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SF、読書のよろこびマガジン

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大人になってからSFの楽しみを知った人の記録。本が好き、ゲーム興味ないかたはここで。
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#小説

【読書】タイトルの由来が驚きの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」

【読書】タイトルの由来が驚きの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」

聞いたことはあるけど内容は知らない話を読むシリーズ。(以前には蠅の王やフランケンシュタインなど読みました)

なんとなく、「郵便配達員が旦那のいない時間に来て奥さんと不倫する話」かと思っていた。
なぜ不倫に関する話なのかは知っていたのか謎でそれは当たってたんだけど、郵便配達員ではなかった。

ストーリー序盤の男女がくっつくまでが、島耕作ぐらいのテンポ感ですすむ。
犯罪歴があってろくでなしの男と、な

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【読書記録】小説すばる2024/2 イノシシとクマの芸風。好きな読みきり「優しくない友達」

【読書記録】小説すばる2024/2 イノシシとクマの芸風。好きな読みきり「優しくない友達」

「小説すばる」に「猪之噛」って巨大イノシシを狩る小説が連載されている。最初は純粋におもしろくて読んでいたけど、
だんだん
「クマとどう差別化していくんだろう」
と考えながら読んでいる自分に気づいた。
別にイノシシも
「あっ!俺、最近ブレイク中のクマと芸風かぶってる!」とか意識しないだろうけど。

直木賞の「ともぐい」だったり「流れ星銀」の最終章が始まったり、時代は クマなのかもしれない。あとリラッ

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大田ステファニー歓人の「みどりいせき」が痛快だった

大田ステファニー歓人の「みどりいせき」が痛快だった

完成度が高い優等生候補作がそろう中で、いちばん読みづらいし、おそらく作者も文学の講義をずっと受けてきたような経歴じゃない。
これが新しい文学の1ページになるのか、ならんのか。

読んだ人同士で
「俺は良かった!いや俺無理!読めん!いや私はわかる!」とか語るのも含めておもしろそう。すばる文学賞受賞作の「みどりいせき」。
単行本になったらどうなるのかなあ。選考員が口をそろえて「序盤は読みづらかったが…

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【読書記録】高山羽根子「ススキの丘を走れ(無重力で)」

【読書記録】高山羽根子「ススキの丘を走れ(無重力で)」

この中に収録されている、小学生のころの記憶を掘り返す短編「ススキの丘を走れ(無重力で)」がすごく好き。
自分もこんなきれいで不思議な小説を書いてみたい。分量的には30分ほどで読めます。

学校を卒業してしばらくして再会した人がいると、こんな会話が発生しませんか。
「あいつ覚えてる?」
「あの子今何やってるか知ってる?」
 そんな感じで、記憶を掘り起こす話。久しぶりに再会した同級生と、子供のころいっ

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安堂ホセ「迷彩色の男」で芥川賞だ

安堂ホセ「迷彩色の男」で芥川賞だ

村上龍や石原慎太郎がデビューした時、こんな感じだったんじゃないか?

迷彩色の男はかっこいい。
ゲイが集まる風俗施設で傷害事件が起こり、そこから出た男がすぐ警官に職務質問される場面がある。
お巡りさんは当たり前の捜査をしているはずなのに、読んでいる最中は向こうが悪に感じる。偽善、嘲笑。そんな言葉がうかぶ。

正しい仕事をしているのに悪意を感じて、聞かれた男に感情を入れ込めたのは、読書体験によって善

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8月20日 Audible覇権の予感。今日買ってきた本は「キリング・ヒル」

8月20日 Audible覇権の予感。今日買ってきた本は「キリング・ヒル」

エックスあるいはツイッターやってること自体が恥ずかしくなってきた。
誰かが言ってたけど、だらだら続けてるSNSをバッサリ切ると、ダメな彼氏を振った時ぐらいスッキリするらしいよ。潮時だー。

海外ミステリーの大作、グレートサークルを買おうと思ったら田舎では書店に並ぶのが2日遅れらしくて、たまたま 表紙がいい感じだったキリングヒルというのを買ってきた。

本を読み上げる Audible が調子いいと聞

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【読書記録】アフリカ幻想冒険小説「薬草まじない」

【読書記録】アフリカ幻想冒険小説「薬草まじない」

まえのタイ小説に続いて、アフリカ小説。40年も前のものなので、さすがにネタバレしてもいいよね?

奥さんに子供ができる薬を求めて、さいはての地に住む「女薬草まじない師」に会うため、勇敢な狩人だった若者が旅に出る。
特にアフリカでは不妊は重要な問題だからね。

得意の弓を持って、ジャングルの奥地へ!立ちふさがる「首の取り外しがきく男」!
「アブノーマルな蹲踞の姿勢の男」!
日陰で休んでいたら日陰ごと

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ラッタウット・ラープチャルーンサップ「観光」今年ベスト短編集!

