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#海外文学のススメ

おすすめの作品や作家、注目している国や地域を教えてください!

急上昇の記事一覧

プラトンの『イデア論』~超概略

「イデア」とは?プラトン(紀元前427ー紀元前347~古代ギリシア・哲学者) ソクラテスの弟子。弟子のアリストレスとともにアカデメイアという名で学校を開き、西洋哲学の大きな礎となった。主著「ソクラテスの弁明」「国家」「饗宴」等。

大地のざわめきを聴く -T・S・エリオット『荒地』の面白さ

  【水曜日は文学の日】   私はある統一された禁欲的なトーンの作品も好きですが、ざわめきや様々な色彩で溢れかえった、ごった煮の作品も大好きです。   詩人T・S・エリオットが1922年に発表した長編詩『荒地』は、あらゆる時代、場所の要素を溶かし込んだ記念碑的大作であり、今もってユニークな作品と言えます。 五部構成からなるこの長編詩。第一部『死者の埋葬』は、有名な詩句から始まります。     しかし、この荘重な始まりからすぐ、ドイツのリゾート地でのとりとめのない回想に移り

2024年11月読書記録

 11月の読了本は、3冊だけ。文フリの準備が忙しかったので。小説書くのと読書は並行してできるのですが、お品書きや名刺といったごく単純なものでも、デザインを考えなければならないと、無限に時間がかかってしまう…。デザインというか、ただ文字を適当に並べてるだけなんですけど、それでも大変です。中学生の時に映画『あゝ野麦峠』を観て、「明治時代に生まれていたら、手先が不器用すぎて、諏訪湖で入水自殺するしかなかっただろうな」と思ったものです。それに比べれば、読書時間を削られるぐらいはまだマ

推し活翻訳24冊目。The Queen of Thieves、勝手に邦題「盗みの女王」

原題:The Queen of Thieves (Tjuvdrottningen) 原作者:Johan Rundberg 英訳:A. A. Prime 勝手に邦題:盗みの女王 出版社:Amazon Crossing Kids (Natur & Kultur) カバーデザインほか:Edward Bettison Ltd.   この作品は、ムーンウインド・ミステリーと名づけられた子ども向けミステリーシリーズの2作目です。主人公は孤児院で暮らす12歳の少女ミカ。はみ出し者の刑事ホフ

情熱の結晶に触れる -名作小説『若きウェルテルの悩み』の面白さ

    【水曜日は文学の日】   物語には、作品の内容を超えて、ある種の象徴・神話になっている作品があります。ソフォクレスの『オイディプス王』、ナボコフ『ロリータ』等。   ドイツの文豪ゲーテの名作『若きウェルテルの悩み』もそんな作品の一つ。若者の自殺についての名称になるくらい名高い結末は、最早あらゆる神話と同様、ある意味配慮をする必要のない作品でもあります。   しかし今読み返すと、色々な問題点も含めて、大変興味深い作品であり、その意味でも神話と同様の力を持っています。

第二アドベント

 今日は2024年のアドベント第二主日。  アドベントクランツの2本目のキャンドルに光が灯される日です。  平和を強く祈ります。  わたし自身のまわりは平穏で、静かに、心安らかに暮らすことができていますから、それには喜びと感謝でいっぱいです。  ただ、世界のあちこちでは争いが続いています。  どうか、わたしたち人類が平和を選んでいけますようにと祈らずにはいられません。  いま読んでいる、デイヴィッド・アーモンド『火を喰う者たち』に、こんな記述がありました。  時代と

超難解、だけど途中から惹きこまれる「石灰工場」

<文学(202歩目)> 文体についていけるか?最初の20ページ程度が合うか合わないか。 石灰工場 トーマス・ベルンハルト (著), 飯島 雄太郎 (翻訳) 河出書房新社 「202歩目」は、トーマス・ベルンハルトさんの代表作の一つ。改めて読むとやっとこの文体についていけるようになっていた。 以前に早川書房版で通勤途上に読むも、集中力が続かずに挫折。 このたび、河出書房新社版で再度トライ。 集中力を切らさないように、通勤途上の「細切れ読書」ではなく、真剣に取り組んでやっと最

