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じつわこれじつわ −140字の「実話」小説集−

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これまでに公開してきた140字小説の中で《実話》と名のつくシリーズをまとめてみました。事実は小説よりも奇なり。 ※無断転載は原則禁止です。台本等、二次利用をご検討の方は、事前に… もっと読む
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記事一覧

140字小説【実話︰思い出に蓋はできない】

140字小説【実話︰思い出に蓋はできない】

 娯楽が限られた小学校において、ときに牛乳瓶の蓋は立派な娯楽へと昇華する。
 当時子どもだった私も例に漏れず日々いろんなデザインの蓋を求め、そしてついにお気に入りと呼べる一枚を手に入れた。
 しかしクラスメートには蓋に印字された文字ばかり注目され、私のお気に入りは《殺菌》と呼ばれた。

140字小説【実話︰思い出の給食① 〜さわらの西京焼き〜】

140字小説【実話︰思い出の給食① 〜さわらの西京焼き〜】

 小学生の頃、給食に《さわらのさいきょうやき(鰆の西京焼き)》が出たことがある。

 それを当時の私は《最大火力で最強に焼き上げた魚》だと思っていた。

 教育の場なんだから、献立表くらい漢字にルビを振ればいいのに……と思ったのはさておき。とりあえず美味しかったのはハッキリと覚えている。

140字小説【実話︰思い出の給食② 〜ちらし寿司〜】

140字小説【実話︰思い出の給食② 〜ちらし寿司〜】

 ちなみに《鰆(さわら)の西京焼き》の他には、ちらし寿司の具の一つとして《きんしたまご(錦糸卵)》というものがあった。

 やはりひらがなメインの献立表であったため、当時小学生の私は『使用を禁止された卵だ』と、またしても勘違いしてしまった。

 もちろん無事だったし、普通に美味しかった。

140字小説【実話︰イカくんとザリガニくん】

140字小説【実話︰イカくんとザリガニくん】

 私が小学校低学年の頃は、土曜日にも授業があったりした。
 そこで、学年全体で近くの川までザリガニを釣りに行く、という課外授業が設けられたが、結局誰一人として成果を挙げられた者はおらず。
 我ら子どもの貴重な土曜日は、各々がエサとして持ち寄った《いかくん》を食べて帰るだけに終わった。

140字小説【実話:イカ省略】

140字小説【実話:イカ省略】

 子どもの頃、イカの握りで死にかけたことがあった。

 ここでイメージしてほしい。筋を噛み切れぬまま真っ二つになりかけたイカを。

 舌の上に残るイカ、先を急ごうとするイカ、それらを繋ぎ止める一筋の糸。そして押し寄せる吐き気の波……

 ……果たして無事に飲み込めたのか、その後の記憶がない。

140字小説【実話︰立ちはだかるネジ】

140字小説【実話︰立ちはだかるネジ】

 子どもの頃、親に買ってもらった玩具を組み立てる際に、とある大きな壁が立ちはだかった。

 それはたった一本の《ネジ》の存在だ。

 子どもゆえ、ドライバーなどの工具は危険だからという理由で触らせてもらえない。だから親にお願いするしかないのに……

「今は忙しいから、あとでね」

 ……詰んだ。

140字小説【実話︰戦闘不能“風”】

140字小説【実話︰戦闘不能“風”】

 プラモデルのような組み立てを要する玩具には、戦いで傷ついた雰囲気を醸し出す、いわゆる《壊しの美学》というものがある。
 その美学に魅せられた子どもの頃の私は、ハサミを手に早速、自分の玩具に傷を入れてみたが……

 ……結果、戦闘不能“風”ではなく、本当にただの戦闘不能にしてしまった。

140字小説【実話:ばり悲しい体験】

140字小説【実話:ばり悲しい体験】

 あれは私が小学校高学年の頃、確か国語の授業中のときのこと。
 誰が発端でそういう話の流れになったのか、先生も交えて、クラスのみんなが幽霊ネタで盛り上がったことがあった。
 そこで、ふいに先生がみんなに質問した。「金縛りに遭ったことある人、いる?」と。

 ……私以外、全員が手を挙げた。

140字小説【実話︰鎮護国家】

140字小説【実話︰鎮護国家】

 私が中学生の頃、歴史の授業で《鎮護国家》について教えてくれた先生。
 その先生が乱雑な字で黒板に書き殴ると、ご丁寧にルビを振り、やがてそれらを黒板消しで消す際、所作が雑すぎてルビの「゛」と「こっか」のみが器用に消され、黒板のド真ん中に残ったのは……

 ……先生、あれはわざとですか?

140字小説【実話︰輪ゴム天使】

140字小説【実話︰輪ゴム天使】

 中学生の頃、ある日の授業中にふと黒板の方を見やると……

 おじさん先生のちょうどハゲてる後頭部に、誰かが飛ばしたらしき輪ゴムが乗っていた!

 気づいていなかったのか、その後も輪ゴムが自らズリ落ちるまで、淡々と授業を続けた先生。そんな彼の後ろ姿は、まさに《天使》と呼ぶに相応しかった。

140字小説【実話︰興味ないです】

140字小説【実話︰興味ないです】

 中学生の頃に受けた実用英語技能検定(英検)。その準二級・面接試験での最終問題の意味が分からず、私はとっさに『ノー』と答え、さらに英語で『それについて興味ないです』と続けた。

 落ちたかと思った。でも結果は一発合格だった。

 ちなみに筆記試験の方は不勉強すぎて、五度目の正直で通った。

140字小説【実話︰魔法の弁当箱】

140字小説【実話︰魔法の弁当箱】

 明日の昼食用に取り置きしていた市販のソーセージパンが、翌朝になって消えていた。
 すると代わりに母が弁当を作って持たせてくれたのだが、いざ昼休みになって弁当箱を開けてみると、中には昨日見たソーセージパンのソーセージ“のみ”が、さもメイン級のオカズのごとく入っていた。

 ……パンは?

140字小説【実話:一筋の光明】

140字小説【実話:一筋の光明】

 気分転換にいつもと違う道を歩いて帰ろうとしたら、見事に迷子になった。

 進んでも進んでも住宅街。次第に疲労と不安が募り、いよいよ心が挫けそうになった、そのとき。

 ちょうど目の前を電車が横切ったので、その行き先をすがる思いで見やると――

 ――今いる道のすぐ隣に、いつもの道があった。

140字小説【実話︰一筋の光明②】

140字小説【実話︰一筋の光明②】

 初めて来る街で調子に乗って探検した結果、見事に迷子になってしまった。
 住宅街の真ん中で途方に暮れていると、やがて「あの〜、すいません」と近づいてきた一人の女性。
 もしかして、こちらが迷子なことに気づいて――

「ちょっと道をお尋ねしてもいいですか?」

 ――聞きたいのはこっちだよっ!