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【展覧会レポ】茨城県近代美術館「つくる展 TASKOファクトリーのひらめきをかたちに」「日本の近代美術と茨城の作家たち 夏」ほか

【約4,600文字、写真約80枚】
茨城県近代美術館に初めて行き「つくる展 TASKOファクトリーのひらめきをかたちに」と、常設展を鑑賞しました。その感想を書きます。

▶︎結論

子供フレンドリーで、建築もロケーションも素晴らしい美術館でした!展覧会と連動した「アートフォーラム」の取り組みも素晴らしく、子供が終始楽しめた美術館は久しぶりでした。常設展の内容も程良かったです。水戸観光の際は、水戸芸術館と併せておすすめです!


▶︎訪問のきっかけ

外観

1泊2日で、子供と水戸旅行に行った時「2日目はどこに行こうかな…。茨城県近代美術館が近くにあるみたいだけどシャビーな感じもする…、ん?"つくる展"?これは子供も楽しめそう!」と思い、9時半に入館しました。

▶︎アクセス

「シンボルタワー」が見える

茨城県近代美術館は水戸駅から徒歩約15分。近くには千波湖せんばこがあります。諏訪湖(長野県)に行った時から、湖の魅力に気付きました。水戸へ旅行することの決め手の一つも、千波湖が近くにあったことです。

▼諏訪湖の魅力に気付いたnote

なお、千波湖はの平均水深は約1mのため、分類上は「沼」であり、法律上は「河川」に位置づけられているそうです。

住所:茨城県水戸市千波町 東久保 666−1

▶︎茨城県近代美術館とは

エントランス

茨城県近代美術館は、1947年に大洗町に開館、数回の移転後、1987年に今の場所に開館。設立の基本理念は「県民に愛され、親しまれる美術館づくりをめざす」。

設計は吉村順三が担当。他の主な設計は、皇居新宮殿基本設計(1968年、宮内庁と意見が対立し辞任)、奈良国立博物館 新館(1972年)など。

開館当時のコレクションは5点だったものの、現在は4,300点を超えています。常設展を見ても、内容も見劣りするものではありませんでした。

展覧会のポスターなど
中村つねアトリエが併設

茨城県近代美術館には、新宿区下落合にあった中村つねアトリエがあります。中村彝は、水戸市生まれの洋画家です。2024年11月から、中村彝没後100周年の大規模な回顧展が、茨城県現代美術館で開催予定とのこと。

東日本大震災で一部が被災
痕跡を残したまま展示
1階休憩スペースの全体

建物は2階、1階、地下の3層構造。1階の休憩スペースからは千波湖を含む自然を大きなガラスから望むことができます。座り心地の良いがイスもたくさんあり、展示室以外は無料で入ることができるため、ちょっとした休憩にも最適です。

1階休憩スペースから外がよく見える
中世のお城のようなエントランスロビー
階段が好き」さんが好きそうな階段
オシップ・ザッキン《恵みの木》
レトロモダンな装飾がステキ
子供が落ち葉を館内に持ち込んでしまったところ、
クロークで預かってもらいました(笑
水戸芸術館と同様、ここにもアダストリア(プラチナパートナー)
2階から見た様子

▶︎「つくる展 TASKOファクトリーのひらめきをかたちに」感想

展示室入り口

おすすめ度:★★★
会話できる度:★★★★☆
混み具合:★★☆☆☆
展覧会名:つくる展 TASKOファクトリーのひらめきをかたちに
場所:茨城県近代美術館
会期:2024年7月20日(土)~9月23日(月・振)
休館日:月曜日
開館時間:午前9時30分~午後5時
住所:茨城県水戸市千波町 東久保 666−1
アクセス:水戸駅から徒歩約15分
入場料(一般):1,000円
事前予約:ー
展覧所要時間:約1時間
撮影:全て可能
URL:https://www.modernart.museum.ibk.ed.jp/viewer/info.html?id=332 