最近手元に置いておく本たち

最近手元に置いておき、時折ぱらぱらとめくる本たちはこんな感じです。多かれ少なかれ自分の描くものに対して何かしらの影響は与えているはずです。 \個人文学賞を開催中/

[西洋の古い物語]『パレルモのウィリアム』(第2回)

こんにちは。いつもお読みくださりありがとうございます。『パレルモのウィリアム』第2回です。ご一緒にお読みくださいましたら幸いです。 ※画像は、お話とは関係ないのですが、何かを一心に待っているような三毛猫さんに心惹かれて、フォトギャラリーからお借りしました。ありがとうございます。 『パレルモのウィリアム』(第2回)  さて、この森には年老いた牛飼いが住んでおりました。牛飼いはその朝たまたま、ウィリアムが狼と暮らしている寝穴からさほど遠くない所で仕事がありました。彼は大きな犬

本の選定——翻訳という仕事(その2)

 前回は、11月の上旬に日仏学院で催された「翻訳者養成プログラム」の概要を軽い調子でリポートしたら、思わぬ反響があったので、ちょっと続けてみようと思います。  対談形式の講演で、われわれ——私の担当編集者と翻訳家である私——がまず取り上げたのは、本の選定でした。  どういう本を選ぶか、ということではなく、選ぶ主体が編集者か翻訳者かというところに視点を置いてみたのです。  結論から言いましょう。編集者に選ばれた本は幸せです。なぜなら自分が選んだ本ですから、社内の企画会議なり編集

世界エッセイの金字塔『アフリカの日々』イサク・ディネセン著、横山貞子訳

文学ラジオ第178回の紹介本 世界エッセイの金字塔 『アフリカの日々』 イサク・ディネセン著 横山貞子訳 河出書房新社  パーソナリティ二人で作品の魅力やあらすじ、印象に残った点など、読後の感想を話し合っています。ぜひお聴きください! 前回紹介した『ブリクセン/ディネセンについての小さな本』からの流れ/映画『愛と哀しみの果て』とは内容が違う/思っていたより読みやすい/ディネセンのアフリカでの経験が豊富/著者&作品紹介/アフリカの土地、そこにいる人々への尊敬を感じる/作中

2024年おすすめ本⑤

「人間の絆」サマセット・モーム 〈あらすじ〉 イギリスに戻ったフィリップの前に、傲慢な美女ミルドレッドが現れる。冷たい仕打ちにあいながらも青年は虜になるが、美女は別の男に気を移してフィリップを翻弄する。追い打ちをかけられるように戦争と投機の失敗で全財産を失い、食べるものにも事欠くことになった時、フィリップの心に去来したのは絶望か、希望か。モームが結末で用意した答えに感動が止まらない20世紀最大の傑作長編。 (Amazon概要より) 〈感想〉 人生のバイブルとして手元に置き

【日記 世界一周】102日目 やったぜ。

皆さん!どうもこんばんは! naotoです☆ 早速ですが、、、 、、、 やったぜ。 最後の最後に見れましたー!!!(´;ω;`) 延泊して良かったー!!! 朝一トルコ政府のwebサイトを見て中止の発表はなく一応起きて待機。(途中で中止になるかもしれないのでドキドキ。) 気球はその日の風向きや、天候に寄って場所が異なるのでどこから飛ぶかは分からない、、、 私たちは《Balloon View Hotel》というホテルに宿泊しており、その名の通りBalloonがよく

②ジェーン・オースティン作品に見る、摂政時代のクリスマス[ユールログ]

