、イワンは食糧を確保し、過酷な労働をこなし、何とか一日を乗り切るための小さな勝利を積み重ねていく。
作品は、ソルジェニーツィン自身の体験に基づいて書かれており、収容所内の過酷な労働、飢え、寒さ、そして理不尽な暴力などが横行する。
しかし、イワンは、絶望的な状況にあっても人間としての尊厳を失わず、小さな喜びやささやかな工夫を見出し、一日一日を懸命に生き抜く。
ソルジェニーツィンはこの作品で、全体主義の抑圧と人間の尊厳について鋭く描写し、収容所文学の傑作として広く認知された。
この功績によってソルジェニーツィンは1970年にノーベル文学賞を受賞するが、『収容所群島』の描写によって国外追放されてしまう。
まとめ
ロシア文学は、人生や社会、政治について深く考えさせられるテーマが多く、読み応えのある作品ばかりでしたね。
そして、日本の近代文学に多大な影響を与えたことも、この記事で紹介いたしました。
ここでわたしが紹介したロシア文学の名作は、いずれもKindle Unlimitedで無料で楽しむことができます。文学史に残る不朽の作品が、あなたの手のひらで今すぐ読めるというチャンスをお見逃しないように!
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プーチン政権で入国すら出来ないロシアの現況……。
ですが、ロシア文学はそうした政府の不正と戦ってきた果敢な正義の文学だということが、この記事を通しておわかりいただけたなら嬉しいです。
【速報】
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【編集後記】
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