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この本、オススメ!

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好きな作家さんは、森見登美彦氏、万城目学氏、三浦しをん氏、泉鏡花氏、今村翔吾氏。随筆なら、志村ふくみさん。
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迷惑をかけてはいけないと思っていたあの頃の自分へ―河野太通『ありがとう すみません お元気で』

迷惑をかけてはいけないと思っていたあの頃の自分へ―河野太通『ありがとう すみません お元気で』

新入社員の頃、人に何かを頼むことがすこぶる苦手で、抱え込みがちだった。

今話しかけたら迷惑かな、
忙しいのに仕事お願いしたら迷惑だよね、
泣き言聞かされても迷惑なだけだろう、、、

そう、相手に迷惑をかけてしまうことが何よりも怖かった。

迷惑をかける=嫌なやつだと思われる=人間関係悪くなる=仕事が円滑に進まなくなる=会社にとって邪魔者になってしまう

そんな図式が頭をぐるぐるとしていたっけ。

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楽しさをとるか、ストイックをとるか。さくら剛『君たちはどの主義で生きるか』

楽しさをとるか、ストイックをとるか。さくら剛『君たちはどの主義で生きるか』

大学生の頃、ビッグバンドジャズのサークルに入っていた。

…ビッグバンドってわかりますかね。20人くらいでジャズ演奏するやつです。ちょっと前ですが映画「スウィングガールズ」の世界です。

そこで私はコンミス(演奏代表的なやつ)をしていたのだけれど、バンドの方向性に激しく悩んで、悩みながら走って、つまずいて、結局最後まで答えが見つけられなかった。

要は、「サークルなんだから楽しくやろうぜ~」なのか

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あぁ、理想のレポート見つけた。未知の沼に引きずり込む天才。三浦しをん『あやつられ文楽鑑賞』

あぁ、理想のレポート見つけた。未知の沼に引きずり込む天才。三浦しをん『あやつられ文楽鑑賞』

この前まで受講していた京都ライター塾では、毎回講座のあとにレポート記事を書いていた。講師の江角さんからは、「理想の記事を見つけて、真似するとよい」と言われていたけれど、なんだかんだ最後までコレ!というレポート記事に巡り合えていなかった。

しかし、見つけましたよ。
その名も、三浦しをんさんの『あやつられ文楽鑑賞』。

『仏果を得ず』という文楽をテーマにした小説があり、その副読本、という位置づけなの

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智恵を絞って絞って絞りまくる。髙田郁『あきない世傳金と銀』

智恵を絞って絞って絞りまくる。髙田郁『あきない世傳金と銀』

着物好きはもちろん、人生ドラマが好きな方にもおすすめな『あきない世傳』。

全13巻+特別編2作品と8年にわたって続いた大人気シリーズです。この作者さんは、『みをつくし料理帖』(私は読んでいないけれど)でも有名ですね。

『あきない世傳』は江戸時代の呉服商を舞台に、主人公の幸(さち)が「買うての幸い、売っての幸せ」を信条として幾多の困難を乗り越えながら商いをしていく物語。

難局に直面するたび、智

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誰かの役に立つために、特別な行動は必要ない。――中島岳志『思いがけず利他』

誰かの役に立つために、特別な行動は必要ない。――中島岳志『思いがけず利他』

気が利く人とおせっかいの違いってなんだろう。

どっちも、相手のためを思ってやっているはずなのに、方や有難い存在で、方や迷惑な存在。

では気が利く人であればいいのかというと、そうでもなかったりする。

たとえば、友人と飲み会に行くとする。
大皿で食べ物が出てきたらすぐに取り分けてくれたり、コップが空いたら気にしてくれたりする人。すごく気が利くなと思う。

でも正直、自分でやるのに、と思う。各々が

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このサラリーマン、想像以上に縄文人。『週末の縄文人』

このサラリーマン、想像以上に縄文人。『週末の縄文人』

「サラリーマン二人組が週末に山で縄文時代の生活に挑戦するっていうyoutubeがあって、それが本になったんだって」

スーツ着て、顔出しはNGだから「縄」「文」の字で顔を隠して配信しているらしい。

前書きに書かれたコンセプトはこうだ。

で、実際に読んでみて思ったのは、

「想像以上に縄文人だった」
ということ。

最初は、ネタ系なのかなと思っていて。
縄文人だし、火起こしとか斧使って木を切ると

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誰だってスランプになるさ―森見登美彦『シャーロックホームズの凱旋』