🕯️🕯️ ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ 摂政時代のクリスマスのお話2回目。 今回はユールログの話題です。 ❄︎ ユールログの「ログ」は「ログハウス」という単語にも使われるログlog=丸太のこと。 当時はこのユールログをクリスマスイブに点火し、クリスマスの12日間燃やすという風習がありました。 燃やした薪の半分は、来年の火種に使うために取っておかなければいけなかったそうです。これを守らないと,一家に災いが起こると信じられていたのだとか。 ❄︎ なおユール

【日記 世界一周】98日目 世界の絶景を求めて、、、カッパドキア編スタート🎈

皆さん!どうもこんばんは! naotoです☆ ついに始まりました!!!カッパドキア編!!! 皆さんカッパドキアってご存知ですか??? 私は昔《旅猿》という番組でナインティナインの岡村さんと、東野さんがカッパドキアで気球に乗るというロケをやっており、当時中々気球が飛ばず、乗れずで何日か滞在してようやく飛んで乗れたというような内容だったと思うのですが、その時の気球の映像が子供ながらにとても綺麗で感動した記憶があるんですね(*´艸`*) なんせ1つの気球が飛ぶわけではなく、

毎年恒例のジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』を読む。 言っていることはハチャメチャだけど、氷点下の冬の日に、身を賭して命を救おうとするロビンとエバーに胸を締めつけられる。いや、人って捨てたもんじゃない。 1年で最も日の入りが早い。沈みゆく夕日に負けず、光を放つ人もいる。

♡今日のひと言♡ウォルト・ホイットマン(改訂)

ウォルト・ホイットマン(1819–1892~アメリカ・詩人、随筆家) 19世紀アメリカを代表するホイットマンの長編詩「草の葉」(1855)は、後世のケルアックらビート文学に至るまで、大きな影響を与えてきました。 日本には夏目漱石によって紹介されています。 伝統を打破したその壮大な世界では、自由なスタイルで人間性が称えられています。

科学とスピリチュアリティ(【読書日記】H・D・ソロー『森の生活――ウォールデン』)

そういえば、以前に人間界に嫌気がさしたときに、ぼくは奇妙な癖を身につけたことがある。外を歩くときに、人の頭のちょっと上くらい、顔が見えないくらいのところに視線を置く。ぶつからないくらいには周囲の人たちに注意を払っているけど、それ以上の気は遣わない。用がある奴は向こうから声をかけてくる。それまでは、誰が誰かなんて気にしない。 当時住んでいたのはまっ平らな土地であったから、そうしていると、ちょっとひらけた場所に出れば地平線まで見渡せる。まさに巨大な天蓋の下に立っているような感じ

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空の彼方で煌めいて -サン・テグジュペリ『人間の大地』の魅力

    【水曜日は文学の日】      フランス文学の中でも、『星の王子様』の作者、サン・テグジュペリは、一般的な知名度が高い文学者の一人でしょう。   飛行士でもあったこと、そしてその悲劇的な最期も併せて、他にはなかなかいない作家であり、『人間の大地』は、そんな彼の特徴が良く表れた秀作です。 作品は全8章からなり、一貫して飛行機、そして空を飛ぶことに関する自伝的エッセイというか、独白のような形式になっています。   郵便物を運ぶための飛行機会社に入社したころの霧の中に迷い

#6 少数民族モン族を読み解く〜嫁さらいの風習〜

こんにちは! ベトナム北部ムーカンチャイでJICA海外協力隊として活動中のYukaです🌻 今日はモン族編の続きです! ↓これまでの記事は下記マガジンにまとめています 今回は、早くシェアしたくてウズウズしてたパート。 皆さん、「嫁さらいの風習」とか、「誘拐婚」とか、聞いたことありますか? 私はモン族の文化から知ったのですが、世界中には信じられないような様々な結婚の形があって、今回はモン族の結婚の手段の一つ「嫁さらいの風習」についてです。 少し怖いと感じる方もいるか

[西洋の古い物語]『パレルモのウィリアム』(第1回)

