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#海外文学のススメ

おすすめの作品や作家、注目している国や地域を教えてください!

急上昇の記事一覧

永遠の今~「シッダールタ」ヘルマン・ヘッセ(改訂)

ヘッセは、詩と小説によって知られる20世紀前半のドイツ文学を代表する作家です。 「シッダールタ」(1922)は、あるインドの求道者が悟りの境地に達するまでの体験を描いた作品です。 ヘルマン・ヘッセ(1877- 1962 ドイツ・小説家、詩人) 様々な職に就きながら著述活動を行い、穏やかな人間の生き方を描いた作品を数多く残した。代表作は他に「車輪の下」(1906)「デミアン」(1919) 「シッダールタ」(1922)「荒野のおおかみ」(1927)など。1946年にノーベル

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心の中を辿る旅 -小説『失われた足跡』の魅力

【水曜日は文学の日】 旅をすることは、自分の内面を探検すること。それは、ロードムービーや、旅を巡る小説における魅力でしょう。 私が好きな「旅をする小説」の一つに、キューバの小説家カルペンティエルの『失われた足跡』があります。探究としての旅が個人の内面にダイナミックに結びついた名作です。 アレホ・カルペンティエルは、1904年、スイスのローザンヌ生まれ。国籍はキューバでありながら、父親はキューバで有名な建築家のフランス人です。異国の地で生まれたことは、彼の作

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スペインのミステリー(ハビエル・セルカスの「テラ・アルタの憎悪」)

 自分のささやか読書趣向のひとつに、「読書を通じていろんな国を訪れる」というものがあります。(個人的に「読書的世界旅行」と呼んでます。)  まあ、常にというわけではないんですが、本との出会いの一視点といった感じで、海外のミステリーを読みながら、いろんな地域を訪れるのは、とても楽しいことなのです。  そんな自分が訪れていなかった国の一つがスペインだったのですが、今回、無事に訪れることができたので、今回はその報告なのです。 +  +  +  +  +  +  さて、今回、手

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♡今日のひと言♡ジョン・アーヴィング

ジョン・アーヴィング(1942- アメリカ・小説家) 現代アメリカ文学を代表する作家です。 1965年より大学の創作科でカート・ヴォネガットに師事、フィクションの可能性を継承し拡大させました。 1968年に「熊を放つ」でデビュー。その後、「ガープの世界」(1978)が世界的ベストセラーになりました。 映画化された「サイダーハウス・ルール」(1985)では自ら脚本を手がけ、アカデミー賞最優秀脚色賞を受賞。 その他「ホテル・ニューハンプシャー」(1981)「オウエンのた

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幼い日々の、痛み苦しみに祈る: ここは全ての夜明けまえ (間宮改依), “Universal Harvester” by John Darnielle, "Allah Have Mercy" by Mohammed Naseehu Ali

 「痛みのない幼少期は無い」というフレーズが頭の中にずっと残っている。どこで読んだのか思い出せないが、どんな人でも、何かしらの(わざわざ人に話さないような)痛み苦しみを幼年時代に持って大人になる、の意だったと思う。子供の頃の記憶や感覚、心の動きというのは萌える若葉の如く、柔らかく剥き出しで、それゆえに鮮烈で、自分自身でも受け止め方がわからないくらいダイレクトに響いてくる。大人になってようやく向き合い方がわかるようになる人もいれば、生涯その記憶に背を向けないといけない人もいるだ

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イシュマエル ヒトに、まだ希望はあるか(著:ダニエル・クイン) 読書感想文

イシュマエル ヒトに、まだ希望はあるか(著:ダニエル・クイン、訳:小林加奈子、ヴォイス、1994) ライターの主人公が、イシュマエルという名のゴリラと、人類が世界を救うにはというテーマで対話するという小説である。 人類というものについて考えるヒントになる学術的な小説でもある。 人間は「取る者」(いわゆる文明人)と「残す者」(いわゆる未開人)に分かれるという。さらに私たちの文化の人間たちは、人と世界と神々について同じ一つの物語を演じているのだと。そして残す者と取る者は二つの異

