権威に塗り固められた「伝統」をぶった切る岡本太郎『日本の伝統』
『日本の伝統』――タイトルだけ見ると、伝統について滔々と語っていそうだ。
しかし岡本太郎氏だから、何か風穴をぼかんと空けてくれそうな期待感もある。
そうして読んでみて、なるほど痛快。
「伝統なんて古臭くて堅苦しくてめんどくさそう」と嫌厭してる方にぜひ読んでみてもらいたい。
そういうイメージを作ってきた野郎ども馬鹿野郎!みたいな感じで痛烈にぶった切ってくれる。
超絶ざっくりだけれど、どんなことが書いてあったかというと、
ある人がお寺の門について、「この門は開いているようで拒絶もしている。云々…」みたいなことを小難しく書いた文章があって、それを引用しながら、「門なんだから拒絶して当たり前だろう。誰でも通してたら門の意味ないだろうが(馬鹿なの?)」てな具合。
そうして、しかつめらしい「伝統」をぶった切ったうえで、日本の伝統について持論を語る。
縄文土器からはじまり、京都の庭園についても詳細に語る。これを読むと行ってみたくなるし、ただお庭に行くだけとは違う視点でお庭を見れるようになる。
最後に印象的だったのが、掲載されている写真はすべて本人が撮ったものであるということ。
プロのカメラマンが撮ると「きれい」な写真にはなるが、伝えたいことが伝わらないから。
文章を書くと「ふわっとしている」とよく言われる私にはぐさっと刺さる言葉だ。見た目にばっかり囚われて、肝心なところが抜け落ちている状態。
周りの反応や誤解を恐れて自分の想いをしっかり伝えることが苦手な人にとっても、この本は参考になるだろう。
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