こんにちは。いつもお読みくださりありがとうございます。 今回は、狼にさらわれた王子のお話です。何回かに分けてご紹介したいと思います。ご一緒にお読みくださいましたら幸いです。 今年もあっと言う間に12月に入りました。 「師走」の名のとおり、何かと慌ただしい時期ですが、冬至へと至る一年で最も夜が長いこの時期、静かに物語をひもとくのも心楽しいものですね。 (※美しい黄金色の銀杏の画像は、フォトギャラリーからお借りしました。ありがとうございました。) 『パレルモのウィリアム』(第

SF的な入れ子構造を純文学で表現した作品「冥王星より遠いところ」

<文学(200歩目)> 台湾の作家に興味をもって読み進むうちに出遭った、入れ子構造の純文学作品。 冥王星より遠いところ (現代台湾文学選2) 黄崇凱 (著), 明田川聡士 (翻訳) 書肆侃侃房 「200歩目」は、黄崇凱さんの多重構造の入れ子の中から抜け出せなくなる作品です。ちょっと読後感が他にはない。 病床の母との大切な記憶の中の私。 妻を愛し、娘を愛している私。 成長の過程の私。 ペンフレンドとの文通で成長する私。 大学時代の恋人との関係の中の私。 いろいろ

故郷喪失者の視点は他人事ではない「ブルーノの問題」

<文学(201歩目)> サラエヴォから遠く離れ、そしてつながっている。生得の言語ではない英語での発信。故郷喪失者の視点を感じられる作品です。 ブルーノの問題 アレクサンダル・ヘモン (著), 柴田元幸 (翻訳), 秋草俊一郎 (翻訳) 書肆侃侃房 「201歩目」は、アレクサンダル・ヘモンさんの故郷喪失者の視点で描かれた作品。ちょっとありきたりな小説にない、普段気にすることのなかった「視点」を感じる驚く作品でした。 「島」 緊迫したサラエヴォを心で眺め、実際には目の前にあ

書評。物語はこんな宇宙#16:アンナ・カヴァン「氷」

作者アンナカヴァンと背景について 1.生い立ちと幼少期 本作の作者アンナ・カヴァンは、1901年にフランスで生まれた。この年は20世紀最初の年でもあり、イギリスでは1月にヴィクトリア女王が崩御している。 彼女はフランス生まれたが、両親は裕福なイギリス人で、それに合わせヨーロッパやアメリカ合衆国で暮らした経験を持っている。 そのように恵まれた環境かと思いきや、両親は冷淡で彼女の幼少期は幸福でなかった。そしてその後幼少時の苦悩は、本作を含め繰り返し作品のモチーフとなっ

名もなき人たちの存在感「見知らぬ場所」

<文学(198歩目)> とても都会的な文体。洗練されていて、それでいて心の底を突く。沁みました。 見知らぬ場所 ジュンパ・ラヒリ (著), Jhumpa Lahiri (原名), 小川 高義 (翻訳) 新潮社 「198歩目」は、ジュンパ・ラヒリさんの研ぎ澄まされた家族の心の機微を繊細に描いた短篇集です。 ラヒリさんの文体はやはりとても引き締まっていて、登場人物が浮き上がる感じです。 なんかとてもいい感じです。 この巻頭が、この短篇集で重要な意味を持つ。 読み進めると、

このいかんともしがたい『星の王子さま』蒐集欲(副題:さすが火の国だよねオレのハートにまた火をつけてくれやがったよ)

我ながら酔狂なことをしているよなと常々思いつつも、ここ数年はまっているのが、世界の様々な言語に翻訳された『星の王子さま』の蒐集である。原題はフランス語でLe Petit Prince, 英語だとThe Little Princeで、フランス語原題の頭文字をとってLPPと略されることもある。筆者自身、noteでこのLPP蒐集活動についてはたびたび言及してきたので、これが実益も期待したうえでの筆者の趣味であることをご存知の読者も多いのではないかと思う。 なんせ、LPPを題材にし