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ノートの勧め(その3)——余白について。

 結局、ここで言う「ノート」とは余白のことか、と思ったりもします。  もちろん、人によってノートをつける目的は様々です。取材ノートとか、料理ノートとか。でも、この場合のノートはメモと置き換えてもいい。  前回の投稿には「創造的なノート」というサブタイトルをつけました。メモというのは備忘録の一種、ヴァレリーがつけていたような「ノート」は、おそらく自分自身と対話するためのもので、彼はそのときの言語を「自我語」と呼んでいたほどです。公の場に発表する文章は、この「自我語」で考えたこと

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東京にあてた恋文

最近、『追憶の東京~異国の時を旅する』(早川書房)という本を手にした。 著者のアンナ・シャーマンは2000年代のはじめ、10年あまりを東京で暮らした経験をもつアメリカの作家。 この『追憶の東京~異国の時を旅する』は、そんな著者による異色の日本滞在記である。 かつて江戸の市中には、町民に時刻を知らせるための鐘、いわゆる「時の鐘」が点在していた。 その響きに魅入られた著者は、すでに存在しないものもふくめ「時の鐘」があったとされる場所を片っ端からたずね歩き、ゆかりのある人び

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サガンの未完遺作『打ちのめされた心は』を読む

自己紹介に続いて、読書記事1本目です。 noteに登録してから自己紹介記事を投稿するまで4日程あったので、書き溜めてありました。 サガンについて サガンといえば、やはりデビュー作の『悲しみよ、こんにちは』 一度読んだことがあった気がするけれど、と思い本棚を漁るとありました、くたくたになった文庫が。 現在、家には約1200冊ほど(1年半前調べ)本があり、大して並べ方も気にせず本棚に詰め込んでいるので、薄い文庫本を探す時は少し苦労します。 本は手放すのが嫌で溜め続けてしまう

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4冊目。The Ocean at the End of the Lane、勝手に邦題「オーシャン」

原題:The Ocean at the End of the Lane 原作者:Neil Gaiman 勝手に邦題:オーシャン 概要と感想 父の葬儀のために故郷の町へ戻った私は、式の後、あてもなく車を走らせるうち、引き寄せられるようにヘムストック農場にたどり着く。そこにはかつて、レティという名の少女が、母親や祖母と暮らしていた。私は、母屋の裏手にある池のほとりで、忘れていた記憶を取り戻す。レティは、その池を「大きな海(オーシャン)」と呼んでいた。 記憶は7歳の誕生

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【おすすめ本】本棚の遠い女性たち(アトウッド/侍女の物語)

今週もこんにちは。関東はよく晴れた週末です🍡 今週の一冊はマーガレット・アトウッド「侍女の物語」(1985年発表)。男性が支配する、出生率の低下した近未来で、自由を奪われ、囚われの身となった女性たちの戦いを描いたディストピア小説です。 アトウッドは元々詩人としてデビューしたカナダの作家。1939年生まれの大ベテランですが、80歳だった2019年に(!)、本書の続編「誓願」でイギリス最高峰の文学賞ブッカー賞を受賞しています。 ▼▼今回の本▼▼ 本作のフォーカスは「女性」

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作家と恋をするということは。

古今東西、どんな人とでも恋愛関係になれるとするならば、私は絶対「開高健」がいい。 氏の書く文章の醸し出す得も言われぬ雰囲気と、ウィットに富んだ内容、ユーモアのセンス、すべてが好きだ。 しゃべり方も好きだ。唯一無二なハイトーンボイスも好きだ。 見た目も好きだ。 なによりも、氏の小説を初めて読んだときの、痺れるような感覚が忘れられない。言葉のひとつひとつが、雨粒のように私の中に浸み込んでいくようで。読み進めていくうちに、もう、彼は私の血液になった。 ああ、もう一生引きはがすこと

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『28テュルク諸語で読む「星の王子さま」』、ワンチャンあるで

昨晩、おれはひっそりとOCR機能を使ってタタール語版『星の王子さま』(以下、LPP)をテキストデータとして読み取りながら、ふと本棚に目をやった。そこにはさまざまな言語に翻訳されたLPPが並べられているのであるが、その一角にひときわ輝く2冊の本がある。 改めて見返すと、風間・山田(2021)のほうは第26章を前半と後半に分けてトルコ語・ウズベク語をあてている(実際、ここは長い章なのです)。一方で、Edition Tintenfass社のポリグロット版は冒頭の献辞「レオン・ヴェ

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有料
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(回答編)師とは誰か?あなたにとっての師とは?皆さんに答えていただきました。