誰だってスランプになるさ―森見登美彦『シャーロックホームズの凱旋』

わたし、森見登美彦さんの作品が大好きです。

どれくらい好きかというと、京都旅行では聖地巡りしていたし、『夜は短し歩けよ乙女』と『四畳半神話大系』が好きすぎて京都大好きになってついに移住しちゃったし、とりわけ下鴨神社がお気に入りだし、夏の古本市は欠かせないし、結婚式も下鴨神社で挙げたし、家の照明の紐には「もちぐま」がぶら下がっている。

ということで待望の新刊である。

待望だったのだが、正直、と

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絶対に、紙で読むべし。杉井光『世界でいちばん透き通った物語』

絶対に、紙で読むべし。杉井光『世界でいちばん透き通った物語』

ミステリーが苦手だ。
早く答え教えてー!ってなってしまうから。

いろんなところに意味ありげな種がまかれているのが嫌だ。
登場人物を探りながら、疑いながら読み進めるのがすごく疲れる。

と思って、およそ読んでこなかったのだけれど、知人に勧められたので読んでみた。

当然、はやく種明かししてくれ!と思いながら読む。
読みながら、ところどころ何か違和感がある。

最後まで読んで、あーなるほどなーと思っ

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文楽、何それ美味しいの?いやめっちゃ美味しそうなんだけど!――三浦しをん『仏果を得ず』

文楽、何それ美味しいの?いやめっちゃ美味しそうなんだけど!――三浦しをん『仏果を得ず』

「ぶんらく」なのか「ぶんがく」なのか。

そこから知らない。
恥ずかしながら、日本の人形劇、というくらいの認識しかない。

まったくもって、未知の世界。

興味がないことはないけれど。
難しそうだし、昔の言葉で何言ってるかわからなさそうだし、
学校行事で連れて来られて眠っちゃう、
敷居が高い、そんなイメージ。

茶道も歌舞伎もそうだけど、日本文化ってどうしてこうもハードル高く感じてしまうんだろうね

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感動の再構築――中田昭写真集『・京・瞬・歓・』

感動の再構築――中田昭写真集『・京・瞬・歓・』

下鴨神社が好きで、折に触れて参詣しているのですが。

糺の森を歩いていると、陽の光が差し込んで、あたり一面が浄化されるような景色に出会う瞬間があって。

その瞬間を急いで写真に収めようと、スマホのカメラを向けてみる。
確かに光は差し込んでいるけれど、何かが足りない。あの、「わぁっ」と息をのんで、肋骨が一気に広がる感覚が、ない。

祇園祭なんかでも、目の前を通り過ぎていく華やかで威厳ある山鉾と、写真

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嫌いという気持ちは、あっていい。『シャネル哲学 ココ・シャネルという生き方』

嫌いという気持ちは、あっていい。『シャネル哲学 ココ・シャネルという生き方』

山口路子さんの『シャネル哲学 ココ・シャネルという生き方』を読んだ。

シャネルが特に好きなわけではない。
ハイブランドに限らず、このブランドがすごく好き、というのが特にない。ブランドだから好き、ではなく、このアイテムが好き、というタイプ。

そういえば数年前、リサイクルショップでシャネルの黒のワンピースを買ったことがある。アシンメトリーのドレープが入っているノースリーブのワンピースで、一目ぼれだ

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『君のクイズ』を読んで。

『君のクイズ』を読んで。

クイズ番組を見ていると、時々、「これってやらせなのかなー」と思う時がある。

問題なんて作ろうと思えばどんなマニアックなものだって作れてしまうわけで、ある程度テーマが決まっていたとしても、どれだけ記憶していないといけないんだと。

しかも早押しクイズなんて、問題文の初めの方でみんな押してる。いやいやいや、何でわかるの?って。

そんな疑問を抱いたことがある人には「へぇー!」が止まらない本だと思う。

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権威に塗り固められた「伝統」をぶった切る岡本太郎『日本の伝統』

権威に塗り固められた「伝統」をぶった切る岡本太郎『日本の伝統』

『日本の伝統』――タイトルだけ見ると、伝統について滔々と語っていそうだ。

しかし岡本太郎氏だから、何か風穴をぼかんと空けてくれそうな期待感もある。

そうして読んでみて、なるほど痛快。

「伝統なんて古臭くて堅苦しくてめんどくさそう」と嫌厭してる方にぜひ読んでみてもらいたい。

そういうイメージを作ってきた野郎ども馬鹿野郎!みたいな感じで痛烈にぶった切ってくれる。

超絶ざっくりだけれど、どんな

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