世界に誇れる日本のものづくりを、さらに元気にしているアートファクトリー「TASKOタスコ。(略)現代アートとしても見応え充分の、うごく・さわれる・体験できる作品を多数展示。(略)ものづくりの不思議さや面白さを通して、見る側の想像力、発想力、創造力が刺激され、自分も何かを「つくりたくなる!」、そんなワクワクがつまった展覧会です。

公式サイトより
《「つくる展」インスタレーション》

TASKOとは、美術、企画・プロデュース、設計製作、舞台監督、ウェブなど、制作なら何でもござれ的な会社のようです(参考:TASKOのお仕事)。ファクトリーは溝の口武蔵小山にあります。

「アートなの?広告なの?機械なの?会社なの?」わたしたちの活動をひとことで表現する言葉はまだありませんが、この展覧会を通じて、つくる仕事っておもしろそう!と感じていただけたら嬉しいです。

館内の「TASKOからのメッセージ」

「つくる展」は、まさに「つくる仕事っておもしろそう!」と子供も大人も思える展覧会だと思いました。まるで科学館のようでもありました。来場者の子どもは「これ触れるの?」と常に親に聞いていたように、知的好奇心を素直に刺激してくれる楽しい展示が多かったです。

《うかぶ風船》
「どうして浮いてんの?」と来場者の子どもは楽しそう
《マグ・レール》
《LIFT》
《ひかりの3原色》
3色のライトで照らすことで、3色の影ができる
《幻灯機》
《札幌ループライン》
クワクボリョウタの作品にカラーの影は珍しい
《TASKOの棚から》

来場者のほとんどが親子でした。アートを使った楽しい展覧会に行くことによって、今後も美術館に行くきっかけになると思いました。このような子供をターゲットにした展覧会は、数年に1度は開催することで、地域の文化的素養の育成に有用だと思います。

《ル・ディスコシャンデリア》
足でマットを踏むと音が鳴って光る
《ししおどし?!》
《FLOWER DISPLAY》
特定の花は閉じたり、
開いたりする
《図面の中のつくる展》
このサイトで実際に遊べます
《パフューマリー・オルガン》
ピアノの鍵盤を押すと、瓶の注ぎ口に空気が送り込まれ、音が鳴る&匂いが出る仕組み
ピアノの音楽と匂いが両方楽しめる

「つくる展」では、アートが楽しく、身近で敷居が高くないものだと感じられます。その意味で「使い勝手のいい」展覧会でしょう。日本全国を巡回中のようですし、今後も「つくる仕事っておもしろそう!」という気持ちを日本各所で広めていただければ良いですネ。

調べた範囲の巡回履歴
⚫︎2021/7/17~8/29 酒田市美術館
⚫︎2022/7/9~9/4 高崎市美術館
⚫︎2023/3/18〜5/14 北九州市科学館
⚫︎2023/7/15~8/27 みやざきアートセンター
⚫︎2024/4/5~5/6 大分県立美術館
⚫︎2024/7/20~9/23 茨城県近代美術館(←イマココ)

フォトスポットも充実
プロップスなども完備
出口から撮影
来年は、六本木で実施したキース・ヘリング展が巡回予定

▼分かりやすい「つくる展」の紹介(高崎市美術館)

▶︎「日本の近代美術と茨城の作家たち 夏」「フシギな作品、大集合!」感想

常設展の入り口

おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★★★☆
混み具合:★★☆☆☆
展覧会名:「日本の近代美術と茨城の作家たち 夏」「フシギな作品、大集合!」
会期:2024年6月25日(火)~9月21日(土)
展覧所要時間:約30分
撮影:全て可能
URL:https://www.modernart.museum.ibk.ed.jp/viewer/info.html?id=337 

1階には常設展示室が2つあります。1つ目の展示室は有名な名品が並び、2つ目の展示室は子供も楽しめる現代アート寄りの作品が設置されていました。展示数は多過ぎず少な過ぎず、有名な作家の作品も多かったため「ちょうど良い常設展」という印象でした。