ラッタウット・ラープチャルーンサップ「観光」今年ベスト短編集!

タイ系アメリカ人の短編集。ハードル低かったのもあるけど、すごい良かった!誰かにオススメの短編聞かれたらこれにする!
こんなのとの出会いがあるから、ブックオフもたまには行くもんだな!

「カフェ・ラブリーで」
お兄ちゃんに連れられて初めて悪い遊び場に行くはなし。
お兄ちゃんについて行ったら大丈夫、と思っていたらシンナー吸いだしてわけわかんない状態になって、一人で取り残された少年が女の人にからかわれな

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【芥川賞】首里の馬、ババヤガの夜に震える

【芥川賞】首里の馬、ババヤガの夜に震える

#首里の馬

えっ!?こんな芥川受賞作あった?
と思ったら遠野遥「教育」と同時受賞で、向こうの話題性に隠れていたらしい。

地味な女の人が沖縄の資料を整理していたら馬が来たからどっか乗っていくというあらすじです。
世間と合わない人が、すぐには役に立たない情報を管理して保存する。
今「役立たず」「低収入」「陰キャ」とか言われてる人も、今1円の価値もないおもちゃや誰も見向きもしない情報も、すべて宇宙規

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【直木賞】人生の分岐点「しろがねの葉」

【直木賞】人生の分岐点「しろがねの葉」

「これはこういう話です」と簡単に語らせてくれない厚みのある!(物理的な意味じゃなくて)
石見の銀山とそれにかかわる女性の一生の話。
女の人生の話、といえそう。現在に通じる女性の生きづらさの物語、といえばまとまりそうだけど、それだけではもったいない。

富と病を生み出す銀山があって、主人公の女の子ウメは生まれつき夜目がきき、暗闇を恐れない才能がある。

銀山の闇の恐ろしさ、万病に効くが達人にしか掘り

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【読書】太田光をぎゅ〜っと原稿用紙1200枚に圧縮したら。 笑って人類!

【読書】太田光をぎゅ〜っと原稿用紙1200枚に圧縮したら。 笑って人類!

爆笑問題の太田光書き下ろしSF長編娯楽小説「笑って人類!」を読んだ!
完全なネタバレはしませんがある程度内容にふれて語りたい!

お笑い芸人がお笑い以外のジャンルで、ふだん表に出さない過去や暗黒面をぶつけてくるパターンがある。

ビートたけしが北野武になるんだら、太田光が超絶ダークな内容できてもおかしくないと身構えて買ったのに、出てきたのは愛するSF、ギャグ、ミステリー、オタク文化への愛もある、娯

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【読書記録】韓国、北朝鮮を本でしか知らない。「血と骨」

【読書記録】韓国、北朝鮮を本でしか知らない。「血と骨」

最近、本を読むのに多少「がんばり」がいるようになっていたのだけど、これは濁流に押し流されるように、気が付いたら残りページが全部なくなっていた。あああ終わってしまう!読む前には右の方にいたしおりがここまで移動している!さびしい!

どんな話かというと、暴力を振るう最悪なかまぼこ職人の人生。
十日に一日の休みで限界まで働かされ、給料は日本人の半分以下。労働基準法も衛生管理も人間らしい暮らしもない。

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ミン・スーが犯した幾千もの罪、沢木耕太郎を買う【読書日記】

ミン・スーが犯した幾千もの罪、沢木耕太郎を買う【読書日記】

まずタイトルと、逆光の男がドドーンと立ってる表紙でもう面白い。
中国系作家トム・リンのデビュー作となるヴァイオレンス・ウエスタン小説だ。

東山彰良の解説ではアメコミ映画を思い出したとあるけど、僕はジョジョの奇妙な冒険を連想した。
西部劇の世界観で超能力者が旅する話がジョジョかと言われると微妙だけど、作者が全く日本アニメを知らないことはないでしょう。

筋書きは、中国人の殺し屋が、見世物小屋の一座

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翻訳ミステリーが好きなことにきづいてしまった!

翻訳ミステリーが好きなことにきづいてしまった!

芸術性のある素晴らしい物語よりも、冒頭で事件なり犯行予告なりに引っ張ってもらう方が好きなことに気づいてしまった。
翻訳ミステリーが好きなことに気づいてしまった。
半月に一冊のペースで読む。読むか飽きると、帰りしな本屋に立ち寄ってその場だけの限られた在庫と、少ない紹介文から一冊を選ぶ。
値段はちょっと高め、2000円から3000円ぐらい。その時はちょっとした祭りである。
日本作家の繊細な文章とは違う

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