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黄昏の黙示録

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2022年9月より、月刊連載として小説を投稿していきます。 こちらの方にマガジンとして纏めていこうと思います。 何卒よろしくです😂
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#物語

第ⅩⅦ章 (最終章)世界の初まりとヘスぺロス・アギーアイランド−2

第ⅩⅦ章 (最終章)世界の初まりとヘスぺロス・アギーアイランド−2

Vol.2 悪戯のアリストテレス
「ルドラになりたい。」そう決意してから、私は具体的にどうしたらいいのか分からなかった。彼にこの想いを伝えるべきであるか。否か。彼が私にそんなことを言ってしまっても、裁判中の彼は何も言ってくれないかもしれない。ここで、ルドラのなり方なんて言ってしまえば、いやでも証拠になってしまう。そんなことはしないだろう。でも、そんな用意周到な彼がどうして警察に捕まってしまったのか

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第ⅩⅦ章 (最終章)世界の初まりとヘスぺロス・アギーアイランド

第ⅩⅦ章 (最終章)世界の初まりとヘスぺロス・アギーアイランド

Vol.1 黎明楚歌

 法廷内はざわついていた。長い長い梅雨が始まり、ジメジメとした空気がまとわりついてくる。冷房はしっかりと効いているはずだが、きっと中にいる人たちの熱気のせいだろう。誰もが真剣にこの裁判に注目していた。裁判長が定刻になったことを確認し、口を開いた。

「それでは、開廷します。被告人は前に出てきてください。」

被告人はゆっくりと落ち着いた様子で証言台の前に立った。彼の目は、朧

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第16章 人間農場-2

第16章 人間農場-2

Vol.2
 僕は、一連のニュースについての祝杯をみんなであげていた。銀座にあるちょっと小洒落た個室のすき焼き店。たまには贅沢をしませんかという二階堂さんの提案によって開催された。美味しいすき焼きに舌鼓を打ちながら、僕らは今回の事件を振り返っていた。
「うまくいきましたね。」僕はみんなに言った。
「大臣二人を連続で辞任させることができるなんてすごいです。斎宮さんのアイディアがとても良かったんですね

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第15章 運命の女神−2

第15章 運命の女神−2

Vol.2 仙石原

シヴァ:教祖は、あなたに興味を持っています。

セレン:なぜ?

シヴァ:あなたは、我々には向かい、降り注ぐ不幸の豪雨を前にしても、我々に牙を向けてきた。その、行動力に。その執念は、教祖の心すらも動かしているということですよ。

セレン:教祖の心を動かしても僕には何の嬉しさもない。

シヴァ:まあまあ、そう言わずに。我々からすれば、素晴らしいことです。我々が教祖の心を動かすこ

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第十五章 運命の女神-1

第十五章 運命の女神-1

Vol.1
 「私が貴方と初めて出会ったのは小学生の時。多分覚えてないと思う。」
黒奈は、僕の方を見ていった。僕は黒奈の言う通り、何も覚えてはいない。黒奈と出会ったのは大学生に入学してからだったからだ。
「あれは、私が九州に空手の遠征に行った時。鹿児島県の鹿屋という場所にあるバラ園に行くことになったの。バラなんてあの頃の私には興味はなかったけど、両親はせっかくの九州ということではしゃいでいたわ。私

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第XⅢ章 歯車の下で-1

第XⅢ章 歯車の下で-1

Vol.1
 飛行機が離陸してから二時間程度が経った。あっという間に飛行機は着陸準備に入っていた。飛行機に乗っている間、僕は流れていく雲を見ながら終わってしまう休みを惜しんでいた。もう少し長く休みたかったと毎回毎回思うのは社会人になってからだった。長い人生の中で、卒業というシステムがなくなってしまった。今までは、最大で6年同じところに通って、それから卒業というシステムに従って、次のところにいく。こ

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第十一章 恩讐の彼此

第十一章 恩讐の彼此

Vol. replay evil with evil

 部屋に戻ると、妹がソファーに寝転んでテレビを見ていた。テレビでは年末番組が放送されており、もう今年が終わるのだと僕に告げているようだった。時刻は、午後10時ー。寝るにはまだ少し早い気がした。かといって、何か特段したいこともない。年末番組を見るほど退屈なこともないわけだし。僕は、自分の部屋だった場所に置いたリュックから本を取り出し、読むことに

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第9章 silent melon−1

Vol.1
 羚羊さんからの返事は予想よりも早かった。僕は、数週間はかかるだろうと思っていたが、3日後には連絡が来た。送られてきたメールには、これから数ヶ月に渡ってブルーガーデンの闇を暴露する特集が組まれるということだった。初版は九月の最終週の金曜日。まずは、不倫疑惑のかかっている政治家が実はブルーガーデンの信者であるということを報道するものだった。小さい記事だが、まずは、つかみとして世間で取り扱

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第5章 Utopia−1

第5章 Utopia−1

「ーのぞみ88号、間もなく発車いたします。ドア付近のお客様ご注意ください。次の停車駅はー。」

 年末ということもあり、新幹線を待つ駅のホームはとても混雑していた。キヨスクでコーヒーと卵サンドを買って指定席に座る。自由席の方を軽く見たが、立っている人もおり乗車率の高さに驚いた。まあ、これを見越して指定席を取ったのだが。地元に帰る時、普段は飛行機を使用するのだが、値段が普段の2倍近くする。そのため年

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序章 First Kiss for Skumring

序章 First Kiss for Skumring

僕は、何者かになりたかった。歴史に名を連ねるような。その熱情で世界を救うような。そんな存在に。しかし、現実はそんなには甘くない。ただ過ぎていく時間の対流を眺めるだけの日常だ。それでも、期待してしまうのが人間だ。何かをきっかけに人生の歯車が好転すると思っている。その角を曲がったら何かが起きるような奇跡を思い描いて。

2025年11月。冬の雨は冷たい。そう思いながら仕事を終えて自宅に帰る途中、なんだ

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