▼気になったものだけご紹介

1つ目の展示室の様子
ギュスターヴ・クールベ《フランシュ=コンテの谷 オルナン付近》
シスレー《葦の夕川辺 ー夕日ー》
モネ《ポール=ドモワの洞窟》
ルノワール《マドモワゼル・フランソワ》
マネ《白菊の図》
横山大観《隠棲》
桂ゆき《ひまわりの咲く午後》
藤田嗣治《横たわる裸婦》
中村彝《多湖実敏氏像》
萬鉄五郎《風景》
佐藤忠良《帽子》
舟越保武《萩原朔太郎》
2つ目の展示室の様子
新山榮朗《緑の器》
田中武昭《大氷瀑布図》
白髪一雄《普門品 雲雷鼓掣電》
堀内正和《うらおもてのない帯(メビウスの帯)》
靉嘔《フィンガーボックスキット'91》
常設展にも触れる作品があって子供は嬉しい!

▶︎ステキな「アートフォーラム」

アートフォーラムの様子

1階にある「アートフォーラム」は無料で楽しめるスペースです。企画展に連動して、内容は随時変更しているようです(参考:これまでの企画)。

ここでは、塗り絵コーナー、紙コップコーナー、絵本コーナーなどが企画されていました。また、企画やスタッフの方の対応も含め、子供に優しい点は大変素晴らしいと思いました。私たちは、茨城県近代美術館に2時間半ほどいた中で、アートフォーラムにいた時間が一番長かったです。

なお、この日は台風により、美術館の開館時間がお昼までだったため、美術館内のレストランでランチをとることができませんでした(残念!)。また、ミュージアムショップには、茨城県近代美術館に関するポストカードがなかった点は少し驚きでした(つくった方がいいと思います)。

✔️塗り絵コーナー

塗り絵コーナー
「つくる展」の塗り絵を完成させるとシールがもらえる
美術館用の手帳に貼付
蝶々を塗ると、
スキャナーで読み取って、
画面で動き出す
パソコンを使ったお絵描きもできる

✔️紙コップコーナー

「みんなでつくる街」

「みんなでつくる街」として、1万個の紙コップを積み上げる遊びが催されていました。これは良いアイデアだと思いました。お金もかからないし、大人も童心に帰って夢中になることができます。「つくる展」の「つくる仕事っておもしろそう!」にもうまくリンクしています。

わざとでなければ、壊しちゃってもok
よいしょよいしょ…
ガラガラガラ…

✔️積み木コーナー

さまざまな積み木で遊べます

✔️絵本コーナー

絵本コーナー

絵本を読めるスペースは2つ用意されてありました。ともに靴を脱いで、専用のスペースに上がります。選書も良かったです。

大人も興味深い絵本がたくさん
『美術館にもぐりこめ!』
日本語の意味としては「監視」ではなく「看視」が正しいはず。美術手帖の表記も「看視員」
初めて見た『100かいだてのいえ』。左:9,000円、右:8,000円

なお、茨城県近代美術館は、2022年に「どっちがどっち? いわいとしお×岩井俊雄 ―『100かいだてのいえ』とメディアアートの世界―」を開催しています。子供に優しい展覧会を定期的に行っている点は素晴らしいです。

▼東京都写真美術館での岩井俊雄の展覧会

なお、落合陽一は岩井俊雄のファンだそうです。

大人向けの図書コーナーもあります

✔️その他

授乳・オムツ替え専用テント
常設展の解説 映像コーナー

▶︎まとめ

茨城県近代美術館の良さが伝わったでしょうか?子供が大満足してくれた珍しい展覧会・美術館だったため、私の満足度も高かったです。巡回展だけではなく、アートフォーラムの企画も子供にフレンドリーなのは美術館の優しい考えが透けて見えました。また、湖のほとりに位置するレトロモダンな建築も格好いし、常設展のコレクションも粒揃い。水戸旅行では、水戸芸術館に加えおすすめのスポットです!

▶︎今日の美術館飯

★3.2/魚沼食堂 エクセルみなみ店 (茨城県/水戸駅) - お刺身三点盛り定食 (¥1,280)

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