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このサラリーマン、想像以上に縄文人。『週末の縄文人』

「サラリーマン二人組が週末に山で縄文時代の生活に挑戦するっていうyoutubeがあって、それが本になったんだって」

スーツ着て、顔出しはNGだから「縄」「文」の字で顔を隠して配信しているらしい。

前書きに書かれたコンセプトはこうだ。

僕らは同じ映像制作会社に勤めるアラサーのサラリーマン二人組で、最近巷では、縄(じょう)と文(もん)と呼ばれている。自然が好きな僕らは、3年前から、休日を使って山でちょっと変わった活動をしている。そのテーマはいたってシンプル。
【現代の道具を使わず、自然にあるものだけでゼロから文明を築くこと】

週末縄文人 縄・文『週末の縄文人』


で、実際に読んでみて思ったのは、

「想像以上に縄文人だった」
ということ。


最初は、ネタ系なのかなと思っていて。
縄文人だし、火起こしとか斧使って木を切るとか、そういうことをするんだろうと。で、失敗をちょっとオーバーに取り上げて、難しくて助っ人呼んだ~とか、文明の利器使っちゃったありがたい~みたいな感じなんじゃないかなって。


全然ちがった。彼らは真剣だった。

火をおこすまでに2ヶ月かかり、土器を作るに至っては2年かかっている。ヒモを作るのに4時間かけ、磨製石斧を作るのに石を20時間磨き続ける。現代では考えられない時間軸だ。

たくさんの失敗を重ね、工夫をこらして少しずつ前進していく様子は、まさに文明の進歩。

動画で火起こしの回を見ると、火がついて二人が喜ぶ姿にジーンとくる。



動画も面白いのだが、本を読むことをおすすめしたい。

というのも、動画はシンプルな作りで、作業中の会話こそあるが、基本的には作業の様子をダイジェストで追っていくもの。

一方、本にはその時彼らが感じたこと、気づいたことが書かれている。


火が神聖視されていた理由。
磨いた石に宿る力。
縄文人が土器になぜ縄の模様をつけたのか。

実際に気が遠くなるほどの時間と労力をかけたからわかる境地。今時、「石斧には魔力がある!」なんて言ったら鼻で嗤われてしまうが、この本を読んでいると、納得感があり、自分もその感覚を味わいたいと思ってしまう。世の中で胡散臭いと思われる人たちには、この過程がないからなんだろうな。


集中すると周りが見えなくなる気質が、石を磨き続けるところで本領を発揮したり、週末だけという限られた時間の中でどこまでこだわるのか、二人の性格の差が如実に現れたり。

ただ文明を築いていくにとどまらない、たくさんの人間的な気づきが詰まっている。


文章も読みやすくて、時たま面白い。
あははー!って笑う感じじゃなくて、ウィットに富んだ面白さ。


現代の生活になんとなくモヤ―っとしている人は、そのモヤーの正体がわかるかも。



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