文化の漂流者の視点での研ぎ澄まされた文学「ボート」

<文学(199歩目)> ベトナム出身のナム・リーさん、というよりベトナムとか民族的、文化的なバックボーンよりも英文学として高みに達している。 ボート ナム・リー (著), Nam Le (原名), 小川 高義 (翻訳) 新潮社 「199歩目」は、ナム・リーさんの祖国喪失者の視点の短篇集で、どれも読ませてくれる。 ジュンパ・ラヒリさんに似た経歴で、ラヒリさんの文体はとても引き締まっている。そして、ナム・リーさんの文体は読後に読者にいろいろと考えさせられる文体です。 どの

ディケンズ「クリスマスキャロル」

「クリスマス・キャロル」 ディケンズ 角川つばさ文庫 を読みました。 もうすぐクリスマス!! みなさんは、何かご予定がありますか? ぼくはないので、ケーキでも食べて楽しもうと思います!! さて、このご本の主人公エビニーザー・スクルージーはある小さな会計事務所の代表であり、また、世の中の何もかもが面白くありません。とくにみんなが浮かれるクリスマスなんて!! 貧しい人への寄付を求める人にこのような皮肉な会話をします。 「救貧院はなくなったのかね? 悪人への刑罰や、びんぼう

【書評】オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』は、イケメンが過度な承認欲求で身を滅ぼす話

ロッシーです。 オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』を読みました。 想像以上に面白い作品でした! 130年前の作品だとは思えません。 ざっくりとしたあらすじは、以下のとおりです。 「美しい青年ドリアン・グレイが、自身の肖像画に老いや罪を負わせ、自身は永遠の若さを保つが、彼は堕落した生活を送り、自らの美に執着する。自分の罪が刻まれた肖像画に耐えきれなくなり破壊しようとした瞬間、彼は命を落とし、醜く老いた姿で発見される。」 この作品を読んで、「まさに現代に通じ

布袋毘留夫と樫盾桃林とゴクリ(J・R・R・トールキン『指輪物語』)

『ホビットの冒険』のドイツ語版を読んでいて意外だったのは、固有名詞まで訳されていることだ。 例えばドワーフのリーダー Thorin Oakenshield は、ドイツ語版では Thorin Eichenschild となっている。 このファミリーネームは「樫の盾」という意味だ。 日本語では「トーリン・オーケンシールド」と表記されているが、これでは音訳しているだけで、日本の読者にはその意味はわからない。 ドイツ語版の訳し方を邦訳に応用するなら、たとえば「トーリン樫盾」あ

まさに癖になる面白さ「眠らぬ人: ワグナー教授の発明」

<SF(196歩目)> アレクサンドル・ロマノヴィチ・ベリャーエフさんのSF作品は、「教授」のキャラが立っている。この作品ではワグナー教授が面白すぎ。 眠らぬ人: ワグナー教授の発明 アレクサンドル・ロマノヴィチ・ベリャーエフ (著), 田中 隆 (翻訳) 未知谷 「196歩目」は、アレクサンドル・ロマノヴィチ・ベリャーエフさんの奇想天外な作品で、今時珍しいので引き込まれます。 アレクサンドル・ロマノヴィチ・ベリャーエフさんの作品ではこちらもおススメです。 ワグナー教

つぶやき|日記

 先週後半からなんだか落ち着かなくて、そわそわしたような、沈み切ったような数日を過ごしていました。  心の中で、ことばの海が完全に凪いでいる・・・というか、透明な何かで密閉されたような感じ?  その始まりははっきりしていて、谷川俊太郎さんが亡くなったニュースを聞いた時から。  でもね、このつぶやきは、ひとり谷川さんのみを追悼するものではないのです。それも踏まえて、よろしければ、しばしお付き合い下さいませ。 🧸🧸  谷川さんといえば、同時代の文士のなかで3冊(詩集です