前々回の第5回読書会のテーマである 「師とは誰なのか?」 これについて様々な意見が出揃いました。 また引き続き皆さんに一つ質問させて頂きました。 「あなたにとって「師」と呼べる人はいますか? よければ具体的にその人物を教えて下さい。 また出来ましたら何故そうなのか一言も」 それに対しいろいろと率直な回答をお寄せ頂いたので 今回はそれを紹介させて頂きます。 (第6回読書会にて有志代表の🐥Shionさんから寄せられたコメントより) まずは有志のお一人てんぱりまっくすさ

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#アジア文芸ライブラリー ができるまで

〈アジア文芸ライブラリー〉という、海外文学の新たなシリーズを立ち上げます。アジアの同時代の文学作品を翻訳して、書籍と電子書籍で出版するシリーズです。わたくしがシリーズの企画立ち上げから、ほぼすべての作品の編集を担当しております。勤務先である春秋社より、2024年4月より刊行されます。 3月中旬に発表があってから、SNSでは多くの反応をいただきました。これまでも多くの出版社から、アジアの現代文学は数多く出版されてきましたし、ここへきてわざわざシリーズとして立ち上げることに、意

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【編集後記】ツェリン・ヤンキー『花と夢』星泉訳 〈アジア文芸ライブラリー〉

シリーズ〈アジア文芸ライブラリー〉の最初の一冊として、ツェリン・ヤンキー『花と夢』(星泉訳)が4月18日に発売されました。担当編集者として、本作の企画の経緯や魅力を書き残しておきたいとおもいます。 『花と夢』について 舞台は00年代のラサ。ナイトクラブでセックスワーカーとして働く4人の女性たちを主人公に、それぞれの人生と共同生活を描いたシスターフッドの物語です。急速な都市化、農村の困窮や、伝統的な性別役割分業や家父長制、ミソジニー、性暴力、などを背景にそれぞれが事情を抱え

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大事な話があるの【八〇〇文字の短編小説 #5】

ペンション・マリエのベッドに横になりながら、アンディは「チェスキー・クルムロフ」とつぶやき、まじないの言葉を唱えているような気分がした。ティナはシャワーを浴びている。アンディは天井をぼんやりと眺めながら、雨が降っているみたいだと思った。 ダブリンからチェコまでの小旅行。二人とも夫婦関係が壊れていた。アンディのもとからはビリンダが去り、ティナはニールから離れた。どちらも離婚はしていないけれど、アンディとティナが関係を持ってから一年ほどが経っていた。二人でダブリンを出るのは今回

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創元推理文庫名作ミステリ新訳プロジェクト『二人で探偵を』アガサ・クリスティ

トミー&タペンス『秘密組織』に続くシリーズ第二作目が新訳で出版されました。一作目はクリスティの小説のイメージとはちがう、若さやあぶなかっしさにあふれたとても楽しい小説でした。ポアロやマープルの有名な小説は全部を読んではないのですが大好きな小説が何作もあります。人間それぞれにプライドがあり、その一方でひた隠しにしている欲望もあります。その欲望が隠しきれない状態になったときに、勝敗を分けるのが人間の格であることがわかってきます。トミー&タペンス物はそうゆう重苦しさから全く逆の古い

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書籍レビュー『1984』ジョージ・オーウェル(1949)「考えること」を他人に預けてはいけない

70年以上前に描かれた 超管理社会数々の作品に影響を与えた 有名な作品です。 ずいぶん前から気になっていて、 ようやく読むことができました。 物語の舞台はタイトルのとおり 「1984年」、 世界は「ビッグブラザー」 と呼ばれる総統が統治する 超管理社会となっています。 「テレスクリーン」という 送受信機によって、 市民の生活は常に監視され、 少しでも政府に反するような 言動は許されません。 「ニュースピーク」という 新しい言語を作ることによって、 言語の数を削減

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2024年Q1 BlackRock(BLK)決算情報

決算情報 BlackRock(BLK)◾️ 2024年 Q1 決算情報 ✅⭕️EPS $ 9.81 vs  予想:$ 9.39 ✅⭕️売上高 $ 47.3 億  vs  予想:$ 46.5 億 (前年比:11.43%増📈)   BlackRock は、運用資産残高で世界最大の投資管理会社の 1 つです。 同社は単一の事業セグメントとして運営されています。 同社は収益のほとんどを投資顧問料と管理料から得ています。 2024 Q1 HIGHLIGHT ✅ 財務実績

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