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なんのはなしですか

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なんのはなしかわからない。だけど、重要なものなんて判断は誰にも出来ないでしょ。そんなはなし。
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2023年1月の記事一覧

「憧れの人」になった自分は、必死にあと19年を確保した冬の日

「憧れの人」になった自分は、必死にあと19年を確保した冬の日

それは、昨年の年末だった。

「年明けたら、どこかでお会い出来たら嬉しいなぁ…なんて思ってます」

とのメッセージだった。

非常に丁寧な文面をいただいたが、この2行だけしか目に入って来ず、他をいくら読もうとしても読めなかったのは残念でならない。

私は動悸を静め、深呼吸しながら念のため5回ほど読み直したが、間違いなく誘われている事を認識した。私の人生経験で同じ女性に二度誘われるなんていうのは、ほ

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一人の作家を通して、実際出会うまでに至る引力を知る。それが大江健三郎の凄さだ。

一人の作家を通して、実際出会うまでに至る引力を知る。それが大江健三郎の凄さだ。

僕は大江健三郎が「大切なことを正面にもって来る」というのを小説のスタンスとして持っているのを大江健三郎のエッセイから知った。

大江健三郎は、僕の読書に於ける尤も核になる部分に潜んでいる。まだ数冊しか読んでいないのにだ。これを言い切れる僕は、大江健三郎を介してのSNS上でのその特性を活かした特別な出会いをある方達としている。

その方達が書くその文章には、大江健三郎の熱をそのまま帯びたような感触で

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中野重治の「梨の花」を読了し、進む事に決めた。

中野重治の「梨の花」を読了し、進む事に決めた。

私は現在、大江健三郎の「新しい人よ眼ざめよ」についての記事を書き終えている。私は、この本を読了した後に会う約束をしている方がいる。

どのタイミングでいつ出すか。迷ったまま時間が過ぎている。記事を出すのは簡単なのだが、そこの場に立つ覚悟が出来ない。なんだろう。もう、なぜか会うのが少し寂しいのである。

私より年長のその方は、私に大江健三郎の楽しみ方を教えてくれた。SNSを介して自分の意見を言える方

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僕達の矜持は翻弄される推し活。~中年の楽しみ方編~

僕達の矜持は翻弄される推し活。~中年の楽しみ方編~

お正月が明けると決まって僕達は、昨年めでたく社長になったばかりの男、ポップの仕事を手伝う。それは、顔見せだったり近況報告だったり、お互いのプライドをかけた推しの女子の話しだったりする。

高校時代からの同級生である僕達は、もう、40を越えた中年の集まりである。それを踏まえてこれから紡ぐ話しを心して聞いて欲しい。

毎年行われるその儀式は、どれだけ歳を重ねようとも全く実りのない話しなのだが、誰がどう

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谷崎潤一郎と江戸川乱歩の関係に嫉妬を積み重ねる文学中年

谷崎潤一郎と江戸川乱歩の関係に嫉妬を積み重ねる文学中年

「あなたは、知っているのかしら。知らないにしても知っているにしても、あなたと私に続きがあるのかは知らないけどね」

なぜ私の周りにはこういう女性が集まるのか。それに答えを見つけるのはあと10年後くらいでいい。そもそもこんな誘われ方をして、誘いに乗らないならば、それは私が私を辞めなければならない時だ。

何のきっかけだったのかは覚えていない。
きっかけを探るその言葉より、その後告げられた話の方が私を

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52時間しか会えない

52時間しか会えない

一年のうちにいったい何時間君と遊べるか計算したんだ。52時間。たったの52時間だったんだ。それはこの世界の決められたルールに則った概念で定められているらしい。

52時間を細分化する作業には僕は慣れていない。だけど、それが必要ならしなくてはならないし、せざるを得なくなる。

つまり、1週間に2回だけ君に会うことが出来る。それも1回30分だけだ。

それを多いと思うか、少ないと思うか。僕の世界の判断

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背景 安部公房様。どうか私を置いていかないで。

背景 安部公房様。どうか私を置いていかないで。

毎度御贔屓にありがとうございます。本日は、私の心の内に留めておくべき事を、恥を忍びお願いしたい事がございます。これをいったい私などが、いつ言ったらいいかずっと迷ふておりました。

文学中年を皆様からぜひ名乗って欲しい。お前しかいない。粋。イケメンと、ありとあらゆる人に言われに言われ、言われるがまま、満更でもなしに使用して、むしろ文学女子に対する癒し系になってモテるのではないかと思ふておりました。

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贈られた「手作りカルタ」で僕は僕を知る。~自己紹介編~

贈られた「手作りカルタ」で僕は僕を知る。~自己紹介編~

「午前中に届くように郵送したので受け取ってください」

そう言われて待機していた僕に届いたものは、自分を見つめるにはタイミングが良すぎる理由になるものだった。これを贈り物と言わずに通過出来そうもない。

北九州からの贈り物は、明らかに僕への贈り物だった。それは厄年を迎える僕の躍年への願いが込められていた。中でも目を奪われずにいられない箱があった。そこに描かれていた文字は、

かるTAWA。

かる

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第8回《ふるさとと文学2022》「開高健の茅ヶ崎」に行ってきた。

第8回《ふるさとと文学2022》「開高健の茅ヶ崎」に行ってきた。

12月下旬一枚のハガキが家に届いた。

ハガキは、往復ハガキの返信用で少しでも市役所の方に上手く見せようと、若干細目に書いた見栄っ張りな字がバランス悪く中央より若干下に書いてしまっていた。

僕は、そのハガキが何を意味するかは知っていたが、裏を捲る心の準備をしてからハガキを覗いた。

入場整理券〈売買禁止〉
ふるさとと文学2022~開高健の茅ヶ崎

と目に飛び込んで来た。

当選に胸の高鳴りを覚え

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