唐突なんだけど、円卓の騎士ってさ

おはようございます。 記事100本ノックをやっっっていて、今多分79本目です。 今、諸事情から学生をしていて絶賛アーサー王伝説のお話を勉強しています。何年か前も勉強したことがあるんですが、この時代の文学が本当に面白いです。 楽しい。 円卓の騎士とか、聖杯探求とか、これってなんかアニメ化すれば推せる登場人物でてきそうじゃないですか? あと現代版にしてもおもろそー。 円卓の発想って、元ネタがありそうな気がするんですが、まだ沼歴5時間なので、先輩方いらしたら、アドバイスいただけませ

20世紀初頭のソヴィエト連邦の忘れられた、しかし興味深い作品「未来の回想」

<SF(197歩目)> もう95年前の作品。でも、現代のスタートアップの起業家と同じ苦しみが伝わる不思議な時間SFです。 未来の回想 シギズムンド・クルジジャノフスキイ (著), 秋草 俊一郎 (翻訳) 松籟社 「197歩目」は、シギズムンド・クルジジャノフスキイさんの1929年の古典SF作品。 でも、私は現代の日本のSF界の藤井大洋さんの最先端のスタートアップものに通じる、起業家のような主人公のマクシミリアン・シュテレルの取り組みが非常に興味深い作品だと感じました。

ホビットとラビット(J.R.R.トールキン『ホビットの冒険』)

ドイツ語の勉強になるだろうと、ドイツ語版を読んでいたが、やはりオリジナルの英語版に切り替えることにした。 ドワーフとホビットを捕らえたオークたちが、楽しく歌を歌いながら行進している場面を読んでいて、この歌は翻訳ではなく英語で読んだ方がいいにちがいない、と思ったからだ。 そうしてオリジナルの英語版をキンドルで買いなおし、読み始めて、冒頭のパラグラフを読んでいて、はたと気付いた。 hobbit-hole って、つまり rabbit-hole のことじゃないか。hobbit

「2025年のカレンダー」&「2011年に買った女性誌」

レジを打つ際に気づきました。これは欲しい。 11月29日に発売された「eclat」1月号(集英社)の特別付録は、毎年話題になっている山本容子さんの銅版画作品カレンダーです。今年は↓を彩った14点を、原寸大のサイズでピックアップしています(くだんの銅版画はeclat premium通販にて数量限定で販売されるとのこと)。 トルーマン・カポーティ「クリスマスの思い出」(文藝春秋)は、最も好きな短編小説のひとつ。この時期に読むのが恒例行事と化しています。 バディーと呼ばれる7

日本語の美しさとヨルシカにみる世界

日本には、日本語という世界で一番と言っても良いほどの言語がある。 その日本として、言葉としての美しさを感じられるものが古くから伝わっている。 それは、和歌だ。 奈良時代、平安時代などの古くから時を経て伝わる物語や随筆、歌集がたくさんある。 今日はそんな話をしていきたい。 『万葉集』や『古今和歌集』、『新古今和歌集』など有名どころなものがある。 奈良時代、平安時代と時代を超えて、少しずつ詠む背景や歌の特徴・技法も変化しながら愛されてきた。 5・7・5・7・7のたった31語で、

ウォーキングでジョン・グリシャム

毎日一時間を目標にウォーキング。アマゾンの「オーディオブック」で海外文学を英語で聴きながら一時間を過ごす。私にとっては、今は行く機会がない海外の雰囲気を味わえる貴重な時間。(上の絵は、NYでブロードウェイミュージカルを観ることを目標としている私へ、息子からのプレゼント。想像上のブロードウェイ。) 英語で聴きやすいオーディオブックとして紹介したいのがジョン・グリシャムの「Camino Island」。これは「「グレート・ギャツビー」を追え」という題名で和訳本も出版されている。

ちょっとすごい短篇集で心突かれました「停電の夜に」

<文学(197歩目)> 色々な方にご紹介いただいた短篇集。やはり素晴らしかった。 これからしばらくラヒリさんの作品を読みます。 停電の夜に ジュンパ・ラヒリ (著), Jhumpa Lahiri (原名), 小川 高義 (翻訳) 新潮社 「197歩目」は、ジュンパ・ラヒリさんの家族や夫婦の間の機微を繊細に描いた短篇集です。 ラヒリさんの文体は引き締まっていて、登場人物が浮き上がる感じです。 どの作品も故郷のインドとアメリカに暮らすインド系の方々が出てくる。 とても精緻

『グレート・ギャッツビー』 を読んで

1925年に刊行された、フィッツジェラルドによる最高傑作。 物語は、1922年の第一次世界大戦終結後のアメリカ東海岸。 アメリカが文化的にも、経済的にも栄える一方で、 これまでただ「アメリカン・ドリーム」を 夢見て前進してきた人々に翳りが見え始めてきた時代。 豪華絢爛なパーティー、禁酒法、ガソリン自動車、戦争の跡、、、 1920年代のアメリカの光と影を垣間見ることで、 富とは、格差とは、夢とは、など色々な観点から楽しめる作品だ。 そんな時代に、また一人の男がアメリカン・ドリ

わたしを見つめ続けて【夢の話、または短編小説の種 #22】

ノエルはあの出来事を、ずっと消化できずにいる。 まだ十九歳のころの話だ。十二月五日だった。日付まで覚えているのは、別れて数カ月がたった元恋人のメグの誕生日だったからだ。 冬の夜十一時すぎ、ゆっくりとした助走のあと、リチャード・アシュクリフトが「A Song for the Lovers」を歌い出すと、スマートフォンが鳴った。見覚えのある番号だ。ノエルは数回コールを聞き、電話に出た。 「わたしよ。元気?」 電話の向こうから何事もなかったかのように話しかけてきのはメグだっ

ソ•ユミ著 『誰もが別れる一日』(모두가 헤어지는 하루)

 いつの頃からかネットにアクセスすると「こうしたら儲かる」、「これをしたら痩せた」、「これを続ければ人生が変わる」と謳った情報が次々と流れてくるようになった。成功者のアドバイス、活躍している人たちのヒストリー、目標を達成した人たちの誇らしい笑顔や生活が、スマホの画面に現れては消えていく。  それを見て純粋に「すごい!素晴らしい!」と拍手する人もいれば、「私だってこんな風になりたい」と嫉妬の炎をメラメラと燃やす人もいる。中には前者の顔をして相手に近づき、無償で何らかの情報を引

【はじめに】ジェーン・オースティン作品に見る、摂政時代のクリスマス

✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ 世界的に有名なクリスマスをテーマにした小説と言えば、やはりディケンズの『クリスマス・キャロル』を思い浮かべる人が多いのでは。 ところで、ディケンズと同じイギリス出身の作家で、出版されたすべての作品に「クリスマス」というワードが出てくる作家をご存知でしょうか。 それがこの方、ジェーン・オースティン。 ディケンズより一昔前の摂政時代(※)に活躍した女性作家です。 ❄︎ かの夏目漱石は、著書『文学論』の中でオースティンに関してこう述

The Book of Illusion / Paul Austerの作品と一緒に読みたいTBR

自分の核に触れる物語  ここしばらく、Paul Austerの"The Book of Illusion"を読んでいた。いつものごとく読書日記に残したいところだけれど、なんだか深いところまで感想を書く気分にならない。どの作品でも、オースターの書いた物語は私の心の中心的な、ごく個人的なものに触れる力を持っていて、それについて考えたことをnoteで公開するとなると、なんだか自己開示が行き過ぎているように思われる。なので、今回は気に入ったシーンや表現の抜書きをまとめたり、作中に登

いずれも異様な人間が登場する「出身国」

<文学(196歩目)> ちょっと他にない短篇集で、小説の底力を感じました。おそらくテクニカル、でもドミトリイ・バーキンさんの文体は他にないユニークさを感じます。 出身国 ドミトリイ バーキン (著), 秋草 俊一郎 (翻訳) 群像社 「196歩目」は、ドミトリイ・バーキンさんのちょっと他にはない短篇集で独特です。 とても不思議な文体の理由がわかる。 短篇の出だしが強烈。でも、そこに描かれていることがどんどん流転していくから。最後は出だしとまるで異なることが描かれている。

推し活翻訳23冊目。The Storm and The Sea Hawk、勝手に邦題「海鷹といにしえの少女」

原題:Geomancer Book 2 The Storm and The Sea Hawk 原作者:Kiran Millwood Hargrave 勝手に邦題:大地の魔法シリーズ 第2巻 海鷹といにしえの少女 出版社:Orion Children’s Books カバーデザイン:Manuel Sumberac   はじめに これまでnoteでご紹介してきた作品は、一話読み切りか、シリーズものでも各巻が独立して楽しめるものです。原書で楽しんでいただきたいものも多いので、ネタバ

【オタクと読む】ジュール・ヴェルヌ“幻”の問題作『20世紀のパリ』

この記事を開いている方なら、ジュール・ヴェルヌの名前くらいは聞いたことがあるでしょう。『海底二万里』や『十五少年漂流記』、『八十日間世界一周』をはじめとする冒険小説で有名なジュール・ヴェルヌですが、後年には立て続けの不幸により悲観的な作品が多くなったことでも知られています。 しかしヴェルヌは以前よりペシミスティックな感性を持ち合わせており、それが存分に発揮されているのがこの『20世紀のパリ』です。 当時原稿を読んだヴェルヌの担当編集エッツェルはブチギレ、書簡にて数多の罵倒を

【おすすめ本】運命は、子どもが石を蹴るように(コルタサル/石蹴り遊び)

今回紹介する本はとにかく変わった一冊。まずは書き出しをどうぞ。物語のふくらみが見事な、大好きな書き出しです。 アルゼンチンの作家フリオ・コルタサル(1914-1984)の「石蹴り遊び」。とにかく変わった構成のせいで、テーマが話される機会が珍しいほど。一言でいうと、これは二つの読み方がある一冊の本なのです。 今回は本書を「読み方」と「テーマ」に分けてご紹介します。長いけど(約3,000字)、文章がすごく良いので、引用部分だけでもぜひ。 ▼▼今回の本▼▼ 1. 読み方につ

著者への特別インタビュー収録!デンマークを代表する作家の生涯と作品『ブリクセン/ディネセンについての小さな本』スーネ・デ・スーザ・シュミット=マスン著、枇谷玲子訳(ゲスト:翻訳家 枇谷玲子さん)

著者への特別インタビュー収録!デンマークを代表する作家の生涯と作品(ゲスト:翻訳家 枇谷玲子さん) ブリクセン/ディネセンについての小さな本 スーネ・デ・スーザ・シュミット=マスン 著 枇谷玲子 訳 子ども時代 パーソナリティ二人で作品の魅力やあらすじ、印象に残った点など、読後の感想を話し合っています。今回はゲストに翻訳者の枇谷玲子さんを迎え、著者が来日時に特別インタビューも行いました。ぜひお聴きください! ゲストに翻訳者の枇谷玲子さん/カレン・ブリクセン(イサク・ディネ

色彩が未来を導いてくれる

スコットランドのグラスゴーのサッカーチーム、『セルティック』は中村俊輔選手が所属していたこともあり現在も古橋亨梧選手ら日本人選手が多く活躍していますがカトリック教徒が多い、というのは知らなかったです。プロテスタント教徒が多いのが、『レンジャーズ』でこの2つのチームのファンの間では対立が激しいようです。 グラスゴー大学は、『ハリー・ポッター』のホグワーツのモデルといわれていて、ニッカウヰスキーの竹鶴政孝さんが留学していたところでもあります。 グラスゴー効果(Glasgow